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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

虹のスープ  妻咲邦香

友だちは欲しかったけど
仲良くなると怖いから駄目
正しいことは知っているけど
息が苦しくなるからお終い
薬じゃ治らない恋をした
自分で自分の手を握って
大丈夫だよと言って欲しかったし
言ってあげたかった
私が違う人だともっと良かった
もしくはただの凡人だったら

誰も困らせたくないから静かに笑ってる
あなたの涙にも少しばかり気付いてる
夜より確かなものはないけれど
昨日とはもう違ってる星の位置
月は相変わらず悪戯な目配せで
お湯を注いで始まる根菜のスープ
人生は笑っちゃうほど短い

世界の中心は何処かにあったけど
誰も彼も見失った
私の知ってる大事なものは
大事な人にも壊せない
壊せない、壊せない
私が壊すんだから
この手で、わたしが
こわすんだ、から

 (虹は土から生まれた
 (丈夫な根を張り巡らせて
 (知らない街へと伸びていく
 (そして誰かに収穫される

自分で自分に差し伸べる
その手をいつか振り払う
いつまでも変わらないもの
見つけられたら信じられる
色とりどりの根菜
虹は土に帰っていく
誰に言われなくともそうする

ただこれ以上
悲しい人を増やしたくないから
静かに笑って立っている
栄養の今少し足りないこの場所で
立派に育った虹のように

編集・削除(未編集)

位置を知るとは  積 緋露雪

石原吉郎に「位置」といふ大変有名な詩があるが、
石原吉郎の位置はSiberiaの大地での
絶えずソ連兵に銃口を向けられた中で育まれた
人間の位置といふものは蒼穹を肩で支え、
つまり、自分の位置は自分で宇宙を支へなければ
確保できぬといふもので、
その厳格凄惨な位置に堪え得た石原吉郎の凄みは
「位置」といふ詩一つでも闡明するが
果たしてそれを我が身に置き換へればどうなるかといへば、
それは明らかに弛緩したGumのやうに伸縮する蒼穹を
これまたなよなよした肩で背負ひ
猫背になりながら
足下ばかりを見ながら歩く
曖昧な位置のみが指定されるに違ひない。

然し乍ら、それでは済まぬ状況は簡単に突如として訪れるものだ。
それは銃口のあるなしの大きな違ひによるともいへ、
例へば吾が強盗に遭ひ、
銃口を向けられたなら、
果たして石原吉郎のやうな死の覚悟を持って
ソ連兵の銃口を見ながら
蒼穹を背負ふ覚悟があるかと問はれれば、
吾は
――ある!
と、名言出来るに違ひない。
それは吾もまた、銃口に漸近する
吾自身に責められ続けられる自虐の苦役に
半世紀もの間、曝されてゐるので、
石原吉郎の体験とは違った形ではあるが、
その凄惨な自虐の苦役の体験から
断念といふ狂気を学び取るしかなかったのだ。

吾の位置は約めていへば
大宇宙の中で断念した此処である。
それ以外いふに及ばず。

編集・削除(未編集)

大袈裟なぬくもり

いきなり俺をあたたかい光で包むのは
どういうことだろう
俺は今まで冷たい道を歩いてきた
愛なく友なくさりとて孤独もなく
ましてや詩人はいるはずもなく
なのにどうしたわけかこのぬくもり
大袈裟な半ばサプライズな
嬉しいが喜びたいが
思うように感情が受け入れられずにいる

俺はささいな喜びでいいんだ
大きなものは…あるにはこしたことないが
きっと大きな喜びというのは
小さな喜びを集めたものだから
だからそれらをなるべく多く集めて
生きていたいんだ

色々と心配をかけてきたようだ
愚かなこともたくさんした
今だって愚かで馬鹿で阿呆だ
ああ大袈裟なんだよこのぬくもりは
俺を誰だと思ってるんだ 俺だぞ俺!

鳥が飛ぶように生きていたい
鳥が鳴くように歌いたい

大切なものを失った人は心にぽっかり穴があく
そんな人達にとって大袈裟なぬくもりは救いかもしれない
失った時ほとんどの場合は取り戻せない
そうして苦しみながら顔では笑って生きていくしかない
大袈裟なぬくもりよ
今こそ我の上に降りたまえ
神よ、どうして私をお見捨てになったのですか
生きていくしかないのか、俺は……

編集・削除(編集済: 2023年09月28日 07:46)

静かな想い  エイジ

透析施術一時間前
僕の部屋のベランダから
真ん前に立ちはだかる
向かいのマンションに整列する
何戸ものドアをぼんやり見ていた

一戸一戸のドアの向こうに
それぞれ全く違った
人の生活があるはずだ
各々のドアの向こうから
波のようにやって来る
様々な想いを静かに受け取る

ある家は三世代世帯かも知れない
ある家は独り暮らしかも知れない
皆一様に静かに暮らしているが

九月の穏やかな温かさの中
植林に蝶や蜂がホバリングする
隣の空き地にグラウンドが出来る予定
工事の音がただこだましてくる
そんな中をゆったり漂う
静かな想い

編集・削除(未編集)

雨音様、批評のお礼です  U.

お礼が遅くなりまして、申し訳ありませんでした。
「おまけのおまけ」、ありがとうございます。
少し書き過ぎですね、引き算の件了解しました。
引き算のご指摘は、今までも何度かありました。
毎度同じことを行ってしまって、情けないことです。
何度か読み返し、校正しているのですが、
月に1編のペースで書いてきましたが、自分には多いのかもしれません。

編集・削除(未編集)

闇の中で 紫陽花

私のおじいちゃんは船乗りだった
世界中を巡るそんな船乗りだった
おじいちゃんの海の話は
霧から始まることが多かった

狒狒の島の話も
ちょうど濃い霧が
立ち込める場面から始まる
太平洋のど真ん中の日没
船は進んでいる
日本では秋風が吹くころ
海の上ではいつもの
海風が吹いている
街の明かりもないので
前後左右真っ暗だ
時間の経過も分からなくなる
そのうち少し眠気が襲ってくる
狒狒はその時を狙っている
漁師が投網を投げるように
白い柔らかい
オーガンジーのような
霧を狒狒は被せてくるのだ
船は捕らえられたように
霧の奥へ奥へ真っすぐ
迷いなく進んでいく
砂地に乗り上げたような
何かに船首を掴まれたような
そんな感覚の後 船は止まる
おじいちゃんは
誘われるように外に出る

船から降りて
陸のようなところに降り立つ
何しろ白い霧で何も見えない
けれどここが島なんだと感じる
霧の奥から音もなく誰かが来る
赤い服を着た女性だ
遠くからでも人ではないと感じる
女性はにこやかに近づいてきて
話しかけてくる
奥に食べ物があるから
一緒に食べましょう
この世のものとは思えない
綺麗な姿と声に比例するように
おじいちゃんの恐怖が最大になる
その時おじいちゃんには
霧と闇の境目にある船が見えた
おじいちゃんは
恐怖で動かない体を
必死に動かし闇に向かって走る
狒狒は追ってくる
近くにあったはずの
降りた船が遠い
女性は今や狒々の姿で
追いかけてくる
お腹を空かせた狒々は
特に男性が好物だという
狒々に追いつかれる瞬間
おじいちゃんはなんとか
船に戻れたそうだ

私も暗闇の中にいると
方向性を見失う
何か強いものに
取り込まれてしまいそうな
そんな時がある
それがいいものか
悪いものか判別もできず
私は暗闇の中
私をしっかりと信じることが
できるだろうか
狒々に食われてしまわないだろうか
そんなことが心配になる
夜が長い季節がやってきている

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乗り換え駅 喜太郎

終着駅まで一緒だと思っていた
僕は乗り換えだと言われ
二人いきなり途中駅に降ろされた
君の前には乗り継ぎの電車が来ていた
前から彼女は乗り継ぎを考えていた
気づかなかったのは僕
乗り換えなど考えてもいなかったから
一人きりの駅のホームに立ちつくす
次の電車はいつ来るのだろう
その電車には乗れるのだろうか
気づけば君の乗った電車は もう見えない
あの電車には誰が待っていたのだろう
今となっては もうどうでも良い事
君の乗り継ぎのうまさにため息しか出ない
元々 僕は各駅停車でのんびりが好きで
君は急行電車が好きだったみたいだ
どのみち合わなかったんだな
ただ待っていても仕方ない
僕は駅を出て線路沿いの道を歩き出す
次の駅まで歩いてみよう
一人で歩くのも新鮮なものだ

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抱きしめてください  滝本政博

優しくしてあげてください
あのときのわたしを
あんなに頑張って走ったのだから

ここから逃げていったのです
休ませてやってください
冷たいお水をあげてください
めーめー泣いたからって
そんな目で見ないでください

あのときのわたし
黄昏てゆく街をひとり
自転車で走って逃げた
氷った体で
光る猫の目で

住宅街を
商店街を
街灯のともりだした広い道を
遮断機を越え
角を曲がり
未知の街を
さらにその先へ
夜も更けて疲れていたって知らないふり
何処までも行ったのです

パトカーに呼び止められるまで
力の限り走りました

優しくしてあげてください
あの時のわたしを
抱きしめてください

編集・削除(編集済: 2023年09月30日 06:02)

残暑  井嶋りゅう

昨日まで空腹を感じていたのに
今朝はぴたりとやんでいて
何も受けつけなかった
鏡を見たら頬の腫れがひいていて
痛みもなくなっていた
(迫ってくる大きな手が私の頭や顔を何回も叩いた)
夜の記憶の隅で季節が枯れる
ひと夏じゅう
私はずっと加害者と呼ばれ不誠実となじられた
降りかかる災いは
質の違うふたつの禍々しい出来事を共存させ
私はウイルスに差し出されて犯された
部屋に死体がある物語を読んで
荒れた唇の皮を無意識に食べている
(ぺちゃくちゃとよく喋る舌は引きちぎれ)
くすんだ九月が長い
疲れます誰かに代わってほしいですよまったく
サラリーマンが喫煙所で笑い合う
笑うのは恐怖心を抱く時だけで
冗談にして逃げるための助走だから
本当はしらけている
色にまみれた日常

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『初心者向け詩の投稿板』への励ましのお言葉をありがとうございます 齋藤純二

みなさんの励ましのお言葉と島さんのご尽力により
『初心者向け詩の投稿板』が順調に運営できていること、誠にありがとうございます。
今後、初心の方が気楽に詩の投稿できる環境をもっと整えて行きたいと思います。
みなさんにもお立ち寄りの際は、作品への感想などを入れていただけると
初心の方への励ましとなりますのでよろしくお願いします。
詩のある生活をみなさんで盛り上げて行きましょう!

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