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はじめまして。感想ありがとうございます。
概ね読み取ってくださった解釈で間違いありません。細やかな読み取りありがとうございます。
最初の中ではアダムとイヴの2種類だった?性別が今ではLGBTQという言葉もあり、性自認、性志向、性表現で区分され、性別に対する表現が難しいと思います。
最近思うことがあって、ジェンダーの本を拝読したのですが、フェミニズムのフェミニズムには3つの波があるとか……。
政治的、法律的……社会的な参加を目指す一波。自由や権利の拡張を目指すニ波。そして、「女性」という大きな括りではなく「個々」をみようという三波。
オンラインの世界にしろ、オフラインにしろ個々の人間性にフィットしていく論は理想的ではあるけれど……と思うこともあります。
広く解釈していきたい理想的な性概念に対して、それを受け止める個人や社会は具体的で明解な答えは獲得していないように思います。そんな戸惑いを書いてみました。
最近、詩を読んでも書いても今いちしっくりこない気持ちになることが多いです。
皆様のように綺麗な表現や、巧みな表現が描けない気持ちになり、一旦視点を変えて社会的なテーマを詩で表現してみるかと試みました。
改めて感想ありがとうございました。
荻座利守さま 評ありがとうございます。
比喩がどうも苦手で、いつも説明っぽくなります。
もっと深くですか。
深く描いたつもりですがまだ表層的なんですね。
そしてそれを比喩を用いて表現する……。
ハードルの高さを感じますが、がんばります。
荻座様初めまして。
今回初めての経験でドキドキしながらここに投稿させて頂きました。
作品の表現について深くまで感想頂き大変嬉しく思います。
「きらりきりり」の表現は描きたい表現だったので感想述べて頂き嬉しいです。
また、「引き締まった緊張感のある詩/くだけた感じの詩」への表現の統一につきまして、大変勉強になりました。
次作以降、意識をもって取り組んでいきます。
改めまして今回はありがとうございました。
また次作以降にて機会がありましたら、投稿の感想及び評をお願い申し上げます。 上原有栖
今回、井嶋りゅうさんのピンチヒッターを務めさせていただきます。よろしくお願いします。
なお、作者の方々が伝えたかったこととは異なった捉え方をしているかもしれませんが、その場合はそのような受け取り方もあるのだと思っていただければ幸いです。
1/14 「色について語ること」 松本福広さん
今回は初めてとなりますので、感想のみとさせていただきます。
現代社会の不寛容さをうたった詩だと受け取りました。
「個々を見れば時に混ざり合い新しい色を生み出し」というところに、個人個人を見れば理知的で創造的でもあること、「時に叩きつけられ共存を許さない」というところに、それが集団となると時に暴走してしまう、という人間の二面性を上手く表していると思いました。
また、色というメタファーを歴史の中に描いたことで、現代社会の「色」に関する特異性が強調されています。長い歴史を経て、大量の情報や価値観に我々が晒される社会が現れ、その大量な情報の処理に追いつかず、多くの人が単純化の道を選んでしまう、そんな社会の中で自由や寛容さを求める心情が、抑制の効いた中に表されていると感じました。
表現としては、
「色は夢を見るのだろうか
色は目指す方向があるという
色は求める方向があるという」
というところが、それぞれの色が独自の希望や志向を持っていることを上手く表しています。
ただ、3行目にある、神様が最初に作った二色が何を意味しているのかよくわかりませんでした。
禁断の果実を食べる前ですから善悪でもないでしょう。またその後に様々な色が作られたのでしたら男女の視点の違いでもないでしょう。
おそらくそれは、読者の受け取り方に任せているのでしょうが、個人的には何かヒントが欲しいところです。そこがわからないと、その後の、
「私はどちらの色のことも
一概には語る術をもっていない」
というところが読者にうまく伝わらず、もったいないと思います。
でも、末尾の「人はその色を扱うのに不十分なのか」というところに、多量の情報処理に人間の脳が追いつかないことへの哀しみが込められているようにも感じます。その哀しみ故の優しさを、全編の冷徹な語り口の中に感じさせる詩だと思いました。
1/14 「橋の上の靴」 樺里ゆうさん
今回は初めてとなりますので、感想のみとさせていただきます。
末尾の2行が効いていますね、橋の上に残された片方の靴の、孤独や寂しさを際立たせています。
全体的に、その寂しの中に美しさを孕んだ詩だと感じました。特に西の空の「天使の梯子」と、泥の飛び散った靴との、美しいものと汚れたものとの対比がいいと思います。
そして、「天使の梯子に掴まって空に昇っていった」というところは、自ら命を絶ったことをほのめかしており、それにより何か不穏な雰囲気を醸し出しているようにも感じます。美しさの中に潜む不穏さ。それは、天上の美しい世界への憧れは現実の汚さへの嫌悪と背中合わせ、ということの現れのようにも思えます。そんな、人生や人間の心理の複雑さが表されていると感じました。
表現についても、全体的に過度に華美にならず、抑えが効いていていいと思います。ただ、4連目の「見渡す」という言葉は主に地上の景色などに用いるもので、「空」に対してはほぼ使うことがないので若干の違和感を感じます。そこは「見上げる」のような言葉を使ったほうが、天上から降りてくる「天使の梯子」のイメージにも合うように思います。また、詩には暗喩(メタファー)もよく用いられるので、「いわゆる」という言葉を入れると説明的と受け取られることもありますから、これはなくてもいいでしょう。
でも全体的に、人生の哀感や寂寥と、その中に宿る美しさを感じさせる詩だと思います。
1/15 「銀雪華」 上原有栖さん
今回は初めてとなりますので、感想のみとさせていただきます。
夜の雪の美しい情景が目に浮かぶような詩ですね。
叙景詩的な要素の強い作品ですので、主に表現についての感想を述べさせていただきます。
「銀の光を放つ幾何学模様の花びら」というところですが、実際には雪の結晶の幾何学模様は肉眼でははっきりとは見えません。ですからこの表現は顕微鏡写真などを見たことによる知識が前提となるものです。でもそれがかえって、雪を華と観る「雪華」という言葉の美しさを強調してるようにも感じられていいと思いました。「美」ということが、見られるものと見る者の内面との相互作用によって生まれることが表されています。
そして、「同じ銀色の満月が見下ろす丘で」は、満月の雪への慈しみを感じさせ、「きらりきりり」という表現は、輝きの中に宿る緊張感を上手く表していると思います。
また、「顔佳草」(かおよぐさ)とはカキツバタまたはシャクヤクの別名なのですね。知らなかったので勉強になりました。ここでの場合は「白く美しい」とありますのでカキツバタのことなのでしょう。でも「顔佳草」とは美しい名前なのでこちらのほうがいいですね。
ただ、タイトルが「銀雪華」というやや硬い言葉であり、「音を奪いしその貌」といった文語表現も混じえている一方で、
「さあこの世を白く染めよう銀雪華/見たくないものはこのまま隠してしまえば良いさ」というところは、ややくだけた感じで話しかけるような表現となっていることに、若干の違和感を感じました。これは個人的な意見なのですが、引き締まった緊張感のある詩にするか、くだけた感じの詩にするか、どちらかに統一したほうがいいと思います。
緊張感のある表現にするならば上記のところは、「この世を白く染めよ銀雪華/見苦しきものは隠してしまえ」みたいな感じにしてはどうでしょう。
でも、全体的に美しさに満ちた詩で、末尾の、
「この夜の黒を何処までも
白く儚く染め上げるのだ」
というところは、締まりが効いていていいと思います。
1/16 「ロッカールーム」 荒木章太郎さん
お久しぶりです。以前、初心者向け詩の投稿掲示板でお会いしましたね。ここではしっかりと感想と評を書かせていただきます。
とても内省的な詩ですね。自分自身の存在意義、自分はこの人生で何を為すべきなのか、といった問いを感じさせる詩だと思いました。
でもその内省と同時に、夢の中の「登場人物の顔はすべて私」であったり、「目を開いて他者を映すことで/お前の世界は前に動く」というところから、自分という存在は他者との関わりの中で成り立っていることへの自覚、あるいは他者と関わっている生きてゆこうとする意志をも感じます。
表現に関しては、巧みなものがいくつも観られます。「通勤電車で左右に揺られ」ることが、「進むことも戻ることもできず、/ただ運ばれる体」を上手く表しています。
また、「ヒト型に膨らんだ私をしまい込み」というところは、プライベートから仕事へのペルソナの交換を感じさせます。そして、「へその緒のような命綱のコードが/床の闇から襟元に伸びていたこと」というところは、実際に生きてゆくための現実とのしがらみを彷彿させます。また、「古い神話が今日を侵食していく」というところも、内省が日常を侵食する様子を美しく表しています。
ただ、その次の「サイレンが鳴る緊急警報」ですが、巧みな表現がいくつもあるが故に、相対的にそこの表現がやや凡庸に見えてしまいます。サイレンの音の鋭さを表すならば、「鳴る」の代わりに「突き刺さる」や「切りつける」といった譬喩はどうでしょうか。
また、詩の流れという観点から観ると、サイレンや緊急警報は全体の内省的な雰囲気とやや異質で唐突な感じがして、若干の引っかかりを覚えます。この行は作者自身の内省への警鐘でしょうか。その前の部分とつなげる何らかの表現があったほうがいいように思います。
でも最終連の、「扉の向こうに広がる道が/光の中で待っていた」という表現は、日常の中に希望を見出すような美しさが感じられて、とてもいいと思います。
評については、巧みな表現が数多くあるのですが、全体の流れということを踏まえて、今後の期待を込めて厳しめに、佳作一歩手前ということにさせていただきます。
1/16 「枯れない花瓶」 温泉郷さん
今回は初めてとなりますので、感想のみとさせていただきます。
対話の形式をとった詩で、入りやすいのが特徴的だと感じました。
しかし申し訳ないのですが、タイトルにもある「枯れない花瓶」が何を指しているのかよくわかりませんでした。
参考のため前作の「新年を聴く」と、前々作の「空間概念」を拝読したところ、これら二つの詩では何を表現したいか分からない、というところはありませんでした。
それでも自分なりの解釈を書いてみようと思います。花瓶に挿した花はいずれ萎れ枯れてしまいます。この世に生を受けたものは皆、いつかは消え去ってしまう宿命を負っています。花瓶とはそのようなものである花を入れるもの、あるいは下から支えるものです。枯れない花瓶とはこの世の形ある命を超えて生死を繰り返してゆく、個々の命の根底にある形のない生命のはたらき、あるいはそのはたらきを感じ取る感性のことではないでしょうか。そして「花瓶も枯れる」とは、そのはたらきや感性が鈍ってしまうことを指しているのではないかと、そんなふうに考えました。
でもこの解釈は、無理にこじつけた理屈のような気もします。それは、今回の作品が前2作に比べて、主題に関しての描写や表現があまりに乏しいためのようにも思えます。
「涸れない花瓶」ではなく「枯れない花瓶」という発想は独創的で、とても面白いものだと思います。温泉郷さんは前2作のような美しい詩を書くポテンシャルをお持ちのようなので、今回の作品についても、もっとイメージを膨らませて、再度抒情豊かに書かれてみてはいかがでしょうか。
1/16 「妄想の海」 相野零次さん
今回は初めてとなりますので、感想のみとさせていただきます。
内面描写を主体とした詩のようですね。妄想の海に沈んでいたいのだけれども、どう足掻いても浮き上がってしまう、というのが印象的です。
この詩のキーワードとなるのが「役割」であるように思います。ここでの「役割」とは一般的に言われるような、社会の中や人々との交流の中で果たすものではなく、全ての生命が持つ交換不可能な「かけがえのなさ」のようなものなのだと受け取りました。そうであるからこそ「妄想の海へ沈むことができる」重りとなり得るのでしょう。
また、2連目の詩を書いたり読んだりすることについての「脳の深い底の方が刺激されるよう」という表現は独特で面白いと感じました。しかし、この連と、全体を貫く「妄想の海」との関連がやや薄いようにも感じます。例えば上記の表現について、「妄想の海への海図」とか「妄想の海への水先案内」みたいな譬喩などを用いて、そこをつなぐような表現を入れてみてもいいでしょう。
そして、内面描写を主体としていながらも、まだ若干表層的な感じもします。「秘められた何かを掴むことこそが妄想の海での役割」ということや、「永遠の覚醒が〜死と呼べるものかもしれない」ということが、どういうことなのかもっと突き詰めて考えて、様々な譬喩を用いて表現したり、「どう足掻いても浮き上がってしまう」ことと、重みがあるからこそ「想の海へ沈むことができる」こととの対比をもっと鮮明にして強調したりしたほうが、詩に深みが出ると思います。
でも冒頭の、「男は日々 何もしたいことがなかった」というところに共感する人は少なくないと思います。その共感に応えるような深い詩にしたほうが、人々の心に刺さるのではないかと、そんなふうにも思いました。
あ〜
男子はこれから溜め池に行って
食用蛙を採って来るように
一人二匹以上な
先生はみなに指示した
理科(生物)の授業で使う
実習材料の調達だ
捕まえて来た
大きな食用蛙をクロロホルムで眠らせ
解剖に供した
蛙の腹にメスを入れると
腹の中は複雑な迷路のようだ
心臓がドクンドクンと動いて
生命の躍動を示す
蛙の鼓動とシンクロ
自分の心臓もドキドキして
手が震えた
生命をわが手で扱う 怖れ
神の領域に踏み込んだ
畏怖の念
ギャーと
校庭で黒い鳥が鋭い声をあげた
天に帰る蛙の魂を
弔うようだ
誰もが蛙の死を哀しんだ
*
よし そこまで
蛙はこの容器に入れて…
いきなり先生は
バケツに集めた蛙の胴体を鷲掴みして
バキバキとねじ切った
そして
太ももの皮を剥ぎ
用意していた七輪で焼きはじめた
みな あっけに取られ
先生 そりゃ酷いよ!
と詰(なじ)った
馬鹿を言うな
ひとつの命を奪ったんだ
責任を持って食べてあげなくちゃいかん
それに
こんなに美味いものはない
みんなも食べてみろ
先生は炭火で蛙を焼き
ひっくり返して醤油をかけ
齧りついた
口から蛙の足が出ている
それを見て
眉をひそめる者
真っ青になって見ている者
吐きそうな顔の女子もいる
勿論
食べる者は誰一人いない
先生は蛙の太ももをほうばりながら
あ〜美味いなあ
このことは親御さんには言わないように
他言無用
いいな ガハハ!
先生の豪快な笑い声が
理科室中に響いた
食料事情の悪い時代を生き抜いて来た
蛙先生
逞しさの片鱗を垣間見たのは
舌鼓を打った
まさにその瞬間だった
じいじがめをつむった
めをつむっているけどわらったかお
いたそうではなく つらそうでもない
じいじはもううごかない
いま じいじはてんごくにいきました
わたしがうまれてからかわいがっとくれた
いつもだっこしてくれた おんぶしてくれた
いつもてをつないであそんでくれた
わたしがないているとみかたになってくれた
わたしはじいじがだいすき
じいじはわたしのことだいすき
「じいじ てんごくでもわたしをすきでいて」
「わたしはずっとじいじがすきだから」
じいじのかおをみているとかなしい
なみだがいっぱいでとまらない
じいじにだっこしてほしいな
「じいじ いままでありがとう」
男は日々 何もしたいことがなかった
だから男は 妄想の海の底に沈んでしまいたかった
だがそれは出来ぬ相談だった
どう足掻いても浮き上がってしまうのだ 目が覚めてしまうのだ
意識の覚醒は男にとって喜びではなかった
いつまでも微睡んでいたかった
詩を書いたり読んだりすることが男は好きであった
脳の深い底の方が刺激されるようで
その感覚が心地よかった
しかしそれも一日中できなかった
とても疲れるからだ
疲れたなら休めばよい
詩を書いては読んでは疲れて眠る
それが男の休日の主な過ごし方であった
妄想の海へ飛び込む毎日のなかで
男は何かを考えている
その何かが男にはわからない
未知なるものが秘められている
その秘められた何かを掴むことこそが
妄想の海での役割だ
男には他の生きとし生けるもの全員がそうであるように
この世で与えられた役割を背負っている
その重みからは逃れられない
だからこそ妄想の海へ沈むことができるのだ
その重みが無ければ男には永遠の覚醒が待っているのだろう
それはあるいは死と呼べるものかもしれない
男は生きている
役割を背負って生きている
そのなかで妄想の海へ飛び込むことは
男のささやかなしかし大いなる喜びなのだ
「枯れない花瓶」ですか?
冬にはアネモネを
春にはミモザを
夏にはトルコキキョウを
秋にはケイトウを挿したいのです
この花瓶に挿した花は枯れないのですか?
いえ いえ
そうではなく
この花瓶が枯れないのです
花瓶に挿した花はもちろん枯れますが
この花瓶は枯れません
挿された花が枯れても
この花瓶は枯れません
だから
「枯れない花瓶」というのです
花瓶はもともと枯れるものではないでしょう?
いえ いえ
そうではありません
花瓶も枯れるのです
枯れた花瓶に花を生けても意味がないのです
ですが この花瓶は枯れません
だから「枯れない花瓶」というのです
是非 お買い上げください
都合の良い夢ばかり見ていた
夢を見るために働いていた
今日一日の糧を得るために
通勤電車で左右に揺られ
進むことも戻ることもできず、
ただ運ばれる体
会社に着いてロッカールーム
ヒト型に膨らんだ私をしまい込み
作業着に着替える
最近気づいた
へその緒のような命綱のコードが
床の闇から襟元に伸びていたこと
(ずいぶんとアナログだな)
デジタルな携帯を置き去りにして
目の前の鏡が灯台に見えた
昨晩の夢が再生される
動画配信のように一万再生
愛した人も友も家族も
登場人物の顔はすべて私
これが現代のナルキッソスか
古い神話が今日を侵食していく
サイレンが鳴る緊急警報
上空では天使が輪を描き
歌う
「災いが君を目覚めさせ
苦しみが君を前へ進ませる
上に行けば舞い上がり
下に行けば絶望の淵
目を開いて他者を映すことで
お前の世界は前に動く」
鏡から視線を外すと
扉の向こうに広がる道が
光の中で待っていた
今日は定時に上がるとするか
寒風が吹く冬の夜に
小さな小さな雪華が咲いた
銀の光を放つ幾何学模様の花びらは
同じ銀色の満月が見下ろす丘で
きらりきりりと輝いている
ふと辺りを見回せば
彼処にひらり
此方にふわりと華が舞う
音を奪いしその貌はそれぞれ
闇に揺らめいた焔であったり
はたまた天から落ちてきた箒星のようで
白く美しい顔佳草にもどこか似ていた
さあこの世を白く染めよう銀雪華
見たくないものはこのまま隠してしまえば良いさ
咲き誇る華は幾重にも重なり合い
この夜の黒を何処までも
白く儚く染め上げるのだ