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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

作って楽しい子猫石けん 紫陽花

こねる こねる 
真っ白い紙吹雪みたいな
石けん素地をボールに入れて
こねる こねる

ほんの100gの
ちいさな体

ぽとり ぽとり
甘い香りの子猫になるよう
ダマスクスローズのオイルを
ぽとり ぽとり

ほんの10滴で
ふんわり香る

まぜる まぜる
パステル三毛猫になるように
カレンデュラにローズマリー
まぜる まぜる

ほんのひと摘みで
やさしく色づく

なでる なでる
かわいい子猫になるように
三角耳をぴんと立てる
なでる なでる

仕上げにジュニパーの目を入れると
子猫はにゃーとあくびをした

編集・削除(未編集)

翡翠  秋乃 夕陽

バスから降りた途端
ざあーと襲いかかるように雨粒が落ちてきた
薄緑に茶色のフリルのような模様の傘を
急いで差して
目の前の喫茶店へと一直線に走った
大きなガラス張りの洒落た白い喫茶店の
ギシギシ軋む木製の扉を引いてみると
柔らかで落ち着いた間接照明の中で
居心地の良さそうなソファが並んでいた
どれも緑を基調として
花と葉が金で刺繍されたものだ

「お好きな席へどうぞ」
店員さんの声に誘われて私は窓側の席に座る
どれを頼もうかメニュー表と睨めっこしながら
しばし悩んだが
5時を少し回った頃にも関わらず
腹の虫がグゥーと鳴った
店員さんを呼んでチーズハンバーグ定食と
ホットコーヒーを頼んでから
しばし揺蕩う
ぼんやり
ぼんやり

数分前までの混雑したバスのなかで
頭上から浴びせかけられる外国語を聴きながら
おしくらまんじゅうのように
押し合いへし合いしていたのがまるで嘘のようだ
そしてバスに乗り込む前には
大学構内の試験会場で
社会保険労務士試験の設問に頭を悩ませながら
鉛筆で解答を黒く塗りつぶしていたのだ

私は時間に追われ
霞がかった自らの脳みそに対して叱咤激励しながら
なんとか全問は答えたのだが
もしやある一定の設問に対して勘違いした答え方を
してしまったのではないかと思うと
自信はみるみるうちに萎んでゆき
なんとも情けない気持ちとなって
バスのなかで人混みに紛れてそっと涙を流した

ところが今は喫茶店の大きなガラス窓から
滝のように流れ落ちる雨の情景を見ながら
それすら感じずまるで解放されたよう

そうこうするうちに
先にホットコーヒーがやってきた
砂糖とフレッシュを入れ
かき混ぜてからひとくち啜ったのにも関わらず
口の中に濃い苦味が広がる

チーズハンバーグ定食もやってきた
ひとくち食べては
まるで霞がかかったかのようにうっとりと
とりとめのない夢幻の世界に誘われてゆく
明日は書き溜めた詩をまたどこかに投稿しようか
そんなことを考えながら

心穏やかに流れてゆく時間が忙しさとは無縁の
至福という翡翠の輝きを秘めているようだった

編集・削除(編集済: 2024年08月30日 17:03)

卑屈な精神  荒木章太郎

卑屈な精神は
朝の日差しを屈折させて
泥水に乱反射して
とても綺麗だ

が、しかし、
吹き溜まりとなった言葉が
俺一人だけ虚しく響き
谺のようだ
勝手に思考を反芻させて
無駄な時間を費やしていた
牛はもっと生きるために反芻している

が、しかし、
真っ直ぐになりたい
これまでみたいに猫背だからと
卑屈にならない
猫はもっとしなやかな背骨を持っている
俺の背骨は固まったまま
堂々巡りで堂々と胸を張れず
物事進まぬ卑屈な精神

(が、しかし、と続けることで、真っ直ぐな
気持ちのノイズとなって伝わらないのだ)

反省して「が」を「蛾」に
書き替えてみたら
蛾は夜のコンビニへと
羽ばたいて行った
卑屈な精神の中に隠れていた
生きる欲動が放たれたようで
とても綺麗だ

物事が少し進んだところで
次に「卑屈」を「非靴」に
書き換え「非靴に非ず」とした
靴を履くか裸足で行くか悩んだ末に
小難しい事やろうとしないで
靴は磨いて履くことにした
なんだか気持ちが真っ直ぐ伸びた

真っ直ぐなことが寂しいなんて
言い訳しないで
胸を張って行くことにした
靴はこなれて不靴になった
靴を捨てて裸足なろうと卑屈にならずに
裸足の心で行くことにした

卑屈な精神は不屈の精神へと
変わりつつある

*真っ直ぐなことが寂しい:種田山頭火「真っ直ぐな道で寂しい」を参照した。

編集・削除(未編集)

公平な太陽  温泉郷

晴れた夏の日の痛い光線
フィヨルドのような輪郭で
のんびり広がっていた雲が
メタリックに変色し
幾何学模様に変わる
線や角や面が現れ
あるものは直方体に
あるものは円錐に
あるものは三角錐になって
結合したり
分離したり
している

あまりにも暑い一日

通りの両側の建築群
高架
自動車 バス
鉄柱 ポスト
そういった
硬いものの
直線や角や面の
輪郭が歪み
紅く緩やかにとろけて
地表に広がったり
染み込んだりしている

あまりにも暑い一日

地上を吹き渡る風の声は
人の声にも似るのに
平たく延びるだけで
空には届かない
空は地上を見ても平気だ

照りつける太陽は
上空では旋盤機
地上ではバーナー
公平さを欠いている
ようではあるが

太陽の上には
もっと高いものがいる

暑い 暑い
一日だ

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ここにあらず  理蝶

笑顔は空に似せると綺麗なんだ
しなやかな肉を
血で引っ張らないで
わきあがったものだけを信じて

赤錆の街にも 君は綺麗で
平気そうに立っている
ふうに見える

ペテンの要領を 
自分に試しても
君は 君に吹く風を
無視することはできないんだよ

どんなわがままも
許される夜があっていい
傷つき方を選べなかった
悲しい星で

君のうつくしい頬が
守られるために
何ができるだろう

夏のおとずれを教えよう
長い雨だって慈しもう

僕としてもおそれず
僕の話を逃げずにやるよ

心と事物のちょうど間に
焦点をもってきて
どちらも淡く見つめて
ここにあらずで越えてゆく

僕鈍くなってゆくから
いろんなことに
気づかないようにするから
そうやって
越えてゆくから

つまらない なんて言わないで

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青島様 評のお礼です

今回も読んでいただき、その上アドバイスまで頂けて嬉しいです。ありがとうございます。まだまだ半人前以下のわたしですが、評の中のアドバイスに勇気と創作意欲を頂いております。
ありがとうございました。

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カレンダー

カレンダーをめくり細かく破く
まるでこの1ヶ月が無かったかのように
細かく細かく破き千切る
どうせ過ぎ去った日々
どうせ大した事など無かった一ヶ月
働き 食い 眠り 酒を飲む日々
ゴミ箱に投げ入れようとした手を止める
ハッと思い部屋の中にばら撒いた
そして細かな紙切れを一枚一枚拾い上げる
そうだ 今月はアイツとの結婚記念日があったんだ
忘れた事を懺悔するように
紙切れを拾い上げながらアイツに謝った
もう何年過ぎたのかな………突然逝きやがって
悪かったな………忘れて
悪かったな………忘れてて
何十枚目に拾い上げた紙切れに思い出の日付
日付の下の空欄に『結婚記念日』の文字
忘れてなかったみたいだよ
大した事ない一ヶ月だったけれど
大事な事を思い出せた一ヶ月だったよ
俺は着替えて花屋に向かった
まだあるかなアイツの好きな芙蓉の花

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「ゴーギャン  天気がよくて  きょうも いいやつ」

ピカソ アビニョンの娘
マティス 生きる喜び
ふたり 踊るとき
世界 喜び
ゴッホうれしい
わたし あかるい
あなた あかるい
ゴッホ ゴーギャンとともに
楽しく いきる
みなみフランス
テオ ごめんね
おかね おくらせて
兄ちゃん ゴーギャンと 頑張れる 気がする
南フランス
日本に似てる
わたし元気に
いつも笑顔で
キャンパス塗るの
テオのお金で買った絵具
また使わせて
テオごめんね
兄ちゃん頑張る
ゴーギャンとともに
ここは南ふらんす
ゴーギャン
天気がよくて
きょうも いいやつ

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青島様、評のお礼

青島様、お礼が遅くなり申し訳ありません。このたびは私の作品に評をくださりありがとうございます。
感想に困る作品であったと思います。ご迷惑をおかけしてすみません。青島様がすごく言葉を選びながら感想を書いて下さったのがわかり、申し訳なくなりました。
「あなた」ではなく「あいつ」を使うというのはなかった発想でした。今度試してみたいと思います。ご指摘の通り、かなり感情がたかぶっている時に書いていたので、全体的に未熟であったと思います。お恥ずかしいです。
またよろしくお願いいたします。

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戦争体験  静間安夫

誰だって その体験を
話したいと思って
話してる人はいない
書きたいと思って
書いてる人もいない

決して思い出したくない、
できることなら
記憶から消し去りたい、
そんな出来事の一場面、一場面を
あえて呼び起こし
言葉を絞り出しながら
語り、あるいは書く―
こうした作業が
その人の精神にとって
どれほどの負担になることか

ある人は
飢えと渇きに苦しみながら
密林を彷徨い
ある人は
爆撃機の音が轟き
焼夷弾が降り注ぐ中を
炎に追われながら逃げ惑い
ある人は
死に瀕した戦友を
なすすべもなく
見送るしかなかった―

そうした記憶のどれもが
自分だけが生き残ってしまった、
という負い目と
分かち難く結びついているのだ

だからこそ
これらの体験は
自分の心の奥深く
忘却の底に沈めて
しかるべきではないのか?
なぜ今、その人は
他者に対して話そうとするのか?

そのうえ
苛酷な体験を伝えようとする人は
答えのない問いに悩まされている―

経験した当人にしか
わからないこと、知り得ないこと、
これほどに日常から隔絶された
言語に絶するような経験を
他者に伝えることなど
果たして できるのだろうか?
中途半端にしか伝わらないとすれば
命を落とした人々への冒涜にはならないか?

それだけではない…
これほど苛酷な事実を
若い世代に聞かせることで
彼らの人間への信頼を
失わせることにならないか?

若い人たちの人生に対する希望に
暗い影が射すことにはならないだろうか?
もし知らずに済むことならば、
あえて話す必要などあるのだろうか?

こうした問いを
日夜繰り返しているのだ

それでもなお
自問自答の末に
その人が語り、
また書こうとするのは
いったいなぜなのか?

その
止むに止まれぬ理由を
他者としてのわれわれが
推し量ってはじめて
体験を受け継ぐ出発点に
立つことができるのだ

それなくして
マスコミの常套句に倣って
「戦争体験者の高齢化に伴い
 戦争の記憶の若い世代への継承が
 課題になっています」
などと
決して安易に言うべきではない

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