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編集・削除(編集済: 2026年05月30日 02:08)

歴詩篇「水の如し」 三浦志郎 9/19

如水は―
やや冷遇されていた
太閤秀吉は言った
「あやつに大禄を与えれば わしの天下を奪いおるわ!」
彼にとって
小禄はむしろ誇り

彼にはー
同僚にして政敵がいた
(“きゃつ”の肉を喰らい千切りたい!)
―とまで思っていた

政敵は義の
如水は利の
世界に生きている

政敵は
持ち前の義を鳴らし
明らかに次の天下を狙う家康相手に
この国全土で戦に訴えた
如水はこれを好機と捉え九州で
第三勢力を成し あくまで
利を求めた 
(頃はよし あわよくば天下を……)

   *

歴史は時に一日で結着する
如水の憎んだ男はもうこの世にはいない
義戦を起こすも敗れ斬首

すでに亡き者を
今も憎むほど
彼 そこまで人非人ではない

家康 覇権握る
同時に如水の天下夢想も消え
世は平静
ある日の茶飲み話に
かつての政敵の本質を語った

「あの男は亡き太閤に何よりの馳走をしたよ
それがあの男の成功  それが義というもの
志とはそういうことさ」

水のように語った
相手は政敵の
密かな愛妾
今は尼姿

   *

義といい
利という
どちらが
気高かったか
どちらに
人は走ったか
彼は観てきた
義に
叫びたいほど憧れながらも
利に
黒くまみれて生きて来た
そんな経緯から
彼は政敵を
心の何処かで
迎え入れたのかもしれなかった

   *

黒田如水
壮気の頃はけっして水のようではなかった
悪党だったかもしれない
客気(かっき)に満ち
謀(はかりごと)にも溺れた

すでに そんな事どもには
達観した歳になっている

どれもみな 
一期(いちご)の佳き想い出

今は版図を嫡男に託し
村人と共に酒を酌み交わし
童女と共に手毬唄を唄う

気ままに過ごし
静かな終わりを迎えるだろう

今はその本懐 
「水の如し」




                   黒田如水……豊臣期、筑前国(現・福岡県)の大名。


********************************************

参考文献  司馬遼太郎作 「関ケ原」 フィナーレのくだり。

九月十五日(旧暦)に関ケ原の戦いがあった。

編集・削除(未編集)

禁忌  aristotles200

古鏡、古刀、勾玉
何れも
側に置くものではない

無神論者である
それでも
なにかが宿る、祟る、護るを
感じる

不可思議な存在を
否定出来ない
禁忌の圧を感じる

今の時代
古鏡や古刀は出回らない
危ないと思うのが勾玉だ

新品か古品か、磨けば不明
古い勾玉などは
魔が玉とも呼ばれる

人が日常に身に着け続ける
人の思いを吸い込む
喜怒哀楽を積み重ねて
七千年間
縄文時代から造られてきた勾玉
どれだけの人の思いが
積み重なっているのか
幾人もの手で、触り続けた遺物

美しい魔が玉に
どれだけの
人の思いが秘められたのか
鳥肌さえ立つ

世の中に禁忌はあると認める
私たちの積み重ね、歴史を
一族の連なりを
心から尊ぼう、感謝しよう
そして
遺物に近づくことはない

私は、私の思い
これだけで生き、死のうと思う

   ✳

ご先祖は
鎌倉時代にまで遡る一族
時の幕府に
討伐され、首を跳ねられた
代々の直系に伝わる
拳くらいの勾玉がある
 父の死とともに
やむを得ず引き継ぐ

口伝では
勾玉の色は変わる
父の代は蒼色
祖父の代は朱色
それぞれが
不思議な力を与えられた

手に握る勾玉は
瞬く間に色を変えていく
やはり
どす黒い血の色に
怒りと憎しみ、復讐を

一族に伝わる、呪物の力が漲る
額から生えるのは醜い角
いざ、遺恨を晴らそうぞ

業とは深く
消えることはない
これが、私の連なりなのだ

編集・削除(編集済: 2025年09月19日 14:46)

青島様 お礼です 上原有栖

今回も丁寧な感想と評を頂きまして誠にありがとうございます。
私も子供の頃はコーヒーに憧れたクチです(笑)
CMで湯気が立つホットコーヒーを、かっこいい俳優さんが香りを楽しみながら飲む姿がとても印象に残っていました。

ご指摘の「泥水」の連発は、見返してみると確かに少し勿体なかったですね……!
表現方法について再考してみたいと思います!

最後のパフェで、背伸びしなくていいんだよ。無理しないでいいんだよ。という事をユーモアを混ぜて表現出来たのは、今までより成長できたと思いました。ありがとうございます。
また次回の投稿の際もどうぞ宜しくお願いいたします!

編集・削除(未編集)

フォレスト  上原有栖

 「一緒に向こうに行きましょ?」

後ろから聞こえる優しい 声
僕が振り返ると黒髪の女性がこちらを見ていた
彼女が指差すのは向こうに生い茂る 森
僕はいつも彼女から声をかけられる

「知らない人にはついていっちゃいけないって母さんから言われてるから行かない
それにあの森には魔女がいるって聞いたよ」
僕は相手を見つめながら早口で言った

 「そっか」

彼女は微笑んで
森の中へとゆっくり歩いていく
僕の事は諦めたようだ
その姿を見送ってから僕は学校へ向かった

******

僕はお母さんとふたり暮らしだ
昔はお父さんも一緒に住んでいたけれど五年前に出かけたっきり
帰ってこなかった
それからお母さんは僕に辛く当たるようになった
文句を言うだけならマシな方で時には暴力が僕を襲った

でも学校から帰ってきた僕を見るなり母さんはいつも泣くんだ
 ごめんね ごめんね 
 さっきは叩いたりしてごめんね
 嫌いにならないで 嫌いにならないで
 私にはあなただけしかいないの許してちょうだい
そう言いながら僕をぎゅっと抱きしめていつも咽び泣くんだ
だから僕も母さんを優しく抱きしめて言うんだ

「分かってる大丈夫だよ ねえお腹が空いたよご飯にしよう」

そしてまた次の日になると母さんは同じように大騒ぎをする そんな日々が延々と繰り返された

******

ある日帰宅すると僕を見つめてお母さんが呟いた
 
「あなた黒髪の女に会ったの?」

僕は何も言わず頷いた
次の瞬間頬に鋭い痛みが走った 叩かれたんだと気がつくのに時間がかかった

 「あの女は魔女なの!悪い魔女なのよ!あの女がお父さんも連れていったの!」

お母さんは狂ったように叫びながら僕に暴力を振るった それは永遠に続く悪夢のようだった

******

気がつくと朝になっていてお母さんはもう出かけてしまったようだ
ヒリヒリと痛む頬を擦りながら僕は通学路を歩いていく

 「一緒にあっちへ行きましょ?」

後ろからまた優しい声がする
振り返るといつものように黒髪の女性が立っていた
彼女が指差す方向には魔女が住むという森が━━━

 僕は考える━━━━━

お母さんと黒髪の女性 魔女なのはどちらだろう
僕はしばらく何も言わず彼女を見つめていたけれど
ニコッと笑ってゆっくり手を差し出した
それを見た女性もクスッと笑って僕の手を握った それからふたりは何も喋らず歩いていく
木々生い茂る森へ 黒い森の中へ 
ふたりは歩いていく
森の木々たちがザワザワと恐ろしげな音を立てている吹き付ける風が沢山の枝を揺らしている
その音はまるで僕のことを呼んでいるようだった

そのままふたりは手を繋いで深く暗い森の中へ消えていった
その日から通学路を歩く少年の姿を見かけた人はいない そして黒髪の女性も消えた
少年がそれからどうなったのか黒髪の女性はいったい誰だったのか もう誰も知ることができない

******

その後この辺りでは独り言を呟いて彷徨う女性が現れるようになったという
彼女は道を子どもがひとりだけで歩いていると奇声を上げながら追いかけてくるらしい
やがて人々はその女を黒い森の魔女だと噂したのだった 

編集・削除(編集済: 2025年09月19日 07:04)

嘘つきキツツキ   晶子

誰かが枯れ井戸に落ちる音がした
僕は駆けつけて覗き込んで言った
「大丈夫?」
「大丈夫」
元気がないけど声が返ってきた
助けなくちゃと紐を垂らした
「元気出して」
でも短過ぎたみたいでその子には届かなかった
もう少し長くしようと思って
「君は優しい良い声をした良い奴だよ」
と言ったけど
それでも届かなかった
「ぼくはきみみたいなやつとであえてしあわせだよ」
やっぱり届かなかったけれど
その子はクスッと笑って
「俺たちまだ会ってないだろ」
と言った
これはもう何が何でも助けなくちゃと思って他所から借りて来た
「ちからをもいれずしてあめつちをうごかしめにみえぬおにがみをもあはれとおもはせをとこをむなのなかをもやはらげたけきもののふのこころをもなぐさむるはうたなり」
でもその子が紐を握ることはなかった

僕は少し疲れてしまって
井筒にもたれて
話続けた
風のこと
匂いのこと
好きな子のこと
嫌いな子のこと
今日のこと
昨日のこと
井戸から出てきた時のこと
話疲れて
最後の方は
ただ側にいることを伝えたくて
井筒をトントン叩いてた
「君はキツツキか」
その子が聞いたから
「あぁ、そうだよ」
と答えた
「だったらここまで降りてきてくれよ」
「それは無理だよ、横にしか飛べない」
と僕は答えた
それから声は聞こえなくなった
もしかしたら手を伸ばしたら
神様が頑張りを認めて
届かせてくれるかも知れないと思ったけれど
滑って僕まで落ちそうになったから
僕は家に帰った

もしかしたら井戸の中では
横穴が出来ていて
そこからあの子が出て来られて
声がしなくなったのなら
そうだったら嬉しいな


※ ちからをもいれずしてあめつちをうごかしめにみえぬおにがみをもあはれとおもはせをとこをむなのなかをもやはらげたけきもののふのこころをもなぐさむるはうたなり
『古今和歌集 仮名序』より引用

編集・削除(未編集)

水無川 渉さまへ ご感想のお礼です。  人と庸

水無川 渉さま
こんばんは。拙作にご感想いただきありがとうございます。
私は偏頭痛もちです。月に1回程度ですが、その日は何もできなくて悔しいです。少しましになってきたけれど、まだいつもの活動まではできない状態で見る、夕方の部屋のカーテンの色が、私にとってはなんとも言えないのです。
「心に迫ってきた」とおっしゃっていただけたり、表現を取り上げてくださってとても嬉しいです。
また投稿しますので、よろしくお願いいたします。

編集・削除(未編集)

紗野玲空さまへ 評のお礼です。  人と庸

紗野玲空さま
こんばんは。拙作に評価をしていただきありがとうございます。
たまに坐禅の真似事をするのですが、(体が硬くて足は組めませんが…)坐禅のしかたを検索すると、坐禅中は呼吸を数えて精神を集中させるのだと書いてありました。1連目に「よこたわる」としたのは、寝る前に横になりながら行うというマインドフルネスがあるのを、ユーチューブで見たので…。
過去や未来のことばかり気になって、「いま」だけを感じることって少ないなぁと思います。
深く読み込んでいただき、紗野さまの美しい言葉でお褒めいただき、嬉しいです。
佳作をありがとうございました!

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悲劇の中の恍惚

何で空は綺麗なんだ
俺の心は こんなにも曇っているのに
もうすぐで 雷も落ちそうだ
その時、俺は ここから逃げる

誰も助けてくれない
俺も誰かを頼れない
それは静かな戦い

周りは俺を蔑むが
俺は知らないフリをして
ただ 耐える

ある日、俺は
土砂降りの中を帰った
傘はなかった

いよいよ 惨めだったが
それでもやっぱり
俺は ただ 耐えていた

何で耐えているんだろう
希望なんて ないくせに
俺の雲が
真っ黒になりかけていた

本当は、俺も
皆のことを蔑んでいたんだ

こんな奴らーー
俺がその気になればって
本当は 大した奴らじゃないって

だけど、徐々に
雨も降ってきて

現実と精神
両方とも土砂降りになって
俺は ただ 感じていた

愉しさを
悲劇の中にある恍惚を

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飛行船  Ema

ゆらぎのない おだやかな空の日に
存在しないであろう 飛行船を探している

いつのまにか 
私の世界からこぼれ落ちていたから
さよならを言えなかったんだ

ちっちゃな乗り物を手に入れて 向かうところ敵なしだった私が
ゆったり街々を俯瞰するあなたに出遭うことは
雨上がりの空を伝う虹に歓喜することよりもずっと
日常に寄り添っている 特別な出来事だった

うたた寝をさそう空に あなたをみつけると
その小さな三つの車輪でよたよたと走り出した

もちろん あなたに追いつけたことはない
だけど飛行機よりもずっと近くて
どうしてだか 届きそうだった

黄色い通園かばんをたずさえて 会話が幾分なめらかになったころ
あなたのその円暢(なだらか)なお腹に人を乗せることはないと知る
ふうっとひと吹きしたしゃぼん玉のように
日々際限なくふえるかわいらしい夢のひとつが
ぱちんっとはじけた

大きな赤いランドセルを背負いはじめると
外は教室の窓たちで固定されて
空は極端に狭くなった

日常の大半の青空は同じ画角になる

それでも 学年が上がると 二度三度
その枠の中の遠くに あなたを見つける

もちろん あなたを追いかけはしない
窓際の席に着く私の
心だけが 走り出していた

最後にこの目に映したのは
いつだったのか

あなたには あの高揚感には  
きっともう出遭えないんだろう

さよならを言わなかったから

この空とつながっている
 遥か 遥か遠く
もう届きようのない空で
あなたは悠々と泳いでいる


そう
こうやって
喪失感に手を伸ばしている 
今日だって

日常に溶け込んだ
些細で重要なひとかけらと
さよならした日かもしれない

編集・削除(未編集)

紗野玲空様 評の御礼です。 社不

紗野玲空様、ご感想ありがとうございました。
丁寧に読み解いていただいて、感謝しております。
自分が言葉に出来なかったことも、言葉にしていただいた気がしています。

また精進して行けたらと思います。

編集・削除(編集済: 2025年09月17日 19:05)
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