MENU
158,853

しのべるおりのうた 暗沢

 拵えるべきは 何なる面か 
 来たる祭祀を 前にして

いまや薄ぼやけた 模糊たる日差の照らす下(もと)
赤赤赤と氾濫する 二重映しの反映を
無垢に捉えるには 目がかすむ

 雲と連立ち高く失せた 青さが既に懐かしい

夥しい彩りから 歌を紡ごうと覚えたものだ
並(な)べて美(よ)き織物を 陶然と夢見たものだったが
その実紡錘(つむ)へと導く糸は 触れる指を黒く穢した

 錦繍の色彩は なにより染まる色であったか

ふる鎌の刈る垂穗の粒が 嬰児の頭に見えたのだ
末枯れる葉の細やかは 女たちの指である
路傍に敷かれる彩色は 血糊と脂膏の惨憺たるか

 死者の妬みが輝きに そう歌った詩人がいたっけ・・・・

これは如何なる気付きか 或いは錯乱?
累する折々の歌とは 他ならぬ歔欷
織り上げられた錦繍より 滴っているのは血?

 執り行うべき祭祀とはなにか
 祀る神とは なに

何なる神を迎えんや かの来たるべき祭礼に
如何なる貌で迎えらん かの祝うべき祭礼を
いや隠せ 隠せ その訝しげな相貌は その

 青褪めた相貌は 面を拵え隠さねば

ぼくは大笑いの面を作ろう 兎でもいいかもな
波立つ黒山の傍で大人しく 杵でも突いているとしよう
突いているのは餅でなく穀だが 望むなら
千々の穢れた片々も 玉(ギョク)ときらめくかも知れない
そうまでしてやっと ぼくも見出せよう

 赫々たる糜爛の赤とは異なる相を
 その光彩を

紅栄え 黄色(おうしょく)充つる
絢爛極まるその錦繍を紡ぐ営為に
ぼくも嬉々と加わろう
鼓腹撃壌(こふくげきじょう)の拍子を以て

目眩む七彩の循環は非同心円状の螺旋を描く
その華々しい脈動を感受する恍惚と喜悦を ぼくは
私は 彼等と共に高吟する

 渦中真っ只中でも外れない
 留金のような紐が面には必要だ

そうして
私はやっと参与が叶うのだ その
瞬息と悠久の間にて休む事なく
顫動を続ける 
狂宴めいた引継ぎに

や これは困った仕上がったものの 
急拵えの面ゆえか ぽっかりと
黒目があいてしまっているな
もしも穴の縁周りが濡れていたら
露のせいにでもしておこう

 筆に用いた忍ぶ草は
 豹問蝶の死床(おちばのやま)へでも捨てておこう

 いまは しのべるおりのうた

編集・削除(未編集)

摩耗  理蝶

もう飽き飽きだよね?
時代の隙間に逃げ込もうか
片親の眉間に穴を開けようか
黒い波間に溶けてしまおうか
ねぇ、どうしようかしら。

流行り歌にも
私の明日を諭されるの
誰にも何にも
私に触れないで、な夜

高嶺の花の生えるという山の
麓の村に
生まれたのよ私

あなたは待ってなさい
って言われて
生きてきたの私

言葉はね、言葉だけはね
私を救うと思ってたの

でもね、言葉はね
体からはどうしても
離れられないの
こびりついてるの
それを言った人の
香り、罪、親の影、
そんなものまでもね
全部がね
こびりついているの

あぁ、パブロフでも政府でも
何の犬でもいいから
私を冷たく飼い慣らして
私に明日を言いつけて

さもなくば私
みんなわかってるけど
言わなかったこと
みんなに触れて回るんだから

そうしてみんなの苦い顔見て
思いっきり笑ってやってから
都会の藻屑になってやるのよ

もう飽き飽きだよね?
時代の隙間に逃げ込もうか
片親の眉間に穴を開けようか
あなたの夜逃げの邪魔をしようか
ねぇ、そうしようかしら。

編集・削除(未編集)

張りぼての牛  荻座利守

商業ビルの
屋上に造られた
大きな張りぼての牛は

降りしきる
雨にうたれ続け
虚しいほほえみを
うかべながら
両の眼から涙を流して

造られたものが
またたく間に消え去るような
つくも神のいなくなった
この世界を
独り寂しく見おろしている

人により
造られたものどもの
朧な魂は
蒸発する今という時の
下がりゆく沸点に
追いたてられるように

巷間の雨風に流されて
永遠に忘却される過去へと
その影を薄めながら
拡散してゆく

人生という時の一部
命のひとかけらが費やされて
造られたものどもに込められた
造り手たちのあえかな魂は
触れる間もなく消えゆく
雪のひとひらのよう

つくも神の
いなくなったこの世界で
ほほえみながら涙する
張りぼての牛

その虚しい瞳は
造られたものの儚さとともに
造り手たちの命の儚さをも
見つめているかのようだった

編集・削除(未編集)

齋藤純二様  まるまる

一度くださった評についての訂正コメントをご丁寧にありがとうございました。
私都合で5日間もMY DEARを開けず、返信が大変おそくなってしまいました。
改行については、PCやスマートフォンではいろいろな事が起こることの一つなのかも、と思いながらも、再投稿いただいたことで、自分の改行で大丈夫だったようで、よかったです。「何となく/私が言った」と直していただいたことはしっかり確認しました。
余分にお時間もお手数もかけていただき、恐縮です。少しでも楽しんでいただけるものが出せるようやっていきたいです、本当にありがとうございました

編集・削除(未編集)

ガットギターの孤独  エイジ

深く沁み入る
ガットギターの音
君は君の孤独を
その音色で埋め合わせているんだね

僕の心に響くのは
君が作ったギターの小品
日本人離れした音の影
君はひっそり弾いている

僕に浴びせておくれ
ギターの音色を
君の孤独を包むがいい
朗々と歌い上げておくれ
君の孤独を受け止めてあげよう

最後の煙草を吸い終える夜
君のガットギターがなぜか
妙に心に沁みる夜
君は君の孤独を
僕は僕の孤独を
その音色で埋め合わせている

編集・削除(未編集)

秋の嵐 麻月更紗

秋を告げる嵐が
夜のうちに去っていった

物干し竿に水滴だけ
残して

頭が痛くて
耳がきーんと詰まって
とにかく眠たかった
体が
ふっと軽くなっていた

空にはいわし雲
風は冷たくなっていた

台風は
ぽっかり
私の中の何かも
連れ去っていってしまった

編集・削除(未編集)

青島様、お礼

青島様

この度も評をありがとうございます。
アドバイスも、ありがとうございます。
確かに安直に言葉に頼りすぎているなと思いました。
手直ししてみます!
ありがとうございます。

編集・削除(未編集)

ダメージジーンズ  妻咲邦香

一度きりのハプニング、じゃ満足出来ない
大事なものだから丁寧に
注ぐ
注ぐ
だけど
もういっぱいで溢れそう

そっと持ち上げて光に翳す
わかってた
わかってなかった

歯車も外れかけ
だから、嘘つきになるしかなくて
ずっとそれで生きていく
楽になりたい
それだけかもしれない

大人になったら怖いものが増えた
ダメージジーンズ縫われかけて
奪い返した母の手
似た者どうしはお互い様
同じ線路を歩いていくんだ
覚悟を決めよう
笑ってごまかして
ついでに裏技自慢して

後のことは知らない
明日の風は待てない
同じ夢、何度も見過ぎて
いい加減擦り切れた
私ばかりこんな役目
八つ当たりしたい
優しくさせないでと祈る

好きだと言うよ
好きかどうかはわからないけど
好きだと言わなくちゃ
破裂しちゃいそうだから
好きだと言うよ
今から言うよ
今じゃないと駄目だから
明日にはきっと少し冷めてる
そしたらこれ以上無い悲劇だよ

いいから言うよ
言いたくなくても、勝手に出るよ
私のせいじゃない
誰のせいでもないけど
貴方のせいだよ

全く酷い人
大嫌いだよ

編集・削除(未編集)

鏡  cofumi

君は僕の中に
何を見つけたいんだい?
じっと奥のそのまた奥
そう真っ暗なトンネルの先を
見るような目つきで
じっと ただじっと
僕が写せるのは 今の君だ
寝癖ではねた髪
歯磨き粉が残ってる口の端
一週間は着てるパジャマのままで
突っ立ってる君の姿

「どうして」と 大粒の涙をこぼし
クシャクシャの顔を
手で覆い膝を抱える
冷えかかる心で
部屋を灰色に染めながら

外から聞こえる
少女の可憐な笑い声は
君には聞こえないようだ

インスタントコーヒーを
喉に流し込んだら
君はため息みたいな埃を
被ったままの革靴を履くんだ
諦めたようにドアを閉めながら

「仕事はどうだい?」
そんな問いかけをしてみる
鞄を投げるようにソファに置き
誰も居ない天井を睨みながら
うまくいかない事に
自分を失いつつある君

笑顔の君を僕は覚えている
子供の頃から大事にしている
ブリキの車がある事
スマホを見ながら
ワクワクした顔をして
誰かに電話をしていた事も知っている

君は不幸じゃなくて
幸せを味わってる途中なんだ
全てがマロンケーキみたいに
甘いわけじゃない
レモンのような酸っぱさも
唐辛子のような辛さも
幸せの味だ

僕は君の笑った時の歯が好きだ
いつも丁寧に磨いてる
その歯を明日は見せてくれ

編集・削除(未編集)

羽化  Liszt

夏の朝
木陰に古い衣装を脱ぎ捨てて
清々しい大気の中へ
飛び立っていくものよ
わたしはあこがれる
おまえたちの一途さに

短い命であっても
あらん限りの力で
晩夏の歌を響かせ
この世界を賛美し
やがて土に還っていくものよ
わたしはあこがれる
おまえたちの潔さに

外敵や子供たちの網に
捕まることがあろうとも
危険を顧みず
美しい羽で野山を飾り
この世界を彩るものよ
わたしはあこがれる
おまえたちの勇敢さに

羽化し飛び立った おまえたちは
「なぜ」と問うことなく
神の摂理のままに生きていく...
願わくば わたしも
この世界を
あるがままに受け入れたい

夏の朝
真新しい羽をきらめかせながら
飛び立っていくものよ
わたしはあこがれる
おまえたちの一途さに


水無川渉様

 Lisztと申します。どうかお目を通して頂ければ幸いです。

編集・削除(編集済: 2022年10月20日 19:26)
合計1748件 (投稿1748, 返信0)

ロケットBBS

Page Top