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予報が外れて雨が降った夜
ずぶ濡れの幸運
勢いに任せて部屋へ連れ込んだことを
神さまは許してくれるだろうか
出逢ってまだ三ヶ月
運命なんて陳腐な言葉は信じていない
けれどこの気持ちは
一目惚れとしか言いようがなかった
横顔を見て
天使って本当にいるんだ、と思った
脱衣所の暗がりで着替える音が響く
「背中、見られたくないから」
その言葉と衣擦れが
火照る耳を刺激する
騒々しいテレビは早々に消した
夜が深まると
周りの音が呼吸(いき)を潜めていく
横になり手と頬で触れて感じた
あなたの背中
布越しの皮膚は砂のように硬くて熱い
すべてを知りたくて
背中を見せて欲しいと頼んだ
細く息を吐くと
あなたは寝間着を上へと捲っていく
乳房を隠しながら
髪を掻き揚げ顕になった背中には
白い羽模様の痣
大きく広がる羽痕が━━━
醜いでしょ、と微笑む仕草に
わたしの心は堕ちた
『天使って、やっぱりいたんだ』
今日から運命を信じることにした
〇 奇妙な生い立ち
近江の地侍 石田正継
戦国大名浅井家にしばし仕えた
その祖は一説に
相模国 石田郷(現・神奈川県伊勢原市付近)の住人なり
その祖は一説に
木曽義仲を討ち取った
三浦流・石田次郎為久
その功により近江石田村を与えられ という
正継の嫡男は早逝
二男は正澄
この度生まれた三男は
後の石田三成
実は―
双子なり
双子なり
この二人の幼名
佐吉(兄)といい
佑吉(弟)という
〇 秀吉と出会う
佐吉(右利き)
佑吉(左利き)
一卵性双生児
この時代 双子と左利きは共に忌避された
当時、先に産まれた方を弟とし、後に産まれた方を兄とした。
父・正継は思案の末、石田家菩提寺・観音寺住職・清湖和尚に、ある事を依頼する。
「当家にて三男が生まれた。ただし双子だ。而して願いあり。ひとり、寺男(てらおとこ)
として使い養育願えまいか?弟の佑吉と申す」
住職清湖和尚の思惑
(石田殿の依頼なり。どこぞの浮浪児を拾って雑用をさせ育てし、その理由で事は済む)
住職は承知した。
長じて名を三成という
当然ながら瓜二つ
ただし 性格はまるで違う
佑吉 寺に預けられ 育つ
武家で左利きは由々しきこと
寺で右手に矯正された
(この乱世に片腕を失っても片方が使える武家の習いでもある)
佑吉、織田信長の臣・羽柴秀吉と出会う。狩りの帰りの秀吉へのもてなし。
三度その都度湯の熱さを変える細やかな心づくし。三献の茶。
秀吉、その配慮に感じ入り、佑吉・三成を居城・長浜に召し出した。
ただし 父・正継の意向により
秀吉に差し出したのは(兄・佐吉)三成のほうだった
後年 秀吉政権の中枢は
切れ者(兄・佐吉)石田三成に託された
〇 政権下の二人
やがて石田三成・双子兄弟。佐吉・佑吉の役割分担のようなものが成立する。
兄・佐吉は多く大坂にあって秀吉の側近。豊臣政権に参与する。
弟・佑吉は秀吉から与えられし近江・佐和山十九万石の領地を差配する。
(兄・佐吉三成)
その才幹により
豊臣麾下の多くの大名に畏怖される
(弟・佑吉三成)
その慈悲により
多くの領民に慕われる
三成・双子の事実を知るのは
父母・正澄兄・菩提寺住職清湖和尚の他
石田家三人の重臣のみ
島 左近(しま さこん)
蒲生備中(がもう びっちゅう)
舞 兵庫(まい ひょうご)
それぞれ武勇に優れ 加うるに
島……軍師 その智謀 神の如し
蒲生……家臣団の掌握力あり
舞……家政・領土経営力あり
佐吉・三成が豊臣政権下で重んじられたのは
佑吉・三成が領地で統治よろしきを得たのは
本人たちの能力もさりながら
前記 三家臣の働きがあったからだ
三人 それぞれ 両・三成と誓詞を取り交わしている
* * *
つづく。 次回は7/3。
学生の頃
三人グループで連んでいた
放課後には
寄り道をして遊んだ
それが いつしか
私以外の
二人だけで
行動するようになり
疎外感を覚え始めた
静かに去るしかなくて
友達が居なくなった
誰かが言っていた
三人グループは難しいよね と
強がりではなく
友達なんて要らない と思った
然し 口惜しかったのは
彼女等の就職先が
一流企業だった事
疎外感は膨らみ
二人から 嗤われていると
被害妄想に苛まれた
更に 私は病んで
人々が笑っていると
自分が馬鹿にされていると思い
専門医の門を叩いた
今なお 通院は続いており
被害妄想こそ落ち着いたが
代償として
物事に感動しなくなって
冷血漢と思われて居そうだ
相変わらず 友達は居ないが
色々あって 沢山の仲間に恵まれた
ロンリーとソリテュードの狭間を
必死に泳いだ末に
漸く視えた光だ
そして私は 冷血漢ではない
いつもありがとうございます。掲示板住人・三浦志郎でございます。
さてこの度、原稿用紙約17枚分の“長編歴詩”が出来てしまい、どのように発表・掲載すべきか、苦慮しておりましたところ、
島 秀生氏よりご好意ある許可を頂きまして、毎週金曜日1回、計5回連載の運びとなりました。 さっそくで恐縮ですが、6/26の三浦評担当日を起点とし、7/24の三浦評担当日を最終回としたいと存じます。つきましては、他の評者様エリアを通過することになりますが、必ず「評なしで」の一文を入れます。利用スペースが増加するのに加え、モチーフの傾向値もかなり”傾いた“ものであると自ら認識しております。それらを含めまして、ご迷惑をおかけしますが、事情ご賢察の上、何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、章立ては以下のようになります。
* 6/26 第一章 7/3 第二章 7/10 第三章 7/17 第四章 7/24 第五章
三浦志郎
この度も丁寧な評をありがとうございました。
前回連作形式を勧めていただいたので、構成を考えてみました。
とくに前半と後半の見え方の変化や、ラストの印象についてのお言葉は、自分でも改めて作品を見つめ直すきっかけになりました。
温かいご講評をありがとうございました。今後の創作にも活かしていきたいと思います。
雨のせいで消した予定
降り止まない音とズレた時の音が
水玉になって流れ込む部屋
狭い部屋はすぐにいっぱいになる
砕けた時と雨が溜まっていく
物憂げに漂う視線 落ち着く場所がない
退屈が泳ぐ部屋は海になった
すねて置物になった私を漂流者にして
窓を叩いては流れていく
雫、雫、滴
溜息の飽和 結露した窓
露、露、滴
雨の部屋の内には
飽和の溜め息
溺れた時と壊れた予定が
行き場を無くして
流れつ術なく漂うばかり
振り続ける雨は
雫、滴、雫
深い溜め息ついて
露、雫
窓の外に行き場を定めた
泳ぎ疲れた視線が辿り着く
外の水玉 闇色水玉
内は漂泊の白い水玉
オセロみたいに並んだ窓に
退屈が少し笑った
海は勢いよく水が引いて
雨降る浜辺の部屋に変わった
砕けた予定と時の音が
白い砂になっていた
一、檸檬
ビールには鶏の唐揚げがいちばん。
鶏の唐揚げには檸檬が欲しい。
わたしは絞ります。
あなたの分には、かけないけどね。
あなたは檸檬を掴んで
放り投げる。
リトルリーグの優勝投手の
美しい投球フォームで。
どこまでも飛んでいく。
檸檬色の雨を降らせる。
傘は持っている。
あなたの分はないけどね。
二、大根おろし
出汁巻玉子には
大根おろしが必要だ。
そうあなたは言うけれど。
ここはわたしの家で、
あなたはただの酔っ払い。
ビールか日本酒かと言われたら、
今は日本酒の気分かな。
熱燗でいこう。
卸し金をどうぞ。
大根もあります。
どうぞ命を削りませんように。
思い出すだけでも
冷や汗が出る
16年前のこと
子が産まれ
初めて
我が家に着いたとき
私の部屋の
床に布団を敷いて
そっと赤子を置く
家族が増えた
自分の分身が
ここで寝ている
心はそわそわ
どきどきと
準備万端で迎えたのに
色々と抜けがある
嬉しさと落ち着きのなさ
未知への期待と恐れ
と
私は動転している
どうする
どうすればいい
何が足らない
妻は疲れ果て寝ている
部屋から部屋
廊下、玄関
ばたばたと早足で歩き回る
脳内は
フル回転している
心は動揺し
ますます早足で歩き回る
と
下げる右足の
真下に
産まれて7日目の赤子がいた
無意識に
左足先に
思いっきり力を入れた
後先なしの
前受身を
書斎の机めがけて
跳ねる!
どん!
机にしがみつく
肘、膝に鈍い痛み
まだだ
床には赤子が寝ている
床に崩れ落ちないように
なりふり構わず
窓に向かって床を蹴る
額を窓に
ごん!
ようやく姿勢が落ち着く
大きな音に
目を覚ました妻が、部屋へ
無様に
机にしがみつく夫と
すやすやと眠ったままの赤子
ベビーベッドへの移動を
懇願し
妻子が部屋を移る
深く息を吐き
支えていた机ごと
床に倒れた
恐怖で青ざめる
本気で危なかった
全身から汗
あちこちに青痣
頭にたんこぶ
✳
あれから16年
55歳になっても
あれほどの危機は
一生一度もない
未だに
思い返すだけで
冷や汗が止まらない
学生時代の四年間
合気道を習っていた
受け身を
無意識に行ったらしい
今回は読んでいただきありがとうございました。
読み手に読み終わった後余韻を感じれるような、読み手それぞれに物語の結末を想像してもらいたいと思っていたので今回このように評価していただきとても嬉しいです。冒頭からその後の流れなど、指定していただいた事もとても参考になります。これからも沢山書いていきたいと思います。ありがとう御座いました。
拙作『花より雨に』へのご講評ありがとうございます。
花の眩しさと雨の静けさの対比や、「水彩の街並み」、ラストの余韻について触れていただき、大変嬉しく思います。自分でも大切にしていた部分でしたので、励みになりました。
ご指摘いただいた点につきましても、今後の参考とさせていただきます。
貴重なご意見をありがとうございました。