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編集・削除(編集済: 2026年05月30日 02:08)

雲の凱旋  人と庸

嵐のあとの雲は勇壮だ
すべてを捨てるように涙を流し
風に切られ日の光が差し込むと
明暗あわせ持つ深い表情が刻まれる

たたかいの空は広かった
その奥行きを確かめるように
彼らはゆっくりと行進する
さながら英雄たちの凱旋だ

英雄たちは東へと去ってゆく
自分たちの不在により
西の空をいっそう輝かせるために

捨てられないものがあるから涙を流す者たちへの
明日は晴れるという
約束だ

編集・削除(未編集)

睡眠時知的活動論(応用)  石川ぼうず

常人なら丸一日は起きてこない
そんな強い睡眠薬を僕は常用している
以前は不眠がひどく、それでも眠ることができなかった
一晩中、暗い部屋でエアコンの灯を見つめながら朝まで考える

シマウマのシッポの柄は縦か? 横か?
長年、疑問を抱えて生きてきた
夜になると「ふっ」と頭をよぎる
考え始めると止まらない
いろいろ思考をめぐらせる

アフリカに旅行に行った友達の友達によると
「アフリカにはシマウマがうようよいる」らしい
本当だろうか?
日本でいう野良猫のように
野良シマウマがいるという感じだろうか?
野良シマウマに餌をやった、やらないで
ご近所トラブルなったりするのだろうか?
そもそも、なぜあのような珍妙な白と黒の模様なのか?
もっと他に色を選べただろうに
さらに同じ白黒のパンダはかわいいと言われているのに
それにくらべてシマウマは……

いや、シッポの話だ

このように思考をめぐらせているが答えは出ない
家族は「ネットで検索すれば?」と言う
しかし、長年の疑問をそんな形で終わらせたくはない

縦か? 横か? どちらだろうか?
その研究は
今夜も進展しない

編集・削除(未編集)

帝釈天は象の上  三津山破依

蓮の季節に門をくぐる。
蝉の声が出迎える。
立派な枝垂れ桜は青いだけ。
その向こうの
五重塔を仰ぎ見る。
ソフトクリームには目もくれず、
講堂へと。

梵天は逞しく、
その下の鵞鳥は可愛らしく。

おずおずと進む。
大きな目をした大日如来は
たぶん私に微笑んでいる。
腰を掛け、暫し。
クーラーもないのに、空気は冷たい。

進むと、
お不動さまが睨みを利かす。
ゴメンナサイ。頭を垂れる。

象の上に座る帝釈天。

真っ直ぐに前を見る。
にやりと笑う象は
でっぷりとして、それはそれで。

私は少し左へ。
柱が邪魔をする。
あなたの角度をさがす。
腰に左手をあて、姿勢をただし、
右手には武器。
阿修羅さまを倒したという。

また会いに来ます。
桜のときに。
やっぱり
ソフトクリームを食べてから帰る。

編集・削除(未編集)

燻る  ゆづは

錆びついた水道の栓を回すと
青いポリバケツの底で
水が賑やかな声を上げる
ぬるい水しぶきが
黒いスカートの裾を重くした

雑草を踏みしめて歩き
墓石の前へと辿り着く

柄杓の水を傾ければ
ジュワリと音を立てて
御影石に張り付いていた
真夏の翳りが溶けてゆく

風が吹くたび
線香の火はかき消され
指先は灰を纏った

手を合わせ 目を瞑る
唇からこぼれ落ちる
透明な言葉は 
土の底へと沈みゆく
 
木々がざわめき
葉擦れの向こうに
いつかの笑い声が混じる
柔らかな光が
睫毛の先で揺れていた

一礼をして 歩き出す

スカートの裾は乾き
あの指先だけが
まだ
燻っている

編集・削除(未編集)

神話(シン・ファ)  上原有栖

かつて世界はずっと狭かった
獣に怯える夜が長く続いた
今よりも食べ物は少なく
冷たい風が身体を引っ掻いた
われわれは粗末な家で寄り添い
温めあって生き抜いた

動物や木々たちと
今よりもっと近しかった時代
生活に光が溢れていた
見えない神様がそこかしこで踊っていた

遠くの森の向こう
稲妻の山のずっと先から
知らない人々がやってきた
黒い骨を纏い違う言葉を話す者たち

彼らは私たちより多くを知っていた
われわれは栄えるために選んだ
残りは捨てた
最後まで残った欠片を物語にして
老人は子供たちに伝えた

このような出来事が
幾千年
あらゆる場所で繰り返された
生き残るためには仕方がなかった

伝承はこれからも続いていく
われら一人一人が紡いできた
あの日から始まったのは 神話

編集・削除(未編集)

33rpm 虹乃 衣里絵

なだらかな曲線が
一周しては 始めに戻る
と 見せかけて
少しずつ 内側にずれている

表面には 無数の溝
と 見せかけて
溝を辿れば 一本のはず
確認した訳ではないが

再生すれば 規則正しく回転し
時折 プツッと鳴る音が
実に味わい深いものだが
それを嫌う人も居る

針を置く時の 儀式にも似た緊張
今思えば 醍醐味であった
12インチの宝物は
アルバムの名に相応しく

然し 時代の流れと共に
次々と 手放してしまったり
大切に仕舞っておいたものも
いつの間にか 処分されていたり

遂には 再生装置までも
人手に渡ってしまい
宝物は 幻と消えた
残ったのは 想い出のみ

暖かみに富んだ音色
心の中で 反芻してみる
只の懐古趣味でなく
感じるのは ノスタルジー

あの頃 あの手順が特別だった
12インチの宝物
取り戻せるものならば
私の楽興の時よ 忘られぬ

編集・削除(未編集)

菜食放免  竹中ゆうすけ  評不要

一度
歩み始めたら
決して
振り返ってはならない

たとえ
不作為の批判に取り囲まれても
盛夏の声を遮ることに努めながら
永遠に特別であれ



乾燥させた大豆をフライパンで煎る暮れに
夕陽が 薄味の憂いを伴い 横切ってゆく

高蛋白なレンズ豆は
玉葱やニンジンと一緒に煮込めば 旨味が出る

優しい甘みを特徴とする緑豆は
お米と一緒に炊くと 朝の体にあつらえ向き

大きめの紅花隠元は
若い莢と一緒に軽く塩茹ですれば
オリーブオイルが最高の相方になる

ひよこ豆を
トマトと一緒にスパイシーに煮込んだら
ナンとの相性は抜群
魅力はホクホクとした食感だ



でも
豆は豆
一つひとつ 固有の種に分類できても
(どれだけ 香ばしく 調理できても)
やがては
総じて
豆でしかなくなる………端から そう であったように

×

未だ 呼び起こされない〈記憶〉を持つ 者たち

カラフルに 翔び跳ねる 高邁な悲壮が ぼんやりと………

忘れかけた祈りに どうか 火を 点け給え!

÷

カラカラになって 先っぽがささくれた葉葱が
倒錯した大衆の気休めに 抱《だ》かれて揺らぐ頃

安らかに差し込んでくる熱線が
窓の辺《ほとり》で艶やかに 踊り始めた仕舞い口《ぐち》

国際社会の歪《ひず》んだ条理
未調整の塩加減
情を拗らせた青物
無気力な喧嘩

どれもが
芽生えたばかりの
眩く輝く
灰汁
だった

今や
湿った天上の
父の袖を通り
ダビデの
城壁から
愛の
血潮として
清まり

 き
  出
   し
  て
 い

編集・削除(編集済: 2026年08月10日 23:08)

還るときは来ていない  光山登



水、だと思ったものはただの砂の雫だった。

「この世に新しいものは何もない」

遠い昔に生きた賢者の言葉がリフレインする。
この砂に覆われた最果ての地で
僕がこのまま干からびるのも、何度も繰り返された事象に違いない。

僕の身体はもうじき「いっさい」のもとへ還る。
それは時間と空間を与えられたことにより、一時的に「いっさい」から切り離されたに過ぎない。
与えられた時間が終われば、「いっさい」に戻るべきときが来る。


けれども、脳裏に浮かぶのは仲間たちの声。
恩師の優しいまなざし。
そして、この世で愛し尽くした人の笑顔。

姿形は変わっても、いつかはまたどこかで巡り会える。
それがわかっていても。

ーー僕はこの世でこの身体であの人に触れたいんだ!

僕は砂の上に右手の爪を強く立てた。
まだ身体は動く。

ーーまだ還るときは来ていない。

僕は歯を食いしばって砂の上から立ち上がった。
それから再び水を求めて確かな足取りで歩き始めた。

編集・削除(未編集)

バラッド  上原有栖

庭の縁側で
語らるるじいじの昔ばなし
人生百年
ぼくにとってはお伽ばなし

酸いも甘いもぜんぶ
顔の皺に刻まれとっとる
光の破片が夜空を揺らして
炎の竜巻が家を焼いた日
そりゃあもう
幼いじいじは怖かったと

今の子供は幸せだろうて
遠くを見る目は
少し寂しい色をしていた

かつての日々があったから
いまがあるのだろうか

今年も秒針が刻まれる
あの夏と同じ八月が過ぎてゆく

編集・削除(未編集)

魔人   相野零次

僕はこの世界を優しく崩壊させたかった
ゆっくりと魔人の手が球体を握りつぶしていくように
それにはあと何百万年もかかるらしいけど
そんなに急がなくてもかまわない
ある日 地球の回転が止まってしまったので
朝昼夜がなくなりました
仕方なく人類は自分たちで地球をうごかせる装置を作りました
それを魔人の一人に頼み込んでうごかしてもらって現在があるのです
それがだいたい百万年前の出来事らしいです
魔人は一万年まえ頃から知らないあいだにそこにいて
無数の建造物を作りました
モアイやスフィンクス、万里の長城、東京や五重の塔、
金閣寺や銀閣寺 通天閣やスカイツリー、世界遺産もだいぶ作りましたね
代りに魔人は人間の魂を要求しました 魔人は無敵ですが
やっぱりお腹も空くのです それで日本も何十年か前に戦争を
しましたね、今の人よりも昔の人の方が戦争していたような気がします 
領地争いですかね 
地球は半分以上水なのに領地争いしてたらそりゃあたくさん死んじゃいますよ
魔人が海に沈んだ陸地を持ち上げようとしているらしいです
でもそれも何万年単位でかかるから
今の人間の寿命や科学技術だと後世に伝えることすら難しいです
そもそも人間なんて魔人からみればアリンコぐらいのサイズですから
地球を一気に5回転ぐらいさせても誰も気づきません
魔人が何をしたいのかは現在に伝わっていません
けれどはっきりしているのは
魔人よりも我々人間の方が先に死ぬということです
いつのまにか夜です 魔人は夜を好みます 
だいたいが黒っぽい体色をしています 
まじんはかぐや姫とよく晩酌するらしいです
それは見てみたいですね
そうそう、一番大切なことを言うのを忘れてました。
魔人なんかいないじゃないか! 
スカイツリーはにっぽんじんが作ったじゃないかってとこですね
あのですね、魔人は人間の内部に住んでいるのですだいたいは瞳の奥に住んでます 
瞳の奥は無尽蔵にふくらんでいて百万人ぐらい住めるそうですよ 
僕の瞳にも何人か住んでいます ええとたしかあの人は……山田さんだ
今、山田さんの顔と名前が出てきた人は確実に住んでますよ
脳内の記憶領域に住んでいるらしいです 
人の記憶なんて結構あやふやだから
あの人は佐藤さんだったかな森下君だったかなってよくなります 
あと魔人は自分が魔人だということに鈍感です
日本人だと10万人ぐらいが魔人らしいですがそのことを正確に
理解している人はいません
これだけ語っといて何ですが僕は自分が魔人かどうかわからないのです
じゃあなんで魔人がいることを知っているのか? っていうといつか見た夢の話なんです
夢は時間も空間も飛び越えて成立します 嘘がほんとでほんとが嘘です 
だから結局のところ地球を握りつぶしたいのは僕なんです

編集・削除(編集済: 2026年08月15日 19:48)
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