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〇 関ケ原
石田三成ら西軍が挙兵すると、徳川家康は上杉征伐を止め反転、豊臣大名をそのまま連れ西進した(東軍)。 両軍は岐阜・大垣等
で戦いつつ関ヶ原で決戦を迎える。関ケ原合戦当日の布陣図を見ると、西軍が完璧なほどに東軍を包囲している。
歴史に「If」はないのを承知で書くと、この地図通り戦が推移すれば、家康は討死にし江戸幕府は開かれず、歴史は全く違った
ものになっていた可能性もあった。結果は東軍が勝った。家康は西軍の多くを調略し、静観・不戦・裏切りの密約を取り付けてい
た。結果、西軍は実数の半分しか戦っていない。このあたりに三成の、戦略家、戦術家、人間としての痛点、限界があったのかも
しれない。ともかく関ヶ原はわずか一日で終わった。歴史一日の紙一重だった。
美濃 関ケ原 天下分け目
東西両軍約二十万 互角の戦い いやむしろ西軍優勢
そんな時に不幸は起こった
日和見をしていた小早川金吾中納言秀秋 突然の裏切り
攻勢で隊列の伸び切った大谷吉継の軍勢に襲いかかった
影響はたちまち現れた
結果 各陣 逃走あるいは崩壊
西軍 敗北
石田陣 ここも早晩 敵で蹂躙されるだろう
三成は先陣の島 左近の許まで駆けた
そこに弟・三成もいる 三人で合議しあり
その後 三成は舞 兵庫を伴い大谷陣に向かった
残った二人が拝跪して送り出す
痛恨の極み
それぞれ袂別(べいべつ)があったらしい
大谷刑部吉継、その戦いぶりは悲痛であった。病み衰え鎧をつけられず馬にも乗れない。
業病で崩れた顔を白布で覆い輿に乗り四人の武者に担がせた。失明の為、側近に戦況を聞きながら下知していた。その姿には鬼気
迫るものがあった。彼の名将の所以は小早川のもしもの裏切りに備え、あらかじめ別勢を控置させていた事だった。その部隊が小
早川を二度押し返している。
「三成 来たか 今日は“どちらの”おぬしだ?(笑) 」
「刑部 幸い おぬしがかつて存じよりの三成だ!」
「さてこそ 安堵した」
「戦は負けだ かねての約定通り 死出の誘いに参ったぞ」
「弟のほうはどうした?」
「落ちるよう命じた 再起を図らせる」
「それがよかろう さて そろそろだ」
「この戦 義戦として後の世にも語られるであろう それでよい」
「五助 首は穴を掘って埋めろ 敵に渡すな」
三成・吉継共に直垂のみの胸元をくつろげる。凄まじい気合いと共に刺し違えた。
三成を舞 兵庫が、吉継を湯浅五助が、それぞれ介錯した。両名は首を山中深く埋め、
主君の後を追い自害して果てた。
〇 左近
二番家老の蒲生備中は島 左近と共に常に先陣を担っていたが、東軍・織田有楽斎の軍と戦い討死していた。
すでに両翼の一角が崩れていた。
石田家が戦に赴く時、弟・三成は必ず島 左近の手に属した。今日もそうだった。
その時、弟は兜に必ず頬当(覆面)を付け顔を隠した。士卒たちはいつもの*陣借り牢人と思い不審には思わなかった。敗戦と決
まり兄は自害した。今はその死を嘆いている暇はない。彼は初めて頬当(覆面)を取り顔を晒した。兄の遺志を継ぐのだ!
*陣借り牢人……牢人の武士が他家の陣を借り
武功を挙げることにより仕官の道を目指すもの。
現在のフリーランスの「就職活動」のようなもの。
左近 言う
世間話でもするようにー
「蒲生も討たれました すでに負けでござるな」
“一人になった”三成に振り返る
「落ちられよ 兄・三成様の これは遺言です
大坂で再起を図られよ 源頼朝公の吉例もあり」
弟・三成は常に兄の影として裏の世界に生きて来た。影の任を解かれ、今晴れて真の石田三成として光の中に立ったのだ。
しかしその途端、今までの平穏は奪われ、敗残の石田家、傾き始めた豊臣家を背負わされるとは一体どういうことであろう!?
左近 思う
(不幸なお人だ 弟君……)
「左近 今まで世話になった!」
涙とともに
三成 一声 “左利きで”馬にまたがり駆け去った
(さて 殿を落とし参らせー)
左近 己の務めは全て果たした
あとは武名で世に知られた
“島 左近”の最期を飾るためだけにある
士卒に告げた
「今から 老賊 家康の首を獲りに出かける わしと共に死を望む者 前に出でよ」
皆 賛同でどよめき あまねくつき従う
左近 破顔一笑
「よし よし いよいよ わが配下 死が好みと見ゆる!」
即座に許した
「続け!何も難しいことは言わん 家康の首ひとつ獲ればよい!」
異様な軍団が動き出した
その後の
島 左近の行方 生死は
誰も知らない
* * *
評なしで。 つづく。 次回は最終回、7/24。
全てを喪った夜があった
世界から色が抜け落ちていった
空も地面も家々も
見つめる自分の掌さえも
灰を被ったようにみすぼらしかった
私はあてもなく歩いた
悲しかったからではない
この場所には未練があったのだが
ひとところに留まって居られなかったのだ
道を進み 坂を登って
ひび割れたトンネルを抜けた
見えてきたのは灰色の丘
色素の無い葉がさらさらと揺れていた
なだらかな斜面には
一本の枯れ木が生えていて
枝に火の鳥が止まっていた
世界は色を忘れてしまっていたから
翼に輝く飾り羽根も白黒だったが
紛れも無くそこには火の鳥がいた
甲高い鳴き声に魂が震えた
音が歌となって
冷えていた心を包んでいく
今までに貰ってきた愛情を思い出していた
鎮魂歌を聴きながら
次は此処に咲く花になりたい
そう願った私の意識は
細く 長く
糸のように伸び
最後は見えない線になって消えた
水無川 渉様
拙作「ありがとう」にご講評とご感想をいただき、ありがとうございます。
佳作とのこと、精進します。
666と18連目のご指摘、感謝いたします。
数字に関しては推敲の失敗(ベタベタです)、18連目は推移が足らずです。今後に活かします。
入れ替わりもの、以前作った詩のアイデアを使いました。こういう詩は、作詩していて気晴らしになります。今後増やして行きます。
今回も深く読み解いていただき感謝いたします。
次回も宜しくお願いいたします。
いつも拙作をお読みいただき、ありがとうございます。今回は「愛」という言葉を臆面もなくあえて使ってみることに挑戦し、ご指摘のようなストレートな表出となったように思います。それが詩として成立しているかについては甚だ心許ないのですが、いつものことながら私は出てくる(作ったではない)言葉を最優先させたい(完成度よりも)という趣向を持っており、今回はまさにそういう「蛮行」が功を奏したかもしれないなどと覚えております。重ねてありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
※止める
ネクタイを緩めたのは、
金曜日のこと。
滅多に使わない
ギターケースの埃を払い、
冷えたビールに感謝。
俺は月曜日を考える。
画面の中のあの娘は
気持ち良いくらいにこんがりとして。
知り合いの知り合いから
久しぶりに名を聞く。
あれから、
会ったこともなくて。
※戻す
たぶん、あなたは振り向いた。
わたしは
汗を流して、日差しを浴びて、
走り過ぎた。
まだ髪は黒く、
紫外線と勝負していた頃。
胸元のリボンは赤かった。
オンチなので、声は響かない。
土を蹴るスピードは単調で。
あなたのイヤホンから溢れ出す音楽を
わたしは掻き集め、
グラウンドで駆けまわる。
たぶん、あなたは雲を見上げた。
丁寧に読んでいただき、ありがとうございました。
夜と昼の対比や、「汗」が二つの章をつないでいる点など、自分でも意識していた部分を汲み取っていただけて嬉しかったです。
また、冒頭の時系列についてですが……。
一連目は回想シーンのつもりでした。ご指摘も大変参考になりました。読者により伝わる表現になるよう、今後に生かしていきたいと思います。難しい…。
水無川様へ
お忙しい中、また、暑い中拙作へのご感想をありがとうございました。
詩を編む事への自信を得る事ができました。また、丁寧な推敲の重要さを改めて知る事ができ、投稿して良かったと感じております。
改めまして、御礼申し上げます。
評者方々におかれましても、日々暑くなりゆく時候。どうぞお身体に気をつけて。
(星影 流)
お待たせいたしました。6/30~7/2ご投稿分の感想と評です。コメントで提示している解釈やアドバイスはあくまでも私の個人的意見ですので、作者の意図とは食い違っていることがあるかもしれません。そもそも詩の解釈に「正解」はありませんので、参考程度に受け止めていただけたらと思います。
なお私は詩を読む時には作品中の一人称(語り手)と作者ご本人とは区別して、たとえ作者の実体験に基づいた詩であっても、あくまでも独立した文学作品として読んでいますので、作品中の語り手については、「私」のように鉤括弧を付けて表記しています。
●aristotles200さん「ありがとう」
aristotles200さん、こんにちは。今回の詩も大変楽しませていただきました。駅に置かれた一冊の呪いの本。何気なく手に取った人がその本の中に囚われてしまい、それまで本に囚われていた人物と入れ替わってしまう、というストーリー展開が興味深く、しかも不気味ですね。
タイトルの「ありがとう」で明るい話なのかと読者に思わせておいて、詩の中でその意味が分かると背筋が寒くなる、という仕掛けも素晴らしいです。このタイトルの付け方はとてもうまいと思いました。
「66年6ヶ月」という数字は、聖書の黙示録に出てくる「獣の数字」666を意識しているのでしょう。これも本作品の不吉な雰囲気作りに一役買っていますが、あまりにも分かりやすくて、逆に安易な印象を与えてしまうかもしれないとも思いました。
第18連の「何処も/身体から痛みを感じない」は少し分かりにくかったです。これは語り手の言葉なのか、それとも本の中から出てきた人物の声なのか。語り手の声だとすると、本の中に入ってしまうとそれまで抱えていた痛みが消えてしまうということなのでしょうか。
以上のように気になった点もありましたが、特に重大な欠陥というわけではありません。最後の終わり方も不吉な余韻を残していて良かったです。評価は佳作です。
●三津山破依さん「夏の記憶」
三津山さん、こんにちは。この作品は二部に分かれています。パート1「花火」は夜の詩、パート2の「かき氷」は昼の詩と言えるでしょう。この二つのパートは主題的につながっているように思いました。
まず後半の「かき氷」から見ていきますと、何と言っても太陽を氷に見立ててそれをかき氷にして食べるという奇想天外なアイデアが秀逸です。暑い夏の日中に太陽を食べるのは苦行そのものですが、最終連の「流れるのは汗なのか。瞼を閉じる。」は哀愁を感じさせる終わり方ですね。おそらく流れたのは涙なのでしょう。
そして、その謎を解く鍵は前半の「花火」にあるように思います。ここではパート最終連で、「僕」と「彼女」のすれ違いが描かれています。何らかの親しい関係にあった二人だと推測できますが、両者の関係がうまくいっていないことを示して終わります。この失恋(?)の悲しみが後半の「かき氷」で描かれているのではないかと思います。つまり後半は前半で花火があった夜の翌日の昼の出来事を描いているのではないでしょうか。
この「花火」のパートは、全体として屋外で行われた花火大会を描いているだろうということは分かるのですが、細かい話の流れは追いにくかったです。特に初行の「誰かと二人、顔を上げた」のが誰のことなのかがはっきりしません。私の解釈では、「彼女」が「僕」とは別の誰かと一緒に花火を見ているのを「僕」が目撃したということかと思うのですが、だとすると時系列がおかしくなります。次の第2連で「僕」は駅から花火大会の会場に向かって歩いているからです。あるいは見てはならない光景を見て、帰途につく描写なのかもしれませんが、それなら「最寄りの駅から歩くしかない。」ではなく、「最寄りの駅<まで>歩くしかない。」となるのではないかと思います。評者の理解不足かもしれませんが、ここが分かりにくかったです。
このような難解さはありますが、全体の構成はとてもうまくなされていると思います。夜と昼、暗と明が対照的に描き分けられていますし、どちらのパートにも「汗」が登場して、両者をつなぐ役割を果たしています。夏のほろ苦い「記憶」を描いた、この季節にぴったりの作品だと思います。評価は佳作半歩前とさせていただきます。
●星影 流さん「瞳は語る」
星影さん、こんにちは。初めての方なので感想を書かせていただきます。
「目は口ほどに物を言う」という表現がありますが、まさにそのことを詩にした作品ですね。詩の中に登場する「私」と「あなた」は恋人同士なのでしょうか、いずれにしても親しい関係にある二人だと思います。口下手な「あなた」の感情をその瞳から読み取り、想像力を飛翔させて二人の関係を深めていこうとする「私」の深い愛情が伝わってくるような作品でした。
全体の構成もとてもきれいにまとめられています。2~5連は人間の「喜怒哀楽」に合わせて、この順番で配列されていますし、各連はすべて4行構成、連の中での展開のパターンも同じです。きっと時間をかけて推敲されたのではないかと思います。
私は特に第4連で、悲しい時の「あなた」の瞳を深い海に喩え、「私はその海に舟を出す」という表現が深く心に残りました。
そして最終連の「あなたの瞳とその口は、/まるで あなたと私みたい」という終わり方もいいですね。互いの違いを補い合う充実した関係性を感じることができました。
素敵な作品をありがとうございました。またのご投稿をお待ちしています。
●トキ・ケッコウさん「全力で君を愛するということ」
トキさん、こんにちは。世の中には愛をうたった詩は星の数ほどもありますが、この作品は一筋縄ではいかない「愛の詩」ですね。
「全力で君を愛する」という表現はこれ以上ないほどにストレートな愛の表現とも取れますが、一方でありきたりで陳腐な表現にも堕してしまう。そもそも「愛」という言葉自体が西洋キリスト教的な概念と結びついていて、日本人にはどこかしっくりこない。それを語り手は重々承知の上で、でも「全力で愛する」としか言えない感情が溢れてきてしまう、そういった複雑な思いが表現されているのだと思いました。
繰り返しの多い饒舌な語り口は人によって評価が分かれるかもしれませんが、本作に関して言えば、語り手の胸中をぐるぐる着地点もないまま回っている思いをよく表現していると思いました。
全力で君を愛するということ
それは愛するなんて蓮っ葉な
ことばでさえ愛するということ
だからこんなに難しいことや
悲しいことは
他にそうあるはずはない
という部分は特に心に残りました。評価は佳作です。
●竹中ゆうすけさん「放蕩」
竹中さん、こんにちは。初めての方なので感想を書かせていただきます。
この作品はおそらく、聖書に出てくる「放蕩息子」の話を下敷きにしているのだと思います。父の元を離れて遠くへ行った息子が放蕩三昧の日々を送る。彼は飢饉によって困窮した末に戻って来る。父は受け入れてくれないだろうから召使いにでもしてもらおうと思っていた息子の思いとは裏腹に、父は無条件で息子を赦し、家に迎え入れてくれた、という話です。
この詩はこの物語の骨組みを利用しつつ、作者独自の言葉でそれを再話していると言えると思います。聖書とはことなり、語り手が船で帰って来るという設定はホメロスの「オデュッセイア」、あるいはそれを下敷きにしたカヴァフィスの「イタケー」を思い起こさせます。
最終連の安らぎに満ちた終わり方もとても良かったです。素敵な絵(作者の自作でしょうか)と共に、心が温まりました。またのご投稿をお待ちしています。
●相野零次さん「天空マラソン」
相野さん、こんにちは。人間が地上の世界を離れて天に昇っていくというモチーフはいろいろな文学作品に見ることができますが、この作品では一風変わったSF風の味わいになっていますね。
「大気を固体に変えるシューズ」が登場したり、テレビ中継のヘリコプターがいたり、途中で宇宙服に着替えたり、宇宙空間に作られた道を歩いて月を目指したりと、面白いアイデアが次々と登場します。そしてゴールである月に到達する。月までの平均距離が約38万4,400キロメートルとして、この距離を秒速10キロで進むと約10時間41分かかる計算になりますので、「秒速約10キロ 10時間の道のりだった」という行は科学的にも正確な表現といえます(もちろん、詩は科学的でなくてもいいのですが)。
2点コメントさせていただきます。まず、タイトルが「天空マラソン」となっています。たしかに観客やTV中継があったりしてマラソン的道具立てが登場しますが、肝心のゴールまで「走る」描写がなく、実際には「歩く」描写になっているのに違和感を覚えました。つまり、内容とタイトルの間にギャップが感じられます。
もう一つ、私にとってより大きな問題と思えたのは、この詩のプロットが非常に直線的で紆余曲折がなく、読者としては驚きや困惑、挑戦といった良い意味での「ひっかかり」が感じられなかったことです。「僕」は科学技術の助けを借りて、特に大きな困難に直面することなく、月までの「マラソン」を完走して、ハッピーエンドに至ります。全体として、宇宙を徒歩で旅するというアイデアによりかかりすぎていて、いつもの相野作品の深みがあまり感じられなかったのが残念です。評価は佳作一歩前とさせていただきます。
*
以上、6篇でした。暑い夏がやってきましたが、みなさまご自愛ください。