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三浦様
「風立ちぬ」へのご評価をありがとうございます。
「夏休みの匂いがした」という感覚が一週間ほど頭から離れず、偶然、小学生の集団を見かけた時に生まれた作品です。
細やかに感覚と心情を読み取っていただき、大変嬉しいです。
佳作をいただき、ありがとうございました
いつもお世話になっております。
今回も感想と評をありがとうございます。
書き方も、内容もご指摘のようにいろいろと模索しております。
背景を描きたいけれど、書かない方が輝く作品というのもあるのだと実感いたしました。
日々の熱さに辟易としていますが、それすら詩のネタに昇華すればこのような作品になることに気が付きました。
生活にアンテナを張ってこれからもいろいろ学んでいきたいと思いました。(いやはや、とにかく横浜は毎日暑いです……)
次回もどうぞよろしくお願いいたします!
1 Mayさん 「風立ちぬ」 7/24
このタイトル自体が大変美しい日本語です。その採用を共に喜びたいと思います。
これは明らかに真夏の風物詩的なにわか雨です。さらにはプール帰りの子供たち、これも真夏、あるいは夏休みの定番的情景。これでキマリですね!全体を見渡すと、この詩は「雨・汗・水分」に覆われた詩なのですが、そんな中に、たった1行のみ、「立ち上がる風が乾かしていく」が、爽やかな矢のように入ってくる。ここですよ!乾かすですよ!この詩の本領はー。 続く「夏休みの匂い」もGood。短さもこの詩のキャラには似合いそう。今日も日本のあらゆる何処かで、行われている風景を伝えてくれたのです。佳作を。
2 トキ・ケッコウさん 「詩とは何か」 7/24
結論から書きます。僕はこの詩を支持することができます。理由は以下の如くです。「詩という対象について、健全なプライベート、健全なエゴイズムで書かれている」と思うからです。(注……エゴイズムは悪い意味では使いません。誰しも持っている“自己のありよう”とご理解ください)。前半部分の書きぶりも、なかなか唸らせるものがあります。特筆すべきは―。
「ともあれ詩とは何か/詩とは死か/いや死にゆくだけが生ではない/ならば/
この先に何が誰が待っているというのか」
僕が最も共鳴した部分を抜き書きしてみました。人は生を受けた以上、無為に死んではならない。よろしく何かを収獲して死ぬべきでしょう。それは仕事でも家族でもスポーツでも絵画でも音楽でも文学でも良いわけです。トキさんの場合、それが詩であると充分に推測されるのです。ここで、ちょっと面白いことを書いておきます。「何もしないで構わないとも思う」とありました。僕はこれをあまり否定しません。書かれた以上、これもひとつの見識と理解します。「心を虚しゅうして、詩の降りて来るのを待つ」――時に有効な方策にもなり得るでしょう。まあ、でもこれは「搦め手」でしょうね。作品は正統的に着地しています。これでいいはずです。佳作です。
3 上原有栖さん 「点描」 7/24
「気が利いている」という意味で、これはちょっと面白い書き方です。ひとつのアイデアと言っていいでしょう。どの連も準備なしにいきなり書き始めている。冒頭からして典型です。各連の主人公はどれも比較的、後半にわかる。同時に、どんな事態かがありありとわかる仕組みでもあります。
冒頭書いた感想の所以です。登場人物(?)は順に、油蝉・人間(私)・蟻ですが、こんなに暑くても、小生きものは懸命に、あるいは喜々として生きているのに、人間はなんと不平家であることでしょう!主人公も同感だったのか、気を取り直して起ち上がるのです。歩き続けるのです。これ、場所とか背景が書かれていませんが、無くてもいいような気がします。書くと、かえって興ざめかもしれない。タイトルもこの詩のアプローチに従って、一風、変わっています。「です、ます」調もよかったです。今までの書き方をちょっと変えてきた。そこも見ておきたい一作です。佳作です。
4 ゆづはさん 「エッセンス」 7/24
読み手というのは素直なもので、冒頭こう書かれると(はて?これは何だろう?)と思うのが人情というものでございます。それを想像しながら読むことが、この詩を味わう方法かとも思うのです。
まず現象から入り、それを受け入れる自分の気持ち、その表現としての手指のしぐさ。時に舌の上でも迎え入れられる。 書きぶりを見ると、けっして多くはないが、ひとつひとつが綺麗に落ちて行った、それは涙でしょうか。そんな抒情でしょうか。冒頭の「二ヵ月ぶり」と最後の「日々」は何か関係があるのかもしれない。それはともかく、女性らしいナイーブさといつも通りの儚げな詩行が作品を形づくっています。常にこういった雰囲気の詩が書けるというのは、テクニック云々ではなくて、人格的奥深くから湧き出ているように思えてなりません。佳作を、この調子でー。
5 三津山破依さん 「風に舞う」 7/24
「△上がる」―この書き方、いいですね。たったこれだけでも詩の気分がだいぶ違ってきます。
読みたくなってきます。うまいもんですね
さて、ビルに付き物のエレベーター。マンションにも勿論同様です。こちらには多少の生活感があるでしょう。その生活感を幻想として視覚化したのがこの作品。「紙ヒコーキ・シャツのボタン・猫・広告ビラ」互いに無関係ながら、そこにある無機質性のようなものが詩のキャラに相応しい気がします。特に秀逸なのは「▽下がる」の二連目。ところで、評者はマンションに住んだことがないので、イメージだけで書いて怒られるかもしれませんが、「人とあまり会わない、住んでるのか、いないのか」など、希薄な人間関係が浮かんだりするのですが、ここの連はそんなイメージもあって、少しシュール感、少し不気味感が味わえそうです。この詩を代表する連になりそうです。
ちょっと例を見ない“エレベーター幻想”。”あなたの隣にある現代幻想“そんな言葉が似あいそうです。このレアに佳作を。
6 飯干猟作さん 「天使篇 絵を描く」 7/25 初めてのかたなので、今回は感想のみとなります。
よろしくお願い致します。場面がユニークで面白いです。天使をモデルとして、その姿を絵に閉じ込めようとする、その悪戦苦闘ぶりがアニメ的でユーモアを感じます。おそらく、この「僕」は凄く純真な気がする。そんな言動がどこか可愛らしささえ感じさせるのです。天使の造形もいいですね。
時折入れて来る“合いの手”も適宜にして絶妙です。どこかアッケラカンとしたキャラもこの詩のムード作りに一役かってますね。思うように書けず時間だけが過ぎてゆく「僕」と、モデルとしてなかなかじっとしてられないオチャメな天使。そのあたりの駆け引きも読み所。読み手も天使がどんな顔、姿なのか想像する楽しみもあります。 また書いてみてください。
7 相野零次さん 「空」 7/25
「星空の値段」。何かそんな詩的なタイトルでも浮かんで来そうな冒頭連です。「ペルシャ絨毯」の比喩が興味を惹きます。ここは詩行配列上、やや重いので、好みに応じて二分割でもいいでしょう。ある日の夕焼けが子供の頃の思い出に繋がってゆく。
時にずぶ濡れで歩く。人は少なからず誰しも経験することでしょう。そして、抜けるような晴天をさまざまな形で味わう。
これからも空は相野さんにさまざまな形でアプローチするでしょう。
夜、夕、雨、晴。 空が持つそれぞれのスタイルを書き留め、それを「秘密」と名付けています。
この言葉は「魅力」と取ってもいいです。最後「隠している」とあるので、これからも相野さんは、
それを探しに行くのでしょう。甘め佳作を。
8 石川ぼうずさん 「そこにある壁」 7/27
割とありがちなモチーフなんですが、ひとつの習作として、あっていい詩でしょう。
自身の経験も踏まえて書くと、これは子供と大人の間にある壁を想像すると近い気がします。
心も身体も変わっていく、特に思春期にイメージしやすい課題のように思います。ただし、ここで少し気になるのは、「壁のこちら側に来ることを拒む、あるいは攻撃的な言動がある」点です。
そうなると、別の何かも考慮に入れないといけないか?それとも、これらの反発は「君の心構えや努力しだいさ!」の謂いかもしれません。ただし、本人は「行きたくない」と言っている。このあたりの解釈の難しさがありそうです。佳作一歩前で。
評のおわりに。
令和8年熊本地震で亡くなられたかた、身を謹んでお悔やみ申し上げます。
被災されたかた、心を込めてお見舞い申し上げます。
それ以外、あまり言葉を持てません。いえ、ひとつありました。
「お城のある街 なぜ、またしても、熊本!?」 では、また。
丁寧に読んでいただき、大変参考になりました。
なかなかこちらの考えたままを伝えられないなと、反省しております。
いただいたご指摘を今後の作品づくりに生かしていきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
島さま 評価ありがとうございます
全くもって仰るとおりだと思います
たぶんもっと違った詩を
書いていて途中で方向転換したんだと
思います
なんとなくイメージしたものから
書き始めてまとめきれずに終わって
しまう詩も多いです。
今後はかいた詩をもっと推敲
しようと思います。
いつもお世話になっております。
「火の鳥」名作&代表作入りありがとうございます。
とても嬉しいです。
この詩は、私にとっても現時点での集大成の詩だと思っています。
詩を書いて、それぞれのタイミングで思うことはあるのですがこの詩は特に感慨深い気持ちになった一作です。
正直に言うと、この作品以上のものは今は書けないかもしれないとさえ思ってしまうくらいに。
この詩は、今まで書き続けてきたご褒美だと思ってこれからも励んでまいります。
次回も是非宜しくお願いいたします。
お待たせしました。
●Mayさん「フレア」
Mayさん、お久しぶりです。お帰りなさい。
過去にいい作品もあったMayさんですから、ゆっくりと、ぼちぼちと、マイペースでかまいませんので、また調子を上げていって下さい。
作品ですが、詩の中のパーツとしてはおもしろいと思うんです。なので、これ全体を包括する日常ストーリーみたいなものがあるといいですね。特に前半に。
言うならば、起承転結の、転と結だけある感じなんですよ。
こういう書き方の場合、いくつか書き溜めてから、任意の2つの詩を選んでいって、思わぬスパークが出るような、2つの詩の組み合わせで、仕上げてみるといいですよ。
この書き方って、基本的に「合成」の書き方なので、いろいろくっつけてみると、カタチになってきます。
久々なので、今回は感想のみとさせて頂きます。
●小林大鬼さん「旗〜村野四郎に捧ぐ」
うむ、しっかり書けてます。きちんと書けてます。
もっと早く、こういうふうに書いて欲しかったですね。
多磨霊園で、よくお墓を見つけましたね。
2連目で、村野四郎の詩との出会い、過去を振り返るとこもいいです。
とりわけは「旗」に喩えた終連が凄く良くて、
ここはお墓なんですが、死してなお、魂の旗が靡いていると感じるのは、村野四郎の思いと作者の思いがシンクロして見えた心象風景に他なりません。
また、「静かに」の言葉もいいですね。
静かに、されど力強く、脈動は続いている。そう言ってるように聴こえる。
うん、これはこれで完成な気がする。
ただ、ちょっと作品スケール面で小品ではあるので、秀作プラスを。
●相野零次さん「美味しく」
あのーー
初連の「捧げたいモノ」の、「モノ」に当たるものが、その後の連のどこにも見つからず、行方不明です。
「モノ」と投げておきながら、後ろでこれに対応するもの・カタチを作っていない。そのせいで、初連が宙に浮いています。脈絡が取れない。
この詩、2連からスタートでいいと思うんです。2連以降はよくまとまっています。まるで白昼夢のような、印象的な場面を描いてくれてるし、その後の作者の在り方、姿勢のようなものも、書いてくれています。
2連以降でまとまってるんで、初連削除案を提案しておきます。
(ちなみに、初連の、
君だけにしか受け取って
ほしくないんだ
は、気持ちはわかるけど、ちょっと日本語ヘンです。
通常は、
君だけに受け取ってほしいんだ
君以外の人には受け取って
ほしくないんだ
の、どっちかじゃないかな??と思います。)
渋谷のスクランブル交差点は、あれは名物ですね。
あそこまで人通りの多いスクランブル交差点は、日本国中どこを探してもありませんから、ありゃ、もはや名物ですね。観光名所に入れてもいいくらい。
あの中に、不思議な存在が紛れていても、皆、気がつかないで通り過ぎるんだろうと思える。でも、作者だけはそれを感じたのでしょうね。
6連ですが、渦をまく水流の例として書かれてるのでしょうが、「便所を流したときのように」は、やめましょう。せっかく幻想的にそこまで持って来たものが潰される気がする。次の「風呂桶」の例もイマイチです。
渦の例をしつこく探そうとするんですけど、渦の例は5連のアパートの話で終了にしてしまって、瞳に届いたその後に、どんなふうに自分の奥の奥まで切り込んできたか、その届いたあとの切り込み度合い、震撼させられ具合の話を、6連でしたほうがいいと思えます。
あと、終連はとてもキレイですね。
彼女を幻想的に描いた部分はとてもいい、全体像はステキな話で、そこは間違いないので、細部だけ、もうちょっと詰めてみて下さい。
タイトルの「美味しく」も、私ちょっと意味わからんかったです。
現状、おまけ名作くらいで。
●上原有栖さん「火の鳥」
こういうエンディングになるとは思いませんでしたねえー
エンディング、すごくステキでした。
ロマンチックですらありました。
場面としては、
全てを喪った夜があった
世界から色が抜け落ちていった
とあるように、一番大切な人を亡くしたか、の場面で進行します。
あてもなく永遠に歩き続けてしまいそうな気持ちのところも、そうした場面にマッチするものでした。
ずっとモノクロのまま、移動する風景を丹念に描いていくところもいいですね。
火の鳥だけは色彩がつくかと思いきや、火の鳥も引き続き、モノクロのまま登場というのも、却って大胆に思いました。
主人公にとって、火の鳥は、救いの神であったようです。忘れていたものを思い出させてもらったことで、主人公はまるで成仏するかのように、消えていきます。火の鳥の一部に取り込まれたのやもしれません。
具体的なことは何も書かれていませんが、一番大切な人を失ったとき、こんな心情だったなと、思い起こすものがある。読者もきっとそうじゃないだろうか。
具体的なものはなくとも、そうした時の「核」となる部分をきちんと書き、その上でロマンチックな創作で終わらせてくれていると思う。終連は特に心に残る。
名作&代表作入りを。
修正点は特にありません。強いていえば、3連がちょい走ってるので、そこ丁寧にやって、詩の規模をもう少し大きくしてもいいかなと思う。それくらい。
●三津山破依さん「時をかける」
「※」の使い方はおもしろいね。
たぶん「※止める」は、時を止めるで、{※戻す}は、時を戻すかな??と、私なりに解釈して読ませて頂きました。
前半ですが、今はテレビ見る人も減ってると聞くが、「画面」と書かれると、いちおうテレビのセンもあるので、やっぱりここは「スマホ画面」と書いてほしいかな。前後に補足する言葉があると、「画面」だけでもいいんだろうけど、ここはこの一語で判断しなきゃいけない場面なので、二択を作らない方がいいと思います。
前半って、ちょっと解釈がいって、「俺は月曜日を考える」がビミョーでしてね。
週末休みに入った時に月曜日を思うというのは、週明けにちょっと厄介な仕事があった時などに、ちらちら気になるという意味で、一般的な意味でもままあることなので。
でも、そう受け取ってしまうと、全体の脈絡が合わないので、これたぶん、月曜に再会するってことなんでしょうね。
ああ、となると、そこ、「俺は月曜日のことを考える」とした方がいいでしょうね。
で、その行をそれに改めると、伏線を張れるんで、さっきのとこは「画面」だけでもいいと思います。
後半は、学生時代の思い出なのでしょう。時が巻き戻っています。学生時代はこんな感じの関係だったんでしょうね。なんとなく片思い感があって、そこがまた青春らしい酸っぱさで、いいですね。
二人の様子が交錯しながら登場する、後半の表現の仕方って、わりとおもしろいなと思いました。
言い方悪くてゴメンナサイですけど、内容的には、そんな特別なこと書いてないので、フツウの書き方をしてノーマルに終わるより、この挑戦的な書き方をすることで、内容が生きたって面があります。なので、後半はこれで、私はいいと思います。
うむ、いいでしょう。秀作を。
(で、月曜日はうまくいったんだろうか。気になってきたあ……。)
*************
・評のおわりに
昨日の宇城市の火事の映像、
消防士がホースを持ったまま、へたりこんでる姿が映ってて、「あっ!」と思いました。
断水だからホースから水が出なくて、為す術なく、火事を見てたんですね。
無念だったと思う。
私は阪神淡路大震災を思い出しました。
あの時も無念の思いをした消防士が何十人、何百人といたことでしょう。
消防車が百台レベルで集まってきたけど、誰も火が消せないんだもの。
地震の時、火事を出しては絶対ダメです。
断水で、誰も火を消せないから。
断水の解消には、まだだいぶ日数がかかるので
被災エリアの方は、いま火事を出さないよう、くれぐれもご注意下さい。
特に、人がいないあいだに電気が回復すると、通電時に火花が出てるケースもあるので、
まだ電気が通じてないエリアは、いったんブレーカーを落としておいて下さい。
絞り出すように
蝉が鳴く
朝はヒグラシ
昼にミンミンゼミとアブラ
夕方にまたヒグラシが鳴く
それを薔薇が
聴く
静かな花工場で
咲いていた一輪
白薔薇や黄色い薔薇と共に
ただただひとり咲いていた
だから蝉の声は
生まれて初めてのことだが
自分はどこに行くのだろうと
いま薔薇は思う
実際には花瓶にいけられて
すでに朽ちていくだけの
運命なのだが
それでも薔薇は
自分の行く末が
気になる
蝉のことなんて
正直どうでもいい
ただうるさいだけの
煩わしいだけの声だったから
ちなみに蝉はというと
そんな薔薇には全く頓着していない
ただただ鳴く
疲れるということも
薔薇が無関心でいるなんてことも
もちろん知らない
鳴きに鳴く
鳴きに鳴いて
そうして鳴いているうち
蝉がポトリと
木のウロから
落っこちた
そのとき
薔薇は自分が歌えるのだと
わかった
それからというもの
薔薇は
声を荒げて
歌う
葉を広げ
神経質そうに体を震わせて
歌う
やがてまだ落ちていない蝉が
声を合わせてくると
お互いのざわざわが
重なり合って
こうして
部屋の外では蝉が
内では薔薇が
それぞれの生を競い合うことになった
だが
実はこれがおしまいでは
ない
そこに
今度は気難しい「彼の耳」が加わった
その厄介な鼓膜は
うるさげに震えて
何も聞こえないじゃないかと
いかにも分かりきったような言い訳を
冷たい顔をした脳に
イチとゼロの電気信号として送っている
しかしそれとは裏腹に
彼の脳は頑として
そのツーとトン式の信号を受け取らないので
いままた蝉と薔薇は
部屋の内と外とで
そのうるさいほどの生を
競い合っている
おかげで蝉も薔薇も
自分たちの本当のことは
ちっともわからないまま
そのままの生の
それぞれの死に向かっての
繋がり合いを
ただただ
蝉と薔薇は
それぞれのやり方でもって
継続し合っている
黒土《くろつち》を被り温《ぬく》まっていた。厳しい寒さをリボンで結び留めた、あの日。騒々しい特紡の手等《てら》に、出し抜けに掘り返された。夢から覚め、咄嗟に暖を求めたも虚しく、伸ばす手を与えられていなかったことを識る。荒々しく清める手等からは、些かも飾り気を感じない。身ぐるみ剥がし、気紛れに切り割く、邪気を帯びた手等が、どれほど憎かったか ──── 切り割かれるべきは、本来、奴等の手であるはずではないか。
丸みを帯びた嘗ての姿は、切り出された角《かど》を以て、傲慢な一肋骨を威嚇する幾つもの分裂に転じた。けれども、粉を塗され茹でられて、乾涸びてゆく内に、現像した威張り角《づの》は、数々の分身や仲間の具材とこすれ合い、ふやけながら次第に削れてゆく──── 微生物の養い成す黒布が温かった頃の丸みよりも、はるかに艶やかに且つ滑らかになって。白い湯気をのぼらせる分裂体は、今や、ホクホクとして甘やか。人間の胃袋の肥やしになり、強酸の沼のなかで黄色く溶け尽くすと、同様に土を払われ洗われた、見知らぬ青屋根の下で育つ淡泊な塊《まろかし》を切り分ける手等のエネルギーに変わってゆく。
******************
疑惑の逃避を経て、真の救いの園へと誘《いざな》われる。畑《はた》の全面に安らかで穏やかな陽が注ぐ。春の立つ、この日に