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編集・削除(編集済: 2026年05月30日 02:08)

relief  上原有栖

なぜ人は
自分ができることを
他人ができなかったとき
それを嘲るのでしょう

ふっと
思い出したのです
同級生たちのからかいを

体育の時間 鉄棒の逆上がり
男で回れなかったのは
僕ともう一人だけだったね

悔しかったなぁ
放課後にも練習しました
何度も練習しました

地面を踏み上げた勢いそのままに
横一線の鉄芯を軸にして
身体を旋回させる

ただ
それだけのこと
ただ
それだけのことが
できませんでした

逆上がりができなくても
立派な大人にはなれます
逆上がりができなくとも
優しい父親にはなれます

悔しい思いをした三十年後
我が子と行った公園で
久しぶりに見かけた鉄棒
この先も変わらない かたち

あの頃の救済を求め
いざ 棒の前へ
振り上げた足は 空
背伸び 視界はぐるり と
めぐるのでした

子に見てたか 
そうやって尋ねるも
明後日の方向へ走り出していて
慌てて後を追う休日

両手にはかつて染み付いたのと同じ
赤錆た鉄の臭いだけが残りました


※relief(救済・安堵/浮き彫り)

編集・削除(未編集)

三浦様 お礼です 上原有栖

今回も読んで頂き、丁寧な感想と評をありがとう
ございました!
書きたいと思っていて寝かせていた作品テーマでした。

アドバイスご指摘嬉しく思います。
作品の主人公のバッググラウンドは仰る通りで、「うぶ」さのさじ加減は難しかったです……。
もう少し踏み込んでもよかったのですね!

この詩はタイトル先の作品でした。タイトルと内容が、かっちりとリンクすると気持ち良いです。(私の投稿作品はほとんどがタイトルを決めてから内容を書き出しています。皆様はタイトル先、内容先どちらが多いのか……気になりますね。)

次はどんな詩を書こうかな、とあれやこれや迷うほど楽しんでいます。
また、どうぞよろしくお願いいたします!

編集・削除(未編集)

感想と評 5/15~5/18 ご投稿分 三浦志郎

1 aristotles200さん 「罪と罰」 5/15

まずは新興宗教あるいはカルト教団のような集団のカリスマ的教祖を思い浮べてみます。
ところが、すでに、5連あたりから、この人は欺瞞に満ちた教義や救済など、良心の呵責に苛まれ、自らの中に罪と罰の意識を生み出してしまいます。それをある集会で告白してしまうのでしょう。
「カルマ」という言葉を調べると、この詩の基本精神がよくわかる気がします。
「カルマ=自分の行いによって生まれる結果や影響が自分に返ってくる」とあります。はなはだ明快であります。自分がこれによって空回りしてゆく。メッキが剥がれてゆく。欺瞞が見えてくる。興覚めした信者は次々と去ってゆく。結果の悪循環。後半、少しわかりにくい連も散見されるのですが、「退場~誰もいない~立ちすくむ~誰か助けてくれ」などから求心力を失った教祖の苦悩と理解していいと思います。
「自分のやったことが罪であり、結果、自分に返って来たのが罰である」。この言葉はタイトルともカルマの定義とも符合します。ここにこの詩の完結を見ます。寓話的な警鐘もあるでしょう。佳作です。


2 Love沢さん 「望郷」 5/15 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。

ユニークなペンネームですね。よろしくお願い致します。
冒頭の雰囲気などを読むと、やや抽象的で意味深長な感じですが、続く2連目の「新卒」といった具体的な言葉によって、詩の舞台や心情が、より浮き彫りにされます。4連の自己への感じ方が印象深いです。「望郷」というタイトルと「元気にしているか」といった、ややオールドな感覚と現代的に醒めた部分。その両者の不思議なブレンドを感じました。書き方として興味深いです。特に母と祖父母のくだりは、なかなか佳き味わいがあります。
「油~あぶら」「元気に~げんきに」。この書き分けは何か意味があるのでしょうか、そういった点も興味があります。ぜひ、また書いてみてください。


3 トキ・ケッコウさん 「ムカデ」 5/16

前回はザムザが虫に変身した奇譚でしたが、今回はズバリ!ムカデ。虫という、ひとつの傾向のようなものを感じています。
これは実際、ムカデが家の中に上がってきて、それを作者さんがじっと眺めて観察するの図、
そんな実況中継的な部分は感じるわけです。2~5行目あたりに、それを感じます。続く「おまえの時間は~~隠れるのだ」までは、少し視線をそらし、しばし、この生き物の生態、生き方信条や哲学に思いを馳せるような気分がありそうです。「ムカデ・ムカデ・ムカデ」と唱えて、我に返り再び視線で追います。連分けして、何故、鳥の話が出て来るか、は僕にとって謎なのですが、何か天敵のことに触れているように思えたのですが―。
確かに、気持ち悪い生き物ですが、言い伝えや縁起上、良い面もあり、事実、益虫のようです。
駆除はしたいが殺虫するのもどうか?といった微妙さがありそうです。調べてみるとそんな側面も見えて来て、この詩の輪郭も少し見えて来る気がするのです。佳作半歩前で。


4 夏目兼緒さん 「福を撒く人」 5/16 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
よろしくお願い致します。
静かで豊かで善意に満ちた詩ですね。何か、心洗われる思いが致します。
少し気落ちした人、少し困ってしまった人に、等しく“頭上に掌を乗せ、恵比須顔を振り撒く”存在です。その人のさらなる属性は明かされませんが、そういった善行で充分といった趣きがあります。そして、僕は6連に注目したいと思います。すなわち―。
「穏やかで
大事にされてきたあなたには
“善“だけが存在するから放っておけなかったんだね」
―です。これは、あなた=夏目さん、あるいはこの詩の主人公は、この「福を撒く人」の全貌を、あるいは実名を知っていた。僕には、そんな風に思えるのです。佳い詩でした。ぜひ、また書いてみてください。


5 上原有栖さん 「過去形」 5/16

前作品「称名寺」とは、打って変わって、各種、バリエーションを証明する詩が届けられました。
最終連の「~積み上げていくの」で詩の主が女性だと理解します。その前の「幼いわたしが~」で、若い(あるいは未熟な?)人を推察します。
そんなバックグラウンドで考えたいと思います。この人はまだ幼くて、自分の思いやその具現化としての言葉にコントロールが出来ていない、習熟していない初心(うぶ)さがありそうです。そう、“うぶ”といったニュアンスが僕にはぴったりする気がします。その言葉の対象となるものがどの辺にあったかを書かれると、より良い気がしました。ところで、最後の2つの連が凄く大事な気がして来ました。「過去を形にして」。タイトルと上手くリンクさせています。過去とは定型に固まって積み上げられ、イメージとして未来に向け、それ自体が整形処理することは少ないです。むしろ定型でうずくまるからこそ、人は事態を把握しやすく、その定型の反省から(次はこうしよう!)と未来をアレンジするもののようです。この部分を読むと、そんな主旨が感知されるのです。その点で、「わたしの背丈を越えていけ」は意味が広く深い。印象満点、けだし名言。甘め佳作です。


6 月森うさこさん 「夜の女王」 5/17

僕の区間に初めて来られた作品のことを、今、想っております。4/4付「恋衣」です。
あの佳さと一脈通じるものを感じています。女郎屋にいるのが、夜の女王というのもなかなか凄いタイトルですね。まず背景は、やや時代がかったものを感じます。描写やセリフなど、なかなかきわどい部分もあるのですが、いやらしさはなく、むしろ気品を維持しているのがわかります。
「髪がまるで大輪の花がぱっと咲き雫が舞い上がる」などは絵に描いたような妖しい美しさがあります。
しかし、これらは全てが夢幻だったことが綴られます。迷い入った森の中の魔力でしょうか?
人物と花の名を絡めているのもひとつのポイント。
官能性と幻想性が抒情的に織りなされ、独特の世界を醸し出しています。不思議です。佳作です。


7 相野零次さん 「一輪の花」 5/17

タイトルに出て来るこの花は、多くの絶望の中に咲く一輪の花。それはひとつの希望の謂いであり、
人に置き換えると、「君」と呼ばれる女性。学生さんのようですね。
この詩には3つの条件的言葉があって、「しぬのは怖くないけど」「明日はやってこないかもしれないけど」「明日、世界が滅んでも」など。どれも物騒な表現なのですが、そうであればあるほど、二人の意志の強さは逆に強調されるわけです。おそらく相野さんはそういう言葉の意義や働きを認識しつつ使ったと想像できるのです。これらの働きによって、この詩は単に普通の恋愛詩といった概念を越えて、非常に気高いものを感じます。まさに至上の愛と言うべきか? 佳作です。


8 ベルさん 「今、この瞬間(とき)」 5/18

まずは、爽やかな場面設定があっての読書の図です。
「まるでこれは夢ですよと
教えてくれる風の音はやさしい」―ここは意味の良さもさることながら、言い回しがとても滑らかで、
旋律的ですね。3連目は読書という行為を最も麗しく味わっている感じが出ています。「誰でもなくて 僕でもなくて」 と 「現実の僕と物語の中の僕」。両者は、そこはかとなく並列感があるのも読みどころ。「永遠であり、今、この瞬間である」のも面白い。読書がもたらした終連、この結論。
俯瞰して全体像を見るにも最適で、このサイズで上手く納めた、その力量も素晴らしいです。佳作を。


9 虹乃衣里絵さん 「重い扉」 5/18 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。
会いたくない人に会わねばならない事って実生活で割とある気がします。
重い扉が象徴するものは、会いたくない人を訪問することを約束してしまった。(手土産を持ってる)
そして、その人は詩の主人公を、なにか良からぬ方に誘うことを企んでいるようです。どういった人間関係なのか?この詩は、もう少し具体的に書かないと終らない気がします。読み手のほうも少しストレスが残るのです。説明的に書くということではありませんが、詩的修辞を交えてです。その際、この人が嫌がりながらも扉を開けざるを得ない、その心理にも触れる必要がありそうです。そういったことも、おいおい意識しながら、ぜひ、また書いてみてください。



評のおわりに。

「新たに来られた方々へ」

三名のかたがおられました。ようこそお出でくださいました。
此処に所属する同人・評者のひとりとして、嬉しく歓迎したいと存じます。
此処は詩が好きで、ごく普通の常識・平衡感覚をお持ちのかたなら、
自己の詩を発表しながら、充分、進化・深化させられる場所だと感じております。
既存のかたも含め、新規のかた、どうぞ、ゆっくりと詩を楽しんで頂ければ、と思っております。
どうぞ、よろしく。 では、また。

編集・削除(編集済: 2026年05月23日 16:10)

水無川 渉様  御礼です。  三津山破依

私の短い作品よりも長い批評、アドバイスをいただき、本当にありがとうございます。

自分では、何かを強く主張したいというより、言葉になり切らない空気や感触のようなものを書きたいと思っています。

「繰り返し読んでいくと、切り詰めた表現の間から」というお言葉、とても嬉しかったです。ただ、平坦な言葉選びしかできないので、ともすれば読み流されてしまう危うさも感じており、そのバランスの難しさをいつも考えています。

水無川 渉様には、次回はまた違ったタイプの作品も読んでいただければと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。

編集・削除(未編集)

水無川渉様  評のお礼です。  松本福広

今回は本当にすみませんでした。削除の対応含めて御礼申し上げます。想像を膨らませた作品なので「……大丈夫? 俺」となった作品です。

秋葉原といえば、電気街からの萌えの街というイメージが漠然とあって。大分、様変わりしているとか。
再開発に揺れる秋葉原。再開発したい街と、それに反対する人々。整った街になれば「秋葉原らしさ」を失う、と。
秋葉原らしさってなんだろう?
行ったことがない自分もそうだけど……その自分だって「自分らしさ」に揺れる時期がある。
そして、案外自分のことを見えているか? と言ったらそうでもない。
間違った方向の再開発と、間違った方向の秋葉原らしさに想像を飛ばしました。

ご指摘いただいた矛盾の点。
秋葉原らしさって抽象的だし、街の人の中にも是非のグラデーションはある。再開発されたとして、その街への感想もグラデーションがあるだろう。集団としての、そんな揺れ。
死ぬことも忘れた……。人は死ぬのは絶対だけど、「あなた死にますよ」と言われればドキリとする。だって、死ぬことを意識したくないから。忘れたふりをしている。皮肉にも人間っぽさがある機械たち。
街は、そこに暮らす人々が織りなす大きな生き物だと思えてならないのです。

長くなりそうなので。この辺で。
またよろしくお願いします。

編集・削除(未編集)

わかっている  aristotles200

Aのことを述べている
まず、横にいるBからAを述べる
続いて
横の横にいるCからAを述べる

Cは、Aとは関係性が低い
よって主題は
Bが述べていることとなる
次にDが登場し
Bを、Cの隣であるDの視点で述べる
E、F、G…続いていく
もはや
Aのことは誰も述べていない

見かねてZはいう
対極の立場だからこそ
Aを理解出来る
全員を否定する
次々とZに賛同者が現れる
Zはいう
当然ながら対極の主題である
A以外の
全員が拍手喝采
この場は
終わりを迎えようとする

Aは、顔を真っ赤にしていう
ちょっと待ってくれ
Aの主題が
初めて述べられた

……
A以外の全員が
不思議そうにAを見る
貴方は誰ですか
Aです
いや、違う
Zがいう
この偽者め、恥をしれ

Aは追放されてしまった

ようやく騒ぎが収まり
全員がいう
Aは何処にいったんだろう
述べたいことがあるというから
みんなで集まったのに

Aと親しいBはいう
そういえば
誰も話を聞いてくれないって
相談を受けていたんだ

なるほど
なら、みんなで相談に乗ろう
Zは、さも心配そうに
B、君なら知っているだろう
ああ、わかっている

   ✳

荒野を彷徨いながら
Aはいう
わかっている
最初から終わりまで
この世界には、私しかいない

編集・削除(未編集)

御礼 水無川 渉様  aristotles200

水無川 渉様
拙作「笛」にご感想とご講評をいただき、ありがとうございます。
佳作とのこと、精進します。

本作、全体主義、突然の理不尽、デイストピアを描いています。
ここは空想ですが、毎日の通勤風景と何が違うのでしょうか。
車掌さんが鳴らす笛(最近、聞きませんが)からイメージを膨らせました。

後半、ご指摘の通り早急な終わりです。
解決なしが初稿ですが、付け足しました。
ショスタコーヴィチの音楽のように、暗い世界には、最後に茶番を付け加えたかったのです。
無くすか、丁寧に付け足すか、更に短く夢オチとするか、それぞれ書いてみます。

今回も、深く作品を読み解いていただき感謝いたします。
次回も、よろしくお願いいたします。

編集・削除(編集済: 2026年05月22日 06:26)

感想と評 5/5~7ご投稿分  水無川 渉

お待たせいたしました。5/5~7ご投稿分の感想と評です。コメントで提示している解釈やアドバイスはあくまでも私の個人的意見ですので、作者の意図とは食い違っていることがあるかもしれません。そもそも詩の解釈に「正解」はありませんので、参考程度に受け止めていただけたらと思います。
 なお私は詩を読む時には作品中の一人称(語り手)と作者ご本人とは区別して、たとえ作者の実体験に基づいた詩であっても、あくまでも独立した文学作品として読んでいますので、作品中の語り手については、「私」のように鉤括弧を付けて表記しています。

●aristotles201さん「笛」
 aristotles201さん、こんにちは。これは全体主義的なディストピアを描いた作品ですね。タイトルにもなっている「笛」とは何か。一口に笛と言ってもいろいろな種類がありますが、行進のリズムを取る「ピッ……ピッ……」という音が描写されていることから、これは運動会などで用いられるホイッスルであると思われます。この笛の音がどこからともなく聞こえてくると、人々は列をなして行進し始める。何のための行進なのか、いつ終わるのか、そういった意味を教えられないまま、人々がひたすら行進していく様子は、得体のしれない恐怖を呼び起こします。
 その後で兵隊が登場し、人々の行進を力づくで継続させていきます。軍隊の登場以前から行進が始まっている、しかもそれが学校の運動会を思わせるような笛の音によって始まっているという流れは意図的なものかと思いました。つまり、国家が国民の生活を暴力で統制し始める前に、すでに支配は始まっているということでしょうか。
 第7連でスマホに緊急警報が鳴ります。この描写から、これが昔の(たとえば太平洋戦争時の)話ではなく現代の話であることが分かります。表示される言葉が英語であるのは、外国勢力の存在を暗示しているのかもしれません。第9連で人々が環状線を「右回りに」歩いているというのは、国家の右傾化を表しているのではないかと思いました。
 このように前半では笛の音に合わせた行進というシンボルを用いて、全体主義の支配を描いています。しかしこのままでは終わりません。後半では人々がそれに抗い、軍隊と行進から自由になる様子が描かれていきます。そしてあの笛が最後にもう一度登場し、

笛の音は
最後に
長く、消え入るように鳴り響き
消えた

と終わりますが、これは全体主義の終わりを意味しているのでしょう。
 状況設定はユニークで面白いと思いましたし、その中にいろいろな形で人々が段階的に支配されていく様子が描かれていて、前半はとても読み応えがありました。それに比べて後半は、最後の「解放」に向かうプロセスに今ひとつリアリティが感じられませんでした。実際に行進していた群衆が一斉に監視の兵士たちに襲いかかったとすれば、おそらく多くの血が流されることと思いますし、支配者側がこれで簡単に引き下がるとも思えません。最後に解放の希望があるというのは大切なメッセージだと思いますが、その勝利があまりに簡単に得られてしまうと、かえって説得力が弱くなってしまうように思います。
 ただ、現行のままで何か破綻があるわけではありませんので、上記の点について考慮していただくことをお願いした上で、評価は佳作とさせていただきます。

●松本福広さん「オボロゲアキハバラ」
 松本さん、こんにちは。この作品はポスト・アポカリプス的な内容の散文詩ですね。サイバーパンク風味もあります。
 物語の舞台は人類滅亡後の秋葉原(タイトルに従えば「アキハバラ」)です。核戦争が起こったのでしょうか(「本当の星を知らない私たち」という表現は核の冬を表しているように思いました)。アキハバラはプログラムされた機械が自動で動き続ける「シティ・イン・ファントム」(幻の中の街)になっています。そこに住むアンドロイドたちは人類がいた頃の記憶を果てしなく再生しながら暮らしていますが、そこにいろいろな誤情報のノイズが混入している(「Tokyoはドナウ川流域にあった」など)のが面白いですね。AIのハルシネーションを思い起こしました。
 アキハバラの住民たちは最後の人間アダムの命日に彼の「慰霊祭」を行いますが、そこでは街中に銃が乱射されます。それは「無軌道な暴力こそが人間なんだという理解」を表している、と語られますが、ここはシニカルなユーモアを感じました。
 最終連の

私たちは
鎮魂も祝祭も
滅びることも忘れたのです。

の部分は、人間性の内実を失い、外側だけを模倣した機械文明が意味もなく存続していく絶望的な未来像を描いていますね。(ただし、このラストは最初の段落で語られていた「世界の保証期限は、交換部品がなくなる頃かな?」と矛盾するようにも思いますが。)
 昨今の急速なAI技術の進歩や世界各地における武力紛争を目の当たりにすると、ここで描かれている光景がまんざらフィクションの中だけの世界と言っていられないような、そんな気にさせる作品ですね。アキハバラの具体的な描写も興味深かったです。評価は佳作です。

●三津山破依さん「風はまだまだ冷たい」
 三津山さん、こんにちは。これは短いですがとても興味深い作品ですね。
 ストーリー自体は非常に単純です。「ボク」は川辺でひっくり返った蛙を見つける。そのそばに座りこんで食事をし、食べ終わると蛙を起こそうとする。これだけです。しかし、繰り返し読むうちに、いろいろなことに気づきます。
 まず、「ボク」はひっくり返った蛙を見つけても、すぐにそれを助けようとはしません。そばに座ってのんびり空を見上げながらフライドチキンを食べ、お茶を飲みます。かと言って無慈悲に蛙をそのまま放っておくのではなく、食べ終わってからそれを起こそうとします。この詩の主題はこのようなモラル的曖昧さではないかと思いました。
 そう思って読み直すと、どっちつかずの曖昧さはこの詩の他の箇所にも隠されていることが分かります。まず

この川の流れは、
穏やか、それとも
激しいものなのか。

の連。おそらく「ボク」の目の前の川は、穏やかとも激しいともつかない中間の速度で流れているのでしょう。オレンジ色の雲も、夕焼けなのか朝焼けなのかの判別すらつきませんが、いずれにしても昼と夜の境目の時間帯を表しています。
 しかし、すべてが曖昧模糊とした世界において、ただ一つ曖昧でないものがあります。それは風です。風だけは「まだまだ冷たい」と「ボク」は感じます。そしてその風が鳴るのを合図に、蛙を起こそうとします。
 私は、この風は「ボク」の心を映す鏡のような役割をしているのかと思いました。「ボク」は風すなわち自分の心がまだまだ冷たいことを自覚して、蛙を助けるという倫理的なアクションを起こそうとするに至ったのではないでしょうか。ただ、

油のついた指をなめ、
さて、ひっくり返そう。

というラストに至っても、最後まで「ボク」の心に切迫感や強い道義的責任感は感じられません。「風はまだまだ冷たい」ということなのかもしれません。
 前回の「春なのに」同様、繰り返し読んでいくと、切り詰めた表現の間からなんとも言えない味わいがにじみ出てくるような作品でした。ことばが凝縮されたこのスタイルはとても良いと思います。評価は佳作です。



以上、3篇でした。今回は作品数は少なかったですが、読み応えのある詩との出会いを感謝します。

編集・削除(編集済: 2026年05月21日 18:51)

代替品  ゆづは

カートに入れた直後
狙っていたものは
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網膜の裏側に貼り付いたまま

指先は 
空白を埋めるように
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意識に触れるまで

私を置き去りにした指先が
青白い液晶の上を
ひたすら滑り続けている

本当に欲しかったのは
「あなたにおすすめ」と
毎秒差し出される
私のための場所だったのか

暗い画面の向こうで
私によく似た影が
カートに入れられて
決済されていく

編集・削除(未編集)

松本福広様 承知しました  水無川 渉

松本福広様

御作「オボロゲアキハバラ」一部削除の件、承知しました。
こちらで評をつけさせていただきます。

編集・削除(未編集)
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