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港の恋物語 プラネタリウム

港町には物語が生まれやすいんだって、誰もが知ってる。コウカイが多いからだって。


最後から7人目の恋人は汐風がよく似合う君。

溶けたアイスを舐めたかったのに、鴎の羽ばたきに驚いて落としてしょげた青空があったね。地平線を眺めて、手を繋いで夢を語り合った夕焼けだって覚えてる。
冷たい風に君の赤毛が揺れて美しかったのは特に。

「船を見送るのが好き」だと、君は汽笛の音に耳を澄ませて目を閉じる。瞼の裏にどんな景色が広がるのか知らないまま、黙って船乗りに手を振った。さっさと出航してしまえ、と諦めて帽子のツバをそっと摘んだ。
見ていられないほど真っ直ぐな船出。
「もう行こう」と言ったのはどっちだっけ?

船を送り出し続けた夜の終わり、『また、いつか』と書いた置き手紙を、朝日にそっと残して君は部屋から消え去った。
もう戻らないことはわかっていて、それでも次を期待させる優しさに笑みがこぼれる。周りを見れば、君の匂いまでもトランクケースに詰め込んだのだと気が付いたよ。
君らしくて、心底憎い。
もしも本当に『いつか』が部屋のドアを叩いたら、きっと腰を抜かしてしまうから……

二度と帰らないで。


昨日までと同じように、午前7時に路面電車が家の前を通り過ぎて誰かをどこかへ連れていく。楽しげに笑う乗客に、お達者でと合図を送った。

……そうして、波音が耳をくすぐる港町へ降り立ったのは最後から6人目の恋人の貴方。

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話し相手が欲しかったんだ  cofumi

朝目が覚めたら
夢の中に出てきた話し好きの蜂が
鼻の先に止まっていた
人差し指で躊躇なく弾いたつもりが
案の定自分の鼻先をやってしまった

起き上がろうとしたその足元には
豚が座り込んでいた
頼むからどいてくれと
手で追い払う仕草をしたが
頭に花冠を乗せ愛らしさを強調した豚は
つぶらな瞳でウインクをした

仕方なくするりと殻を脱ぐように
布団から抜けだし
シャワーを浴びようとバスルームへ行くと
バシャバシャと仔象が水を浴びて
シャボン玉の中で遊んでいた
お気に入りのボディソープは空っぽだ

あきらめて裸のまま窓を開けた
毎朝見かける野良猫が
僕の自転車にまたがり手を振ってきた
「君はいつも言い忘れていることがある。
朝は おはよう
お昼は こんにちは
夜は 今晩は
帰ってきたら ただいまだろ。」

なぁんだ みんな挨拶が欲しかったのか
そんな簡単なこといつでもしてやるさ
その日以来 挨拶で始まって
挨拶で一日が終わるようになった

そうか
僕は 話し相手がほしかっただけなんだ

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光  妻咲邦香

僕と喧嘩をしようよ
君の星とはこんなに離れてるから
たとえ光の速度で移動出来たとしても
明るい話題も届く頃には暗くなっちゃうね

僕と喧嘩をしようよ
あまりに時間がかかるから
君は怪獣になっちゃってるかな
それとも僕が怪獣になってるかな
正義のヒーローなんて何処にもいないんだよ
最初からそういうもんさ

宇宙以上に正しい道などあるものか
時に残酷な仕打ちもあるけどね
君とはその点で分かり合えなかった
だから喧嘩をしようよ
今日こそ決着を付けようよ

声が届かないよ
もう爆発しちゃったのかな
正しかったのはたぶん君の方で
僕は間違っていた
愛はあるんだね
認めたくはないけど
愛はあるんだね
でもそう言ってた君はもういないんだね

ああやっと声が届いたよ
愛はやっぱり無いって言ってた
もう遅いよ
愛はあるんだよ
何処かに絶対
何処だかわからないけど
あるんだよ
やっと認めてあげたのに
君はもういないんだね
明日は僕も爆発しちゃおかな

ねえ喧嘩をしようよ
僕と喧嘩をしようよ
宇宙にも雨が降るんだってね
だから君は、降らないって言ってよ
僕は傘を差してそっちに向かうから
どっちが上でどっちが下だろう?
どう差したらいいんだろう?
そんなに言うんなら、降らない雨の中
君を見つけたら無理やり傘を差しかけるよ

だから喧嘩をしようよ
蝶が一羽、空に向けて飛び立ったよ
星を花と間違えて
こんな夜遅くに
何処まで行くんだろう
明日この星が爆発しちゃうって
知ってるからかな
そうなる前に君と僕
決着を付けようよ
今日のうちにね

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福岡堰の雨桜

水門の停留所を降りて
小さな焼そば屋は混み合っていた

茨城県百景福岡堰と刻まれた石碑
小貝川が流れる緑の堤に
満開の雨桜の小道が果てしなく続く

こんな雨の中でも
花見に行き交う傘と人々の波

雨に濡れる鮮やかな桜の写真を
撮っても撮っても切りがない

桜の隧道と幾つもの橋を潜り抜けた先に
懐かしき屋台が連なり人々は足を止めていた

聳えたる福岡堰を越えて
雨桜は菜の花の小道に変わる

小貝川が流れる
どこか異国のような田舎道

林の中の小さな伊奈神社が
人知れず佇んでいた

雨桜の華やぐ夢に
酔い痴れたその日に
二人目の甥っ子が生まれたと
母から翌日に電話があった

携帯に送られた写真には
微笑む母親に抱き抱えられた
蕾のような小さな命

子猿のような赤ん坊の
芽生えたての産毛の髪はまだ濡れていた

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前置き  秋冬

話す前から
笑わないで欲しいと
言うのはワガママだ

話す前から
泣かないで欲しいと
言うのはヒキョウだ

前置きされると
身構えて
笑いたくなるし
泣きたくなる


ほら
やっぱり笑った

泣かないでって
言ったのに


まるで
僕が悪者のようだけど
笑わなかったら
つまんない人
泣かなかったら
冷たい人と言われる

いずれにしても
前置きはズルい

笑って欲しい
泣いて欲しいと
言ってくれればいいのに
みんな素直になれないから
後出しじゃんけん
みたいな
前置きをする

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ひまわり  Liszt

 市内のあちこちにバリケードが築かれ、その傍らで避難する人々
がごったがえしていた昨日までとはうってかわって、今日はひっそ
りと人通りの絶えた街路に、北国の短い夏の陽が差し込んでいる。
ときおり、バリケードを補強するために土嚢を運んだり積み上げた
りする兵士の姿を除けば、敵軍が間近に迫っているような気配はど
こにも感じられない。むしろ、のんびりした空気さえ漂っている。
そこかしこに立ち並ぶ教会や修道院の玉ねぎ型のドームは、柔らか
な金色に輝き、その白亜の壁に沿ってマロニエの並木道が続く様子
は、欧州の中でもとりわけ長い歴史を持つ、古い都にふさわしい。
 マヌエルは国立美術館のバルコニーの上に立ち、西に傾いた日の
光を半身に浴びながら、街の彼方、北東に果てしなく広がる平原に
目をやった。明日ともなれば、戦車部隊を中心とする敵軍の主力が
あの沃野を蹂躙して瞬く間に首都に到達し、市街戦が始まるだろう。
空爆も覚悟しなければならない。今、眼前に広がるのどかな光景と、
未来の避けがたい破局との落差に、マヌエルはただ戸惑うばかりで
ある。
 思い起こせば、総選挙の結果、民主派が政権を獲得したあの日、
歓喜に沸く支持者が街路に繰り出し、赤と青の国旗を打ち振り、国
歌を高らかに歌うのを耳にしたのもこのバルコニーではなかった
か?どちらかといえば、自分はあのときお祭り騒ぎから距離をとり、
この美術館が展示する絵画を眺めながら、静かに時を過ごすことを
選んだのである。なぜなら、民主派の主張する改革が急進的なあま
り、東方の大国との間に軋轢が生まれ、早晩、祖国の存立が危機に
さらされる、という不安が、眼前に繰り広げられる市民の熱狂が大
きければ大きいほど、却っていや増すのを感じたからだ。そして自
分が愛してやまない絵画の前に立つことで、少しでも穏やかな気持
ちを取り戻したかったのである。
 あれからわずか三年、懸念は的中してしまった。経済の立て直し
と安全保障の強化をねらって新政権が外交政策を大胆に転換したこ
とが国民の間に対立を引き起こし、それが口実となって他国の侵攻
を招く結果となった。いざ、そのときになって、援助を約束した国々
は躊躇し、今もって直接介入する気配はない。結局、戦闘で血を流
すのは我が国の市民と兵士たちだけだ。美しい国土は荒廃の一途を
たどっている。
 そもそも、我々は知り抜いていたはずではなかったか?革命を求
める人間の希望が必ず出会わなければならない挫折と混乱を。この
一世紀の間、真の自由と独立を目指した数多くの国で繰り返された
悲劇を。大国のエゴの犠牲となり、革命は流産し、共和国の夢は潰
え、粛清の恐怖が夥しい難民を生み出してきた、その幻滅の歴史を。
まるで古ぼけた白黒フィルムの中の出来事が、今、我々の目の前で
繰り返されているかのようだ。
 こんな虚無的な感情にとらわれながらも、マヌエルは共和国の軍
人の一人として戦う意味を必死に見出そうとしていた。そしてたど
り着いたのが、やはりこの美術館だった。
「大尉、ここにおられましたか。所蔵していた絵画と彫刻は、ハヴ
ェル教授のご指示のもと、移送の際に決して損なわれることがない
ように全て厳重に梱包しました。すぐにでも搬出できます」
バルコニーまで報告にやって来た若い兵士を振り返り、わかった、
と頷くとマヌエルは急いで屋内に入って階段を降り、教授の待つ一
階の大きな展示室に向かった。ハヴェルは絵画の修復技術の専門家
であり、政府の文化財保護委員会の座長を務めている。マヌエルと
は旧知の仲だった。
 すでに首都をあとにして西方の国境を目指して移動しつつある数
多くの避難民とともに、祖国の芸術家が残した偉大な遺産は、どれ
一つとして、敵の手に渡すわけにも、また、混乱の中で損なうわけ
にもいかない…そう考えたマヌエルが、ハヴェルに美術品の安全な
梱包と移送を指揮してくれるように依頼したのだ。
 展示室に入ったとき、白髪で痩身のハヴェルはマヌエルと兵士の
方に背を向けて、もはや一つの絵画も掛かっていない大きい真っ白
な壁をじっと見つめていた。その様子は、いつも見慣れた温和な書
斎人としてのハヴェルとはどこかが違う。悲愴な感情をじっとこら
えているように思われた。室内の柔らかな光線に照らされて、いっ
そう背が高く見え、まるでスペインの画家が描いた聖人のようだ。
その様子に一瞬気圧されながらも、マヌエルは語りかけた。
「教授、ご協力とご尽力に感謝します。梱包が完了してお疲れのと
ころ大変恐縮ではありますが、敵軍が間近に迫っています。もはや
一刻の猶予もありません。これらの美術品を直ちに国境に向けて移
送しますので、どうかご同行の上、指揮・監督をお願いいたします」
 ハヴェルは、相変わらず白い壁の前に佇んだまま、すぐには答え
なかった。その沈黙の時間は重たく緊張をはらんだものだった。や
がて老教授は、おもむろにこちらを振り返ると、壁のある一点を指
さしながら口を開いた。
「マヌエル、君は覚えているかね。ちょうどその位置に掛かってい
た、ひまわりの絵を」
「覚えていますとも。一面に咲き誇るひまわり畑の絵ですね。詩人
にして画家のウォルインスキイが描いた、忘れがたい一幅の絵。我
が国の美しい夏をあれほど印象的に描いた作品を他に知りません」
「今さっき、その絵を梱包しているときだったよ…息子の戦死を知
らされてね」
マヌエルは言葉を失った。と同時にすぐさま脳裏に浮かんだのは、
きのう国外へ避難させるために別れたばかりの妻と幼いひとり娘の
姿―「私たちのことは心配しないで」と涙一つ見せず気丈に振る舞
う妻と、これが父との永遠の別れになるかもしれない、などという
ことはわからず、ただただ、あどけない笑顔を浮かべている娘の姿
であった。
「志願兵として前線に行く、と言われたとき、私にはそれを思い止
まらせることができなかった。それもそのはずだ。誠実に生きるよ
うに、常に理想を持って生きるように、と教え育てたのは、この私
だから…。今になって、愛する祖国のために身を捧げようとする我
が子を「命を捨てに行くようなものだ」と言って押し止めようとす
るなら、それこそ甚だしい自己矛盾ではないか?そして、どうだろ
う!今、私はその全ての結果の前に打ちのめされている。あの絵の
ひまわりのように息子の人生が豊かに花開くことを妨げたのは、こ
のわたしではないか?」
 もはやハヴェルの声は苦痛に震えている。マヌエルにも、かける
言葉が見つからない。しかし、再び訪れた沈黙を振り払ったのは、
意外にも教授自身であった。
「すまない、取り乱したところをお見せしてしまって。これから敵
軍に立ち向かおうとしている君に対して恥ずかしい。私も目の前の
任務に全力を尽くそう。それこそ、息子に対して口が酸っぱくなる
ほど教えてきたことだから。今この瞬間も、敵の戦車が我が国のど
こかで、ひまわり畑を踏み潰しているかもしれない。それならば、
せめて絵の中のひまわりだけでも守り抜かなければ…。いつの日か
再び美術館の真っ白な壁に展示して、国民が、その絵の太陽のよう
な明るさから新たな『希望』を汲み取ってくれるように」
ハヴェルはこれだけ言うと、マヌエルに向かって手を差し出した。
二人がお互いの掌を固く握り締めたとき、老人の眼から堰を切った
ように涙が流れ落ちた。
「君、生き抜いてくれたまえ!」それだけ言うと、くるりと背中を
向けて、教授は展示室の出口の方へ歩き出した。その姿は、すでに
この世を離れた存在のように見える。マヌエルは傍らの、まだ少年
の面影を残す兵士を振り返ると、国境への移送の間、教授を精一杯
お助けするように、と命じて、急いで後を追わせた。
 今や広い展示室にひとり残されたマヌエルの耳に、中庭の噴水の
音が聞こえてくる。その静かで単調な調べが、今しがたのハヴェル
の震えがちな声と微かに響き合っている。掌にほのかな温かみが残
っているのに気がついたとき、マヌエルの心に「友愛」という言葉
がごく自然に浮かんできた。
 たとえ、劣勢が明らかではあっても、市街戦を少しでも引き伸ば
し、避難民が全て安全に国境を越えるまで、また、ハヴェルが美術
品を無事に国外へ運び出すまで、とにかく時間を稼ぎたい。虚無感
にとらわれている暇はない。軍人としての役目に徹しよう。
「決して目には見えない『希望』と『友愛』のために戦うことは、
果たして意味のないことだろうか?」
マヌエルは誰に言うともなく呟き、美術館を出て、バリケードの
確認に向かうのだった。

******
 新しい掲示板では初めての投稿です。とても広くて見やすく、書きやすいです。
今後とも、どうか宜しくお願い致します。

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松島や  ピロット

どんな船に乗ったのか
瞳に映ったのはどんな島だったのか
何もかもが曖昧で
白いヴェールの内に霞んでいる
昨日みた夢の記憶のように

 松島や ああ松島や 松島や

目前に広がる海原 点在する島々
これが絶景なのかしら
首を傾げながら乗り込んだ遊覧船
遠ざかる岸 藍色の海
船の道筋は どこまでも白く続いている

陽光を反射させ 輝く水面
潮の香り 島を指差すあなたの横顔
あなたの肩越し広がる景色は 確かに絶景
波立つ胸に 絶景をも霞ませる あなたを描く

田舎臭い民謡 エンジン音
かき消されぬように
島々の名を 奇怪な形の不思議を
あなたは 熱心に語ってくれたっけ 

波に洗われ浸食した 岩肌の灰白色
頂きの松の緑 橋の朱の色

近付く島に目を見張り 
船立てる波の後 遠ざかってゆく島を見送った…

 *

懐かしい記憶の中
船は進んでゆく
あの島々の名 どれ一つ
今はもう 思い出すことができない

二人で船に乗っていた……
潮風に吹かれ 並んで佇んでいることすら
恥ずかしかった
あの頃……

観光地の宿命か
時の流れの中で
絶景とは似つかわない 可笑しみと哀しみを
抱き重ねる 松島

私たちもまた
あの頃 思いもしなかった
可笑しみと哀しみを抱き
毎日を 送っている

時折 ふと思い返す
遥か遠い 松島の風景

絶景の海 牡蠣が抱く真珠のような
小さいけれど 甘いあの煌めき
胸の奥 今日も抱きしめて

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ミューズ(詩神)  エイジ

ある、まだ肌寒い日
精神科デイケアに行くと
三人のうら若き女性たちを
紹介された

彼女等がデイケアのスタッフに
新しく加わる
毎週火曜日の散歩にも
一緒に行くことに

僕の担当は
キラキラした瞳の小柄な女性
最初の散歩で
彼女に詩について語った
彼女は甲斐甲斐しく
話を聞いてくれた

絶好の散歩日和に
中央公園に行った
二人共 小さな太陽のように
微笑みあっていた

来週は詩を見せることに
できれば感想など欲しい
嗚呼、貴女は
僕のミューズになってくれるだろうか

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彼を構成するものたち

床の上の赤紫のしみ
しみからは泡と薬のような甘たるい匂い
床を埋め尽くす服
割れたペットボトルの破片
積みあがった彼の記憶のような書類たち
飲み残しを洗ってないコップ
中にはドロドロとしたヨーグルトになり損ねた牛乳
いつかのコンサートチケット
ポテトチップスの空き袋がカサカサ音を立てる
留まることを知らない彼の欲求
この怠惰な毎日が彼を構成する

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不思議  朝霧綾め

夜、眠りながら見るものと
朝、ひっそりと呟くものが
おなじ夢という言葉で表されるのは
とても不思議

このほの暗い部屋には
眠ろうとしている私と
眠っている二人の子どもがいるのに
真昼の、星の反対側には
畑を耕す人々がいる
私が朝になり、その人達が夕方になれば
農具を仕舞って一緒に踊ろう

小さな星に
さらに小さな私がいて
ここに夜があるのは
とても不思議

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