◆ここは「MY DEAR投稿掲示板」です。
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ここから詩人として巣立った人は数知れず、です。あなたの詩を継続的に見守り、詩の成長を助ける掲示板です。
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帰宅したあなたは
私に軽く挨拶した後
駆け寄る子供達を
言葉少なに諭し
食卓では皆で祈りを捧げ
あなたは食事を分かち合う
さん付けで妻から
呼ばれていたあなたは
潔癖で頑固で実直で
あなたの言うことには
家の誰もが従った
あなたは子供達に
言われるままに鬼になり
豆まきして遊んだ後
夜遅い時間になり
あなたは鹿島神宮駅まで
車で私を送ってくれた
クラシックピアノの曲が
静かに流れる車内で
昔の自分も似たような音楽を
聴いていたこともあなたに語った
純粋なクリスチャンで
英語教師の八木重吉のことも
あなたは前から知っていた
生前誰一人として
詩人と知られることなく
儚く短い人生を終えた
殉教者の後を追うかのように
あなたの訃報を人づてに聞いて
奥さんとの連絡が急に途絶えた理由も知った
神と聖書を愛した八木重吉は
早く天に召されたいと望んでいたが
家族を残して逝くあなたは
何を思って旅立つのだろう…
夜の洗面台で子供達と
歯磨きする合間に
あなたが飲んでいた粉薬も
今では妙に気にかかる
最初で最後の他愛ない会話
あなたの断片が私に降る
明るく静かな節分の夜
眩い月が夜空を照らす…
優しく微笑む天使のように
物静かにあなたは
いつも家族を見守っていた
嵐のあとの雲は勇壮だ
すべてを捨てるように涙を流し
風に切られ日の光が差し込むと
明暗あわせ持つ深い表情が刻まれる
たたかいの空は広かった
その奥行きを確かめるように
彼らはゆっくりと行進する
さながら英雄たちの凱旋だ
英雄たちは東へと去ってゆく
自分たちの不在により
西の空をいっそう輝かせるために
捨てられないものがあるから涙を流す者たちへの
明日は晴れるという
約束だ
常人なら丸一日は起きてこない
そんな強い睡眠薬を僕は常用している
以前は不眠がひどく、それでも眠ることができなかった
一晩中、暗い部屋でエアコンの灯を見つめながら朝まで考える
シマウマのシッポの柄は縦か? 横か?
長年、疑問を抱えて生きてきた
夜になると「ふっ」と頭をよぎる
考え始めると止まらない
いろいろ思考をめぐらせる
アフリカに旅行に行った友達の友達によると
「アフリカにはシマウマがうようよいる」らしい
本当だろうか?
日本でいう野良猫のように
野良シマウマがいるという感じだろうか?
野良シマウマに餌をやった、やらないで
ご近所トラブルなったりするのだろうか?
そもそも、なぜあのような珍妙な白と黒の模様なのか?
もっと他に色を選べただろうに
さらに同じ白黒のパンダはかわいいと言われているのに
それにくらべてシマウマは……
いや、シッポの話だ
このように思考をめぐらせているが答えは出ない
家族は「ネットで検索すれば?」と言う
しかし、長年の疑問をそんな形で終わらせたくはない
縦か? 横か? どちらだろうか?
その研究は
今夜も進展しない
蓮の季節に門をくぐる。
蝉の声が出迎える。
立派な枝垂れ桜は青いだけ。
その向こうの
五重塔を仰ぎ見る。
ソフトクリームには目もくれず、
講堂へと。
梵天は逞しく、
その下の鵞鳥は可愛らしく。
おずおずと進む。
大きな目をした大日如来は
たぶん私に微笑んでいる。
腰を掛け、暫し。
クーラーもないのに、空気は冷たい。
進むと、
お不動さまが睨みを利かす。
ゴメンナサイ。頭を垂れる。
象の上に座る帝釈天。
真っ直ぐに前を見る。
にやりと笑う象は
でっぷりとして、それはそれで。
私は少し左へ。
柱が邪魔をする。
あなたの角度をさがす。
腰に左手をあて、姿勢をただし、
右手には武器。
阿修羅さまを倒したという。
また会いに来ます。
桜のときに。
やっぱり
ソフトクリームを食べてから帰る。
錆びついた水道の栓を回すと
青いポリバケツの底で
水が賑やかな声を上げる
ぬるい水しぶきが
黒いスカートの裾を重くした
雑草を踏みしめて歩き
墓石の前へと辿り着く
柄杓の水を傾ければ
ジュワリと音を立てて
御影石に張り付いていた
真夏の翳りが溶けてゆく
風が吹くたび
線香の火はかき消され
指先は灰を纏った
手を合わせ 目を瞑る
唇からこぼれ落ちる
透明な言葉は
土の底へと沈みゆく
木々がざわめき
葉擦れの向こうに
いつかの笑い声が混じる
柔らかな光が
睫毛の先で揺れていた
一礼をして 歩き出す
スカートの裾は乾き
あの指先だけが
まだ
燻っている
かつて世界はずっと狭かった
獣に怯える夜が長く続いた
今よりも食べ物は少なく
冷たい風が身体を引っ掻いた
われわれは粗末な家で寄り添い
温めあって生き抜いた
動物や木々たちと
今よりもっと近しかった時代
生活に光が溢れていた
見えない神様がそこかしこで踊っていた
遠くの森の向こう
稲妻の山のずっと先から
知らない人々がやってきた
黒い骨を纏い違う言葉を話す者たち
彼らは私たちより多くを知っていた
われわれは栄えるために選んだ
残りは捨てた
最後まで残った欠片を物語にして
老人は子供たちに伝えた
このような出来事が
幾千年
あらゆる場所で繰り返された
生き残るためには仕方がなかった
伝承はこれからも続いていく
われら一人一人が紡いできた
あの日から始まったのは 神話
なだらかな曲線が
一周しては 始めに戻る
と 見せかけて
少しずつ 内側にずれている
表面には 無数の溝
と 見せかけて
溝を辿れば 一本のはず
確認した訳ではないが
再生すれば 規則正しく回転し
時折 プツッと鳴る音が
実に味わい深いものだが
それを嫌う人も居る
針を置く時の 儀式にも似た緊張
今思えば 醍醐味であった
12インチの宝物は
アルバムの名に相応しく
然し 時代の流れと共に
次々と 手放してしまったり
大切に仕舞っておいたものも
いつの間にか 処分されていたり
遂には 再生装置までも
人手に渡ってしまい
宝物は 幻と消えた
残ったのは 想い出のみ
暖かみに富んだ音色
心の中で 反芻してみる
只の懐古趣味でなく
感じるのは ノスタルジー
あの頃 あの手順が特別だった
12インチの宝物
取り戻せるものならば
私の楽興の時よ 忘られぬ
一度
歩み始めたら
決して
振り返ってはならない
たとえ
不作為の批判に取り囲まれても
盛夏の声を遮ることに努めながら
永遠に特別であれ
+
乾燥させた大豆をフライパンで煎る暮れに
夕陽が 薄味の憂いを伴い 横切ってゆく
高蛋白なレンズ豆は
玉葱やニンジンと一緒に煮込めば 旨味が出る
優しい甘みを特徴とする緑豆は
お米と一緒に炊くと 朝の体にあつらえ向き
大きめの紅花隠元は
若い莢と一緒に軽く塩茹ですれば
オリーブオイルが最高の相方になる
ひよこ豆を
トマトと一緒にスパイシーに煮込んだら
ナンとの相性は抜群
魅力はホクホクとした食感だ
−
でも
豆は豆
一つひとつ 固有の種に分類できても
(どれだけ 香ばしく 調理できても)
やがては
総じて
豆でしかなくなる………端から そう であったように
×
未だ 呼び起こされない〈記憶〉を持つ 者たち
カラフルに 翔び跳ねる 高邁な悲壮が ぼんやりと………
忘れかけた祈りに どうか 火を 点け給え!
÷
カラカラになって 先っぽがささくれた葉葱が
倒錯した大衆の気休めに 抱《だ》かれて揺らぐ頃
安らかに差し込んでくる熱線が
窓の辺《ほとり》で艶やかに 踊り始めた仕舞い口《ぐち》
国際社会の歪《ひず》んだ条理
未調整の塩加減
情を拗らせた青物
無気力な喧嘩
どれもが
芽生えたばかりの
眩く輝く
灰汁
だった
今や
湿った天上の
父の袖を通り
ダビデの
城壁から
愛の
血潮として
清まり
噴
き
出
し
て
い
る
水、だと思ったものはただの砂の雫だった。
「この世に新しいものは何もない」
遠い昔に生きた賢者の言葉がリフレインする。
この砂に覆われた最果ての地で
僕がこのまま干からびるのも、何度も繰り返された事象に違いない。
僕の身体はもうじき「いっさい」のもとへ還る。
それは時間と空間を与えられたことにより、一時的に「いっさい」から切り離されたに過ぎない。
与えられた時間が終われば、「いっさい」に戻るべきときが来る。
けれども、脳裏に浮かぶのは仲間たちの声。
恩師の優しいまなざし。
そして、この世で愛し尽くした人の笑顔。
姿形は変わっても、いつかはまたどこかで巡り会える。
それがわかっていても。
ーー僕はこの世でこの身体であの人に触れたいんだ!
僕は砂の上に右手の爪を強く立てた。
まだ身体は動く。
ーーまだ還るときは来ていない。
僕は歯を食いしばって砂の上から立ち上がった。
それから再び水を求めて確かな足取りで歩き始めた。
庭の縁側で
語らるるじいじの昔ばなし
人生百年
ぼくにとってはお伽ばなし
酸いも甘いもぜんぶ
顔の皺に刻まれとっとる
光の破片が夜空を揺らして
炎の竜巻が家を焼いた日
そりゃあもう
幼いじいじは怖かったと
今の子供は幸せだろうて
遠くを見る目は
少し寂しい色をしていた
かつての日々があったから
いまがあるのだろうか
今年も秒針が刻まれる
あの夏と同じ八月が過ぎてゆく