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編集・削除(編集済: 2025年01月02日 01:55)

感想と評 10/31~11/3 ご投稿分 三浦志郎 11/9

1 佐々木礫さん「密やかな舞踏のあと」 10/31

まず「場」の確認をしたいと思います。机と椅子が全て片付けられた教室。グランドピアノがある。天井にはシャンデリア(比喩的修辞か?)。この詩の主人公にして語り手は明らかにこの部屋にいます。次に「彼女」。これは冒頭の「ため息」からすると、男と一緒にいるようにも取れるのですが、後段で「彼女もあの部屋にいるのかもしれない」とあるので、別のところにいるのが正解でしょう。(終句もそれを裏付ける)。ならば、冒頭のため息の件は、あくまで幻覚的表現かもしれない。このあたり少し迷うんです。ピアノの傍に靴が片方だけ残されているのは、なかなかシュールな設定で面白いです。そういえば、この詩は全くの現実ではないでしょう。現実と幻想を浅く行き来する、そこに持ち味ありと見ます。ただ、それ以降なんですが、いろんな事物や現象があまり脈絡なく各種出て来るので、拡散気味、混乱気味が少し気になります。あと、この主人公は学生と思われますが、冒頭の「仕事」と最後の「学生鞄」は検討が必要かも?佳作一歩前で。前作「フリータ 美女の遠景を描く」と同傾向のフィーリングと言えます。


2 aristotles200さん 「金塊」 10/31

上手いですね(理由は後述)。2カ所ほど気になった点があったので、先にこれをやっつけちゃいましょう。

① 5連目「県~府~国の王様~隣国の王様」と来ると、人はたとえば「エッ!?奈良県? 京都府、大阪府?王様って?」となっても困るわけです。ここは「汎用性・普遍性・あいまい・ぼかし」を使って要は「金塊にまつわる企みは、人を、土地を、同心円状に巻き込みながら伝播される」といったような主旨を上手く詩的に表現したいです。

② 後半「夜は無人になっている」の連の「全員、困る」は、ちょっとベタで俗的です。ちょっと困る(笑)。もうワンランク、表現を上げたいです。たとえば「全員、立つ瀬がない 面子を失う」みたいなフィーリングでしょうか?(「イタズラ」「バレたら」も検討したい?)さほど難しいことではないでしょう。

冒頭の感想の理由はここから。僕はこの詩を充分支持できます。金塊とか埋蔵金とか、興味そそられますよね。僕の把握では、この詩は、そういった人間の財貨に対する欲望や執念について言っている。さらには、金塊の擬人化という優れたアイデアを通じて語られること。たとえば、真実とは何か?真実めがけて、ぎりぎりまで工作される偽りとは?あるいは真贋とは?隠蔽、猜疑心、闘争心。そんなことに血道を上げる人間の性や業とは?―たとえば、そういった事を読み取っていました。「論」で書くより、エピソード化したのは素晴らしいです。指摘ありと言えども佳作です。些末な指摘よりも、詩の深い根幹を取ります。


3 人と庸さん 「足跡」 10/31

冒頭佳作で代表作でしょう。aristotles200さんの賛辞がありました。僕も同感です。そして、お二人が讃え合う姿は大変美しかったです。僕はこんな風に思っています。ウチが取ってる新聞に「あるきだす言葉たち」という定期文芸欄がありますが、現代詩の先鋒が多い。そこに掲載されるにふさわしい詩だと思っています。

若干の風景が示唆されます。冒頭2行、「また光った」から「天に還る」まで。その経過の中で思うことは、自己の心の地図を広げて、今までの道程、そして現在、やがて未来まで検証する。そんな行為を「足跡」と僕は見ています。雨と水のイメージの中での足跡というのは現代詩的なパラドックス効果を充分に感じます。この詩は“考える”よりもむしろ“感じる”ことを求めているように思える。
感じる、から解釈の糸口を掴む。そんな兆しが設定されていると感じます。「あるきだす言葉たち」が、すなわち「足跡」になります。


4 上原有栖さん 「雪日の抒情」 11/1

冬の朝、雪。しかも、かなりしっかり降ったようです。空、太陽、雲の様子も描かれ、穏やかでプレーンな風景が生まれています。
唯一動く点景は五歳の息子さん。これはひとつの幸せのひとときかもしれません。しかし詩は幸せの影の部分に至ります。それが「幼くして亡くなったもう一人の我が子」です。詩の後半に伏線のように現れます。それ以降、この一見平凡そうな詩は表情を変えてゆきます。父なる作者・上原さんはしばし物思いに耽ります。やがて息子さんのひと言「向こうの丘の上にちっちゃな男の子がいたよ」。
その真偽を問うことは不粋というものでしょう。―「「七つ前は神の内」。亡き息子さんが神となって現れたのでしょう。この詩の主人公は息子さんでしょうか?いや、そうではないでしょう。彼は単に案内役。真の主役は「ちっちゃな男の子」。さらに僕は想像します。
文中「気がつくとたくさんの小さな足跡が踏みしめられていた」―その足跡は生ける息子さんが実際につけた足跡よりも多かったのではないかーと。 佳作です。

アフターアワーズ。
「七つ前は神の内」。良い言葉です。柳田國男の民俗学が発祥だそうですね。神の庇護にあると思いたい。


5 相野零次さん 「雪」 11/2

前回に引き続き、今回も赤子の「僕」の独白詩です。前回は生まれたばかりの自己と世界との関係性、その始まりが描かれました。
それもひと段落して、今回は世界の諸相に話が及ぶようです。
いつもながらの想像力は凄いものがあります。道理・荒唐無稽取り混ぜてマシンガンのようにフレーズが続きます。これ、話が各方面に飛び交うので、書くほうも忙しいですが、読むほうも相当に忙しい。全部読み終えて(何が残る?何が書かれていた?)と自問してみると、(はて?)と思う部分が少なくないのです。「地球を巨人が回す」「おとぎ話=戦争に行って帰らなかった誰か」。このあたりは話として面白いですし詩的であります。「朝のバトンリレー」は谷川俊太郎をイメージでき、好感です。これらの良い点が、この詩の代表として、しょって立てるか?というと、ちょっと疑問が残るのです。前回作には明らかに一本芯が通っていました。従って最上級の評価をしました。そのイメージが強烈にあったので、今回の拡散気味はちょっと残念で、佳作一歩前で。


6 荒木章太郎さん 「一人になるのが怖いだけです」 11/2

やってくれますなあ(笑)。これ、何の詩でしょうかねえ? 3連のトーンを読むと、そういった方面、組織が苦手、嫌い、恐い、弱い……!そんな思いが各連に渡って綴られています。で、ちょっと注目しておきたいのは、以下の如き仮説です。
「君~相手」とあるから、ある方面、ある誰かに気を使って入ってみて少しは頑張ってみたけど、やっぱ痩せ我慢。「もう~~ダメ!耐えらんない! じゃ、さいなら~~!」
当然ながら、国家安全保障・災害救援等は気高い命題であり、気高い組織ではありますが、向き不向きは如何ともし難いものがあります。ごめんなさい。こんな風にしかわかりませんでした。
隠し味として、わずかにユーモアも感じます。評価は割愛させてください。解釈間違っているのが怖いだけです。

アフターアワーズ。
海上自衛隊の音楽隊の人々と一時期、付き合いがありました。彼らはプロだから上手いんですが、
やっぱ、ちょっと恐いところはあって、違う気がして、その後は疎遠になってしまいました。


7 トキ・ケッコウさん 「食卓バリケード」 11/3

凄く奇抜なタイトルで、それだけで、もう読みたくなりますね。 ところで、この詩を読んで思い出した絵本をリストアップしてみます。
〇 「もうじきたべられるぼく」
〇 「いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日
〇 「しんでくれた」

最後のは谷川俊太郎の詩が載っています。
うし
しんでくれた
そいではんばーぐになった
ありがとう うし

この詩はやや込み入ったニュアンスや屈折を感じたので、よくはわからなかったのですが、
僕が受け取った大意を絵本でリストアップするとこんな感じになります。タイトルを見ただけで、どういった事情が横たわっているか、おわかりになると思います。上記3冊は子供向けだからー、
「ネ、たべられちゃうの。かわいそうでしょ?でもたべなきゃ、わたしたちにんげんはいきてゆけないの。だから、いただきますのことばといっしょに、ありがとうのきもちをもちましょうね」
―そんな主旨だと思います。いっぽう、こちらの詩は、そういった事は書かずとも、もちろん踏まえた上で、そこはそれ、大人としての複雑を表現しています。今までの自分の経験も踏まえて、その意義を考えています。多少、*忸怩たる思いもあるのかもしれません。構成として独白とナレーションを分けたのは趣き深いです。独白のほうはあっけらかんとした語りの中に深いものを覗かせています。ご自分が料理しているので、ことさら思ったことを詩としたのでしょう。 甘め佳作を。

*忸怩たる思い……自分の行動や言動に深く恥じ入る気持ち。


8 静間安夫さん 「書道」 11/3

あまり使わなくなった言葉に「清新の気」というのがありますが、初連の気分にぴったりです。今こそ、そのように形容致しましょう。
少し注目しておきたいのは、墨をする行為です。
僕は小学生の頃、お習字教室に通っていたので、うっすら憶えていますが、今から思うと、心の準備、一種の精神統一の要素もあったかもしれません。もちろん、書くほうがはるかに大事なんですが。6、7連が、いわゆるメインパフォーマンスなんですが、大いに注目しておきたいのは、それ以降に多くの紙面を費やしている点です。静間さんの主張はこちらにあるかのようです。すなわち、心を込めること。対象の性質を生き生きと文字に伝えること。そのためには文中「書き直してみたらいい」としています。「~なるまで」「~伝わるように」。このあたり、やや厳格で「研磨」といった言葉も浮かんで来ます。「〇〇道」とする所以かもしれません。習い事とはそういったものでしょう。
そういえば、先生に朱色の墨で直された記憶が蘇りました。気持ちや対象を伝えるという意味では詩と通じる部分もありそうです。
「詩道」!?詩には「道」がつかなくて、よかった、よかった!(笑)。
ちょっと面白いモチーフでした。詩技術論的には、目新しいものは特にないので、佳作半歩前で願います。


9 TICOさん 「はじまり」 11/3  全く久し振りですので、評価のほうは割愛させて頂きます。

ええ、もちろん憶えております。こういうかたが再び来られるところが、このサイトのえも言えぬ良さだと思っております。

久し振りのわりには、衝撃で可哀そうな詩なので、ちょっとびっくりです。2連と5連だけで充分です。
ちょっと多くは語れません。相手への気づかいも度を越すと、このように悲惨なものになる。そんな気がしています。


10 多年音さん 「寒風」 11/3

「安心しろ
お前はポケットで守ってやる」
―いや、気に入りました! ポケットに手を突っ込むのをこのように書く人に初めて出会ったような気がします。この乱暴だが、溢れるような優しさはどうでしょう。久々にフレーズ大賞登場と行きましょうか!木々と三角コーンの半擬人化もこの詩にとって効果的。とりわけ三角コーンはけっこう街で見かけて印象的です。ついでに言うと「ごめんね/階段は危ないから手は出さなきゃ」。このあたりのフレーズの呼吸感や考え方はこのかたの持ち味かもしれない。さらに言うと、その気づかいは巨大なビルにまで及ぶのです。終連は自販機でホットコーヒーなど買ったのでしょうか。
ここでリフレッシュしての結び。明日へのメッセージ。前向き全開続行中。佳作一歩前なれどフレーズ大賞付き!


11 晶子さん 「祝辞」 11/3

晶子さんのいつもの、優しさ寄りのニュアンスを感じています。「成長おめでとう」は、使用例として言いそうで、あんまり言わないですよね。そこが面白い。珍しく本作は「僕」つまり男性に仮託して書かれている。イメージとして、嫁ぎゆく娘を思う父親が浮かびます。そうですね。男は幾つになっても自分を「僕」と言いますね。これで合ってます。「贈る言葉」という表現がありますが、それに近いものを感じました。そういった言葉に複雑さは禁物。スッと伝わるものがいい。これでいい。しかも、この「僕」は言葉のパワーを信じているのがわかります。言葉を信じる父親が娘の将来までも信じる、そんな詩を思っていました。これに近いことが最近あって、父親の気持ちになって書かれた事情も推察可能なのです。甘め佳作を。


評のおわりに。

昨今の感覚で言うと、晶子さん、さらにはTICOさんのカムバックが目を惹きます。同時に、感覚の新しい人が増えました。評者ながら驚き憧れますね。そういった背景で、このサイトは常に更新され新鮮なものがあります。素晴らしいことです。 では、また。

編集・削除(編集済: 2025年11月09日 18:25)

巨人  相野零次

ある日あるところに
とてもやさしい巨人がいたんだ
とっても大きな手と足と心を持っていて
だれかがこまっていればすぐに助けてくれた
巨人には目も鼻も口もなかったから
どういう感情を持っているのかわからなかったけど
みんなはきっとやさしい笑みを隠しているって
信じて疑わなかった
そんな巨人をある日殺しにやってきた人間がいた
この国は戦争をしていて
敵対国からやってきたヒットマンだった
巨人は誰かを助けることしか知らなかったから
自分が死ぬことがその人を助けることだと思って
大きな心を大きな手で握りつぶしてしまった
殺気立っていたヒットマンは驚いて
しばらくしてからありがとうと涙しながら言った
悲しんだのはヒットマンだけじゃない
みんな悲しんだ
幼いこどもから年老いた老婆までみんな涙を流した
そのとき空から声が聴こえた
みんな悲しまないで
これで戦争が終わる
みんな抵抗しないで
白旗をあげて降伏して
それでもだれも悲しまないように
僕がなんとかするから
それは声なき声として
全員の耳に届いた
この国と敵対国にさえも
みなは驚き
そして感謝した
両手をあわせ感謝の祈りを捧げた
雨が降ってきた
それは巨人を失くした
みんなの哀しみと
明日へと続く希望の涙だった

編集・削除(未編集)

捨てる。  佐々木礫

捨てる。
捨てられないものから先に捨てる。
忘れられない記憶を捨てる。
遠くを見ていた希望を捨てる。
いま生きている自分を捨てる。
そこに居場所はないから、
生まれ育った故郷も、他人に寄り添う心も捨てる。

理由も問わず、感情も問わず、
忙しなく動き、ただ捨てる。

部屋に残った空き缶、
読み古した少年漫画の埃。
それは私の断面だった。

ゴミを片付け、六畳の部屋が残る。

やがて、虚無に腐食した心は、
烏の漁ったゴミ捨て場。
叙情もなく、
ただ汚れているだけ。

編集・削除(編集済: 2025年11月09日 00:53)

鳶(とんび)、高く 肩、ビンと  上原有栖

ピーヒョロロ ピーピーヒョロロ
甲高い声を響かせて翔ぶ鳥たちがいる
僕は砂浜の流木に腰掛けて空を見上げた
江ノ島の澄み切った青い世界には
高い太陽の光を受けて幾羽もの影が
("逆"から見るとまるで黒い十字架にも見える)
旋回している

あれは鳶(とんび)だ
街中の鴉のように此処では厄介者さ
観光客の餌付けによって
今では 上空から手元の飲食物を狙って襲い来る
ハンターになってしまった

ピーヒョロロ ピーピーヒョロロ
この鳴き声は
下界への襲撃の合図か 
それとも仲間への情報の伝達か 
はたまた下々の我々を見下して嘲笑っているのか

まさに今も砂浜沿いの遊歩道目掛けて
滑空する黒い影が見えた
通行人の悲鳴と驚愕の声がこだまする
見慣れた光景はこの先もずっと続くだろう
人間と鳶の共存はこの街では常識なのだから

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水無川 渉様 評のお礼 多年音

水無川 渉様詩を読んでいただきありがとうございます。
はい、私は先生のおっしゃたような部分に人の本性を見てもいいと感じています。
人も水と一緒で見方によって様々な色を見せるので、
早計に決めつけないようにしたいななんて思ったので書いた次第です。
今後とも、よろしくお願いします。

編集・削除(未編集)

水無川渉様 評のお礼です。トキ・ケッコウ

今回も詳細にお読みいただき、ありがとうございます。紙飛行機を上手に折って飛ばすことは昔から大の苦手でして、そのコンプレックスがこの詩につながったのかもわかりませんが ── 茨木のり子さんの言葉に「離陸する瞬間を持っていないものは詩ではない」と、あったとは、つゆ知らず、ああそうだったのか、どうりでと妙な納得をしてしまいました。今回の作品は結語(最終連)がなかなかに定まらず腐心したからです。ようやくことばが出てきたときに、え?っと自分でも狐につままれたような感触を覚えたことを思い出します。…… また、なんとかして、書きます。よろしくお願いいたします。

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椰子の木  aristotles200

祭りの後、嵐の前
物語は続く
明日のことは誰も知らない

大海原に浮かぶ
一本の椰子の木がある
あてもなく彷徨う
緑と土の記憶は遠ざかり
潮風と波の音が満ちてゆく

穏やかな海を半月が照らす
時が止まったかのように
椰子の木は浮かぶ

遠い西の空には
黒雲と雷光
嵐の気配、雨の匂い
波はうねり立ち
暗闇の海の上を
何処かに運ばれていく

嵐のあと
辛うじて椰子の木は浮かぶ
渡り鳥が数羽、羽を休ませ
飛び立つ
その重みに耐えきれず
沈みはじめた

椰子の木は
宙を泳ぐように
冷たく、暗い海の中を
ゆっくりと
海底に向かう
弔いのような静けさの中で
旅は、終わりを迎える

軽い音をたて
深海の海底
終の棲家へ辿り着く
椰子の木は、海と溶けあい
朽ちていく

祭りの終焉、嵐の後
物語は終わる
静寂と、安らぎに包まれている

編集・削除(編集済: 2025年11月07日 08:04)

遠い出口  ゆづは

手のひらを埋めるほどの薬袋を抱える
二ヶ月に一度の定期検診の日

診察の長い順番を待つ
誰かの目が ちらりと
私を撫でるように通り過ぎる

テーブルに飾られた造花さえも
氷柱の視線で
私を射抜いてくる

気にし過ぎだよ──
耳元で誰かの声が響いた気がして
それは 自分の声かもしれない

もう慣れたはずなのに
震える指先を隠しながら
一歩を踏み出せずにいる自分が
痛いほどにわかる

薬袋は次第に重くなり
手は痺れて 
私の影は足元の床に沈んでいく

遠い出口が滲んで揺れている
その先へと続く道は
どれだけ歩けば 
辿り着けるのだろう

同じ場所に立ち尽くし
つま先が冷たくなっていく
扉の開く音だけが
私を待っている──

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また夏が  雪柳(S. Matsumoto)

仕事場への道の途中
空をゆく揚羽蝶を見かけた
子供の頃 ふるさとのミカン畑で卵を見つけ
大事に育てた蝶は あんな姿だっただろうか
学校へ行っていた留守の間に羽化し
家族が放してしまったあの揚羽蝶は

ふいに記憶の蓋が開いて
ふるさとの夏が 脳裏に溢れ出てくる
すぐ傍にあり 毎日のように泳いだ光踊る海
浜辺での 親しい人たちとの夕涼み
夜毎仰いだ満天の星、そこに象られた季節の星座
神社の杜から響いていた蝉時雨
草いきれの中 夕暮れまで遊び戯れた野原
置き忘れられたような田舎に暮らしながら
満ち足りた時間を過ごした

いつの頃からか
そんな夏の訪れは途絶えていた
ふるさとを離れたことのためばかりではなく
それはきっと 憂いのない子供の時期でなければ
得られなかったであろう至福の夏だから

もう戻らないもの 願っても叶わないものを
思い起こさせられるのは悲しく
ならばいっそなかったことにできはしないかと
段々体にこたえてくるこの時季の日差しの下
頭の中で 摘み取った記憶の束を抱え
野辺送りよろしく運んでみても
結局どこにも葬り去れるあてのないそれは
幼い頃心弾ませた夏への 疼くような想いを
つのらせるばかりなのだ

さっき見た揚羽蝶は いなくなってしまった
けれど 別れを告げられないままの私の蝶は
今もまだ あの日の夏空を羽ばたいている
年追うごとに増す 日常の労苦を背負いながら
長く歩きすぎて
もう帰り道も分からなくなった遠いふるさとに
今年もまた 子供らのためだけの
珠玉の夏が来る

編集・削除(編集済: 2025年11月11日 12:57)

水無川 渉さまへ 感想へのお礼  つる

水無川 渉さま、こんにちは。初めまして、つる と申します。

ご感想をありがたく拝読しました。
はい、『老いらくのフレーム』は、人生のフレーム。
そういうテーマを設けて、ひとつの詩にしたかったのでした。

生きてゆく内に、人生の意義も変わってゆく。
今私は53歳ですけれども、
自身の境涯、および理想的、願いに近い気持ちを込めて、
綴らせていただいた次第です。

ひらめきと直感に頼って、言葉を使う癖があるかと
思われます。
自身の詩の在り方を、みなさまの作品も読ませていただいて
勉強してまいりたいと存じます。
どうぞ、今後ともよろしくお願い申し上げます。
誠にありがとうございます。

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