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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

シャコ詠歌  上田一眞

茹でたシャコをせっせと食べる
親子四人で食卓を囲み
笊いっぱい盛り上げて食べる
さっきまでゴソゴソ動いていた
活きの良いやつだ

好き嫌いの激しい僕が
シャコなんか大嫌い 卵焼きがいい
と喚いたばかりに

 食べるまでシャコしか出さん!

と宣言され シャコ三昧の日々
シャコに目がない母は
毎朝うきうきして魚市場へ通ってる

そんなこと言われたって
嫌いなものは嫌い
第一 あの形が駄目
団子虫みたいだもの 気味が悪い

それに小さいやつは釣りの餌だよ
何が悲しくて
人が食べなきゃいけないのさ

嫌だけど母が恐い顔して見てるから
チュチュっと吸って
ポイと捨てる
また食べたふりして捨てる
まだ身のついた大ぶりなシャコの残骸が
山のようになっている

このエビカニさん美味しいね
母に子持ちシャコの身を剥いてもらって
ほお張る小さな妹は
すっかりご満悦
パクパク食べている

よく食べるなあとばかりに
あきれて
手を止めて見ていると
とうとう
親父の頭が桜島のごとく大噴火した

 我儘は許さん
 灸(やいと)すえちゃる!

散々逃げ廻ったが
抑えつけられてお尻にお灸をすえられた
お尻が桜島になった
まあ 熱いこと痛いこと
酷い災難
鬼のような親父だ


 (幾歳月かが経った後)


見せたことも
触らせたことも
食べさせたこともないのに
いま東京にいる
僕の息子はシャコが大好きだ

シャコの身体能力について語り始めると
薀蓄傾け 止まらなくなる
さかなクンばりの研究家
きっとおばあちゃんのシャコ好きが
乗り移ったんだ

天界でおばあちゃんは
美味しい
子持ちシャコに舌鼓をうちながら
孫の薀蓄に聞き入っているに違いない

ちなみに僕はいまでも苦手
あの姿
ああ おぞましい

編集・削除(編集済: 2024年01月20日 00:08)

不穏な空の下  荒木章太郎

不穏な空よ
腹落ちできない毎日よ
慢性的な疲労を抱え
あちらこちらが揺れている
噛み合わない体温と
すれ違う言葉達
みんなうつむいたまま
つながろうとして
ぶつかってはいらついて
打ち寄せる心の波よ

こんな空の下で
涙流せるわけないじゃない
怒れるわけないじゃない

ぶつかり合う肉体が
魂を拒み始めた
周りはもっと大変だから
休めるわけないじゃない
目を閉じて口を閉ざしてしまう私も
被災者なのかもしれません

編集・削除(未編集)

シャッター  妻咲邦香

閉じていく空に私は何を言ったらよいのか
瞼みたいな雲が垂れ下がり
ついつい微睡んでしまえば
ここで誰かを待ってた気もするし
もう待たなくていい気もする
そうしてお終いにしてしまいたいけれど
どちらを向いても同じ色の風
これ以上歩きたくなかった

次第に閉じていく
ガラガラピシャリと
音も立てずに降りて来る
まぼろしとか夢とか
綺麗
やっぱり
綺麗だ
しょうがない
全部私の色だから
勿体ないから食べてしまおう

誰かが教えてくれた空と
私の知っている空はそっくりなのに
綺麗な容れものに綺麗じゃない心
公平にひとつずつ
でもそれが本当に欲しかったものなのか
今ではうんと怪しい

だから明日よ
あなたは迷いながら来て欲しい
私は此処だよと呼びかけたなら
その時はじめて一歩を踏み出して欲しい
まだ息のある今日の邪魔をどうかしないで
私を信じて待っててくれて欲しい
そして

力なく瞼が閉じられて
終わりのない物語は私の力では
終わらせられないのだと気付いた時に
深々と丁寧に
頭を下げる

本日は閉店いたしました
またのご来店をお待ちしております

編集・削除(未編集)

嘆春歌   晶子

かわいそうに春が来た
君のいない春が来た
今年開いた花達は
君を探しているけれど
君はどこにも見つからない

君が見つけてくれたから
きれいねぇ
と言ってくれたから
寒い冬にもじっと耐え
春が来るのを待ったのに
やっと開いたその先に
君の姿が見つからない

だからせめて花達よ
散りゆく時は君のもと
春など来るなと
泣く人の
想いをのせて舞い落ちろ

そしてせめて花達よ
何度も過ぎゆく春のたび
散りゆき君に会いに行け

*****************

※題名の嘆春歌(たんしゅんか)は造語です。

編集・削除(未編集)

紗野玲空様へ 評価の御礼

詩の感想をありがとうございます。
新年から、心がざわつく出来事に、想いを馳せたいと思い詩にしました。
次回は、自身の経験談を交えて投稿させていただきます。

編集・削除(未編集)

飼い猫と呼んで下さい 紫陽花

はい私は野良猫でした
定職はありませんでした
屋根があるところなら
大体のところで寝ました
ご飯は気が向いたように
調達しました
少し愛嬌があるので
寂しそうな人を見つけては
少し近寄ってあげました
喜ばれました
なるべくか細い声で鳴きました
優しい誰かが撫でてくれました
こんな毎日でよかったんです
結構気に入っていたんです
目覚めた時の一人ぼっちの寂しさを除いては

だれかと一緒にいるのは本当に怖かった
次に会うときに嫌いって言われないか
急にいなくならないか
私に飽きないか
だから孤独な野良猫でよかった
どこにでも溶け込む静かな野良猫だった
優しいあなたにだけ見える野良猫だった
そしてあなたにとって都合が悪くなると
そっと消える野良猫だった

そんなことを思い出したのは
そうさっき我が子から
お母さん お母さんは
なんか野良猫感が強いよ
うん お母さん野良猫だ
と宣言されてしまったから
ああどんなに洗っても取れない野良猫感
私お友達からカステラもらって
子供にあげただけなのに
子供は言う
お母さんは外にふらっと出ると
絶対なんかもらって帰る
それ野良猫だからね
そういうことらしい

はい私は新しい野良猫です
定職あります
住所あります
ご飯はクックパッドで計画立てて作ります
PTAの辺りをテリトリーにしてます
お菓子と情報のやり取りが得意です
寂しそうな人をフォローします
大きな声を出します
新しい野良猫はこんな毎日が
すごく気に入っています

でも本当は飼い猫と言われたいです

編集・削除(編集済: 2024年01月17日 22:20)

予感   小林大鬼

元旦の青天の千葉神社
私には記憶すらない
亡くなった祖父が
毎年初詣に行っていた
それだけである

赤々とした二階建ての本殿の
眩しさに見惚れながら
龍のような行列を並んでいた

参拝にも御守を買うのも
蟻のように並び続けて
敷地内に無数にある
末社摂社を巡っていたら
時間がかかってしまった
正午頃に来たはずなのに

近くで一軒だけ大晦日から
営業中のラーメン屋に入り
大将から正月の神社周辺の
愚痴をいろいろ聞きながら
濃い目の醤油ラーメンを
啜っては腹を満たし
帰りに角の酒場で
甘酒を立ち飲みする

すると客達の携帯から
けたたたましい虫の音のような
地震警報アラームが一斉に鳴り出して
電線や電柱がゆらゆらと
地面とともに揺れ出した

揺れているの?と
酒場で働く少年も
自分に尋ねた

震源地は能登半島付近と
携帯画面が真っ赤になる

嫌な予感しかなかった

関東大震災から百年
卯年から辰年へ
呪われた年月日と数の呪縛

私は思い出した
あの東日本大震災の
立ち上がれなかったあの揺れを

そして能登半島を襲った
火と水と地の大災害と犠牲を
誰も知る由もなかった

編集・削除(未編集)

青島江里様 詩の評価の御礼

「クリスマスの夜」の評価と感想、本当にありがとうございます。自分が描いた以上に想像力でここまで読んで頂いただけで嬉しいです。この詩はクリスマスの夜の自分をそのまま描写したものです。

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待ち時間 麻月

ソファに座っている
壁の時計は秒針がない
眺めていると
長針がかすかに動く

そのうち
コンコンコン
木の音がして
扉が開く

こんにちは
こんにちは

あったかい紅茶を
飲みながら
お喋りをして
笑って

さようなら
さようなら

また
部屋にひとり
音のない時計と
残される

ぼんやり
ただひたすら待つ
長針が静かに動いて
やがてひと回りするのを

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青島さま、評のお礼 麻月

青島さま
素敵な評をありがとうございます。
冬至の夜、木星が光っていて
次はずいぶん先になると知って
書きました。

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