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編集・削除(編集済: 2026年05月30日 02:08)

あかね雲  人と庸

彼女の名前は由子
まわりの人はそう思っているし
そう呼んでいる

彼女の子どもたちでさえも
お母さんの名前は と聞かれたらそう答える

でも 病院でもらう薬の袋や
古い友人からの年賀状には
ちがう名前が記してある

彼女のほんとうの名前は あかね

あかねちゃんが結婚するとき
結婚相手のお母さんは彼女の名前を変えた
いいこともわるいことも 名前が左右すると思っていた

あかねちゃんは 由子さんになった

あかねちゃんは名前が変わったことを
あまり気にしていないように見えた

 「あかね」はあかねちゃんのお父さんが
 好きな詩人の好きな詩から拾い出してつけた

 そのことを思い出すと見えるのは
 夕焼け空よりももっと鮮やかなあかね雲

気にしていないように見えたけれど
コウキコウレイも間近なあかねちゃんは
何かの署名運動に応じるときや
ラインに登録する名前に
「あかね」を使うようになった


あかねちゃんは
時代とも 世間とも 人とも
足並みそろえて生きてきた

そして 娘たちにもそれを示した
意地とも言えるまでに自分の意志を通すよりも
時代に合わせ 世間に合わせ 人に合わせ
昔からの日本の風習に合わせて選択すれば
燃えるようなあかね色ではなく
穏やかな色の雲が心にただようだろうと

でも
いつのまにか時代は
わたしたちの頭上を越えてはるか先まで行ってしまった

風に吹かれるように一緒に進んでいける人
逆風にあおられながら必死にしがみつく人

あかねちゃんと娘のひとりは
たくさんの女性とともにそれを見送った

時代が思ったよりも見えないところまで行ってしまったこと
あかねちゃんはあまり気にしていないように見えた

ただ
子どもたちの心に暗雲たちこめると
あかねちゃんはとんでいく
「お母さんはお助けマンやからね」
そのとき見えるのは
時代も理屈も燃やすような
昔から変わらないあかね雲

編集・削除(未編集)

「ロンドを踊ろう」

泣く女 ピカソ 天才
笑う男 オレ バカ

無意識の念写
無意識の舞 恥ずかしい

演技であるか 演技でないか
マストロヤンニの手をひらくポーズ
浜の向こうの
白い少女の 青い目
小さな 小さな 何故のポーズ 小さな踊り
マストロヤンニ 何故 白いスーツ
後ろ姿 残して
顔 片手で 隠して 去る
去るしかない マストロヤンニ まだ 若い
ひまわり ひまわり
ソフィア・ローレンの 濡れた 瞳
ボロ傘 ボロ傘 ボロコート
雨の中 雨の中
去る うしろ姿
あんた あんた
なぜ なぜ そんなに 美しい 男
あんた 人間
やめたことない
映画8か2分の1
最後のロンド

あんたの奥さん
ロンドに入って
あんた あんた あんた
どんだけ 救われた
だれだ あのひと アヌーク・エーメ
人間 人間 人間
あのひと 苦悩 どれだけ深い

あんた あんた
苦悩に見えない 苦悩に見えない 
苦悩の男
あんた あんた あんた どんだけ美しい
そうだ そうだ そうだ
人間って 誰だ
ソフィア・ローレン   アヌーク・エーメ
どこまでも どこまでも
人間 通し続けた
泣いても 笑っても 踊っても いいんじゃないか

わたし 好き
あんたら みんな好き
真実 生きてる
生きてる 生きてる 生きてる
私も 同じ 真実 生きてる
そうだ そうだ そうだ そうだ
ロンド ロンド ロンド を 踊ろう

編集・削除(未編集)

秋の花筏  上田一眞

さらさらと風は流れ
ゆらぎゆらめく
萩の花
ふと思う 風の姿はどこにある

枝の小花は
ただ 風にそよぎ
やがて
花びらを湖水へ吹き流す

額を撫でる野風が
〈うつ〉に散華した こころを紡ぐ

おお みなもを萩の花びらが散り染めて
一瞬の花筏
初秋のある日に見つけた風の舞
それは湖畔のやすらぎに違いない

編集・削除(編集済: 2024年07月14日 10:43)

石ころ

受け取ったのは
石ころだった
大小あれど
みんな石ころだった
ぶざまな

放り上げてみたが
運りが悪かったか
星にならず
泥土の中に転がった

磨いてみた
一心に磨いた
少し丸くなったが
玉にはならず光らなかった

石ころは
ついに石ころでしかなかった

逃れられず変えられない
石ころは石ころのままで
ひとつの意志なのだ
抱いて
歩いてゆくだけだ

編集・削除(未編集)

17歳の星くず  理蝶

風もそこらで腰掛けてるよ
夏にもう疲れてしまっているんだな

室外機はしずかに震え
吐いて、吐いている
一方 この部屋に
氷嚢のように冷えてたわんでいる俺

今夜集合をかける
なるべく萎れた友達を呼んで

17歳の夜空に落としてきた
豊かに匂う星くずを取り返す行進

気分はパンクで
それもみずみずしい鉄線みたいなパンク
を流して

夜空の関所までは 自転車でゆこう
なるべく汗をかくのが
綺麗だった17歳の作法で

微かに光る思い出が 
まだ夜空の通貨であることを信じて
ポケットには詰められるだけの青写真を

夜空の関所をくぐったら
さあゆこう 星に溺れながら

ずる賢く器用になった
白い腕を大きく振って
手さぐりで
17歳の星くずを探す

ふと あの夏の十字路にただよっていた
懐かしい匂いがして振り返ると
そこには 
みじめだけどまっすぐ光る
俺の星くずがいたんだ

星をつかんだ腕を 
高く高く上に伸ばす
俺たちを見下ろす
神様にもよく見えるように 

調子に乗って
俺はいきなり星くずにかみつく!

ガキンとかたい音がして
歯と星の欠けた夜空に
神様の呆れ笑いがひびく

みんな自分の星くずを見つけたら
流れ星が作った 夜空のけもの道をくだって
家に帰ろう

俺たちの星くずが
前カゴに揺れている
もうあの頃のようには光らないけれど
それでも十分まぶしかった

その日 俺たちの街では
季節はずれの流星群が
みられたという

編集・削除(未編集)

羽蟻   秋乃 夕陽

和室から見える景色は
まさに夏そのものを現している
水色に薄められた絵の具に
白を淡く馴染むように付け足した
そんな背景
伸びる焦茶の自由な線に
緑は白く光り
ときおり吹く生暖かな息に
気持ちよさそうに体を揺らす
開け放した窓の網戸の端に
一匹の羽蟻がウロウロと彷徨い歩き
まるで木々と木々との間を渡りながら
空中浮遊しているようだ

どこからともなくじっとりと
浮き出る汗を拭いながら
私も以前羽蟻のように
行きつけではない銀行へ
たまたま行く途中で道に迷い
畑と住宅地の広がるアスファルトの道を
行ったり来たりしたことを
思い出して苦笑した

人通りもやけに少なく
民家とビニールハウスとが交互に入り組み
歩くたび蒸されたような食物の匂いと
土の香りとが鼻についた
喉の渇きを覚え
あまりにも歩き疲れて
自暴自棄になりながらも
やっと辿り着いた安堵感

(今目の前で彷徨いている羽蟻も
目的地に着くだろうか)
そんなことを考えながら
もう一度網戸のほうへ目を向けると
羽蟻の姿はいつの間にか消えていた

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ルフラン  三浦志郎 7/12

その言葉 フランス語
英語で「リフレイン」
日本語で「繰り返し」

反復は音楽や詩の常套手段である
刷り込みの効果だろうか
度が過ぎると迷惑だが
度が過ぎてかえって名曲になったものもある

フランスの作曲家 ラヴェルによる
バレエ曲 「ボレロ」

とりわけ オーケストラの
スネアドラマー(小太鼓奏者)をスポットしたい

一曲約十五分 三拍子 全三百四十小節のうち
ドラム 三百三十八小節を全く同じ音符のルフラン
試みに分析すると
ドラム 同リズム スティックで四千五十六打

その数を―
奏者も 
もちろん聴衆も 
意識はしないが
大小さまざまな多数を打ち込む
その一打一打の積み重ね
その総体に築かれる音楽

出だしが最も困難で
打楽器奏者にとっての
ある種の試練
技術よりも心の均衡
オーケストラ全員が彼の精神に支えられる
後方にいるもう一人の指揮者だ

一曲を使っての一つのクレッシェンド
各楽器の登場で光彩が与えられる
旋律もドラムに従い反復が続く
リズムが第二の旋律
なによりも
音楽の「場」であり「風景」であり「環境」だ

その打刻に導かれオーケストラは
ピアニシシモの地を発し
フォルテシシモの門をくぐり
ゆっくりと雄渾に
ルフランの架け橋を渡る

会場の人々は賞讃し歓迎する
ルフランへの感動
その声と拍手

反復が
シンプルを突き抜け
辿り着く先は

舞踊と音楽の王国


                        
                                クレッシェンド……だんだん大きくの意
                                ピアニシシモ……音の最弱
                                フォルテシシモ……音の最強


***************************************************

付記
あの優美な旋律と、どちらかと言えば、あの角ばったリズムパターンはあまり相性は良くないと思えるのですが、
妙にブレンドするのは不思議としか言いようがありません。
                          

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三浦志郎様 「てるてる坊主」の評の御礼 ベル

三浦様、「てるてる坊主」の評をありがとうございました。毎回のことですが、締め切り当日まで、直しながら投稿しております。既存曲の山下達郎作品、どんなだろうと調べました。評をいただくまで、存じなかった作品ですが、人が作るもの、心が感じることは山下達郎のようなスーパースターでも、こんな私でもわずかにリンクしているのかなぁと思いました。これからも、詩を書きます。ありがとうございました。

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三浦志郎様 評ありがとうございます。

いつもありがとうございます。
甘めでも「佳作」嬉しいです。少しでも、芯のある詩をつくれるよう、頑張ります。

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寂しいを分かってあげられない 紫陽花

お母さんの調子が悪いので
訪問日に見に来てください
訪看さんから連絡があった
母は色々な精神障害を持っている
今はうつ症状がひどいらしい

ちょうど私の仕事の休みの日に
訪問看護師さんの訪問日があった
その日母と看護師さんと私で
久しぶりに顔を合わせた
母は押し黙ったまま動かない
そのうち静かに泣き始めた
今にも消え入りそうな声で
寂しい寂しいと繰り返している
ああ私が子供の頃からの声だ
そのうち母の泣き声が聞こえなくなり
だんだん意識が遠くなる
私は昔住んでいた岬の町に迷い込んでいった

岬の町並みはいつも
強い海風にさらされている
いたるところに石が積んであるのは
家を守るためだろう
その石積みにはいくつもの
赤いよだれかけのお地蔵さん
あまりに古いものは表情が
消えかかっているものもある
みんな青い海を見つめている
その海までは10歩といったところに
たくさんの小さな家が立ち並ぶ
潮風に誘われるように私は歩き始める
家と家の間は狭く 1mくらいしかない 
その細い路地を抜けると海だ
影になった薄暗い路地をそろそろと進む
狭ければ狭いほど気持ちが落ち着く
もしかしたら私には猫の血が
流れているのかもしれない

そして私の好きな時間は1人の時だ
いつも1人は落ち着くし安心で
1人で静かな時間を過ごすのが本当に好きなので
私には母の寂しいが今日も全く分からなくて
今日だっていつだってあてもなく 
私の好きな岬の町を半分猫になって迷子になるしかない

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