互選結果発表
8月句会の結果を発表します。8月のトップはダイアナさんの「広島忌」の句で10点を集めました。続いて尾花さんの「風鈴」の句で7点、にゃんこさんの「原爆忌」の句、アイビーの「端居」の句、弥生さんの「新涼」の句が6点で並びました。以下、5点句には7句が並ぶ激戦でした。
10点句 10 小六の語り部ガイド広島忌 (ダイアナ)
7点句 87 風鈴にふれてにこにこ抱つこの子 (尾花)
6点句 4 サイレンへ風止まる街原爆忌 (にゃんこ)
6点句 42 端居して世の喧騒と距離を置く (アイビー)
6点句 64 新涼や新作パンの並ぶ店 (弥生)
個人別総合ではにゃんこさんが20点でトップでした。
8月度みんなのネット俳句会・清記一覧 特選2点、並選1点で計算。 7・8・14
1 止まらないポテトチップス秋涼し
2 八十路来て良き汗かける幸せを (てつを) 2 ラガー、茶々、
3 迎え火の吠え出す犬と男の子
4 サイレンへ風止まる街原爆忌 (にゃんこ) 6 ◎えっちゃ、◎ちとせ、かをり、アイビ、
5 鷺の首白き紋様青田原 (和談) 2 ◎ヨヨ、
6 しんがりの船鉾雨に悠悠と (尾花) 2 ちとせ、和談、
7 緑蔭へ漢孤独な翳を曳く (ナチーサン)
8 腹当は明日の元気を約束す (コビトカバ) 1 弥生、
9 夫運転私助手席雲の峰
10 小六の語り部ガイド広島忌 (ダイアナ) 10 ふうり、えっちゃ、尾花、ちとせ、コビト、◎ヨシ、森野、茶々、ナチー、
11 好きな夢選べる未来水中花 (ヨシ) 1 玉虫、
12 平幕は元気はつらつ名古屋場所 (ラガーシャツ) 3 ◎ふうり、比延、
13 流星や幾人残る同級生 (玉虫) 2 ちとせ、ABC、
14 鉢植えに灯る夕菅ひと夜花 (森野) 1 みにょ、
15 しかけたりしかけられたり水鉄砲 (ABCヒロ) 1 比延、
16 極暑日に線香燻り香り立つ
17 つかの間の生とも知らで蝉鳴けり (みにょん) 4 ふうり、えっちゃ、茶々、ヨヨ、
18 水の日に記録的雨皮肉かな
19 鶏も卵を産まぬ極暑かな (ふうりん) 2 ちとせ、ヨシ、
20 更衣逢ひたき奴は何処やら
21 青芦の風を呼びたりあひびきし (かをり) 1 えっちゃ、
22 向日葵や凛と老人寄せ付けず (和談) 1 ヨヨ、
23
24 ほおずきやほの口をして吹き鳴らす (弥生) 2 ◎にゃん、
25 夕菅や湖に暮れゆく比良比叡 (てつを) 3 みにょ、森野、比延、
26 向日葵や人と違ふと吸えぬ息 (コビトカバ) 1 玉虫、
27 夕暮れへ秋は密かに紛れ込む (にゃんこ) 5 ◎てつを、森野、和談、弥生、
28 水着着て昭和モダンの砂スキー (アイビー) 1 和談、
29 鉾の輪に噛ませたる梃子木屑とぶ (尾花) 2 ダイア、アイビ、
30 立つ秋や季節は歪み飛来せず
31 暑くなる予感小石に躓けり (ナチーサン) 4 尾花、ヨシ、玉虫、アイビ、
32 闇深き夫の故郷や天の川 (玉虫) 2 ラガー、ダイア、
33 今朝の秋雨は田畑を潤さず
34 夏草は胸の丈までここ空き家 (ABCヒロ) 3 みにょ、てつを、ラガー、
35 運転は夫におまかせ雲の峰
36 夢心地推しコンサート夏の夜 (みにょん) 1 えっちゃ、
37 玄関を出れば秋津の群るる空 (森野) 2 てつを、にやん、
38 熱風浴ぶ木々も疲るる40度 (ヨヨ) 5 ちとせ、◎みにょ、ヨシ、和談、
39 新盆の供物の礼の昔めく (比延) 1 森野、
40 長崎の鐘の復元盆供養 (茶々) 5 ふうり、えっちゃ、ABC、◎ナチー、
41 みんみんやとく眼帯のもどかしさ (かをり) 5 ちとせ、コビト、てつを、ヨシ、にゃん、
42 端居して世の喧騒と距離を置く (アイビー) 6 ダイア、◎ABC、◎比延、弥生、
43 蝉時雨背に一刀浴びにけり (和談) 2 玉虫、ヨヨ、
44 目を剥いて暑いと言ふや仁王像 (尾花) 3 ラガー、和談、比延、
45 今朝の秋ひこうき雲は茜色
46 八月の悼みごころの靴並ぶ (えっちゃんあら) 3 コビト、かをり、ナチー、
47 句集編む時の流れや梅雨湿り
48 炎天や悲鳴を上げる室外機 (てつを) 1 ヨヨ、
49 炎暑果てほっと一息夕日観る
50 無人駅風は青田を渡り来る (にゃんこ) 5 ふうり、みにょ、てつを、森野、比延、
51 炎暑なり荒れに荒れてる名古屋場所 (ラガーシャツ) 1 茶々、
52 寝室に蟷螂全身に寒気
53 老犬の座り込みたる秋暑し
54
55 語り部の白髪三千丈原爆忌
56 このセット取れば優勝蝉時雨 (ヨシ) 2 コビト、ダイア、
57 猛暑日も牌で鍛える古き脳 (みにょん) 3 えっちゃ、尾花、コビト、
58 迷い道して出会いたる花鬱金 (森野) 1 尾花、
59 母と見るプレバト俳句蚊遣香
60 師の病快癒願ひて笹飾る
61 原爆忌さらけ伝えよ世界中
62 踏み上る崩れ石段花は葉に
63 初めての町に既視感百日紅 (アイビー) 4 みにょ、ヨシ、ABC、玉虫、
64 新涼や新作パンの並ぶ店 (弥生) 6 てつを、ラガー、ダイア、◎アイビ、
65 すれ違ひざまに見上ぐる百日紅
66 向日葵は今太陽に挑みたり
67 雨の京都地につくほどに夏柳 (尾花) 3 ◎茶々、玉虫、
68 冷奴何も吸収したくない
69 ペン胼胝の名残かすかに桜桃忌 (てつを) 2 ヨシ、弥生、
70 孫を待つアロハで変身米寿なり (和談) 1 ヨヨ、
71 蚊遣香持ちつつ移動庭仕事
72 夢に入ることもできずに明易し
73 憧れて届かぬ遠さ夏茜 (ヨシ) 3 にゃん、◎玉虫、
74 面痩せの何処に立ちても夕立かな (かをり) 1 ナチー、
75 溜息を繰り返しつつ夜の秋
76 美しく儚きものに揚花火
77
78 森更けてなほ蜩の鳴き止まず (森野) 1 にゃん、
79 みちをしへ遥か先行く父の背ナ (玉虫) 4 ◎尾花、てつを、アイビ、
80 あれこれと歳時記片手に熱帯夜 (みにょん) 1 ラガー、
81 昼日向ビール三昧蝉時雨
82 マスカット一房囲む甘さかな (ふうりん) 3 かをり、茶々、弥生、
83 愛猫も興奮夏の甲子園 (茶々) 1 ABC、
84 手花火のじじと弾けてみな終る (かをり) 2 にゃん、玉虫、
85
86 表札はローマ字表記秋の薔薇 (弥生) 2 かをり、比延、
87 風鈴にふれてにこにこ抱つこの子 (尾花) 7 ちとせ、コビト、ヨシ、茶々、和談、◎弥生、
88 太陽のコロナ閉じ込めスイカ玉 (てつを) 4 コビト、かをり、ナチー、和談、
89 生き過ぎたといふ義父逝きし初の盆 (えっちゃ) 3 みにょ、◎コビト、
90 日を浴びて畑に向日葵凛と立つ
91 なまくらなこの身を嗤へ蝉時雨 (にゃんこ) 4 ◎ラガー、ダイア、ABC、
92 寝室を出たらあちらに蝉王国
93 蛍の点滅闇を争はず (ナチーサン) 2 にゃん、茶々、
94 御所東膳を揃えて生身魂 (ラガーシャツ) 1 かをり、
95 豊漁の鰯クレーンの網開く (ダイアナ) 5 えっちゃ、尾花、ABC、アイビ、弥生、
96 秋簾昭和の会話聞こえそう (ABCヒロ) 2 てつを、ナチー、
97 今の子に貧乏話終戦日 (アイビー) 1 弥生、
98 名は名古屋朝顔とあり江戸の鉢 (森野) 1 ふうり、
99 旅先で席譲られし冷房車
100 盆唄や炭坑節を繰り返し
101 熱波の水桶で伸びてる蛙の子
102 古本の書き込み侘し夜の秋 (比延) 3 ◎森野、アイビ、
103 茄子馬で迎え火求め先祖来る (ヨヨ) 2 ◎和談、
104 ひまわりも俳句も好き麻雀も (みにょん) 1 ラガー、
105 万博リングそぞろ歩めば風涼し (ふうりん) 2 尾花、ダイア、
106 夏場所や光る土俵に巨人舞ふ (和談) 1 ヨヨ、
107 ちはやぶる一生懸命蝉の声 (ラガーシャツ) 1 ふうり、
108 初穂の田雨渇望す地割れかな (ダイアナ) 2 ふうり、みにょ、
109 朝戸開く外に暑熱が横たふる (ちとせ) 2 ◎ダイア、
110
111 やわらかき野に膝をりて今朝の秋 (かをり) 3 尾花、森野、ヨヨ、
112 奪衣婆の乳房あらはに黴の堂 (アイビー) 3 かをり、ABC、ナチー、
113 唖蝉の不意に翔ちたる翅音かな
114 藍浴衣男嫌ひをとほすかな (えっちゃんあら) 5 かをり、にゃん、ナチー、比延、アイビ、
115 雷鳴に居間を離れて長電話
投句者は、ヨヨ、和談、コビトカバ、えっちゃんあら、ラガーシャツ、弥生、にゃんこ、ABCヒロ、尾花、森野、ふうりん、ヨシ、ダイアナ、ちとせ、みにょん、てつを、ナチーサン、アイビー、玉虫、茶々、比延、かをりの22名。
間違いその他不都合をご連絡下さい。
投句料が無料の募集俳句はそうざらにはありません。①ねんりんピック愛媛 ②天下布武俳句大会 がいずれも6月30日締め切りです。第77回芭蕉翁献詠俳句は7月31日必着です。いずれも投句料が無料です。
それはそうと、ABCヒロさん、皆さんに連絡事項があるのではありませんか。
2 草取女腰をなだめて又しゃがむ (いちごさん) 1
早乙女とくれば妙齢、一方草取女は悩ましいところだが中七、下五を得て高齢と即断するのは短絡すぎるか。いずれにしても生活の一部、この労働を避けて通るわけにはいかない。音を上げそうな体を宥めつつさあもう一頑張りとしゃがむ女。こう言われてみると何故か自分のことを言われているようで思わず共感勇気をもらう。不思議な力を持った句だ。
9 クチナシや幸せ届く香り持ち (ヨヨさん) 2
花言葉は忘れたが梔子の花は大府市の市の花である。市制50周年を期に今年から桜が加わった。梔子は子規も愛でているが「香りのプリセス」と言われるほどであるという。作者はさらに「幸せの香り」と言う。好きな花なのだろう。この場合クチナシは漢字を用いた方が良いかも。名前の由来は実が熟しても口を開かないからとか。
12 電車窓雨の滴り鬼ごっこ
無点句だが無邪気な句だ。車窓に滴る雨粒。つつつーと絶え間なく続く。時に追い越すものもある。まるで鬼ごっこしているみたいだ。作者は退屈な刻をスマホに預けるでもなく自然の営みに委ねているのだ。贅沢と言えば贅沢。作者の感性はこの瞬間研ぎ澄まされているのだ。
58 豊穣の茶色眩しき麦の秋 (ふうりんさん) 2
季語は麦秋で夏。農家では暑い雨季を縫っての麦刈りである。麦畑の少なくなった昨今、あまり見かけなくなった風景だ。「茶色眩しき」に新鮮さを覚えた。豊穣の茶色に稲穂とはまた違った趣が読み取れる。暗唱するうちに懐かしさがこみあげる。
71 投げやりに喋る自販機梅雨湿り (アイビーさん) 2
「しゃべるロボット」を体験した。AIの産物だ。実によくできている。女の子だったが心なしか愛想もよい。この句、運悪く嫌な奴に出会った。時しも鬱陶しい湿り機械的に喋ったのだろう自販機は。投げやりに聞こえた。買ったコーヒーの味が気になるところ。今度喋る自販機に出会いたいものだ。梅雨時に。句材は思わぬところにあるものだ。
108 雨蛙豪雨呼び込み泣きべそぞ (茶々さん) 1
蛙の鳴き声を泣きべそと捉えた。外は豪雨、その狭間に聞こえる蛙の鳴き声。恐らくこの梅雨の時期日々聞こえる鳴き声とは一味違って聞こえたのだろう。そう言われるとそれも有りかなと思えて来る。不思議な句だ。
23 少年は泣き顔見せず今年竹 (ナチーサン)
43 揺れやうのまだぎこちなき今年竹
竹林を通るとスッと若竹が、日を置いてみるみる背丈を伸ばし白い粉を纏って雄々しく立っている。そんな景をナチーサンは少年に重ねて詠まれています。
43の句はその過程の一歩手前の様子を温かな目線で詠まれていますね。
19 買つてまで苦労するなよ今年竹
我が家に黒竹が植えてあります。細竹で枝が黒で気に入り、お風呂の窓から見えたらと植えました。波板で囲ったのですが年を重ねニョキニョキと。剪っては地下茎も切って。
挙句の苦労が身に沁みます。息子さんでも買われて植えたのをみての句と思って微笑ましく感じました。三句の今年竹、興味深く拝見しました。今年の我が家は
五六本風呂の軒突く今年竹 剪るには剪ったけど根はその内に。
筍は切る機会を失ったら、あれよあれよと言ってる間に竹になります。伸び盛りの若竹には羨ましいほどの生命力があります。人間の場合も一緒ですね。伸びる時にはびっくりするほど伸びます。
26 桑の実や十五歳まで木に登り (玉虫さん) 5
昔は当たり前、子供の遊び場は山か川、それに海。大府の我が鞍流瀬川も例外なく立ち入り禁止。勿体ない。先日
上流で数人の子供たちがタモを持って川に入っているのを見て何故かほっとした。公園不足の今大自然を教育の場とし
ての活用が望まれる。
この句、「15歳まで」とあるので昔のガキ坊主かお転婆が幼い日への追憶か。いずれにしても桑畑やお蚕さんまでも
想像され楽しく鑑賞させていただいた。
29 蛍火の向うに父の大工小屋 (ヨシさん) 7
作者の解説で下五は実景と知った。知ったとしても鑑賞は変わらないが実景と知ってより句が身近に感じられたこ
とは否めない。父の大工小屋に「蛍火」の季語をあしらったために作者の意図が伝わりより印象が深まった。
34 筒鳥や母の小言のリフレイン (かをりさん) 2
かをりさんの引き出しを見てみたいものだ。まさかこの句も。筒鳥の声は「筒の底を掌でたたくような鳴き声」と
歳時記にあった。姿はかっこうにそっくりとも。「母の小言」との取り合わせを「リフレイン」と表現、何とも心憎
い。
44 ちゃん付けで呼び合ふ老や水見舞 (子燕さん) 5
水見舞いの季語に出会い懐かしく思った。ときしも梅雨の真っ最中、心配な予報も相次ぐ。ちゃん付けで幼なじみ
と読み取れるこの句の二人、水見舞いにかこつけてお互いの老いを労り合っている様子が垣間見える。心引かれる句
だ。
60 空梅雨のダムの湖底の暮らし跡 (森野さん) 6
ダムの建設には必ず賛否両論のせめぎ合いの歴史がある。どうしても犠牲を伴う。そしていつか忘れ去られ満々と
注がれたダムの恩恵のみが世代を超えて受け継がれる。そこへ空梅雨、湖底が露わになった。悲しいかな昔の生活の
痕跡が目の前に。その一時を詠み止めた一句の印象が強烈。やがて満々と湛えられた水の湖底は何事もなかったよう
に忘れ去られていくのだろうか。
80 夏帽子すぐ腹の減る五年生 (ヨシさん) 3
五年生はギャングエイジと言って洋の東西、地域性別を問わずやんちゃ世代。群れるのが特性。好奇心が旺盛、中に
必ずガキ大将がいて集団で突っ走る。ただ、六年生になると落ち着くのが一般的。この句、「腹の減る」の表現で言
い尽くしている。季語も適切。
98 アイリスを短めに切る夫の供花 (いちごさん) 2
アイリスは輸入されたもので種類も多く立弁と垂れ弁が際立って長いのが特徴、と歳時記にあった。作者はこの花
を仏花に選び丈も短く切りそろえ仏前に供えた。この句から夫の人柄も読み取れ来し方の夫婦仲の良さも彷彿とさせ
る。迷わず特選にいただいた。
[ちゃん]の句を評して頂きましてありがとうございます。
中旬の線状降水帯は豊橋~豊川~設楽にかかり、余波は岡崎、西尾、南知多までの範囲で各所に河川の氾濫をひきおこしました。
白桃句友の多い地域ですから、妻があちこちに電話をかけまくって「◯◯ちゃんのところ、水こなかった?」と見舞いしておりましたが、その電話を聞きつつ「にゃ! もう75にも近いのに ◯ちゃん」と言ってるわ と掲句になった次第です。
男というものは案外淡白な生き物ですから、余程のことでもなければ電話をしないけれど、スマホという便利なものがあるので、月末の電話代金のことなんぞは考えもなしにジャンジャンと電話。 一面、女はいいなあ と考えてしまいます。
故郷から遠く離れているため、同級生との交流は途絶え、身近なところの友人は皆んなあの世へ行ってしまった。春日井に昔の恋人も住んでいたけど、10年前に死んでしまった。 2番目の恋人は故郷へ戻って行ってしまった。 今の女房は10番目ぐらいだよ
難聴で友達も出来ないし、今は一人ぼっち ちゃん付けで呼べるような恋人 今からは無理だんべ。 ふふふ
アイビーの俳句鑑賞で取り上げた俳句も割愛した俳句も、幅広く取り上げていただき有難うございます。同じ句でも選者が違えば、また鑑賞も違ってきます。これが正解と言うことが無いのですから、百人百通りの鑑賞があって然るべきです。特定の投稿者ばかりでなく、広く意見交換がされるとよいですね。
85 梅雨寒や五右衛門風呂に薪を継ぐ(玉虫さん)
私の生涯のうち3日間だけ五右衛門風呂に入ったことがあります。
昭和45年の冬、岡山に住んでいた伯父が亡くなり、お悔やみと手伝いに行った折、当時の葬儀は一切合切家でするのが習いでした。 遠方の親戚は泊まっていきますし、祭壇から料理まで全て家でするわけですから大変でした。 丁度伯父の家の近所に空き家があり、そこを寝泊まり用にお借りして。 その家に見るのも入るのも初めての五右衛門風呂がありました。
50年程前のことで、あまり思い出せないのですが、ずいぶん広い浴室であったような・・・? 浮板に乗って揺らぎながら沈み肩までお湯に浸かり、忙しかった一日を思い起こし感慨にふけったこと思い出です。 玉虫さんは薪を継いだようですが、私はどこから薪を入れたのか思い出せません。
懐かしい五右衛門風呂の句、選句させていただきました。
五右衛門風呂とは懐かしい。今でもあるのですね。薪を焚く風呂自体が絶滅したとばかり思っていました。燃料効率のことを言えば無理かもしれませんが、風情のある五右衛門風呂は残しておきたいものですね。俳句の題材にもなるし。
アイビーの俳句鑑賞 その4
沙羅の木や兄の法会に白き花 (和談)
沙羅は一名夏ツバキとも言う。夏の季語として多くの俳人に取り上げられている。お兄さんの法事があった時、丁度沙羅の花が盛りだったのであろう。清楚な沙羅と兄の法要の取り合わせは雰囲気があってよいと思う。難を言えば座五の「白き花」で少し俳句が緩慢になったきらいがある。上五に切れ字「や」を使っているのだから、沙羅のことは言わなくてもよいように思う。切るということは、以下省略という意味だ。空いた5文字で、お兄さんの人となりとか、参会者の様子が描写できる利点がある。しかし、これはあくまで私の個人的な意見で、異論も当然あると思う。
クチナシや幸せ届く香り持ち (ヨヨ)
梔子は独特の芳香がある花で、生け垣などによく見る。梔子がただ薫っているとだけ詠めば、いわゆるただごと俳句になってしまう。その危険性を作者は見事に解決した。それは「幸せ届く」との楚辞を入れたことだ。この字句を入れたことにより詩が生まれた。ただ、梔子をカタカナ表記にしたのは何か意図があったのだろうか。難読漢字だから、という配慮だったら無用にしたい。
梅雨湿り軋む雨戸を蹴つてをり (尾花)
木造建築では湿気の多い季節は、軋みや滑りが悪くなることがよくある。そんな日常のなんと言うこともない一コマを巧みに描写した。ある方が選句の際に、「蹴っ飛ばす」だったら文句なしに特選に採ったと言っていたが、私も同感だ。「蹴っ飛ばす」ははしたない、そういう気持ちも分らんではないが、俳句が生き生きしてくるのだ。まあ、嗜みある淑女ならそんな無作法はしないか。
花石榴活けて難儀な手紙書く (尾花)
難儀な手紙とはなんだろう、なんともミステリアスな句になった。石榴の花に何かヒントがあるようにも思うが、分からない。焦らさずに教えてくれてもいいじゃないかとぼやいてみても、作者は素知らぬ顔。読み手の側があれこれ想像すること自体が楽しいのであって、ことの実体が判ってしまえば、なーんだと言うことになりかねない。言わぬが花か。
愛猫もちゅーる欲しやこの暑さ (茶々)
猫好きもいよいよ病膏肓に入った感がありますな、これは。チュールは伸縮性に優れた薄手の織物素材を言うらしい。この暑さでは猫が可哀そう、猫にもチュールを上げたいという。人間だって暑いはずだが、人間はさておき、まず猫を心配する辺りが茶々さんの面目躍如たるところ。俳句鑑賞よりも何よりも、恐れ入りましたと降参するほかない。中七が6文字しかなく字足らず。字余りは往々にしてあるが、字足らずは避けた方がよい。字足らずの句で成功例をまず見ないから。
通夜の座を外して白き花卯木 (ナチーサン)
親しくしているどなたかが亡くなったのであろうか。しめやかに通夜を営む会場に、故人の想い出に浸る会葬者一同。作者は、用足しか何かで席を外した。ふと庭に目を遣ると、丁度卯の花が盛りだ.夜目にも卯の花の白さが一際鮮明で、独特の芳香があたりに漂う。通夜の席と一転して庭の卯の花、この場面転換の鮮やかなこと。これがこの句の要諦で、格調を高くしている。
夏帽子確(し)かと押さえてロカ岬 (無点)
ロカ岬とは何処にあるのか、そこから調べたら、なんとユーラシア大陸の最西端、ポルトガルではないか。ポルトガルへ旅行されたのであろうか。と、思ったら日本にもロカ岬があった。本州最東端の銚子・犬吠埼にロカ岬の碑というのがある。最西端と最東端の対比させたのであろうが、この句の場合はどちらのロカ岬だろうか。いずれにせよ、岬は強風が吹きつけるイメージがあり、夏帽子をしっかり手で押さえるのは肯ける。無点句となってしまったが、この句が無点とは信じられない。
アイビーの俳句鑑賞 完
アイビーさん、鑑賞をありがとうございました。
梅雨湿りの句
今は雨戸もサッシになり年中スルスルとよく動きますが、木造の雨戸は雨期になるとやっかいです。普段使わないのでなかなか動きません。押したり引いたりしてもビクともしない時は足で蹴るしかないのです。
嗜みも何も有ったもんではない! ガン、ガーンと蹴っ飛ばして開け閉てしてます。
でも句にする時は少し温和しく・・・。
花石榴の句
石榴の花は鮮やかなオレンジ色で、葉が艶々の緑でとても美しい。一輪飾ると机辺が明るくなり気持ちも明るくなります。
「難儀な手紙・・・」最近はあまり手紙自体書かなく(書けなく)なりましたが、若い時は、お見舞い、お詫び、お悔やみ等の手紙、義父、義母へも気がすすまなくても書いていたものです。出来るだけ明るい花を机に置いて書いていました。
アイビーの俳句鑑賞 その3
薫風や陸前高田に松育つ (てつを)
陸前高田の松と言えば平成23年3月11日の東日本大地震による津波にも生きながらえた、奇跡の一本松のことだろう。全国的な感動を呼び、復興のシンボルとなった松の木。その後、一本松を守るプロジェクトの活動などあり、健在が報道されているところだ。上五に「薫風や」と置き、切れを入れたことで句全体を引き締めている。陸前高田という固有名詞を出したのも流石だ。百万言を費やすより説得力を持つ。
蛍火の向うに父の大工小屋 (ヨシ)
今月の互選トップに輝いた句。作者の述懐にもあったが故義父様を偲んで詠んだ句。大工の棟梁で、仕事場も実際にあったとのことだが、俳句の雰囲気からしてメルへン調で、読み手は様々な想像を掻き立てる。儚げで幻想的な蛍火のイメージを最大限に活かしたのがこの句だろう。季語自体が大変な力を持っていることを再認識した。それと、この句の成功の根底には、亡き義父へのヨシさんの敬慕の気持ちがあったことは間違いない。
信玄と夏の甲府に飲み明かす (かをり)
戦国武将の武田信玄と酒を飲み明かすという楽しい想像。嫌いな人と飲み明かす筈が無いから、かをりさんは武田信玄贔屓なのであろうか。信玄のどういうところが好きなんだろうかと、要らざる詮索をしてみたくなる。信長は機嫌の悪い時に当たったらとか、信玄のライバルの上杉謙信は性格がストイックすぎるところがどうも、とかとにかく楽しい一句になった。
筒鳥や母の小言のリフレイン (かをり)
けたたましい筒鳥の鳴き声に、母の小言をオーバーラップさせた。そこで母の小言だが、お約束の「くどくど」とか「ねちねち」とか言わず、ごく穏当に「リフレイン」とした。このあたりは、自身に後ろめたい何かがあるのかな。非が自分にあり、小言を言う母を疎ましく思っているわけではない。母を蔑ろにはしないが、さりとて猛省して心を入れかえるわけでもない。まことに微妙な「リフレイン」なのである。
ギラギラの昭和を醸す夾竹桃 (ちとせ)
暑い盛りに咲いて花の時期も長い夾竹桃。しかも花の色は自己主張の強い紅色である。その夾竹桃を作者のちとせさんは、苦しかった戦中戦後、苦しかったけれど皆が頑張った高度成長、つまり昭和という時代に重ね合わせた。しかも作者は「ギラギラ」と把握した。この感覚は私にはよく分かる。平成、令和と時代は進み、もうかつてのような一本調子の価値観の時代ではなくなった。同時にかつてのギラギラの時代も終わった。
獅子と化し富士を嚙むなり夏の雲 (鎮岩)
雲の形を何かに擬えて言うことはよくある。夏の入道雲を、なんと獅子に擬えた作者。これだけでも十分に迫力ある比喩だが、なんと富士山に噛みつかせた。俳句と言えども文学作品だから、こうした比喩はアリだと思う。しかし、秀峰富士を噛むとは恐れ入った力業、客観写生もヘチマもあったものではない。無論これは貶しているのではなく、誉めているのだから念のため。
向日葵や犬の企み知らぬまま (無点)
惜しくも無点句となったが、面白い。犬の企みとは一体何なにか、それが向日葵とどういう関わりがあるのか、作者は一切明かしていない。なんともミステリアスな俳句だが、実は読み手が知りたいのはそこなのだ。どなたか絵解きを。
以下次号、不定期掲載
アイビーさん、感想ありがとうございます。
甲府で飲んだのは確かですが、よく憶えておりませぬ。
まあ、挨拶句で東北に行ったら 正宗と夏の陸奥まで飲み歩く と詠むまでのことです。
筒鳥はひねもすよくもまあ、同じ鳴き声で呟くなあ。
つつ鳥や涙箸する母のこゑ うんうん、お互い様ではないか。一生に反抗期www
おやすみなさいませ。
アイビーさん、お纏め感謝です。
今月は邪道ですが、七七につなげたい句を選びました。
18 一日に一つの予定草を引く (玉虫)
厠にめくる墨のみつおと
すみません相田みつをおもいだして。
前半、教訓かなあ、境涯もうっとしいなあと読んで最後に作者の日常を託した季語が出た。
草を引く 輝いた。特選でもかまいません。
26 桑の実や十五歳まで木に登り (玉虫)
初潮知るの夜のさみだれており
勝手に女子として、桑の風を感じます。
29 蛍火の向うに父の大工小屋 (ヨシ)
灯火消したる母子の手探り
これは良い句ですねえ。童話なんです、この風景。
童話には、万人納得です、家族も見えて、もっと点がはいっても・・・
57 花石榴活けて難儀な手紙書く (尾花)
役所に届く楷書うつくし
これは実感です。難儀な手紙の内容でまた一句浴びたいです。私は野暮ですが。
67 でで虫の葉裏にありて深眠り (ナチーサン)
王手飛車差す孫の挨拶
深眠りがいいですねえ、作者の語彙の斡旋に乾杯。
ひとつお孫さんに登場していただきました。
73 白靴やこの世すべてがうさん臭い (ABCヒロ)
バブルの頃も生きていたらし
白靴にうさん臭いとは、よう詠んでくださいました。スカッとしました。
最近、株高ですね。
107 六月や実に分厚き三国志 (玉虫)
薄化粧して読む紅楼夢
季語がぴったり。私は横山光輝の三国志、ゲームの三国志。
スマッシュヒット、良い句ですねえ。
ひどい観賞ですが、お許しを。
アイビーさん、おっしゃるように、短歌の七七というより、連句を意識しました。
短歌は575の後へ階層して言葉を積む感じですが、今回はつかず離れず、酔っ払いなりに「発句の残像」を意識しました.
そしてもう一回発句に遡り、振り返ると「付け句の遡像」の不出来が見えてまいります。外山しげひこ風w
あーー、小難しいこと言ってごめんなさい。
すぐれた俳句は切れ字等で これを17文字でするのですから,大した詩形です。
付け句もどきをさせていただき、皆様の素晴らしい17文字に感謝です。
こんにちは。
かをりさん、ありがとうございます。
まさか、七七を付けていただけるとは!開けてびっくりでした。
しっとりと寄り添ったりパシッと響いたり付句の変化が楽しいです。
かをりさんの七七を付けて頂き景色が深まりました。
自分自身の想いを引き算、引き算として作句しますが、この七七は
18
草を引く想い。
26
木に登った想い。
107
三国志の分厚い四巻を机に並べた時の
読み切れるか?
の想いを付けきれない焦燥を消してもらえたような充足感があります。
ありがとうございました。
俳句とは自らが裸になったときに共感を得られる・・・としみじみ。
凡退続きの玉虫の小さな悟り。
一寸だけ語ります。
桑の実や十五歳まで木に登り
今の十五歳とは違う十五歳が有りました。
すし詰め教室から解放されても、進学するのはほんの少し。
後の大方は実社会に触れるわけです。
木に登るのも、桑の実を好きなだけ食べるのも。
で
生きてきた訳で・・・桑の実が実ると想いが。
より、かをりさんの七七を付けて大人になる頃の女子!が美しいです。
素敵な観賞していただきました。
ありがとうございました。
花石榴活けて難儀な手紙書く
役所に届く楷書うつくし
七七をくっつけて頂き、またまた違う世界が広がってきてビックリ!
皆さんの作品もそれぞれ素敵で驚きです。楽しいですね!
ありがとうございました。
67 でで虫の葉裏にありて深眠り大手飛車差す孫の挨拶
気に入ってます。面白いですね。この試み。
短歌から7,7をとったらどうなるか。・・・ダメか。
邪道どころか実に面白い趣向です。上の575に違う人が下の77をつける、まさに連句の世界ですね。思いがけない方向に行く、自分では制御できないところが面白い。今後もちょいちょいやりましょう。
95 鱗粉を美しくちりばめ夏の蝶
少しばかり難しかったのでしょうね。
蝶々を捕まえると必ず羽根の部分をつまみますね。すると指先に羽根の粉がつきます。この粉のことを鱗粉(りんぷん)といいます。半透明の羽根の部分が羽化した段階で鱗粉に変化し、その模様がその蝶々の独特の美しさを作っているのですが、蝉にはこの鱗粉がありませんから粉が着くことはありません。モンシロチョウ、クロアゲハ、シジミチョウなどの蝶々の種には必ず鱗粉があるのですが、普段聞き慣れない言葉なので、皆さんの心には響かなかったのでしょう。
そして重要なことは<美しく>のことです。 この言葉を「うつくしく」と読んだ方なら、この句は5・8・5の字余りになるので、選の対象外になってしまいますね。 俳句用語には色々難しい読み方の文字があるのですが、<美しく>は「はしく」と読むのが正しいのです。 りんぷんを/はしくちりばめ/なつのちょう となりますので5・7・5に収まります。
春先には眠りから覚めた蝶々やモンシロチョウ、黄チョウなど、小型のものが殆どなのですが、梅雨前の、いわゆる俳句上の「夏」が来ると大型のチョウチョウが見られるようになります。勿論小型のものも飛んでますが、大型がよく目につくようになる。 我が家の庭にも時々アゲハチョウがやって来て、庭の草花に止まることがあるので句にまとめましたが、残念ながら無点となりました。
美しき羽根の模様や夏の蝶 とすれば点を頂けたのかも知れませんが、平凡過ぎるので掲句のようになった次第です。
子燕さん、すみません、生意気書いてしまいました。
来月もパリッとした句を楽しみにしております。
鱗粉の美しさを詠んだつもりなのですが、説明で余計ややこしくしてしまったのかな? トホホ
ただ今帰環。
ちょっとそれは違うとおもいます。
蝶という季語に美しさがありますので、子燕さんが桜を詠んで、美しき花とは詠まないとおもいます。
羽根の部分をつまんだ感触とか、羽化した姿、それをおよみなれば。
対象が蝿、毛虫なら 月並みですが 鍬先に毛虫の腸の美しき 悲しさよ でもいいんですけど。
あくまでも、俳句は喜怒哀楽の形容詞はむずかしいです、上位の句にはそういう形容詞入っていませんよね。
自分に言い聞かせる意味で。別にHN変えなくてもlいいですよ。