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10/13〜10/15 ご投稿分の感想と評です。宜しくお願い致します。
なお、作者の方々が伝えたかったこととは異なった捉え方をしているかもしれませんが、その場合はそのような受け取り方もあるのだと思っていただければ幸いです。
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10/13 「秋の沈黙」 ゆづはさん
非常に美しい詩ですね。
私の住んでいるところには鹿はいないのですが、その光景がありありと目に浮かぶようです。
まず、1連目と2連目の表現が秀逸です。特に「引き絞られた弓のような月」という表現を間に入れたことで、その夜の緊張感がよりリアルに伝わってきます。
鹿の悲鳴のような鳴き声には、危険を感じたときの「警戒音」、秋の繁殖期におけるオスの「求愛・威嚇の声」、母親を呼ぶ声があるそうです。
秋ということを考えるとオスの求愛の声のようにも思えますが、人家の近くということであれば、警戒音である可能性が高いようにも思います。
それに、これを警戒音とみなしたほうが、この詩の雰囲気にはよく合ってますね。そのほうが4連目の表現にうまくつながります。
また、この連の「一瞬の気配だけを/窓の硝子に宿し」という表現も巧みだと感じました。窓越しの暗闇に潜む息づかいが感じられるかのようです。
そして、その後の「鼓膜の奥にこびりつく/幽かな震え」というところが、秋の沈黙と暗闇の中に深い余韻を残しています。
やはり、秋という季節には「静寂」や「沈黙」が合いますね。しかし、それだけにそのようなテーマで描かれた詩は数多くあると思います。でもこの作品では、その静寂を切り裂く悲鳴のような鳴き声を描くことで、とても美しい緊張感を生んでいます。
ただ欲を言えば、月が弓で喩えられているように、この鳴き声も、矢や剃刀、あるいは氷の薄片など、何か物で喩えてもよかったのではないかなとも思いました。
でもそれはあくまでも「欲を言えば」の話で、全体的に構成もパランスのとれた、美しい作品だと思います。
評につきましては、佳作としたいと思います。
10/13 「かんちがい」 三津山破依さん
前半の『一、年甲斐もなく』は、日常的な出来事をユーモラスに描いた作品ですね。男だから還暦を過ぎても、身体が熱くなることもあるということや、そんなこと誰にも言えないといったことは、なんとなくわかる気がします。
でも、そうはいっても、やはり寄る年波には勝てないということでしょうか。
5連目の「こほんこほん、と喉から自己主張。
」という表現が巧みだと感じました。
そして末尾の「枕を抱いて、寝るけどな。」というところも、どこかアイロニカルでいいですね。
ただ、後半の『二、年のわりには』ですが、正直なところ、どのように解釈してよいものか戸惑っています。
「夫の様子がおかしい。」「丑三つ時の早起き散歩」「大声あげて、靴下を咥える。」などの表現からすると、深夜に徘徊する認知症の高齢者様子を描いたかのようにも思えます。でも本当にそのとおりなのか確認が持てません。
仮にその解釈で読んでみると、「私は汚れた床を拭きながら/いっしょに何かを探している。」といったところなどから、そこには、淡々とした口調の中に潜む、飾らない夫への愛情が見えてくるような気がします。
しかしそうなると、『一、年甲斐もなく』の内容は、その男性の認知症故の幻想、というふうにも読み取れてきます。タイトルの「かんちがい」とは、そうい意味ではないかとも思えてきます。
でも、私の詩を読み込む力が不足している恐れもあります。
解釈を度外視してこの作品を呼んでみると、淡々とした口調の中にもユーモラスのある、そんな表現の光っている面白い作品でもあります。
評につきましては、難しいのですが、佳作一歩前としたいと思います。
10/13 「水紋」 Emaさん
とても美しい詩ですね。
自分のアイデンティティを探している心が、不安的に揺れ動くさまがよく伝わってきます。
整然と並んでいる本に見つめられている、という表現が新鮮でいいですね。自分が本を選ぶのではなく、実は私たちは本に選ばれているのかもしれません。
そして、本の中のある言葉を目にしたときの、「それは水滴となって/凪いだ私の海に落ちて」という表現も、心象をうまく表していて、とても巧みだと感じました。ここからタイトルを水紋とされたのですね。
また、「本はかつて /木であり 森であったと」という視点も新鮮ですね。私たちは本を読むときほとんどこのような視点は持っていません。
さらに本に、木の記憶、外の空気、雨の感触について問いかけているところも、繊細な感覚を感じさせて、とても美しいです。
そして最後の2連で再び、アイデンティティの模索への視点に還ってゆきます。その構成に関してですが、本はかつて木であり森であったという視点が非常に新鮮であるがゆえに、冒頭と末尾のアイデンティティの模索の視点との結びつきがやや弱い感じがします。
タイトルの「水紋」とは、本に記された言葉が、凪いだ心の水面に落ちて生じた波紋のことなのでしょう。そうであるならば、その本に記された言葉の雫が主題となっていると思われます。それが生じさせた波紋が、新たなアイデンティティにつながるのか、という淡い期待を感じさせます。そこに、本が木であった頃の、空気や雨の感触の記憶を結びつけられないでしょうか。例えて言えば、過去の記憶と未来への期待が実はひとつながりのものであり、本に記された言葉はその触媒であった、みたいな感覚です。
とは言え、全体的に表現の美しさや視点の新鮮さはとても優れていると思います。
評につきましては佳作としたいと思います。
10/13 「暁はまだ俺を知らない」 うたい屋さん
初めまして。初めての方ですので、今回は感想のみとします。
何とい言いますか、とても「男っぽい」詩ですね。
まず冒頭の「つぶされる」という一行がいいと感じました。これはいわゆる「つかみ」としてとても効果的だと思います。そしてその後の「何のために/誰のために」という問いを捨てられないというところや、「大人」とか「分別」とかへの言い訳についても、多くの人が共感するでしょう。
さらに「泥人形」の喩えも面白いですね。「乾けばひび割れてさ/濡れりゃ形をなくしてさ」というところを読んで、なるほど、と納得します。
「人はそもそも魔法使い」。その魔法の原動力は欲望でしょうか、野心でしょうか。それとも失われたものを取り戻したいという想いでしょうか。それを取り戻すためには、己の世界を揺らしてみなければならないのでしょう。
未来に何があるか誰にもわかりません。ですから人生とは「一か八か/カードを切る」ことの連続なのかもしれませんね。
「迸れよ」や「青臭くあれ」という表現も力強くていいですね。己の決心や自分自身への鼓舞を感じさせます。
ただ、ネットの中の詩には、このような主題や視点のものが数多くあり、決して珍しいものではないと思います。そのような中で読み手に「ああ、またか」などと思われないためには、何かしらの独自性が必要となるでしょう。
タイトルに「暁」という言葉がありますので、東雲の空や朝焼けの色、あるいは霧消する闇や長い影などといった言葉を用いた比喩を入れてみるのもいいかもしれません。
でも、冒頭の「つぶされる」や、泥人形の喩えは印象的でした。
10/13 「二人」 aristotles200さん
ドッペルゲンガーを描いた作品と思ったのですが、この二人は左右が逆なのですね。
一人の人間が左右に分岐したけれども、還るところは同じというのは、どこか奇妙ですね。
そして、互いに自分の居場所がなくなることを恐れて、必死に相手を押しのけようとしているところが、滑稽でありながらどこか恐ろしい感じもします。
ここには、何か現代社会への含意がありそうな気がします。
私はジル・ドゥルーズの「差異と反復」を読んだことはないのですが、ドゥルーズは存在論のレベルで差異を捉え直したそうですね。
従来の哲学では、例えば「まずリンゴという同一の分類(種)があり、その中に赤さや大きさの違い(差異)がある」と考えていましたが、ドゥルーズはこれを反転させました。「世界の本質は絶えず変化し生成するダイナミックな流動体(差異そのもの)であり、私たちが勝手に枠にはめて『同じリンゴ』と括っているにすぎない」と主張しました。固定された自分や絶対的な真理はなく、変化し続けるプロセスそのものが世界の姿だと捉えたのですね。
これは仏教の、「金剛般若経」や「中論」に述べられている思想に近いような気がします。
ありのままの世界を見ずに、言葉によって抽象された概念を「実体」と捉えてしまうことが、それへの執着や苦悩を生んでしまうのです。
それを踏まえると、最後の、互いに自分の居場所がなくなることを恐れて、必死に相手を押しのけようとしているところの恐ろしさが、より際立ってきます。
絶えず変化し生成するダイナミックな流動体である世界の本質を見ずに、言葉で表された「同一性」を実体視することが、現代社会の様々なところで観られるような、分断や対立や排他的なナショナリズムにつながっているのではないでしょうか。
私にはこの作品の末尾の2つの連に、そのことへの風刺や批判を感じられました。
この解釈が正しいとすると、この作品は現代哲学(特にポスト構造主義)や大乗仏教(特に中観派)の知識が必要となる難しい詩ということにもなります。
しかし個人的にはとても興味深く読ませていただきました。(ちなみに、左右に分岐したのは、政治的な「左右」とかけているのでしょうか?)
評につきましては佳作としたいと思います。
一、馬車
かぼちゃの馬車に乗りたくて
わたしは時計の針を戻す。
人差し指でそっと触れた。
あなたの後ろ姿を探しに。
かぼちゃの馬車に乗りたくて
わたしは少し意地悪をする。
壁に小さく、落書きをした。
やっぱり、あなたに探して欲しくて。
馬車に揺られる時間は刹那。
それなのに
お尻は痛くなってしまう。
それなのに、望む。
あなたを探す旅に出かけましょう。
カボチャの馬車は置いたまま。
ねずみとトカゲは立ち尽くす。
ふふふっ。
あしたの朝には夜が明ける。
二、スープ
立派なかぼちゃを拾ったので
スープを作ろうかと思う。
あなたが舌つづみをうつような。
包丁で刺す。何度も何度も。
なかなか上手くはいかないけれども、
左手は必ず猫の手で。
硬い皮膚を強引にこじ開けよう。
要らないものは取り除き、
なるだけ薄く削いでいく。
茹でたら柔らかくなるのです。
しっかり濾せば、舌触りも悪くない。
乾燥パセリをぱらぱらすれば、
黄色と緑の出来上がり。
あなたがいないので
ひとり、スプーンで掬います。
残りはタッパーに入れて、
しっかり、冷蔵庫へ。
奥底にしまいます。
ふふっ。
あしたの朝までには
探しておいてくださいね。
今日も枕はびしょ濡れで
苦しいほど明日に祈って
期待が泡みたく膨れ上がって
もうしょうがないんだな
諦めてしまったら
もし仮にでもやめてしまったら
軽くなれるのかな
楽になれるのかな
わからないな わからないな
もう何一つだってわからないな
考えすぎて頭が痛くなってきた
気分が悪いよ
命が痛いよ
悲痛な叫びが僕の中
胸の奥のビートと混ざり合った
待ってこのままじゃ太陽が
昇る前に夜が途切れてしまう
苦痛な昼間を閉じた蓋
その果ての温もりを知らぬまま
そっとのばしたつま先が
闇夜の谷の淵に触れる
ふと足元に明かりを見た
どうしようもないほどに空っぽな
心を満たすのが傷跡で
情けなく溢れ出てしまっても
喉のここら辺が熱くても
そのひとしずくが光なら
椅子の軋む音
それは
私の背骨だったかも知れない
動くたびに
その音は
身体のどこかから鳴った
暗がりの向こう
冷たく光るシンクが
体温を奪う
息をひそめながら
もう一度だけ
身体を反転させてみる
乾いた音が
部屋の四隅へと吸い込まれた
私の輪郭は
木目に溶けてゆく
次に鳴る音は
この椅子の最後の呼吸だろうか
それとも私の声だろうか
やがて
影は床へと沈んでいった
何も聞こえず 何も痛まない
ブラインドの隙間から
月光が零れていた
ただ 椅子だけが
そこに残されて
生まれた町の住んでいた団地が取り壊されて
もう何十年も経つ
父ちゃんが通ってた
おでんの一杯呑み屋の親父さんや常連さんは
生きていたとしても随分歳をとったろう
カウンターだけのお店で
皆、長椅子に肩寄せ合って
日本酒とやらをコップに注いで
赤ら顔
からしたっぷり割ってない割りばしで
お皿の横っちょにスッと塗るように
小学校低学年のぼくに
「うまいおでん屋があるんだ」と
連れてってくれた
父ちゃんもお酒が呑めないのにな
いまはお店も跡形もなく
町並みも代替わりして
昭和は歴史になっていた
引っ越した新築だった実家にも
いま暮らしているのは
母ちゃんだけになっちまった
ゆめはありますか
見上げた夜空は昭和平成令和
いまなおひかりつづける冬の星座よ
想いと共に
父ちゃんは生きてる中で
いくつの夢を叶えることができましたか
まずは論評ありがとうございました
佳作との評価、嬉しく思います。
世間的な価値観と「僕」の生き方を対立させてみましたが、そのメッセージを的確に読み取ってもらえてよかったです
とはいえ少し説教くさくなってしまった、とは思っています
次回に活かそうと思います
ありがとうございました
星々の隙間から忍び込む冷気にまぎれる白み。
ああ、朝が来る。
静まりの闇のなかで、いち早くその訪れを感じる鳥たちが一声をあげる。
ああ、朝が来る。
深い影であったものが、いつの間にか自らを現しはじめる。木々、湖、そして雲。
やがて地平線の向こうから
白みはあなたの色を帯び始め
わたくしの指先を
鼻先を
頬を
髪の先を
あらわにしてゆく。
ああ、朝が来る。
音の噴水を浴びよう
誰に遠慮する事も無く
響くは ロックンロール
歌うギター
唸るベース
轟くドラムス
嗄れたヴォーカル
忘れかけていた
野性の血が滾る
もう 引き返せない
なりふり構わず踊れ と
煽られて その通りにする
煽る彼等は 満面の笑み
とどめを刺された
もう 限界なのに
私は 操り人形
それでも 快感を覚える
出せる情熱を 出せるだけ
そうでないと
新しい気持ちで
明日を迎えられないから
更なる 音の噴水に
疲労困憊しても
帰路は しっかり歩ける
不思議なくらい 平常心
きっと エンドルフィンが
漲っているに違いない
ライヴは 心の栄養
辛気臭い音楽など要らない
青い時代に私が好きだったあなたへ
あの頃は、自分の気持ちが先で
あなたの事を深く知ろうとはしなかった
ただただ、感情をぶつけ合い
好きか嫌いかであなたを責めた…
今、私に思い出されるのは
俯いて涙を堪えた横顔だけです…
どうか今
あなたを大事にしてくれる人と巡り合い涙を流していませんように。
花の時代に恋したあなたへ
二人とも蝶のように飛び回り
桃色の花、薄紫の花…色々な花へと飛び移った
只々楽しくて
お互いに思いやる事も無く
自由きままに、自分勝手に傷つけてしまったね…
あの頃に戻れたらあなたに聞きたい事は
本当に愛していた蝶は誰か?です
でも、戻れたら私はあなたを問い詰めてしまうでしょう
今は苦い思いでとして笑ってしまいましょうね。
常春のような時代に愛し合った貴方へ
貴方はいつも深い森の中の陽だまりのよう
広くて暖かいその森で、
私は猫の様に心地よく日向ぼっこをします
サラサラと葉が揺れて
私の背中を風が羽の様に撫でてくれます
只々静かで穏やかに…
私が伝えたいのは
ここが永遠に無くならないように
踏み荒らされないように守りたいのです
今愛しているのは貴方ですから。
私が貴方に約束したいのは、
私が森の番人になります
この森が永遠に無くならないように。
ですから、どうか私を愛していてください。
愛する貴方へ
貴方が愛する猫より…
サイン
彼女が泣いたわけが僕にはわからなかった
僕はいつものように鍵を開け家に入り
おかえりという彼女にただいまと言った
それ以上の言葉はかわさないのがお決まりだ
仕事が終わって僕は疲れているから
現場仕事で汗をかいているから
まずはシャワーを浴びて
ご飯を食べておちついてから
ぽつぽつとその日の話を始める
いつもそうしてきた
なのに今日は違ったんだ
いただきます、と言ってご飯を食べようとしたとき 突然
彼女は泣きだしたんだ
え、なに? どうしたの?
僕は彼女に問いかけた
わかんないと彼女は言った
何かあったんだね、言ってごらんと
僕は立ち上がってやさしく問いかけた
わかんないの、わかんないけど涙がでてくるの
と彼女は言った
僕はもうパニックになってご飯どころじゃなくなった
彼女は私のことはいいからご飯たべて冷めちゃうからという
僕はとりあえず座り直してご飯に手をつけた
彼女はぐずついていたが落ち着きは取り戻していた
味もよくわからないままにご飯は食べ終えた
僕はいつものようにごちそうさまと言った
するとなぜか彼女は笑い出した
え、え? なに、どうしたの?
すると彼女は言った
あなたってなんでもさ 決まったことをするじゃない
決められた生き方っていうか
ルーティンっていうのかな、そういうの
え、と決められたことをしている? 僕が?
そうよ、だって今いったでしょごちそうさまって
言ったけど、それは普通でしょ?
そう、普通なんだけど、何ていうか、わたしは普通じゃなかったでしょ?
泣いてたんだもん。気が気じゃなかったでしょ?
そうだね、どうしたのか心配だった。
でも、そんなときなのに、ごちそうさまは普通に言うんだな、って、それがおかしくて笑ったの。
ん?よくわからないな。
僕はいったい彼女が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。彼女は言葉を続けた。
あのね、あなたってさ、自分だけのルールで動いてる人なの。頑固っていうのかな。
別に悪い意味じゃないんだけど。あのさ、わたしが泣いたのはね、今日ちょっと悲しいことがあったの、
テレビドラマなんだけど、ヒロインの恋人が死んじゃったの。そう、今見ててはまってるやつ。それで、なんだか悲しい気分だったんだ。
それでね、あなたが帰ってきたとき、気づいてほしかったの。私が悲しい気分だってこと。だからさ、おかえりっていうときに、すごく悲しい気持ちでおかえりって言ったの。
でも、あなたは普通にただいまって言った。気づいてほしかったの。うん、それはいいの。気づかないのが当たりまえだから。それでもさ、なんだか悲しい気持ちがますます出てきてね。それでご飯をたべるときにさ、私あなたの顔をじっと見てたの。気づいて欲しくって、悲しそうな顔の私に気づいてほしくって。でもあなたはまるで気づかずにご飯の方ばっかり見て、いただきますって言ったから、私の気持ちはやっぱり届かないんだなって、悲しくなって泣いたの……ううん、あなたは悪くないよ。仕事で疲れてるんだもん、気づかないよね。っていうか、なんで泣いちゃったんだろ私?
結局、彼女は怒ってないし、気にしないでって言ったけど、僕にはどうも納得いかなかった。
彼女が泣いたのは、僕が彼女の気持ちに気づかなかったらしいけど、僕は超能力者じゃないから当たり前だ。
いや、違うな、そういうことじゃないのか。
僕は何よりシャワーを浴びてご飯を食べることだけを考えていたのかもしれない。何より優先させていたのかもしれない。だから彼女が送ろうとしたサインに気づかなかったかもしれない……。
彼女が泣いたわけが僕にはよくわからなかった。
でも、次はわかるようにしなきゃいけない。
いや、泣かさないようにしなきゃいけないんだね。