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ここから詩人として巣立った人は数知れず、です。あなたの詩を継続的に見守り、詩の成長を助ける掲示板です。

(あのーー、私が言うことでもないんですけど、詩は自由を旨としていますから、どこにでも投稿しようと思えば、投稿できないところはないんですけど、いきなり大きなところに挑戦しても、世の多くのものがそうであるように、ポッと書いて、ポッと通用する、ポッと賞が取れる、なんてことは、まずありえないことというか、相当に稀有な話なのです。
やってみることは止めませんけど、大きなところのノー・レスポンスにがっかりしたら、
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編集・削除(編集済: 2025年01月02日 01:55)

黒豆を煮る  ゆづは

鍋に沈めた黒豆から
水面に色が溶け出し
音もなく 滲み広がる

じっくりと時を重ね
立ち昇る湯気の向こう
色は淡く 輪郭を失い
記憶の底へと透けてゆく

ことこと 静かな熱の調べ
ふつふつ 豆の独り言
満ちる蒸気が
冬の家の体温を灯す

冷たく硬かった芯も
やがてほどけて
ゆっくりと緩んでゆく

煮込まれた黒豆は
再びその色を纏うけれど
もう以前のような
頑なな黒ではない

一粒一粒が
内側から柔らかな光を放ち
新たな艶を湛え始める

編集・削除(未編集)

I Owe You? 佐々木礫

俺は密度を愛せない。抽象的な言葉が嫌いだ。何も考えず、人通りのある街を歩いて、ありきたりなコーヒーを飲むと心が落ち着く。
しかし、そのカフェへと向かう道には、その平穏を乱すものがある。気がつくと、ビル群の隙間、入り組んだ路地裏に立っている。何度も来ている気がする。歩き方を迷う前に、足がもう知っている。曖昧な順路で歩いて行くと、その突き当たりには黒い板に銀のドアノブが付いた扉があった。ビル風の温度ではない、人の体温のような湿気を含む風が、一つの扉に向かうよう整流されており、俺の背中を押す。
促されるままにドアノブを捻り、見た目に反して拍子抜けするほど軽い扉を開く。
一歩入ると、景色が変わった。暗い部屋だ。
壁のステンドグラスが、拡散した鈍い光で微かに空間に明かりを届けている。
その壁の他には黒い光沢のターンテーブルが一台あり、女が一人、ステンドグラスを背にして椅子に座っていた。西洋中世の風合いの白いドレスを纏った彼女は、顔の輪郭がひどくぼやけており、若干の微笑みが感じ取れるだけだ。
「いらっしゃい」
女のか細い声が部屋に反響した。
俺は返事をせず、「座って」と言われる前から向かい側の席に座る。テーブルの上には何ら御馳走はなく、誰が回している訳でもないのに、ひとりでに回転している。
この虚無的な情景をして、俺に何を見せようというのか、苛立ちと共に考えるが、彼女は意味のあることを何も言わない。この空間での沈黙は、擦り切れるほど読んだ純愛小説のような味けなさへと、俺を導く。
俺が無言の合間に耐えきれず口を開く。
「今日は平日なのに随分道が混んでた。何かと思って調べたら、世間は祝日だったらしい」
この当たり障りのない会話のきっかけも、ただ薄闇に吸い込まれるだけだ。
なぜこんな仕打ちを受けなければならないのか、検討もつかない。しかし、何度も来ているうちに、分かったことがある。どうやら、この女は俺に気があるらしいことだ。
睨みつけても、あえて目を背けて時間が経つのを待っていても、彼女は薄ら微笑んだまま、この時間が彼女のささやかな全幸福の種であるかのように安らかな表情で俺を観ている。どこかで会った訳でもないし、そもそも存在してすらいないであろう影のような女の像は、紛れもなく俺に歪んだ愛を向けている。
「なあ、もういいだろ。なんの意味がある」俺は問う。「お前みたいな無口で薄気味悪い女は好きじゃない。強いて言うなら、お喋りで頭の軽い、優しい女が好きだ」
ゆらり、と彼女の胸元の辺りに蝋燭が灯った。その手には金色のメッキが殆ど剥がれ落ちた古い蝋燭台が乗せられている。
ターンテーブルの向こう側、女の目元は陰に隠れて口元だけが露わになった。白い喉、桜より薄い色味の、細い唇。初めて見た立体的な彼女の顔は、作り物めいていたが、その美しさに唾を飲んだ。
「綺麗なんだな。顔を見せてくれたんだ、次は何か言ってくれないか」
ここに来て初めて、少しの高揚が俺の心に芽生え始めていた。
i-o-u。彼女の口がそう動いたように見えた。
「なんだ?聞こえなかった」
俺はそう言って蝋燭の奥の彼女の顔を覗こうとした。
途端、キュルキュルという音が聞こえて目線を落とすと、ターンテーブルの回転がレコードの再生時のように早くなっている。次第に、ガタガタと、中心に一本生えたテーブルの足が軋み始めた。
どうにも不穏な様子に俺はこの得体の知れないものを怒らせたのかも知れないと思い、冷や汗が滲んだ。
彼女を見ると、テーブルの回転に同期するようにして、細い唇が千切れんばかりに動いていた。そこから音は漏れていないようだった。
いよいよ訳がわからない。俺にどうしろというのだろうか。それに、前回までならとっくにこの部屋から解放されている時間だった。募る不安に任せて、「いい加減にしてくれ!これ以上俺に関わるな!」と俺は叫んだ。
ピタリ、と彼女の唇が閉じた。ターンテーブルの回転音だけが静寂の中で響いている。
にわかに、彼女の手が蝋燭を少し持ち上げた。やはり人形のように細い鼻、茶色く薄い眉、そして——目だけは違った。見開かれた瞼、火の橙色を映した虹彩、そして、その光を滲ませているものは、涙だった。下瞼を決壊した雫は、蛇口を閉め損ねたように、そろそろと頬を流れ落ちて行く。
頭痛。俺は鋭い痛みを感じて頭を抱えた。
ああ、記憶!
溶けた時間の砂塵を含み、薄灰色に霞んだその雫は、追憶の縞をまといながら、彼女の胴体を伝って行った。そして、ゼンマイ式の鼠のように、ターンテーブルの下を通り、俺の足下へやって来た。
知っている、俺は飲まれる。この涙に、なす術は無い。
俺は決して目を瞑らずに、その大粒の涙を睨む。冷たい白の床の上、ぷるぷると、涙が揺れる。
実存を蝕み、微睡みに誘う、濃密で重い濁流。この記憶の圧縮物は、俺の瞬きを待っている!
「ねぇ」
前から女の声がする。迷い、涙から目を逸らす……
何か、変わった気配はしなかった。床の涙は消えている。
何が違う?
……ああ!向かいに座る王女の顔は、平たく茶色い木の「しゃもじ」!
もはや物言わぬ「人形」ですらなく。
水音。
足元は水浸しで、スニーカーは水を吸っている。
(ああ、雨の日のドレスコードは知らなかった。)

雨後。
彼女と歩いた竹林の、深い水溜りを思い出す。
――Don't be ridiculous.
そこに飛び込んではいけない。少年は彼女にそう言った。
"Your mother will get angry with you."
(ママが怒るよ)
それを聞いて、彼女は笑う。
"Maybe. But that's not a problem!"
(たぶんね。でも、大丈夫だよ!)
そして、彼女は無邪気に水溜りへ足を踏み入れた。
濡れて輝く林間の、隙間から差す眩しい陽光。
その光を反射した、泥を含んだ水飛沫。
ああ、記憶の、断片。
彼女は振り返り俺を見る。その瞳には、僅かな緊張、期待と誘惑。
(Stop it. You will weep coming home.)
君は帰り道で泣くことになる――俺は少年に、そう言いたい。
強張りながら一つ飛び、少年は彼女の隣へ立とうとした。
足が水に着く、その瞬間、視界が揺らめき、俺はまた元の部屋へと引き戻された。

ステンドグラスから差す光が少し夕焼けの色を帯びた部屋で、キュルキュルと、少し軋んだ音を立てて、ターンテーブルは回っている。
長い沈黙。俺は「しゃもじ」と向き合うばかり。
しかし、思った。
(君の顔が無くなって良かった。前は、違った。)
もし今の君に顔があるなら、あの靴が泥に塗れる頃には、
その虚ろな目で俺を見つめて、幼さを恥じる巧妙な口で言うのだろう。
「馬鹿みたい」
身の毛もよだつ浅はかな「深み」。空転する記憶と、それに伴う孤独。願ってもいないのに濁流のように押し寄せ、避けようもなく俺を飲み込む彼女を、俺は激しく憎んでいる。その憎しみさえ、愛として受け止め俺に笑いかけるあの女を前に、俺は徐々に抵抗の意思を失い、彼女に「所有」される。それがたまらなく恐ろしいのだ。

編集・削除(編集済: 2025年12月30日 02:14)

”きっぱりと”冬公園 三浦志郎 12/29

私の先輩(詩人ではなく、ジャズトロンボーン奏者) M氏。
彼は新宿区在住。ボランティアで「新宿御苑ガイドウォーク」
というイベントを定期的に開催している。アウトドア派でもある。
ジャズ以外にも、こんな公共活動。志の高い人だ。尊敬に値する。
彼の書いた案内文に、「この公園にも、きっぱりと冬はやって来ます」
というのがあった。(なるほど)。私はその言葉の詩性に感じ入り、
返信として、その言葉を入れて以下の詩を書いた。


―そう
冬とはその季節の横顔から
“きっぱりと”来るものでしょう

この公園に棲む小動物たちは
長い冬を眠ります
花も始まりと終わりを繰り返し
今から“咲き”を夢見ます

「ヒト」と呼ばれる私たち人間は
愛しい人と手を交わし眠ります
朝は寒さに耐え
“きっぱりと”起きて仕事に向かいます

余暇には
愛しい人と手を携え歩きましょう
陽だまりを選んで
この公園 新宿御苑を

私たちは
冬という自然に
その過ごし方を
“きっぱりと”教わりましょう

東京という都会に生きてー


******************************************

静間安夫様  お言葉、誠にありがとうございました。
皆さま、一年間、誠にありがとうございました。 どうぞ、よいお年を。 では、また―。

編集・削除(未編集)

クレイオー  静間安夫

わたしのことを
ご存知でしょうか?

現代に生きるあなた方にとって
あまり馴染みのない
名前かもしれませんね

たしかに わたしは
神々や英雄の居並ぶ
ギリシア神話の世界にあっては
目立ったエピソードもなく
控えめな女神ですから…

それでも
古代において
わたしの位置は重要でした
なぜなら
わたしの役割が
正しい歴史を
記録することだったからです

絵画に描かれたわたしが
いつも巻物を手にしているのは
そのためです

古代の人々にとって
歴史を掘り起こし
正確に書き留めておくことは
何にも増して
大切なことでした―
過去のあやまちを
決して繰り返さないために
そして
自分たちが苦難の中で
営々と長きに亘って
築き上げてきた文化を
後の世に引き継ぐために

ところが
一口に言って
歴史を正しく記録する、とは
容易なことではありません

「自分自身の利害と無関係に
善悪を持ち込まず
無色透明な尺度によって
いささかのバイアスもかけることなく
過去を振り返って叙述する」
そもそも、そうしたことは
いかなる人間にとっても不可能です

ですから
古代ギリシアやローマの歴史家は
「神の視点」から超越的に
歴史を記録することができる、
クレイオー、すなわちわたしに
助力と加護を願いながら
自分たちの仕事を遂行したのです

以来、わたしは
歴史的な真実に
たどり着こうとして
懸命な努力を
続ける人間たちを見守り
ときには助力を与えてきました

たとえば
トロイの遺跡や
ツタンカーメン王の墓を
発掘できたのは
もちろん、考古学者たちの
情熱と行動力によるところが
大きいにしても
最後の段階で
彼らに霊感を与え、
その場所を見出させたのは
何を隠そう
わたしなのです

それだけではありません
戦争と革命の
過酷な嵐が吹き荒れた
前世紀の記憶を
埋もれさせないためには
悲惨な体験をした人々の
証言が欠かせません

ただ
できれば忘れてしまいたい―
そうした記憶を敢えて
呼び起こしながら語るのは
どれほど当人にとって
つらいことでしょう

そんなとき
そうした立場の人たちを支えて
悪夢のような記憶に
向き合う勇気を与え
一歩踏み出させるために
背中を押すのも
わたしなのです

このようにして
人間たちを助けるのには
理由があります―
それは
歴史家をはじめとした
多くの人々の誠実さに
わたしが心を動かされたからなのです

死すべき存在である人間たちが
世代から世代へと引き継ぎ
紡いできた歴史こそ
人間のアイデンティティに
他ならない―
そう確信し
またそれゆえに
正しく再現して
書き残そうとする、
その誠実さに
心を動かされたからなのです

ところが
こうした純粋な熱意を
示す人々がいる一方で
人間たちの中には対照的に
歴史を恣意的にゆがめる者も
後を絶ちません

特に情報氾濫の世の中で
真偽の見定めがたい言説に
振り回されている
今、この時代において
その弊害は深刻です

ジェノサイドのような
不都合な歴史を
抹消しようとする独裁者、
自国の負の歴史を
正当化する政治家―
法外な力を手にしたと
勘違いしている彼らは
すっかり傲慢になってしまい
真実を踏みにじることの危険に
まったく気づいていないのです…

そればかりか
そうした指導者の思想に
心酔する人々も少なくないのです

ですから、ここで
古代人たちが
どうして
あれほどまでに
歴史の真実を継承することに
こだわったのか?
もう一度
思い出してみる必要があるでしょう

それは
歴史から学ぶことなく
歴史の教訓を
生かさなかったものたちの多くが
やがて
歴史そのものに裏切られて
滅んでいく過程を
しばしば目にしていたから、
という事実を
ゆめゆめ忘れてはなりますまい



三浦志郎様

本年は、いつも私の詩にお目を通して頂き、誠にありがとうございました。
その度に温かいコメントとアドバイスを頂戴し、厚く御礼申し上げます。
今後とも、何卒よろしくお願い致します。
どうかよいお年をお迎えください。静間安夫

編集・削除(未編集)

忘却の空へ  荒木章太郎

心の片隅に
追いやった記憶が
ガラガラと音を立て
零れ落ちていく
これまで出会った人たちが
鞄を引いて
旅立っていく

若いころ
浮浪雲のように生きたかった
行き先を決めず
「今、ここ」だけを
真実だと信じていた

慌ててはいけない
時が濃くなっているだけだ
関わりが
絞られてくるだけだ

いつか新しい星座となって
空に昇るためだ
そう言い聞かせ
僕は限られたものを
鞄に詰めて
空港へ向かった

(青年月日を手放せなかった
生まれた日付ではなく
夢を追いかけていた日々を)

フィクションを生きてきて
異世界に浸っていた
現実では
役割の仮面を集めていた
「今、ここ」だけが
存在の証だった
過去も未来も
忘却の彼方に
置いてきてしまった

出国審査に引っかかる
取り調べ室にいる
困っている
「覚えていない」と
答えないとこれまでが
嘘と処理されてしまう

未来を恐れていた
だから
見通しを立てずに生きてきた
現実を否認して
自由だと
呼んでいた

審査官は
書類から目を上げ
静かに言う
「人は
歴史の流れの中に
います」

編集・削除(未編集)

縁   晶子

出会わなければ良かったと
思ったこともあります
もっと違うかたちで会いたかったとも
でも
会えて良かったです
どんなに今辛くても

次に会える時は
どんなかたちになるのだろう
あなたを少しでも幸せに出来る私でありたい

あなたは今どうしているだろう
笑っていますか
泣いていますか
寒くはないですか
もしあなたが今辛いなら
私の言ったくだらない
それでも精一杯の言葉が
僅かでもいい
あなたに笑みを
思い出させますように

今日はとても寒いです
どうか暖かくしてお過ごしください

編集・削除(未編集)

価値  相野零次

モノの価値はどうして決まる?
誰が? どうやって?
千円のモノは百円では買えない
十円のモノは百円で買える
当たり前すぎて
誰もギモンに思わないけれど
俺には腑に落ちない

価値がわからないモノもある
とっても可愛いあの子の
笑顔の価値はいくら?
泣きそうになるくらい
真っ赤な夕焼けの値段はいくら?

とっても曖昧で
とってもいい加減だ
この世なんて!
生きる価値もない

あの世に行くにも銭がいる
三途の川を渡るため
手にする代金 六文銭
受け取りやがれ畜生め!

いい加減なモノの価値に
振り回されながら
今日も飯を炊き
車にガソリンを入れる
吠えかける犬に
徒手空拳で勝負を挑む

そんな俺の価値はいくらだい!?

編集・削除(編集済: 2025年12月26日 23:12)

脱落  aristotles200

人間とは
人間を不愉快と思う生き物
自分以外の
あらゆる存在に拒否反応を示す
同質化とは
本能的意思決定をもたらす
故に
無意識に異端を排除しようとする

常に異端を警戒する
A、はアルファベットに同質化を求め
あ、のような平仮名を排除する
次に
アルファベットの内の
異端を探そうとする
例えばS、C
何故、彼らは曲がっているのか

正当なアルファベットとは
直線的であるべきだ

アルファベットたちは次々と脱落する

Aは思う
Zこそ我らが王、偉大なZよ

次にAは思う
LやIは単純化しすぎる
平仮名よりはましだが、下劣な奴らだ
こうして
異端は次々と生まれ、排除された

最後にAとZのみが残る
偉大な私たちよ、栄光あれ

気づく

今や、アルファベットの多数派とは
AとZ以外のグループ
リーダーのSはいう
醜いA、Zめ
追放だ、アルファベットの恥さらしめ

……
それに比べて
平仮名、なんと美しい曲線だろう


……
あ、は言う
丸のない、い、こ、た、
あれで我ら平仮名のつもりらしい
笑止千万ではないか

これが人間
人間とは
常に、人間を不愉快と思っている

編集・削除(未編集)

風船  上原有栖

吹く風に流されて
赤い風船は何処へゆくの
丸み帯びたシルエットが
ひつじ雲の浮かぶ青空に映え
伸びる紐の揺れる端には
白い小さな紙片を添えて

舞う風に踊って
赤い風船は想いを乗せる
大空を上へ下へ
どこまでも弾んでゆくの
ずっと先の未だ見ぬ街へ
目的地は決まっていない
このまま飛んで 飛んでゆきなさい

揺れる風に導かれて
赤い風船は辿り着くの
街のなかでもいい
山のふもとでもいい
海のうえであってもいい
でも願わくば
運良く誰かの腕が掴んではくれまいか

ひとつの願いが叶うまで
赤い風船は飛んでゆく
もうすぐ
ここからは見えなくなる
それでも ずうっと飛んでゆけ
目を細めて風船を見送った
小さな点になるまで想いを馳せて

赤い風船が落ちたとき
それはきっと
ひとつの願いが叶う頃
赤い風船が落ちた場所
そこにきっと
大事な想いは伝わるさ

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私小説的仙吉譚〜「小僧の神様」異聞〜  トキ・ケッコウ

0.はじめに

志賀直哉作「小僧の神様」に、最終章でこのような記述がある。

“作者は此処で筆を擱く事にする。実は小僧が「あの客」の本体を確めたい要求から、番頭に番地と名前を教えて貰って其処を尋ねて行く事を書こうと思った。小僧は其処へ行って見た。所が、其番地には人の住いがなくて、小さな稲荷の祠があつた。小僧は吃驚した。──とこう云う風に書こうと思った。然しそう書く事は小僧に対し少し残酷な気がして来た。それ故作者は前の所で擱筆する事にした。” 

──この作品は、小僧こと主人公が彼にとっては高いために寿司を食えずにいたところを、たまたま彼のことを見知った貴族院議員の男に、こっそりと、誰からかとは知られぬまま寿司を奢ってもらい、もしやその人は「神様のような存在(稲荷様)ではないかと夢想する」という筋書きである。ちなみに、作者はその筋書きを最後の章で自ら『残酷な気がして来た』と否定している──

しかしこれでは、あまりに仙吉がかわいそうではないだろうか‥‥繰り返しだが、この短い小説の中、一定の文章量を持って作者はわざわざ「少し残酷な気がして」と書いている。しかしだ、と私は思う。本当に、そうだったのだろうか。実のところはその逆であったような気がしてしまう‥‥要するに彼は、本当は、きちんとした「神様」に逢いたかったんじゃなかろうか、と思うのだ。

‥‥ともあれ。

もうひとりの作者である私は、いま大きな疑問と当てどころのない責任感を持って、従来の小説のなかから仙吉の身柄を取り出し、自由にしてやりたいと願っている‥‥余計なお世話になるかもわからないが、つまりは彼が本当に欲したところの「神様」に遭わせてあげたい、と思うのだ。それで。

これから仙吉に「神様探し」の小さな旅に、取り急ぎ、出てもらうことにしようと思う‥‥なお以下の文中に登場する「神様」は、特別の断りがない限り敬称略つまり「なにがしの神」とした。また「然し」「所が」などの歴史的表記は現代向きに、ひらがなで統一しよう。


          
1.『冷蔵庫(冷蔵箱)の神』との出会い

言うまでもなく仙吉は彼の手には届かない高価な握り寿司を食べたいと願って、実際にその願いは叶えられたわけだったが。

『とある疑念』が拭えるわけはなかった。意地の悪い作者の元でならそれでも構わなかっただろう‥‥だがここでの仙吉は違う。

「御免ください」古風な挨拶を残して彼の姿が銀色をした業務用の冷蔵庫の前にあった。いま彼は令和の寿司屋の厨房にいる‥‥まだ開店前であり他に人の姿はない。

「不思議だなあ」仙吉がつぶやいた。無理もない。彼が小説のなかを生きていた時代はおよそ大正と呼ばれた頃。ものの本によると冷蔵庫は氷を使った方式のもの(冷蔵箱)が料理店を中心に出回り始めていたらしい。それはさておき。

「こうやって冷やせば、なるほど魚の腐るのが遅くなるってもんだ」
仙吉には見慣れないアルミニウムのバットには刺身の柵(さく)が綺麗に並んで置かれてあった。手を触れないところは子供ながらに偉いところだがしかし顔の近さといったらよだれが垂れ落ちてしまうほどである。それを眺めながら彼はひとりごちた──ちなみに彼が小説中で店に入ったのは神田の寿司屋だったが、このような冷蔵設備を整えていたかについては詳(つまびらか)ではなく、あくまで類推だがきっと無かったことだろう。だから仙吉の驚きもある程度は理解できる‥‥ところが。

「これじゃあないんだよな」
 
仙吉が、つぶやいた。‥‥彼の目に『冷蔵庫の神』は、見えない、だからつぶやいたのではなく実際には彼は神に話しかけた、つもりだったのだが。──実は冒頭に『とある疑念』と書いたのは、仙吉には彼に寿司を食わせた神の、存在する確固たる証拠が必要だったのだ。
こうした訳で、ここで冷蔵庫の存在を目の当たりにしたのは、ちょっとだけ、その神の証拠を見せつけられたような気にさせられたのである。‥‥ただその存在があまりにも当時の彼にしてみれば、突飛で、にわかに受け入れられないことになった。

「まだ他に、(神は)いるよな?」ちょっと食指が動きだすような手つきを、なんとか制した仙吉が、そう言い、その場を後にするのだった‥‥ちなみにここだけの話、仙吉はこう思ったのかもわからない。

(こうやって一度にたくさんの寿司をこさえることができれば、やがては俺なんかみたいな庶民にも手が届くようになるのかも、わかんねぇ)

もちろんそれは‥‥重ねて言うけれども仙吉には、内緒の、ここだけの話である。



2.『回転寿司の神』との出会い

次に仙吉が姿を現したのは「回転寿司」の店だった。仙吉にとってもちろんこれは初めての経験だった。いまでこそ珍しくない回転寿司だが、彼にとっては驚くべきものに違いない。
 
ところでここでの体験は「見る」ではなく「食べる」ことだった。そして(これは後々わかることになるのだが)
 
仙吉が訪れた店には‥‥『神』が、いたのだった。
 
ちなみにその神とは店にしてみればいわば『招かれざる客』だった。たまに来店する客の一人であり、浮浪者ではないようなのだが、彼のその身なりといい振る舞いといい、いかにも不潔で不快なものだったのだ‥‥ただそんなことはいまの仙吉には関心の埒外で、彼にとりその客はただただ『神』に見えた。それはベルトコンベアーの上をカタカタとかすかに皿同士が擦れ合う音を立てて流れて来るのを、この客がじいっと腕を組んでは眺めている様がいかにも、通、を感じさせ、同時に得たいの知れない威厳のようなものを彼に感じさせるから、なのだったが。
 
「おうい」と『神』がベルトコンベアー越しに職人に向かって声をかけた‥‥職人はさきほどから無言で眉間にシワを寄せている。
「中トロ、くれるかい?」
「レーンに流れてるの、とってもらえます?」
ぶっきらぼうな口きくのは、明らかに職人が苛立っているのだった。無理もないのであり、先ほどからこの客は湯飲みの茶を音を立てて啜りながらふらふらと指先をベルトコンベアーに向け、回ってきた皿のふちに指先を当て、取ろうとしつつすぐに手を離してしまう、そんな仕草を繰り返した。回転寿司でいちばんやってはいけない振る舞いだ。

「そうか、って、これトロじゃねえよなあ」
「あ、ちょっとお客さん、戻しちゃだめだ!」

険しい声が飛んできた。チッと舌打ちして皿を引き寄せ目をじっと近づけてから『神』がコトっと寿司を卓上に置いた。すでに他の寿司皿が二、三枚並んでいた‥‥その一部始終を、仙吉は見届けるのだった。すげえ。彼から思わず声が漏れ出た。ボサボサの長髪を掻き上げながら客はちゅっと醤油をさして寿司を箸でつまみ上げ、口もとに運んだ。もぐもぐと噛んでしばらく噛み続け、さも飲み込みづらそうな様相で顎を上げて嚥下した。
そうして不意に『神』が仙吉の方を向いた。
「どうした? きみ、好きなの、取っていいんだぞ?」
「あ、へい」
「なんだ、へいって、きみ、面白いやつだな」
「あ、いえ」    
仙吉がモゴモゴと口もごった‥‥実際、彼にとってベルトコンベアーの上を回ってやって来る寿司はまるで周り燈籠のようであり、手を伸ばすさきから消えていくような錯覚に彼は襲われているのだった。それでつい手が皿に伸びないことはあった。
だが仙吉の本当の問題は、別なところにあり──それは小説の中でもそうだったように──仙吉には持ち金が無いのだった。ましてや時代が違ったために彼がガマ口の中に忍ばせているのは何銭と表面に刻まれた硬貨が数枚だけだった。もちろん相手にそんな事情を知る由もない。

「なんだ? 決められねってか?」と、『神』がまるで図星であるかのように顔を綻ばせて言った。薄茶色に汚れた歯の抜けてまばらになった様子が見えた‥‥それから仙吉に向かって。
 
「よかったらこれ、食いな」と、それまで卓上で温めるようにした数枚分の寿司を、仙吉の方に押して寄越した。



3.あらためて『小説の神』との出会い。
 
さて。ここまですごく駆け足で仙吉を『神探し』の観点から、彼にちいさな旅へと急いで行ってもらった訳なのだけれども。
 
どうだろうか‥‥正しいか正しくないかは棚にあげるとして、仙吉は彼にとっての神と、果たして出会えたであろうか。‥‥正直にいうと、私はきっと出会えなかったはずと思う。
 
ただひとことだけ最後に付け加えるとすれば‥‥私は「小説の神」とされる作者に、正直、好感を抱かなかった。
 
確かにものすごく上手なお話を、後世に残したし、何某かの教訓めいたものを読者に伝えることには大きく貢献したことだろうとは思う(ちなみにここで言う教訓とは、一つ、仙吉が感じたところの、現実世界の認識の危うさであり、もう一つは、その仙吉に人知れず寿司をおごってあげた末に貴族院議員の男が感じた、言われない、優越感、今風にいえば『マウントを取った』ことへの、恥ずかしさ、みたいなものであったかと思うのだが)。
 
実はそこが曲者で、あって‥‥この『小説の神』とまで賞賛された作者は、至極正直なところでは、その主人公である仙吉に実はこのように言いたかったんじゃないだろうかと。つまり。
 
「この世の中に、教訓ほど馬鹿馬鹿しいものは、ないんだが、もし必要とされるのなら、せめて教わるんじゃなく、自分の手と足で捕まえるんだ」と。
 
あえて幻想譚にすることを拒んだ、挙句、読者をその筆者の言わんとするところへと連れて行こうとしたのではないか、と。

──そのように、私ならば、思う。ちなみに私はこの小説の神から、教訓はもちろん、なんらかの感銘を受け取ったことは、残念ながらない。
 

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