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大阪はまだ30度を境に気温が前後してますが、それでもずっと猛暑続きだったので、ずいぶん涼しくなったと喜んでおります。今年の夏は長かったですね。これから毎年、夏はこんな調子なんだろうか。
そういえば、国連総会で、「気候変動なんか起きていない。『地球温暖化』は、史上最大の詐欺だ」と吠えていた、某国の大統領がいましたね。
ちょっと気がしれません・・・・・・。
●白猫の夜さん「海原の約束」
おお、いいじゃないですか。ぐいぐい引き込んでくれますね。謎に満ちたところをぐっと引っ張り、どんでん返しもあるステキな ストーリーが良かった。クライマックスの情景も幻想的でした。また、なんでもかんでも涙と書くんじゃなく、価値ある「涙」が描かれた、いい詩でした。
また、前回希望した、「死」じゃないストーリーを書いてきてくれたのにも、感謝です。
全体しっかりと且つ丁寧に書いてくれてるし、いいと思う。名作&代表作入りを。
細かいところで2ヵ所だけ気になるところがあるんですよね。
まず初連。これは夜明け前のことであるので、3行目の「月の昇る」の語が、ちょっと気になるんです。
すこし欠けた月が西に傾く
くらいで、どうでしょうね?
それから6連。「諦観」というのは、悟りをひらいて、あるがままを見る。ものの本質を見る。みたいな意味なので、なんでもかんでも諦めたっていう、諦めの境地を意味しないんです。つまり「諦観」は、決して「前を向く」の反対語ではないんで、
諦観していた今の私が
ふわりと前を向きたがっている
は、私は凄く違和感あるんですよね。ここのニュアンスは「諦観」で、ホントにあってるんですかね?
平たい言葉でいうと、
何にも執着を持てなくなっている今の私が
ふわりと前を向きたがっている
ここは、これくらいの意味なんじゃないんでしょうか?(「断捨離」をヒントにしました。)
ちょっと、この2ヵ所だけ、一考してみて下さい。
●水井良由木さん「一度きり」
だいぶ書き慣れてる感じがします。もしかして得意とするところはそっち系なんですかね? まあ、私は初回なので、今後を拝見するとしましょう。
「投稿詩」という作品からすると、わかってらっしゃる方のようなので言いますが、本作で、ギリセーフのラインです。(ちょっとイエローかもしれません)
ここだけピックアップして置かれると、そういう印象になってしまいますが、少し時代性も持って書いているようだし、小説のストーリーの中の、一場面としてある分には、ぐっと生きてくるシーンにも思うのです。
たぶん、冒頭のモノローグに入る前に、前フリの情景が必要なんだと思いますよ。それがあるとないとで、後ろの印象も変わるんだと思います。前フリの情景があると、相関関係で、後ろももっと美を伴って読めるんじゃないですかね。
●相野零次さん「人体」
うむ、おもしろいじゃないですか。
全体、ちょっと得体の知れないところのおもしろみがあるが、いちおう「人体」という言葉で大枠のところを括ってくれてるのがいい。
正直なところ、「人体」という枠で括りきれないものも感じているんだが、得体の知れないままで終わるのでなく、いちおう「人体」というセンを入れてくれてるので、多少こぼれ落ちるものがあっても、いちおうそのヒモで括れるのがいい。それによって、詩の輪郭が見えるから。
中でも初連がバツグンにいい。初連でぐっと読者を掴んでくれます。
名作あげましょう。
一点だけあります。
3連なんですが、3行目に「隣の部屋」とあるので、1~2行目とは別の部屋があることになります。つまり部屋が2つあることになる。4行目の「その部屋」とはどっちの部屋を指していますか? 隣の部屋だとすると人体の外観だけを合体することになります。じゃあ、こっちの部屋にある内臓はどうなるんだ? みたいな腑に落ちない部分が出てきてしまいます。
私、これ、一つの部屋でいい気がするんですけどね。合体するのが、手足とかの外観だけ、というより、中に内蔵も入れて、全部を一気に組み上げるという意味の「合体」にした方が、スッキリしていいと思えるんですけどね。
その点だけ、一考してみて下さい。
でも、よくできた作品でした。バックに作者の(やや自虐的な)陰鬱なものや思考的なものも醸し出しながらの浮遊感であるので、表現として意味あるところのバラバラだったと思います。だからこそ、良かったです。
●多年音さん「自傷紀行」
おお、話の本筋部分として、テーマ性のところに視点が定まってきましたね。結果、深くなりました。良くなりました。
初連終行に「今回は全部一人で」とありますので、前回は、4連で登場する「君」と一緒だったということでしょう。いえば、想い出の場所でもあるところを、今回は一人で回ったわけですが、存外ふつうに楽しめてしまったことに驚く作者がいます。それは3連の、
楽しめた
平然と楽しめてしまった
涙するぐらいは期待したけれど
で、表現されています。
そうですね、楽しいところ、おいしいところ、美しいところは、変わらず作者にやさしかったということでしょう。案外と二人でしゃべってると気づかなかったものが、一人で集中することで、また違うものに気づいたり、発見したりすることがあります。視野が広がった、価値観が広がったという形で、前に進んだのかもしれませんね。
4連の「懐かしんでも羨みやしない」って、いい言葉ですね。その心情、ステキです。
うむ、書けてると思う。秀作あげましょう。
一つだけ言うと、
わざわざ前と同じところに行ってるという意味では、たしかに自傷的行動の一つとも言えるのだけど(「傷心旅行」というと、通常、別の場所に行くのがフツウですから、同じ場所に行くのは、たしかに自傷的ではあるのだけど)、「自傷」は特定の行為を指す場合に使われることの方が多いので、そのイメージを持たれるのを避ける意味で、ちょっとこの言葉は避けたいんですよね。なのでタイトルだけ一考してみて下さい。「再訪」的なニュアンスのあるものがいいと思う。英語でもいいし。
●上原有栖さん「夜景」
終行、まあ、フツウなら、時間が止まればいいのに、とか。夜が明けなければいいのに、とか。長引かせる方の話をするところ、この詩は「早くこの夜が明ければいいのに」と逆の言葉で終わってるところが、おもしろい。その意を深く考えさせてくれる1行ですよね。
その日いちにちで終わってしまうのが不満で、いっそ、もうさっさと終わっちまってくれ!!の逆ギレ状態なのか?? 未練が残るシーンだからこその、これ以上未練を高めさせないでくれ、の強制終了発言なのか?? その真意をいろいろ考えさせてくれるのがおもしろいし、そこでぐっと深くなる終行の1行でした。
ただ、逆な言い方すると、この詩は、現状、この1行で持ってるところがあるというか。この詩、本当は前をちゃんと書いた上で、この終行があっても、全然良かったんですが、なんでか前をすごく簡略に書いてしまってるところが残念なんですよね。
言いたいことだけは書いてるんですが、細かな情景や、それに伴う細かな心の動き・描写も不足してるので、詩が広がらないというか、映像を充分伴って来ないというか、前がちょっと簡略化しすぎてるのが残念な一作なのです。
おまけの秀作ぐらいにとどめます。
●荒木章太郎さん「雨雲の群れ」
いい感じですね。1~3連、おもしろく読みました。
自身が、この国に感じる思いや思考も、ちゃんとバックに感じさせてくれながらの、アイロニーを含んだ比喩になっています。
ただねえー、そこまではいいんだけど、もうちょっと続きが読みたかったなと思いました。もうちょっと粘って欲しかったというか。
せめて終連に入る前に
この国は
あちらもこちらも
ずぶ濡れじゃないか
の1連くらい、追加して欲しかったかな。
まあ、3連までは良かったんで、おまけの秀作にしておきましょう。
●温泉郷さん「姉妹を測る」
まあ、謎かけで、故意に答えをじらしてるとも取れるので、このままでもOKではあるのですが、いちおう言うとね。
5人姉妹の
長女 5センチ3ミリ
二女 4センチ2ミリ
三女 3センチ7ミリ
四女 2センチ2ミリ
末っ子 1センチ3ミリ
何でもかんでも
物差しで測っては
ノートにつけていた息子の
記録を見つけた
測っていたのは
息子が生まれる前
サンクトペテルブルクで買ってきた
玄関先の小さなマトリョーシカ
ほかにも
鉢植え、コップ、掃除機の高さなど…
下手なイラストもある
小さな末っ子は
よく転んでいるのを
出かけ際に
妻が立てなおしている
と、この並びにする方がノーマルではあります。スムーズさだけでいうとね。
この詩って、マトリョーシカがメインであるかに見せて、本当のメインは
何でもかんでも
測っていた息子
の話にあるので、
ほかにも
鉢植え、コップ、掃除機の高さなど…
下手なイラストもある
の3行のところが抜けないんですよね。案外と、ここが必須で必要となる詩であるので。
でも、流れだけをいうと、本当はこの3行がなければ、原文のままでも、ピタリ収まってる詩なんです。
しかしながら、この3行を入れたいんで、前半ちょっと並びがややこしくなってるわけです。
それにしても、息子さんは、流体力学でもないのかな? 物理の中でも見えないものを計測やら観測やらするような、例えばスーパーカミオカンデみたいな世界の仕事をされてるのかもしれませんね。凄いなあー
ちなみに私はこの詩で、「マトリョーシカ人形の基本は五体」、というのをやっと学ばせて頂いたところであります(算数レベル?)。
余談ですが、材質が一枚板の木でできているものであれば、湿度によって、若干の伸縮はあることと思います。まあ基本は乾燥方向に行くので、縮みはありうることと思います。日本のものであれば、狂いが出ないように、そもそも材木の段階で乾燥させてから使うんですがね、それ海外ものだから、ちゃんと乾燥させてない可能性があります。となると余計に狂いが出ますね。木は生きてますからね。
思うにこの詩、マトリョーシカも擬人化で五人姉妹で書かれていることを思うと、息子さんを筆頭に、大きくは「家族の詩」ということで、登場人物全員を括れそうです。
うむ、「家族」に思いを巡らす、いい詩でしたね。「測る」というキーワードも生きてましたし、名作を。
●aristotles200さん「水滴」
まず、初連、
雨が降っている
水滴が無数の雲で生まれ
地上で合わさる
このイマジネーションの取り方、あまり上手じゃないんですよね。
水滴が無数の雲で生まれ
のところで、水滴というより、雲の側の話になっちゃってて、視線が雲の方に行っちゃってるから、3行目と合わないんですよね。
言うと、初連のこの3行って、視線が、下・上・下とジグザクに行くんで、映像を結びにくいんです。あんまりいい初連とは言えない。ちゃんと視線を繋いで行かないと。
雨が降っている
無数の雲から生まれた水滴が
地上と合わさる
こうすると、映像が自然と繋がるでしょう? 視線をちゃんと繋いでいかないといけない(追っていかないといけない)。
また、3連、4連も水滴は複数形なので、2連だけポツンと「一滴の水滴」にしない方がいい。そこで「一滴」の定義・解釈を入れてしまうと、あくまで「一滴の水滴」として有効になり、3連以降の「無数の水滴」(複数形)の定義や解釈に流用できなくなる。そのまま持ってこれなくなる。(だって単数と複数は主語として異なるものだから)、両者をつなぐロジックがまた別途必要になってしまう。
初連から4連までは一気に行くべきところで、この時点で単数の別主語なんか、持ってこない方がいいです。
雨が降っている
無数の雲から生まれた水滴が
地上と合わさる
雨が降っている
雲から大地まで
水滴は世界を繋げる
同一化した
無数の水滴が見る夢は
天から地までのパノラマ
異質化した
無数の水滴が見る夢は
現象と実存を秘めた異世界となる
こんな感じです。
また、3連と4連を並列で置きたい時は、「水滴が」「水滴が」と、助詞を合わせたほうが、並列に見えやすくなります。
それにしても前半は、論が言いたいのが先に立ってるから、ポンポン映像が飛ぶ。丁寧に繋いでいったほうがいいです。単純に論のための置き換え語にならないようにすること。本当に理解してるなら、単語ではなくフレーズでもって意味を語れるようにすることが肝要です。その意味でも映像展開を大事にしていって下さい。
あと、大きいアスタリスクと、小さいアスタリスクで区切ってる部分があるんですが、まあ、たしかに話の展開の切り替わりではあるのだけど、aristotles200さんの場合、たぶん硬質の言葉は抜けないと思うから、硬質の言葉多めの部分と、硬質の言葉少なめの部分。つまり「硬パート」と「軟パート」の別で書いて、境目にアスタリスクを置くというスタイルを取るのも、アリです。今回の詩で言えば、「斯くして」以降は、もうちょいやれば、「軟パート」として行けそうです。今後の方向性として、そういうスタイルも提案しておきます。まだ文体に難があると思うからです。
だいぶ良くなりましたし、構想の大きい詩を書いてくれてる点は大いに買いますが、私としては、文体はまだもうちょっと工夫してほしいなと思う。秀作半歩前とします。
●ゆづはさん「ちっぽけな絶望」
ああ、私も寝込んでた体をおして、HPで水曜日診療やってることも確かめで行ったのに、実際に行ってみたら、水曜は休診だったという目にあったことあります(HPが古いままだったようです)。あれには参りました。体が弱ってた時だけに、気持ちのダメージも大きかったです。私もそんな経験があるんで、お察し致します。
ケーキ屋さんもそうですし、行きたい店が休みだった時は、スマホのメモ帳にでもメモしておきましょう。1回目はしょうがないけど、2回目イタイ目に合わないで済みます。人間て、バイオリズムがあるから、気持ちのローテーション的に、食べたくなる日が、ちょうどお休みの日と重なるってことがあるのは、わからんでもないです。その時は、スマホのメモを見て、踏みとどまりましょう。( ← なんか、半分、自分に言ってるところもありますが。)
1連、2連のツイテナイ事例のあとに、3連で「どうして今日なんだろう」の心情を語っていってくれてるのは、1~2連で例を上手に語ってくれてるだけに、スルッと入れますね。
また、そうした心が折れる日が連続すると、より深化して(ドロ沼化して?)、自分だけが取り残された気持ちになるという、4連の心情にも察せられるところがあり、思いが至るところです。
ラスト3連、風景で終わるのもいいですね。「小さな歩幅で」という作者らしい言葉があるのも良かった。
初回なので感想のみになりますが、この詩に関してはよく書けてますよ。特に問題は感じませんでした。この調子で書かれたらいいと思います。
人から見れば
ちっぽけなもぐらは
湿った大地をゆっくり移動する
やわらかい土を黙々と掘り進むうちに
長く伸びた生活痕が
ずっと後ろまで続いていった
ぽっかり空いた暗いトンネルでは━━
頑固な粒ぞろいの小石がぶつかってくる
(通り道でいつも邪魔だから困ってしまう)
腐葉土のホテルはふかふかに発酵していた
(食事と寝床はここに決めている)
濡れたティッシュが鼻先を少し湿らせた
(誰かの涙が染み込んでいたのかも)
銀色のお菓子の包み紙は誰が落としていったの
(まだ優しくて甘い香りがしたよ)
もぐらとは
土のなかをもぞもぞ動く
いつも腹を空かせている小さき生き物
前へ前へと 開いた手で器用に掻き進むけれど
掘れば掘るほどに腹が空いてしまうのだ
このまま死にたくないから
餌のミミズを探して穴をもっと深くした
人が生きているのは土の上
モグラが暮らすのは土の下
立場は違えども 緊張に晒されている
それぞれの場所で生き抜くために
今日もお互い もがき続ける
*********
(補足)
・もぐらは大食漢。毎日、体重の約半分にあたる餌を食事として摂らなければいけない。
12時間以上食事をしないと餓死してしまうとも言われている。
・もぐらは縄張り意識が強い生き物である。2匹のもぐらが出会うと喧嘩が始まり、負けた方は住処から追いやられ食事が出来ずに命を落としてしまうこともあるという。
今日は月がない
頼りない星の光だけでは
かき消せない闇の中
一人
冷たさが伝うベランダ
果てしなく続く闇
どこまでも続く闇
もたれかかる柵だけが位置を教える
僕は一人
冷たさが伝うのは心身
内側まで侵す闇
停滞する空気と闇
身の震えさえころしていく
一人
僕は一人
淀んだ闇が喉に詰まる
どうすればいい
闇はいつまで続く
夜が終わっても続くんだろうか
続くのだ
きっと続くのだ
闇は続いていくのだ
きっと続くのだ
闇は続くのだ
息を切らしても意味などない
手を伸ばしても意味などない
ずっと続くのだ
闇はずっとずっと続く
いつまでも続くのだ
闇は続くのだ
轟音
夜の帳を翻して
地平から並進し来る二つの灯り
ヘッドライト!
「偶々近くに寄ったから
遊びに来たよ」
こんな時間に?
マジで、バカすぎるだろ
今年もこの日がやってきた
吹奏楽部 三年生最後の演奏会
私達三年生は今日の演奏会で引退する
市内のホールを借りて行われる演奏会
学校関係者や父兄さんOB OGの先輩方
地元の皆さんが私達の為に来て下さる
田舎の高校としては一大行事だ
私達の吹奏楽部は創部以来初の全国大会出場を
果たし地元の注目度は大きい
部員はそれぞれ制服や髪型 身なりを整え
部長の「行くぞ!」の掛け声でステージに向かった 私は緊張と興奮で心臓がバクバク
演奏中は何をしていたのか何が起きていたのか
全く覚えていない
アンコールが終わり部員一同 静かに一礼
とたんに大粒の涙が溢れた
やったんだ やりかきったんだ
私達は控室に戻ると皆んなで抱き合いハイタッチ
涙と笑顔で溢れかえった
そんな時 後ろから肩を叩かれた
同じパートのタツキだ
タツキは涙と笑顔が真面目な顔に変わり私を見た
私をみながら「好きです 付き合って下さい!」
控室は何事か?と静まりかえった
私はタツキに「私もタツキが好きお願いします」
一度静かになった控室は完成につつまれた
おめでとうの声と冷やかしの声
タツキと私は手を繋ぎ合わせ笑顔になった
三年間一緒に頑張ってきたタツキ
私の初恋のタツキ 今日からは恋人同士
最後の演奏会は最高の日になった
最高の思い出になったが最高のはじまりの日
タツキと私出会いをくれた吹奏楽部ありがとう
誰かの手首につけられた腕時計。あの腕時計の中身は覗いたことはあるだろうか?
あの小さな機械の中に、複雑な約束事で重ねられた世界が広がっているのをご存知だろうか?
ムーブメント。時計と呼ばれる星の街に降り立つ。
見上げれば空一面に広がる、どこまでも透明に近い青の月。この月は街一面にかぶさるコンタクトレンズのような形をしている。
透明な月の奥に誰かの瞳が見える。あの瞳は表面をなぞることしか出来ない。内側にいる私のことをうかがい知ることは出来ない。
リューズ(※1)を巻くと、星は自転し始める。神様が定めた物理法則を従って世界は正しく働きはじめる。ぜんまいや歯車が規則正しく回る。その静かな営みは、壁掛け時計の秒針の音が響くような一人きりの夜と相性がいい。手をかけることによって、この星は時を刻む。歯車が噛み合い、連動して、時の調(しら)べが流れる。
瞳から見える表面には時間の表示しかされない。こちら側からは機械仕掛けの街並みが広がっている。鈍色と銀色(しろがねいろ)が広がる冷たく硬い街並みに不釣り合いなメリーゴーランドのように回り続ける歯車。ゼンマイが噛み合い、軋(きし)む音は絶えず動くのに心音のように意識されないノイズ。
自転する世界の正しさを何も考えずに眺める。鋭利な時を刻む針が規則正しく、止まらず空を薙なぎ始める。一秒、一分、一時間ごとで一日をはかる。限りある時間が削られ始めるのを感じる。永遠の独り言のような音が響く。
もっとも、この星が自転をやめたら、時間が止まるかと言えば、そういう訳でもない。単に星の寿命がより短くなるだけ。動かしてやらねばならない。
システムめいた世界の営みに美しさを感じるが、時折、その営みが無機物のように感じられる。
無機物が刻(とき)を産み続け、それを育はぐくみ続ける生き方の有りように歪(いびつ)さを感じることもある。極たまに。
そんな時は私のゼンマイの動きが鈍っているのかもしれない。退屈、雑念、諦観……リューズを巻かなければ動けないのは、私も世界と同様なのかもしれない。
彼の地でリューズを巻く人と等しく夜の中に、一日の終わりを愛おしむ必要が私にもあるのだろう。指先は目的のない静寂を埋める為にある。
機械仕掛けの星が人々の腕に宿り、その星は点々と点在している。同じ時に作られた星もあるけれど、近くにあるとは限らない。
例えば、リューズを巻かない星の街が向かいに見える。その星の北極星を凝視すると水晶のきらめき。(※2)ルビーがいくつか煌めく星(※3)。
離れ離れの星々は、人という宇宙の孤独に、それは似ている。手をかけなければ、緩んで、ほどけてしまう星ばかり。
不確かな人の絆という魔法の構造も覗いてみれば、手首に巻かれた星の街と変わらない程、精密で、緻密な仕組みで作られているのかもしれない。
違いは……リューズを回す数が大幅に多くなることと、回してもあなたにとって正しく働くとは限らない。
それでも耳を
すませてほしい。
私にも
あなたにも
この街も
生きている。
刻まれるものが
私と、この街は数字で
あなたは物語という
違いがあるけれど
我々は
等しく律動の音を産んでいる。
この星に住む私から
街の静かな時間を
彼の地の瞳の方に。
一時というものが
形にできるのなら
綺麗にラッピングして
差し上げたいと思う。
絆が刻む不確かな時間の有り難みは
星の街が刻むような時間の中で
感じられるものだから。
この冷たく感じてしまう静けさは
過ぎるだけの温度の数字ではなく
刻み積もる余熱の数字なのだと。
この星より
あなたの瞳に届けられる
数字は
あなたに流れる
生きる鼓動の数なのだということを。
腕時計の音すら
聴こえるほどに
寂しい夜は
星に住む人が
あなたに
そう訴えたい声なのかもしれません。
【備考】
※1 リューズ→手巻き式時計のゼンマイを動かすために定期的に回さなければいけないネジ。
※2 リューズを巻かない星→クオーツ式時計。水晶の振動によって時間を測っている。
※3 ルビー→軸受けなどに使われる人工ルビー。摩耗を耐えて、硬すぎないことで選ばれているそう。
今回、参考にしたURL
https://www.ne.jp/asahi/kuruma/garou/ts-04-watch-7.htm
台風の後の改修が間に合わず
競技場のトラックは
半円形のまま
ゆえに
そのリレーは
往復形式で行われた
一旦左から右へと走り
右端でバトンを受け取ると
今度は左へと戻る変則リレー
しかも
トラックの外側から
徐々に内側のレーンへと
リレーされるのである
競技ではないから
チームは一つ
観客は満員
号砲!
第一走者は
赤いトマトのバトンをもって
握り潰さないように
注意しつつ疾走
バトンを第二走者に渡すと
第二走者のバトンは
ニンジンに代わって快走
第三走者にバトンを渡すと
バナナに変わり順調な走り
第四走者にバトンを渡すと
え?キュウリじゃないの?
キャベツに代わり
腰折れで走っていく
エースの第五走者にバトンを渡すと
普通のバトンで再加速
青色ダイオードで輝き
人工光線が腕の振りに合わせて
シリウスの水滴のように
客席に怪しく交差する
歓声は最高潮
第六走者にバトンを渡すと
ああ!
シリウスの水滴が
ブルーベリーに代わり
ボロボロこぼれ落ちる
拾い集めて
両手に持って懸命に走る
アンカーの第七走者に
ブルーベリーを渡すと
バトンは よし!
ナスに代わり
直角肘で爆走
角度のついた弧の
最終コーナーを
はみ出さないように周り
ゴール
虹のリレーの完成!
トマト、ニンジン、バナナ
キャベツ、粒々ブルーペリー、ナスの面々が
歓喜で集まり
やがて涙で溶けて
境界がぼやけていく
青色ダイオードだけが
勝利の光線を
いつまでもくっきりと
観客に投げかけていた
観客の去った競技場に
青色ダイオードが一人
孤独の光を
全力であいまいにしながら
最初は誘われても断っていた
夕日の中に
ゆっくりと溶けていった
俺のはしたない記憶など
見えぬ鳥どもの
カッコウの餌食だ
俺の独りよがりの夢など
聞こえぬ鳥どもの
カッコウの餌食だ
小さきものに食われる
惨めさよ
巣に残ったのは
我が子ではなく
背をそらし
口をひらき
もっと、もっとと
餌をせがむ影
格好ばかりの俺は
落とされたものに
気づきもしない
カッコウの餌食だ
親代わりの俺も
孤児も
欲しがってばかり
欲しい 惜しい
いと惜しい
惜しくて悔しくて
愛おしい
愛おしさを捧げるほどに
この身は空にならず
むしろ満ちていく
捧げるたびに
形はやわらぎ
満たされる
捧げることで
生きている
——もはや餌食ではない
黄色い花 黄色い蝶々 黄色い葉っぱ
赤になる前に黄色が謳歌する今年の9月
去年の9月も黄色が溢れていただろうか?
写真ホルダーを開いて確認すると
8月のひまわりが潔く散った後
稲穂が黄金色にたなびく
田んぼの風景が収められていた
曇天の空模様ながら
穂は誇らしく黄色かった去年の今