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評をいただきありがとうございます。
この詩は先日散歩した時の風景を描くような気持ちで書きました。
内面的な要素を加えることで詩に深みが増すというご指摘は今後の詩作に活かしたいと思います。
ありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。
海は
どこまでも深く碧い
波静かな青海島 通(かよい)の波止 *1
対岸の野波瀬(のばせ)が霞んで見える
消波ブロックの上から
水中を覗くと
水族館のアクアリウムと見紛うほどに
色とりどりの小魚が群れている
スズメダイ
ネンブツダイ
ニシキベラ
アジ
イサキの幼魚
カサゴでも釣るかと
釣り糸を垂れる
子ども達は揃って大の魚好き
タモ網を使って海中をまさぐっている
娘の舞衣が
変幻自在に泳ぐゴンズイの幼魚を見つけた
いわゆる ゴンズイ玉だ
毒魚で
幼魚であっても刺されると痛い
舞衣がタモ網にゴンズイを追い込んだ
引き上げると
ピチピチ跳ねている
髭があり
まさに海に棲むナマズだ
おかさな〜(お魚)
幼い息子祐が魚を摑もうと手を伸ばすと
天使の声がした
触っちゃだめ!
祐の後ろに立つのは
おかっぱ頭に赤いスカート
サンダル履きの
島の女の子
掌に
透明なクラゲを乗せている
ゼリーのように
柔らかい
小さな可愛いクラゲ
そっと祐の手に渡す
ぷにゅぷにゅして面白い
笑顔が弾け
いつの間にか三人一緒に遊び始めた
透明なクラゲを弄(いじ)りまわし
釣り上げたばかりの
クサフグのお腹を膨らませて遊んでいる
夕陽に照らされた小さな影が三つ
豊かな海に
穢れなき時が流れる
鷗が啼く
ああ もう家へ帰る時刻だ
車に乗り 発進するとき
おかっぱ頭の女の子が家の窓から
手を振っている
さよなら さよなら
いとけない女の子
君の姿はみなの瞼に焼きついたよ
いつの日にかまた会おう
おかっぱ頭の女の子
ありがとね
*1 青海島(おおみしま) 長門市北部にある島
橋が掛かっており車で行くことができる
都合によりお先に失礼いたします。
3/25〜3/27にご投稿いただいた作品の感想・評でございます。
素敵な詩をありがとうございました。
一所懸命、拝読させていただきました。
しかしながら、作者の意図を読み取れていない部分も多々あるかと存じます。
的外れな感想を述べてしまっているかも知れませんが、詩の味わい方の一つとして、お考えいただけたら幸いです。
*******
☆「Sunday Morning」 上原有栖さま
上原有栖さま、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
日曜日の朝という穏やかな設定から始まる作品ですが〜。
青痣や通り魔事件のニュース、部屋の中から聞こえる不気味な「グチャッ……ビチャッ……」という音、そして最後の「食料(エサ)を買って帰るからね」という言葉……。
日常の中に潜む異常さを際立たせて、緊張感を徐々に高めていく展開が印象的ですね。
主人公の感情が平板で、知人かもしれない被害者への動揺や不気味な音への反応がほとんど見られない点が、冷酷さや罪悪感の欠如を匂わせ、実は犯人なのではないか??という謎を読者に投げかけてくるのも巧妙です。
「今日は『いつもの』日曜日」という表現も、こうした不穏な出来事が日常の一部であることを示唆し、現代社会の疎外感や潜在的な暴力性、平穏がいつ崩れるかわからない不安定さを象徴的に映し出しているように感じます。
日常と非日常の境界を揺さぶり、読者の想像力を刺激する構造が魅力的ですね。
ただ、詩文が少し長めでリズムが途切れがちなのが少し気になりました。
例えば初連で言えば、
洗面所で顔を洗って顔を見たら昨日殴られた所に青痣が出来ていた
の詩文など、短く区切ると、詩らしい流れが生まれ、読みやすくなるかもしれません。
また、主人公の感情や状況への反応をもう少し加えると、さらに共感しやすくなると思いました。
不穏な要素に少しヒントがあると、謎を残しつつテーマが伝わりやすくなる気もします。
言葉の凝縮、詩のリズムを考えていただくと、さらに深みのある詩になりそうです。
有栖さんは、手法、形式、内容…色々な詩の世界をお持ちで、毎回多彩な詩の世界に驚かされます。
不気味ながらも、裏にある現代社会の問題を示唆する佳き作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
**********
☆「しゅきピ」 喜太郎さま
喜太郎さま、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
恋心が芽生える瞬間、その感情が抑えきれずに爆発する様子が、軽快なトーンで描かれています。
率直でとても可愛らしい作品ですね。
心のドキドキが加速していく流れが非常に自然で、読んでいて思わず微笑んでしまいました。
「今の中学生でもならないっつうの!」といった砕けた表現は、詩に親しみやすさとユーモアを与え、リアルな独白のような雰囲気は、大きな魅力となっていると感じます。
特に最後の『ガチでしゅき‼️ しゅき‼️だいしゅき‼️』というフレーズは、感情が溢れ出すピークを象徴しており、繰り返しが効果的で勢いがあり素晴らしい締めくくりだと思います。
少し気になる点を申しますね。
例えば中盤の
あの時からあなたを見つけるとドキドキして
話すだけでしどろもどろって
の部分など、少し冗長に感じられる部分があるように思います。
言葉が詰まりすぎ、流れが停滞してしまう印象を受けます。
短くリズミカルにまとめることで、詩全体の勢いが途切れず、最後まで突き抜ける流れを作れるかと思います。
また
あの頃に戻って可愛く言わせて
という表現はノスタルジックで素敵なのですが、「可愛く」という言葉は日常的にも乱雑に多用される形容詞の代表的なものになっている感が強いので、ここでは「可愛く」を避け、例えば、「目を逸らし 小さく言わせて」など、具体的なイメージを加え、そのシーンをより鮮明に思い浮かべられるようにした方が、感情の深みが増すかと感じました。
「‼️」の使用についても少し気になりました。
視覚的なインパクトが強く、感情の勢いを強調する役目を果たしているとは感じます。
カジュアルな印象が強まるため、SNSなどでは有効かと思いますが、詩集のコンセプトや読者層によっては浮いてしまう可能性もありますから、「!!」にとどめておくのが無難かと思います。
恋のドキドキとピュアな気持ちをストレートにぶつける魅力が存分に詰まっています。
テンポを整えたり、イメージを補強することで、さらに読者の心に深く残る詩になると思いました。
読んでいてとても楽しく、恋の初々しさや純粋さを思い出させてくれる、佳き詩だと思いました。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
**********
☆「散歩道」 こすもす様
こすもす様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
全体を通して非常に優しい雰囲気が漂う詩で、心が温まり、穏やかな気持ちになれました。
春の柔らかな日差しの中、散歩と共に間が流れてゆきますね。
ソーダ水のようなせせらぎ、園児のような小鳥たち、騎士のような白鷺……直喩法も絶妙で、情景描写の細やかさが非常に際立っています。
こうした描写を通じて、自然の美しさを丁寧に切り取っていることが伝わってきますし、読者は詩の中の風景に自然と引き込まれます。
また、詩全体のリズムも良く、頭の中で情景がスムーズに流れていく感覚があり、詩を読む際の心地よさを一層高めてくれる要素となっていると思います。
少し欲を申し上げるならば、感情の動きの「変化」がもう少し加わると、さらに心に響く作品になるのではないかと感じます。
散歩中に考えたことや、風景を見てふと思い出した記憶など、内面的な要素が加わることで、一層詩に深みが増すと思います。
現在の形は情景描写が中心で、その美しさは十分に伝わってくるのですが、「この風景を見て何を感じたのか」「この情景がどのような感情や記憶を呼び起こしたのか」といった内面の動きがもう少し見えると、読者にとってより共感しやすい作品になるかもしれません。
とはいえ、全体として、自然の美しさと穏やかさが存分に詰まった詩で、読んでいて心地よい時間を過ごすことができました。日常の喧騒から離れて静かなひとときを過ごしているような心地よい余韻が残りました。
佳き作品でした。
ありがとうございました。
**********
☆「秋の古夢」 日向さま
日向さま、こんにちは。御投稿ありがとうございます
MY DEARの投稿は初めての方かと存じます。
私が評担当にあたってしまい、申し訳ない気持ちです。
とても難しく、味わうまでに至れませんでした。ごめんなさい。題を頼りに拝読させていただきました。
とても繊細な感性で綴られており、鮮やかな色彩と感覚が織り交ぜられた豊かなイメージの流れが感じられます。
連毎の緩急のつけ方もとても巧みだと感じました。
秋という季節を背景に、火の粉や炎、茜色の空といった視覚的・触覚的な要素が次々と現れ、作者の内なる世界へと引き込まれていきます。
(秋らしい)静かな思索を促す力を感じました。
秋を象徴として、孤独や郷愁、罪と救済といったテーマを古い夢の中に映そうとなさったのでしょうか。
一度読んだだけではその全貌を捉えきれず、何度も味わいたくなる魅力があるように思います。
冒頭の「小さな火の粉が手の甲に口付けをする」という一行は、詩の雰囲気を決定づける素晴らしい一文だと思います。
(「染る」は文法的に「染める」や「染まる」の方が自然に感じられます。古風な表現を意識されたのかもしれませんが、少し引っかかりを覚えました)
「いつしか紳士は形をなして」という展開はとても興味深いです。
火の粉から「紳士」という人格的なイメージが立ち上がり、さらに「空という広大な何かを己のものと定義する」という壮大な発想へと飛躍していきます。
この抽象性とスケールの大きさが詩に深みを加えていきますね。
2連目…無限の空に対する徒労感が伝わってきます。
「人肌は罪深き恋」や「時計草はあの日の口付けで止まったまま」…さらに詩情豊かに紡がれてゆきますね。
時計草の停止した時間は、過去の喪失感を象徴していると考えられ、その後のくしゃみへの流れは、秋の訪れに伴う空への何らかの働きかけを表現されたのでしょうか。
3連目…色彩の変化を通じて時間の移ろいや感情の揺れが描かれていますね。素敵な連です。
(「だれが教えてくれるだろうか、」読点は意図的でしょうか)
4連目…前連の茜色から一転、冒頭の「黒い羽」は色彩的にも暗く重く、トーンへが移り行くのを示唆しているように感じます。
「黒い羽」は秋の落ち葉に似ています。
秋になると葉が木から離れ、地面に落ちていくように、「黒い羽」もかつての翼…6連の「かつてすべての空を手に入れた翼」の一部が落ちたものという解釈でよいのでしょうか…。
「落ちる」という動きが、秋という季節の持つ「終わり」のイメージと詩人の心の中の孤独を結びつけているようにも感じました。
秋の葉が落ちるように、詩人の内面から何かがこぼれ落ち、秋の終わりと共に、一人で抱える寂しさや過去の重み、孤独はより強調されているように感じられます。
5連目…熱さという感覚を通じ、記憶が語られます。
「ドライヤーのようなあたたかさ」という日常的な比喩や「鼻提灯は見えたり消えたり笑ってる」のユーモラスな描写が緊張を和らげてくれます。
6連目…これだけで一篇の詩ができそうなボリューム、内容を含んでいるように感じます。
「私を燃やす炎は彼岸花の繭になる」「母の腕の中はあたたかいと知った」など赤く儚いイメージは再生の暗示を兼ね備え、終連に向けて詩に象徴的な締めくくりを与えているように感じます。
終連…詩の主題である炎(秋)の両義性を見事に集約しているように感じます。
ときには海に咲き
空を飲み込み
大地に立つ
壮大なイメージは、炎の遍在する力を歌い、「無邪気で優しい僕の心」と結びつけることで、一応の回帰をみます。「太鼓が鳴り止まないかぎり」という条件付けが、永遠に燃える炎の運命を暗示しつつ、どこか解放的な響きを持つのも素敵な着地だと思いました。
感覚的で色彩豊かなイメージと、私の孤独を中心とする深いテーマが絡み合い、読むたびに新たな発見がある詩です。色彩の使い方、抽象と具体のバランスが詩に生命力を与え、感情の起伏に自然に引き込まれてゆきました。
独自の世界観と情感を持ち、詩人としての感性と技術が存分に発揮され、何度も読み返したくなる魅力に溢れています。
しかしながら、大作ということもあり、イメージのつながりを結びつけるのが難しく、焦点がぼやけてしまったり、巧みな比喩や象徴の掴みにくさにより、解釈が散漫になってしまう可能性が少なからずあるように感じられました。
読み応えのある素晴らしい佳き作品でした。
ありがとうございました。
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☆「喜怒哀楽」 相野零次さま
相野零次様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
初連でぐっときました。
「晴れた空を見上げよう」
個人的に作品に元気をいただけました。
ありがとうございました。
私も見知らぬ誰かを元気づけることができるような詩を、ゆくゆくは書けるようになりたいです。
感情の起伏を自然や日常の情景と重ね合わせながら描いた美しい作品ですね。
喜び、怒り、哀しみ、楽しさといった人間の普遍的な感情が、四季や自然現象と調和しつつ表現されており、読者に深い共感を呼び起こします。
詩のトーンは穏やかで優しく、感情の激しさと静けさがバランスよく共存している点が印象的です。
また、日本語の繊細なニュアンスを生かした言葉選びやリズム感が、詩に独特の味わいを加えていますね。
初連…冒頭の「哀しみの涙が乾いたあとは/ 晴れた空を見上げよう」の一節、いいですね。
哀しみを経た後の希望がシンプルかつ力強く示されています。
「晴れた空」や「雲の切れ間からのぞく太陽の光」が癒しの象徴として描かれ、鮮やかな視覚的なイメージは読者の心に残ります。
「君を癒してくれるから」という言葉に優しさが込められており、読者寄り添うような姿勢が感じられます。
2連…「人生のうちあと何回泣けばいいのだろう」という問いかけは、人生の儚さや不確かさを静かに投げかける一文で、読者に内省を促します。
「やさしい川のせせらぎに涙の流れる音が重なる」という描写は素晴らしいね。
自然の音と感情の動きが交錯するこの表現は、詩全体を通して描かれる「自然と人の一体感」を象徴しており、非常に詩的だと思います。
3連…「怒りに身を任せて地面が揺れる/地球も怒り苦しむこともある」という詩文では、怒りという激しい感情がダイナミックに表現されています。
人間の怒りを地球の揺れに例えることで、スケールの大きさを感じさせ、感情の強さが際立ちます。
「そんなときは机の下でじっと我慢しよう」という結びは、ユーモラスな印象を与えます。詩に軽やかな変化をもたらしますね。
4連…「笑顔は満月の鏡によく映える/ にっと見せた白い前歯がきらりと光る」は、喜楽が生き生きと描かれた部分ですね。
「満月の鏡」という比喩が詩的で美しく、「白い前歯がきらりと光る」という具体的な描写が笑顔の純粋さを際立たせています。
「月のうさぎが踊れば/手拍子を打って僕らもおどろう」と続く流れは、想像力を掻き立てる楽しさに満ちており、読者を詩の世界に引き込みます。
終連…「四季の移ろいは喜怒哀楽とそっくり/自然と人はいつも同じ顔で笑ったり泣いたりしている」は、詩全体の主題を簡潔にまとめ上げた結びとしてとても効果的だと感じます。
四季と感情の類似性を指摘することで、自然と人間の深い結びつきを再確認させます。「同じ顔」という表現が印象的で、感情の普遍性をさり気なく訴えかけます。詩の余韻を美しく残す終わり方ですね。
感情と自然を織り交ぜた構成が魅力的で、穏やかな感動を与える作品だと思いました。
言葉の選び方やイメージの豊かさが際立ち、自然現象を感情に重ねる手法が効果的だったように感じます。
欲を申せば、トーンの統一感や具体性をさらに追求することで、より強い印象を残せるのではないかと少し感じました。
素敵な佳き作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
ありがとうございました。
**********
☆「雨の喫茶店」 温泉郷さま
温泉郷様、こんにちは。御投稿ありがとうございます。
雨の日の静かな情景の中で繰り広げられる二人の会話と内省を通じて、空想と現実、主観と客観というテーマが繊細なタッチで描かれています。
喫茶店という日常的な舞台に、哲学的な問いと個人的な感情が交錯する構成が魅力的で、「主観的真実」という概念を軸にしたやりとりが印象的です。
初連…詩の舞台を簡潔かつ鮮やかに提示しています。
雨粒やコーヒーの香りといった感覚的な描写が、読者を喫茶店の落ち着いた雰囲気に引き込みます。
2連…語り手のキャラクターが垣間見えます。少し見栄を張る癖があるものの、彼女との親密な関係性が感じられ、微笑ましいやりとりが詩に温かみを加えています。「今度こそは カッコいい言葉だ」と続く部分は、語り手の純粋な気持ちが伝わり、後の「主観的真実」という言葉への伏線として機能しています。
3連…彼女の優雅さを際立たせつつ、詩に視覚的な美しさを与えています。この一行が会話の前に挿入されることで、彼女の存在感が際立ち、二人の関係性に深みを与えますね。
4連目から「空想は主観的真実である」と提案する詩の核心が導かれます。
この言葉自体が詩的であり哲学的で、読者に考えさせる力があります。
さらに、その説明として
「その人の経験や知識や感情が反映されていて/その人固有のものだ」と展開する部分は、空想の定義を丁寧に掘り下げており、詩の知的側面を強めていると思います。
彼女の反論「客観的真実じゃないの?」と、対する語り手の「空想は実在しないから/それ自体は主観的だよ」というやりとりは、二人の対話を生き生きと描き出します。
彼女の「納得のいかない顔」や「寂しそうに本に目を落とした」描写が、感情の機微を細やかに捉えており、読者に彼女の心情を想像させます。
「僕が言いたかったのはね」で始まる長い説明は、詩のクライマックスですね。
空想を単なる幻想ではなく、現実と結びついた大切なものとして再定義しており、深い洞察を感じさせます。
彼女の「それなら賛成するわ」から始まる返答…「あなたの中では 私は主観的真実であり 実在する大切な生活の一部なのね」という言葉が、突然彼女の不在を暗示し、読者に衝撃を与えます。
「私はもう 客観的には実在しないけれど」という一文で、彼女が過去の存在であることが明らかになり、詩全体のトーンが一変します。この展開は非常に効果的で、切なくも美しい余韻を残します。
終連…詩を静かに締めくくる一行として素敵だと思います。
記憶の曖昧さと喪失感が凝縮されており、読者に思索の余地を与えます。
詩のテーマである「主観的真実」とも共鳴し、彼女が語り手にとって大切な存在だったことが強調されていますね。
情感と知性が調和した詩であり、日常の中の哲学的な問いは、語り手自身の経験を通じて詩の中に見事に昇華されているように感じました。
少し欲を申し上げるならば、空想は云々の部分のやり取りが、説明的になりすぎ、少し冗長に感じられます。
言葉を絞り込み、トーンの一貫性をさらに磨くとより完成度が高まるかと感じました。
素敵な佳き作品でした。
御作、佳作とさせていただきます。
**********
以上、6作品、御投稿いただき、誠にありがとうございました。
それぞれに、素晴らしい作品でした。
十分に読み取れていなかった部分も多かったかと存じます。
読み違いはご指摘いただけたら嬉しいです。
井嶋りゅうさんが、評者を退かれるとのこと、さびしくなります。お疲れ様でした。
もうすぐ4月。新年度が始まります。
皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
紗野玲空
はぐれ桜は
大きな幹に
ポツリポツリと
まだらのままに
僕の歴史を映す鏡だ。
人に媚びて咲く花は
この肉にそぐわない。
少年のまま駄々をこね、
あらゆる召集令状を破り捨て、
気がふれたふりをして
乱れながら生き延びてきた
はぐれ桜となり
君を守るために咲くと呟き
その声が届くたびに
春は静かに訪れる
他方で山のような春霞は
過去の神経麻痺させて
現実を否認するため酔い知れる
桜の群れが狂気に変わる
花弁は炎となり
昔は散華を誇りと呼んだ。
今は、揺らされるのではなく、自ら踊る。
それはやがて燃え広がり
焼け跡に残るのは、死の灰だった。
色覚を持たぬ僕は思う。
白と黒は、彩りのことではなく
先鋭化する思考のことだと。
闇雲に、特攻を美とする桜を
色に翻弄されぬように
モノクロに閉じ込めてきた。
はぐれ桜に鳩が鳴く
平和の象徴
清く白を極め過ぎると
己が正義と同一化して
テロルと化して燃え盛る
破滅へと身を捧げてしまう
薄汚れたグレーの鳩は
白と黒の間を飛び、
灰色の羽根で風を抱く。
光と影、正義と悪の狭間で、
モノクロに堪えて喪の作業を慕う
白くも黒くも染まらず、
はぐれ桜の下で、
ほおほおと鳴く
テロルの炎に飲まれぬように
狂気の風に煽られぬように
灰色のまま風に遊ぶ
それぞれが
好きな本を読んでいる
雨粒が伝う窓際
コーヒーの香り
難しい本を読んで
ひけらかしては
彼女に叱られていた私
今度こそは
カッコいい言葉だ
彼女は美しい指で
ページをめくろうとしている
この言葉どう?
今 思い着いたんだ
空想は主観的真実である
空想は客観的に見れば
現実離れしている
でもね
その人の経験や知識や感情が反映されていて
その人固有のものだ
その人にとっては大切な真実であり
だから
主観的真実なんだよ
彼女は納得のいかない顔で
「客観的真実じゃないの?」と言った
え?
空想は実在しないから
それ自体は主観的だよ
彼女は寂しそうに
また 本に目を落とした
私はなぜか 少し焦った
僕が言いたかったのはね
空想だって
その人にとっては地に足の着いた
生活の一部なのだということなんだよ
そのとき限りで
消えてしまうものかもしれないけれど
空想しているその瞬間には
その人にとって間違いなく実在する
かけがえのない真実なんだ
ということなんだよ
彼女は初めて
私の好きなあの笑顔になった
それなら賛成するわ
あなたの中では
私は主観的真実であり
実在する大切な生活の一部なのね
私はもう
客観的には実在しないけれど
あなたの主観的真実であれば
それでいいわ……
あの雨の日 彼女が何を読んでいたのか
もう思い出せなかった
井嶋りゅう様 評をいただきありがとうございました。ちょうど1年前に初めて投稿させていただいたのが同じ題名の作品で、最初に感想をいただいたのも井嶋様だったので、1年後に記念にもう一度見ていただきたいと思って、同じタイトルで書いてみた次第です。たった1年でしたが、身の回りには色々と変遷があり、公園まで変わってしまいました。タイトルの件、ご助言ありがとうございます。考えてみたく存じます。井嶋様の評をいただくのはこれが最後となり、寂しくはありますが、これまでのご指導に深く感謝申し上げつつ、新天地でのご活躍を祈念しております。
評ありがとうございます。
なんとなく「根無草」と「浮雲」とい言葉が面白く感じられて書いた詩です。
楽しんでいただけたら幸いですが……5連目ですか。
唐突なお誘い感はありましたが、浮雲の気まぐれということで
サラッと流したつもりでしたが、それが良くなかったのかな?と。
「マヨネーズ工場」は唐突度合いが自分でもすごいと思いました。
自然な流れにできずに残念!
童話的な詩……意識したことはないですが、
たまに無性に描きたくなる平仮名だけの詩とかに
心当たりがあります。
全評者に当たりたいというのがありますが
今週は紗野さんの回に間に合いそうにないので
島さんの回に狙って投稿してみます。
改めまして、評ありがとうございました。
お仕事に励まれるとのことですが、
お身体にもご自愛しながらのご活躍をお祈り申し上げます。
哀しみの涙が乾いたあとは
晴れた空を見上げよう
雲の切れ間からのぞく太陽の光が
君を癒してくれるから
人生のうちあと何回泣けばいいのだろう
そのたびにやさしい川のせせらぎに涙の流れる音が重なる
怒りに身を任せて地面が揺れる
地球も怒り苦しむこともある
そんなときは机の下でじっと我慢しよう
笑顔は満月の鏡によく映える
にっと見せた白い前歯がきらりと光る
月のうさぎが踊れば
手拍子を打って僕らもおどろう
四季の移ろいは喜怒哀楽とそっくり
自然と人はいつも同じ顔で笑ったり泣いたりしている
3/11〜3/13までにご投稿分の評と感想です。ご投稿された詩は、一生懸命書かれた詩ですので私も一生懸命読ませていただいておりますが、上手に意味を読み取れなかったり疑問を書いたり頓珍漢な感想になったりする場合もございます。申し訳ございませんがそのように感じた場合には深く心に留めず、そんな読み方もあるのだとスルーしていただけると助かります。どうぞ宜しくお願いいたします。
*****
「根無草と浮雲」松本福広さん
松本福広さんこんばんは。
以前ご投稿いただいた「マヨネーズ工場」でしたか。今回の詩の5連目であちらの詩の展開を思い出しました。前回のアドバイスも引き続き今回に含みたいのですが、4連目までは違和感なく読み進めました。6連目も素敵なのです。引っかかるのは5連目でしょうか。5連目だけ色合いが違うように感じるのです。急に浮雲さんから誘われる設定になっていますが、4連目までの色合いの流れを汲むと、「いつか浮雲さんを飲みに誘ってみたいと思うのです」くらいでおさえる流れから6連目にいったほうが違和感がないように感じるのです。4連目まではたんたんとひとり語りで、根無草や浮雲が人物を紹介する例えで登場していたのに、5連目で急に命を宿しているかのような出現をする書き方になってますので、この部分に引っかかったのです。この詩はとても良い詩なんですが、5連目とそのほかがうまく融合されていないのだと思うんですね。アドバイスとしては上記のものか、あるいは、5連目にあるやわらかさをメインにして、最初から根無草と浮雲の会話にしてしまうという手もあります。もしかしたら松本さんは童話的な詩をお書きになる素質のあるかたなのかも知れません。私は今回の詩を読んで、逆に5連目に注目してみたいと思いました。5連目がもつやわらかさでもってもうひとつの「根無草と浮雲」を書かれて見ても面白いかもしれません。ひとつでも参考になったら嬉しいです。また書いてみてくださいね。
*****
「筑波の春」小林大鬼さん
小林大鬼さんこんばんは。大変お久しぶりですね。お元気そうで何よりでした。
さて、この詩は岩手県大船渡市の山林火災について書かれたものですね。火災と雪。その対照的なワードが色彩的なアプローチにも感じて、じっとりと良い詩でした。運転手から聞く災害と、タクシーという安全な場所にいる「私」との対比も、ある意味残酷が描かれているような気がして、ぼうっと余韻にひたりました。今年は全体的に雪予報が多いように感じます。なにかこう、閉じ込められていくような、行き詰まり感なども感じました。小林さん、またいつでもいらしてくださいね。
*****
「ヘビースモーク」喜太郎さん
喜太郎さんこんばんは。
まず冒頭の「あなたは私の中から選んだのは性欲」ですが、「あなたは」ではなく「あなたが」のほうがしっくりくるように感じました。さて。この詩は煙草を擬人化しているように読みました。この詩のいちばん気になるところは、煙草と性欲が繋がっているように書かれているところでしょうか。そこは私の中では繋がっているように感じません(どちらかというと食欲のほうが性欲に近いイメージで煙草は依存が主)が、喜太郎さんの中では繋がっているのでしょう、そして、繋がっていても良いのです人それぞれですので、が、「性欲」と書いてしまうより「性欲」なんだろうなと読み手が感じるように書かれてあったほうが、読み手の共感度つまり納得度が高まると思いますので、その辺をご再考いただけたら嬉しいです。今回は全体的に推敲回数をもっと増やした方が良いような気がいたしました。
ほぼラストで「あなたの寿命は私のモノになる」はとても良いと思いました。また書いてみてくださいね。
*****
「すみれ公園の桜」温泉郷さん
温泉郷さんこんばんは。
2本の桜の老体樹の一本が折れたのをきっかけに根元から伐られたというエピソード。記憶にありましたので調べましたところ、去年のちょうど今くらいに同じタイトルで投稿がありました。今回は続編という認識で宜しいのでしょうかね?申し訳ありませんが当時のテキストが見当たらなく細かいチェックが出来ませんでした。自分の評を読み返して、去年の詩とは今回は違う内容だと感じましたので、こちらはまた新たな詩ということで読ませていただきました。
去年一緒に写真を撮ったお母様が今年はいない、ということ。その事実が、伐られた桜の樹と重なってとても切ないですね。しかもすみれ公園自体が改修工事に入ってしまって、桜をのんびり眺めるどころではなく、騒々しい現場で、残ったもう一本の桜が静かに咲き誇っている、その何とも言えない悲哀が、桜の花びらみたいにはらはらと散っているような映像を想像しました。5連目の「工事のことは言わないでおこう」という気遣いが、まるで残った桜との約束ででもあるかのような、この桜がこの詩の主人公と同一のような、春独特の胸がしめつけられる感情を抱きました。もしかしたら私だけではないかも知れませんが、寒かった冬からだんだんと暖かくなって、花が芽吹いて春を感じる季節に、私は少し憂鬱になるのです。子どもの頃からそうで、春は苦手な季節とも言えます。最近は花を育てることでその苦手を回避しているような気がしますが、だからこそ、このすみれ公園の桜は心が痛いですね。来年こそ穏やかな心で楽しみたいものですね。佳作といたします。ところでタイトルの件ですが、前回と全く一緒ですが内容は「その後」感がありましたので、「すみれ公園の桜2025」とか「すみれ公園の桜その後」とか、(ちょっとうまいアドバイスがなくてすみません)少し変化があったら良いかなと思いました。宜しかったらご一考くださいね。温泉郷さんは非常に良い感性をお持ちですので、これからも引き続き頑張ってくださいね。
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以上、4作品のご投稿でした。
どうもありがとうございました。
私事で恐縮ですが、今回を持ちまして評者を抜けさせていただくこととなりました。長い間大変お世話になりました。ご投稿くださっていたかた、気の利いた評を書けずでしたのにもかかわらず、どうもありがとうございました。引き続き新作コーナーで宜しくお願いいたします。
水無川渉さま、荻座利守さま、お引き受けくださり誠にありがとうございます。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
花粉や黄砂など、体調を刺激するものが舞っておりますので、皆さまどうぞご自愛ください。
どうもありがとうございました。
井嶋拝
小さな火の粉が手の甲に口付けをする
ぱちっと音を立てて
空気を恥じらいに染る
いつしか紳士は形をなして
大きなものに手を伸ばす
誰の所有物であったか
空という広大な何かを己のものと定義する
彼の歩みを誰が止められようか
白帝の調べは彼に名を与えた
お空はどこまでも続いている
前に前に進んだところで壁があるわけでもない
後ろに進んだところで
前やも後ろやも教えてくれる本もない
偉大な彼は飽き飽きしていた
人肌は罪深き恋
時計草はあの日の口付けで止まったまま
ぱちぱちばちっと
火の粉が飛ぶ
ぶわりと空にくしゃみした
独りお空にくしゃみした
おっきなお口で歯を見せながら
お空は茜色にかわる
もともと茜色だった気もする
空の色は何色か
目に映る空はいつだって茜色だ
青い空があると
だれが教えてくれるだろうか、
黒い羽が落ちてきた
帰る場所は溶岩か
それとも厚い氷の中か
風は冷えて炎を揺らす
孤独は炎に焼かれてく
蜜の香りがトカゲを煽る
そぞろそぞろな毛が逆立つ
ぱちぱちばちばち燃えている
落ち葉は炎の中で踊る
栄光をかたどった雲は攫われる
傲慢な僕への罰かのように
攫われた雲は僕の罪をかたどる
サラマンダーの焔が雲を吸い込んでいく
ぬくもりは僕を寂しくさせる
炎が僕を包み込んだ
空から僕を守るように
サラマンダーが息を吐く
熱い熱いと泣く少年
熱さはしだいに思い出となる
あの日母がくれた昂揚する心臓
目を閉じて
頬は微かに湿っていた
あたたかさは涙を乾かす
ドライヤーのようなあたたかさ
心地いいあたたかさ
すぅすぅと寝息をたてる
鼻提灯は見えたり消えたり笑ってる
熱さは眼を砂漠にする
水を求めて眠りから体は起こされる
少年はいなかった
代わりに僕がそこにいた
むず痒さが僕を離れない
抱きしめてもらいたい
頭を撫でてもらいたいような
そんなちっぽけなもの
サラマンダーは息を吐く
熱くて溶けしまいそうな
重いようで軽いような
私をあたためてくれる流れ
朝かも夜かも夕方かも分からない
赫く橙と揺れ光る
私を燃やす炎は彼岸花の繭になる
真っ赤な揺籃は私を寝かしつけて
炎の揺れは歌になる
泣きじゃくる子に子守唄を歌うように
かつてすべての空を手に入れた翼が
とんとんと優しく背中を叩く
母の腕の中はあたたかいと知った
ただ淡く哀しく燃える
そこに意味などありはしない
ほのおは揺れる
曖昧に
炎だけが私をおんぶしてくれる
炎は燃える
ときには海に咲き
空を飲み込み
大地に立つ
無邪気で優しい僕の心
太鼓が鳴り止まないかぎり
炎は僕を燃やしつづける