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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

評、5/24~5/27、ご投稿分。  島 秀生

お待たせしましたー

今回、気合いの入った力作が多かったように思いました。
多謝。


●人と庸さん「十五歳」

ああ、難しい年頃ですね。私も子育てがうまくいったとはとても言えない立場なので、いいアドバイスは言えません。その子によって違うので、正解なんて全くわかりませんが、少し距離をおいて見守ってあげた方が、いい時期なのかもしれませんよ。本人的には自立を意識しはじめる時期、というか大人ぶりたい時期ですからね(意識があるというだけで、もちろんまだできませんけどね)。とりあえず、簡単でいいので、声だけは毎日かけておきましょう(それが、むこうが本当に用がある時に、相談しやすい雰囲気づくりとなります)。私が言えるのはこれくらい。以上。

でも、息子さんに一所懸命なのが伝わってくる詩で、いい詩ですね。

作品、気になるところ、順にいきますが、
まず初連、「ピロティ」も校舎の1階部であるので、2行目で「校舎の前」って書かない方がいいですね。矛盾してきます。

 向かいの校舎の玄関前では

くらいの方がいいかな、と思う。
次に5連ですが、砂の「ざらざら」とやすりの「ざらざら」が重なるのは、やっぱりよくないんで、どっちかにしましょう。やすりの方があとでまた登場するので重要で、となると割愛すべきは砂の方かと思います。で、最後の2行を生かすために、こっちはやはり1行の方がいい

 どことなく砂が残る廊下や教室の床

これぐらいで入れるか、
あるいはリズム感からいうと、廊下や教室の床の2行は、いっそ削除してしまってもいいですね。その方がラストの2行が生きますから。

7連なんですが、「炊事の作業音」が=「ユーチューブの音声」のことなのかと読めてしまう。この誤読懸念は避けるべき。
6連との対応で書いたほうがいいと思う。また、「しずかだ」は、前の連との場面転換として使います。前に入れます。

 しずかだ
 しゃべらない きみ
 ごはんを作る わたし
 
 しずかな ユーチューブの音声
 しずかな 炊事の作業音
 
 半分 電灯の消えた部屋で

こんな感じ。
ちょっと気になったのは、そんなとこです。
後半は作者の葛藤が情熱的に書けていて、とてもいいと思います。

母の日に、遠出してチョコレート買ってきてくれたんだ。
上出来の息子さんではありませんか。

うむ、いい詩でした。人と庸さんは、私は初めてなので、今回感想のみになりますが、
ハートのある、いい詩を書かれる方だと思います。


●温泉郷さん「明日を踏む」

温泉郷さんの詩を一番最初に拝見した時も、文章力のある人だなと思ったけれど、この長編の詩を破綻なく、スムーズに書ける技量を見ると、やはり間違いなかったなと思う。
たいしたもんですね。イメージを繋いでいく行送りが上手で、自分の文体を持ってますよね。

詩は、遅れて学校に向かう小学生を描いています。でも急ぐ様子はなく、むしろ学校に行きたくないように見える。声をかけられてもうつむいたまま。顔を上げることもない。一人遊びをしながら歩く様子は孤独感に満ちているように見える。作者はその子を見て、昔の自分と重なるものを感じたんだと思う。だからこそ、言ってあげたいと思う。「明日」はそんなに悪いもんじゃないよ、と。

今回もいい詩で、ステキです。こうなると、毎回読むのが楽しみになってきた。

順に行きます。
初連、上3行を読むと、別の意味合いで意味が通る。通学路に当たってる道だけれど、この時間だから小学生がいるはずがない、と読める。
むしろ、この上3行だけの方がノーマルなんですが、作者が書いてることはちょっと違ってて、これって要素が2つあるってことですよね。4行目は、「(通学路でもなく)そもそも小学生はめったに通らない道」の意かと思います。
初連の書き方だと両者の混同があるので、もし意味を正確に伝えたいのであれば、

 この時間
 この路地
 小学生はとっくに登校した時間
 しかも小学生はめったに通らない裏道

この方がいいでしょうね。
次に7連なんですが、ちょっと整理した方がいいでしょうね。

 遅れた朝の光が
 ランドセルにとどく
 男の子の頬を照らす
 けれど下を向いた眼に
 光が届く様子はない

 おはようと
 声を掛けてみる

この流れの方がいいんじゃないかな?

それから、12連の終行は、その前も「今」なので、

 ようやくここにたどり着いたんだった

の方がいいんじゃないかな? 「ここ」が、あとで「明日」に変化してくる部分に思えるので、その終行は「今」と置かない方がいい気がします。

一考してほしいところは以上です。

1点言いましたが、でも12連以降の終盤は、全部ステキですね。
また、穴ぼこを踏んで歩くのを、「今を踏んでいる」と解釈した思考はすごくいいと思う。これがこの詩のキーワードかもしれないね。
12連以降の、少年に呼びかける優しいエールがとてもステキです。
名作です。代表作の1つとしていいと思う。

遅れて学校に向かう子を、私もじっと見てたことがある。きっと誰しもそういう子にバッタリ出会ったことがあるんじゃないだろうか。そんな時に胸がもやもやっとするのはこれだったんだなあと思った。読者に共感を与える、いい詩だと思います。


●相野零次さん「そんな一日」


まあ、「明日も何もしないかもしれない」はともかくとして
そんな一日があっていい、は、そのとおりな気がする。
立ち止まる日と言いますか、開放する日と言いますか、今日はなんにもしないと決めて過ごす。心を静めてゆっくり周りを見渡す、そんな日があっていい気がする。

 拍手してお祝いする
 どこかで生まれたであろう赤子のために
 そんな一日があってもいい

この連、ステキですね。見えなくても、知らなくても、そんなお祝いの仕方があっていい。
次の、

 死ぬことは簡単じゃない
 けれどいともたやすく
 死んでしまう人もいる
 そんなひとたちのために
 祈りをささげる
 決してくだらないことじゃない

も、いい連。
ガザ地区の死者は3万6千人超。イスラエルにせよハマスにせよ、人の命をなんとも思っていない2つ国の指導者の戦争はサイアクだ。私はこの連から、それを思った。

終連の3行もいいね

 今日は黙祷しよう
 自分のためにみんなのために
 そんな一日があってもいい

終行の「きっと」はいらない気がする。この3行がステキです。

はてさて、作者の意図とどの程度合ってるかはわからないが、私はステキに読ませてもらいました。
名作あげましょう。読む人の琴線に触れるものがある。


●司 龍之介さん「書けない」

まあ、詩人の中にも、私は詩を書いてます、みたいな詩を書く人はたしかにいるのだけど、それって、すごく楽屋落ちの話であって、詩を書いてない読者にとっては、なんらの感心ももたれないものにしかなり得ないわけです。だから、私はそれをネタに書くことには基本、否定的です。
ただ、その中でもすごく中身の濃いものもあって、人生の話と結びついて語られるものや、芸術論といってもいいような高みにあるもののみ、例外的に評価しています。

そんなわけで、この詩がその例外事項に当てはまるものとも思えず、あまり評価できません。

詩人に限らず、芸術家に限らず、クリエイティブなことをしてる者は皆、生みの苦しみを味わっています。そんなのは当たり前のことなので、書くに値せずです。

ただ、この詩でおもしろいなと思ったのはここで、

 ハッハッハ
 笑うしかないようだ
 笑ってくれ みんなで笑おう
 はい、せーの
 ワッハッハ
 王の様に笑うんだ

してみると、詩の悩みから入るとしても、そこからは早々に脱して、はじけていった方が、はじけた中に読むべきものが出てきたのではないか、そこに活路があったのではないかと、改善方法としてはそのように思います。
秀作一歩前です。


●雪柳(S. Matsumoto)さん「進化」

またもや力作ですね。
地上を選んだ人間は、日々の口過ぎに追われ、さまよいながら楽土の在処を探し続けているようであります。一方で、時を追いかけることも捕まえることもできません。
しかしながら、満たされない原因は、自分にあるのかも・・・と思い始める作者であります。縦横無尽に思考を巡らせてくれていますね。

内容しっかりと書いてくれてるんですが、ちょこちょこっと流れの悪いところ、掴みにくい部分ありますので、ちょっと指摘させてもらいますと

・初連と2連の「人」は → 「人間」の方がいい。
「進化の道を分かたれた人は」が、人間の中でまた分かれた人(たとえば日本人)を想起させてしまうので、他の動物に対しての「人間」と、はっきり分かった方がいい。

・初連終行
「名残りからなのだろうか」 → 「名残りであろうか」

・2連と5連の「場所」 → 「地」

・4連終行
「顔を認めている暇もなく」 → 「顔を認める暇もなく」

・6連(終連)4行目
「風に揺れてうなづく」 → 「風に揺れてそれにうなずく」

・5連、1~2行目の内容と、3~4行目の内容が、あまり噛み合ってないので
 1~2行目は不要で、下記でいいのではないかと

 無限の彼方へ遠ざかる
 一瞬のような時間を そこにある風景を
 記憶に留めおくことは 人には到底できそうにない
 けれども 普段は気付かぬ意識の最深が
 秘かに大切に 憶えていることだろう
 夜ごと心で探し求める場所は
 そんな認知の先の領域に 立ち現れるのかもしれない
 おそらく人がみな 誕生の時から憧れ 
 いつか辿り着くよういざなわれる世界
 (足らざるもの満たされ──)

少し滑らかにしました。

これで初連もよりステキになるし、2連後半もステキになる。
とりわけは後ろ3行、

 鳥になれず 魚に戻ることもできない人間は
 天に描かれた見えない座標の 
 どの位置にいるのだろう

ここ、ステキですね。

うむ、しっかり書き込んでる努力賞もあり、名作を。

細かい変更を指摘したところは一考してみて下さい。


●上田一眞さん「しのぶもぢずりの花」

ネジバナはよーく見ると、紛れもなくランの花です。でも贈答に使われるような華美なランではなく、野趣があっていい。清楚な美で私も好きです。ケト土を使って、ごくごく小さい平たい鉢に入れて、テーブルに飾ると最高だと思いますよ。
あいにく私は野生のネジバナに出会ったことがなく、見つけたことがあるなら、羨ましいかぎりです。

あのーーー
たいへん申し訳ないんですが、これ、ちょっと間違ってるかなと思います。
古今集で歌われている「しのぶもぢずり」は信夫地方で作られていた乱れ模様の摺り衣(すりごろも)のことで、着物です。「もぢ」とは「もじゃもじゃ」の意で、もじゃもじゃ模様=乱れ模様 の「すり」=「摺り衣」の意となります。

ちなみに「しのぶずり」と「しのぶもぢずり」は違うのだそうで、前者は忍ぶ草(シダ類)を使いますが、後者の染色法は、岩の上に細かく砕いた雑草や花弁、山藍などを置き、その上に布を被せ小石で布を打ち植物の色素を布に移す染色法(後工程あり)なのだそうで、いずれにせよ、染色にもネジバナは絡んでいません。

ネジバナの古語である、信夫(忍)摺ないし信夫(忍)捩摺の名は、この摺り衣の捩れ方に似てるからとかで、ネジバナの方が、あとから命名されたもののようです。
古今集の制作時には絡んでいません。

ですので、古今集で歌われたものとは違うという認識の上に立って、敢えて類似性を語る形に持っていかれた方がいいと思います。
だから、最後にもう1回古今集を持ってくるような深入りはやめたほうがいい。古今集から始まっても、途中からは話をネジバナ一本にもっていって、そのまま終わった方がいいと思います。(さしあたり、終連は削除案)

しかし、除草剤で枯らすというのはサイテーなので、かなり憤慨されたんじゃないだろうか。ここ、なんか、揉めたのが目に浮かぶ気がする。ここがこの詩の衝撃箇所でもあるので、もし書けたらもう少し書いたほうが、詩に起伏が出て、良くなりますよ。

娘さんとの物語のところはステキなので、そこをもって現状、秀作を。


●理蝶さん「過ぎた話」

なんか切ないね。
今はそばにいない人のことを、どうしても思い出す時がある。どうして、あの時、あんなことを言ったのだろう? なぜ、あんな表情をしていたのだろう? 本当は、なにが言いたかったんだろう? みたいなことが、ずいぶん時が過ぎてから、ああ、そうだったのかと、突然わかる時がある。
その、「わかった!」という衝撃については、「ユリイカ!」という語や、その次の連の「天才」や「裸」で、アルキメデスのエピソードに倣っています。

そして、人生はこうして、わかることと、わからないことの苦しみをくりかえしてゆくのだろうと俯瞰します。

しかしながらこれは同時に、その時わかっていなかった自分を思い知ることにもなります。終盤の涙は、なんとなくそれ故の感じがして読みました。

パーツでは、私は5連の、

 なにかがわかった途端 
 からだのどこかが透き通る
 そして通り抜けてゆくんだ
 わからないままでも
 きっと生きてゆけたようなことが

と、10連の、

 いつか そのひとみが
 しんとした 
 ふるさとの海のようにしずまった時
 本当にぼくがわからないといけなかったことが 
 ようやくわかるのだろう

が、とてもステキで、染み通りました。

まあ若干、横道に行くところもあるけど、それも詩を大きなものにするために、あっていいような気がしています。
なので、このままでOKです。名作&代表作入りを。
読んでる方も、切ないものを思い出す、いい詩でした。

編集・削除(編集済: 2024年06月09日 05:24)

三浦様、評のお礼  理蝶

三浦様、いつも評をしていただいてありがとうございます。
疲れ果て家に帰り眠ってしまいたいけれど、家に帰って眠ればまた疲れる明日が来てしまうという、そんなジレンマを詩にしました。
どうにも最近気が重くて、中々元気が出ないのですがそれを詩にすることで少し楽になったような気がします。詩とは、まずは自分のために書くものなのかもなあと思わされました。
帰りたいけど帰りたくない そこを書きたかったので読み取っていただいて嬉しいです。
新荒川大橋、検索してみました。
僕の街からは遠い場所ですが、もし深夜に1人でそこを通ったら、寂しいような懐かしいようなそんな気持ちになるんだろうなと思いました。
深夜の運転の静けさと寂しさとメロウな感覚というのは他では意外と味わえない感覚ですよね。
佳作の評もありがとうございます。また投稿しますのでよろしくお願いします。
ありがとうございました。

編集・削除(未編集)

三浦志郎さま 評のお礼です  相野零次

三浦志郎さま 評ありがとうございます。
テーマが大きすぎるとは意外な指摘でした。ありふれていると言ってもいいんでしょうかね?
局地的に書いた方が詩は面白いとのご意見、わかるような気もいたします。
今後に生かしたいと思います。

編集・削除(未編集)

三浦志郎様  御礼  静間安夫

今回も私の詩にお目を通していただき、誠にありがとうございます。佳作
との評をくださり、とても励みになります。
連分け詩、これからもトライします。

島左近、大河ドラマで見たことがあります。石田三成は智将ではあるけれど、まっすぐ過ぎて、とかく周囲とも摩擦を起こしがちですが、そんな三成を優しく見つめ、最後まで忠義を尽くす左近の姿が印象に残りました。

今後とも、どうかよろしくお願い致します。

編集・削除(未編集)

三浦志郎様 評のお礼です 上田一眞

こんばんは。上田です。
私の拙作「桃の実ひとつ」に高い評価を下さり、ありがとうございました。
幼い妹との情景は詩に残しておきたく、筆をとっております。どうしてもふる里の今はなき家での情景になるのですが、本作の桃の木も以前書いた無花果も思い出深く、こころに刻まれています。妹は五〜六歳でしたから記憶にないようですが、母を早くに亡くしたものですから後追いでもいいから記憶を焼き付けてもらたく、書いております。個人的な思いが強くて溺れてはいけないと思いながら、思い切り没入してます。お許し下さい。

編集・削除(未編集)

感想と評 5/31~6/3 ご投稿分 三浦志郎 6/8

お先に失礼致します。

1 理蝶さん 「国道、真空、午前2時」 5/31

なんか、小説のタイトルのようで食指が動きますねえ。初連から2連の叙景が際立っています。
オレンジと黒の怪しさ、コンビニの白の清新。このコントラスト表現の見事さです。以降は少しずつ自己の内面に入って行きます。青続きの信号でスムーズに走れて気持ちいい。しかし、どうもそれだけではないらしい。一般論で言うと「帰宅=ゆっくりできる、眠れる=安心感」なのですが、どうもそれだけではないらしい。帰宅といった行為にどこか屈折したものがありそうです。その傍証は文中、多く取ることができます。例えば、3連全体。「とぐろを巻け~閉じ込めてしまえ」。7連全体。「血が冷める~深夜のセンチへ」「怪我や痛みのくだり」―こうやって見ると多いのです。この「怪我~痛み」の部分は名文ですね。もちろん本人は家に向かっているのですから、帰宅の意志はあるのですが、その心情には、たえず影が付きまとっているのを感じるわけです。その微妙さがこの詩の持ち味であり、成立の大きな要因になっているのがわかるのです。その深い陰影に佳作を。

アフターアワーズ。
私事を。僕も若い頃、こんな時間によく車で帰った憶えはありますね。埼玉と東京を分かつ新荒川大橋付近でした。


2 上田一眞さん 「桃の実ひとつ」 6/1

これはけっして大きい詩ではありませんが、心和む詩、可愛い詩。

食いしん坊の妹 みいちゃんと
カナブンたち               ――ここ、一番かわいい!大好きです。

要所にセリフも入って、可愛さ+このセリフが場面やストーリーを動かしていくのがありありとわかって、効果も充分なのです。事情がくっきりと浮かび上がっていますね。最後はハッピーエンドで、よかった、よかった。やっぱり「お母ちゃん」ですね。
桃のように甘い佳作を。


3 小林大鬼さん 「六月のゴキブリ」 6/2

大鬼さんの作品としては珍しいのは詩の趣向です。
虫を擬人化して主人公にまで押し上げたのは初めてのような気もします。ことさら「インド料理店」としたのは、どうやら実話にヒントを得たような気もします。およそ料理店にゴキブリが出たのでは間違いなく人間、あせってこういう行動を取るでしょう。いっぽうゴキブリほど嫌われ一方の生き物も珍しい。それはあくまで人間の論理であって、ゴキブリにも論理、意地、一分といったものはあるでしょう。この詩はそういったものも垣間見えておもしろいです。「五井」は以前の詩にも登場した気がして、いわば、大鬼さんの存在証明でもあるでしょう。 本稿冒頭2行を重視して甘めですが、佳作にしたいと思います。


4 温泉郷さん 「つかの間の雑居」 6/2

いい詩ですね。冒頭佳作。殆ど全篇、状況描写に終始するのですが、この詩の凄いところは、それがそのまま物品のそれぞれの事情・来歴・現在の心境を伴い、ひとつの思想にまでなっている点です。「叙景=思想」――これはなかなかできることじゃありません。それぞれの物品も、それに相応しい事情が丁寧に与えられているし、「気まずく 落ち着かない」「それまでは このままだ」「みんな静かに受け入れている」など現在の心情吐露も読ませますね。とりわけ「気まずく」です。その通り!同時に(これから先もどうなるかはわからない、とにかく今は……)といった点も加味される。「偶然と必然の暫定的均衡点」が見事にそれを表しています。それぞれ事情は違うものですが、今は報われない境遇という点で共通しています。悲しい共通ではありますが。これは人間間にも暗示されるかもしれない。当たらずとも遠からず的に言うと「呉越同舟」「同床異夢」といったことわざも少しイメージしましたね。


5 相野零次さん 「愛」 6/2

とてつもなく大きなテーマを果敢に書いてくれました。間違っている事、批判されるべき事は、ただのひとつもありません。全てこの通りです。「正」の面だけでなく、結果として「負」になる部分にも触れているのが、かえって納得できます。ただ、いかんせん、テーマが大き過ぎます。汎用的、大局的に書くのはいかにも難しいです。繰り返しますが、この詩は全て正しく正論です。ただ下世話に言って申し訳ないですが、まっとう過ぎて―詩的感興という意味での―面白みに欠ける気はするのです。ただいっぽうで(これだけの大テーマをよく書いたなあ)といった思いもあるんですがね。詩はもう少し絞って”局地的に“書いたほうがいいように思うのです。この詩で言うならば、たとえば、終わり約3分の1―「でも/愛のために苦しむ人もいる」以降部分をピックアップして思考展開、考えを深めると、より面白くなると思います。オリジナリティも出るでしょう。ところで前回、5/19付「祈り」という作品(佳作)がありました。こちらと比較検討してみてください。テーマ性、言葉の詩的オリジナル性において何か発見があると思われます。今回は佳作一歩前で。


6 ベルさん 「玉ねぎ」 6/3

常に心優しい詩を書かれるかたですが、今回はそれを場面によって綴られています。とても日常的、身近な環境に置かれた詩です。まあ、何かあったんでしょうね。悲しい時、泣きたい時の「玉ねぎ」。とても気が利いて、優しい配慮です。その理由が「おかあさん、どうしたの」です。この言葉と、それに続く連が、この詩の事情の全てを語っていると思うのです。ここで玉ねぎはとても有意義な役割を果たしています。悲しみや涙の緩衝剤、中和剤です。これで料理がおいしくなれば言う事なしです。もうひとつ感じるのは、終わり近くがとてもいい。「おかあさん~」のセリフと終連部分は、間は離れていますが、呼び合っているのを感じます。絆というものでしょうね。佳作半歩前を。


7 静間安夫さん 「こころ」 6/3

単純に言ってしまうと“心のリハビリ”といった主旨ですが、いや、そう単純には括れないほど、本作には様々な修辞や思考が込められています。初期段階として「心の傷=怪我」と捉える。運動面ではパラアスリートの葛藤~努力~達成が内面を通して描かれます。それ以降が芸術面。詩もそうなのでしょうね。「奥底からの叫び」「内面の深いところから」の言葉が並びますが、芸術発生用件として欠かせないでしょう。自己救済、自己確認、自己実現、世界との関わり、etc……。総和としての、この詩の言う生きがいであるでしょう。終わりの2連が凄くいいですね。とりわけ終連が印象深いです。凄く納得できます。そして、この詩は前へ向かっています。佳作です。

アフターアワーズ。
洋楽を聴いていると、よく「DEEP INSIDE」という言葉に出会います。まさにこの詩の「内面の深いところから」ですね。よくぞ書いて頂きました。
そうですね。詩の基本と王道はやはり連分け詩にあると思っていて、そこから派生して(今、はやりの)散文詩や長編詩があると思ってます。逆に日本では叙事詩は存在しない、あるいは育ちにくいといった説もあるようです。要はバリエーションのバランスとタイミングでしょうかね。


評のおわりに。

①とある日、下記の言葉を使ったが理解してもらえず、寂しい思いをした、の記(涙)。

「ネズミにひかれる」
「蝶よ 花よ」

②全くの個人趣味。戦国武将・石田三成公の重臣、島左近殿の骨、京都の寺で見つかる、の由。
いまだ確証無くも、願わくば御本人のものであれかし。 では、また。

 

編集・削除(編集済: 2024年06月08日 15:16)

命の温もり  上田一眞

早朝 新聞受けのそばに
見知らぬ少女がひとり 蹲っていた

 おはよう
 どうしたの?

少女の小さな掌を覗き込むと
雀が一羽
手の中で ぐったりしている
身体に触れるとまだ温かい

羽毛が生え揃ったばかりの幼鳥 
風に煽られ
巣から落ちたか
はたまた 鴉どもにやられたか

雀が チチっと啼いて眼を瞑る
やがて
体内時計が針を止め
深い死の帷に包まれた

鳥の身体を指で囲っていた少女は
悲しげに私を見上げる

 せつないね 
 埋めてあげような

そう声をかけると
彼女はコクりとうなずいた 




冷たくなりゆく骸
命の残香を感じ
孤独な小鳥のしぐさでうなずく
少女
死を感得し
雀の黄泉路への旅立ちを悟る

命の温もりが消えたとき
少女の胸に
憐憫の火が熾り
その儚さを悲しむこころが芽生えた

清らかなこころから湧き出す
温かい涙が瞼を濡らす

少女の魂に転生する
雀の霊(たましい)
私は 一条の光を見て
少女の肩にそっと手を置いた

編集・削除(未編集)

秋乃 夕陽 様へ  島 秀生

お祝いのお言葉ありがとうございます。

ああ、書き方がわかりにくくてすみません。
お引っ越ししてきて2周年です。

その前はteacup掲示板(途中でGMOが吸収)で22年やっておりましたが、
たぶんGMOの方針で掲示板事業の廃止となった模様で、退去を余儀なくされ、
他を探して、ここに移ってきた次第です。

しかしながら、引っ越し当初は月16000アクセスだったのが、今たぶん1.5倍くらいになっているので、
引っ越してきて良かったというか、レギュラーメンバーの活躍が知られるところもあって、ご利用が広がっているので、
ホントにありがたいです。

皆様のご利用に感謝を申し上げます。

────────────────

*すみませんが本件にお祝いの言葉は不要です。24年の歴史の中の、ほんの2年の話で、移転日なんて記念日でもなんでもないのです。
 私の方がちょっとお礼を言いたかっただけなので

編集・削除(編集済: 2024年06月07日 18:12)

シマ  理蝶

シマがこちらを見とる

シマはおれと同じくらいの力だ

シマが来て体が重くなった

正直言うておれはもうやられるかと思った

シマは窓から ずっとこちらを見とる

シマが一度来て 一旦帰って
また夜に来た

シマがまだ帰らない
シマが!

○○さん、帰るよ
みんな待ちよるよ

うんうん これだけ言わせて
シマは 死神よ

そう言い残して
○○さんは送迎バスに乗った

ごめんね
あれは過去のトラウマとかが
彼の中で入り組んで
ああいうのを 見せているらしいんだ
職員さんは言った

シマ 
嶋、島 あるいは 死魔

彼の視界にのみ
未だ刻印されている傷跡

彼の苦悩が凝結した
脳からの使者

ふと窓を振り返った
垂れ込める曇天と青葉 それだけ

僕にはまだ シマは来ない
けれど 
すぐそばまで 来ているかもしれない
誰だってそう 
僕だって あなただって

窓から
空と青葉だけが 見える日々は
まったく当たり前ではない




※ 本作は実話をもとにした作品です。そのため「シマ」という語を用いたことに、一切の他意はございませんのでどうかご了承ください。

編集・削除(未編集)

MyDear2周年おめでとうございます。 秋乃 夕陽

MyDear2周年おめでとうございます。
54万ものアクセス数、素晴らしいです。
詩人仲間の中でも、こちらの掲示板に投稿される詩はどれもレベルが高く一定の水準を保っていると好評です。
私も皆様に負けないように良い詩を書けるよういつも心がけたいと思います。

編集・削除(未編集)
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