このロケット掲示板の『葵新吾"大好き大川橋蔵ファン広場”掲示板PARTⅡ』と
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どちらを見ても大丈夫なように管理者が責任をもって投稿記事は双方に分かるように掲載していきます。
🟨この掲示板は無料版の掲示板にしましたので、広告が入りますので見ずらくなってしまいました。ご容赦ください。
「美男の顔役」・⑧
丑松とお兼が慌てて取り乱して「大変だ大変だ」と市之丞の前に、
市之丞「静かにしねえかい」
丑松 「静かに出来るかい、この野郎。来たんだ、来たんだよぉ」
市之丞「来た、何が」
丑松 「何がっておめぇ、中野のお殿様よ」
お兼 「碩、碩翁よ」
市之丞「なにぃ、碩翁」
皆慌て騒ぎ出す。
宗俊 「おい、どうする」
市之丞「お通しろ」
丑松 「通す?」
市之丞「お待たせしては碩翁殿に礼を欠く。そうそうにご案内いたさぬか」
皆あたふたしているだけ
市之丞「静まれ!静まれ!」 というところに中野碩翁が入ってきた。
🍀碩翁と市之丞の目に見えない火花を散らす一瞬です。
市之丞「これはこれは、ようこそのご入来、当主人騎馬御定係片岡直次郎の用人、金子市之丞でござりまする」(①の画像)
碩翁ちらっと見ただけで上段の間に進む。
市之丞「恐れながら申し上げます。主人片岡直次郎、このたびお目付衆に昇進認可、その由聞きたるご母堂様、ことのほかのお喜びて、はるばる河内よりお祝いにおこしおそばされ、御親子ご対面の座にべりました芯ら一同、共にうれし泣きをいたしおったところにござりまする」(➁の画像)
碩翁黙って聞いているだけ。
碩翁は市之丞の表情と言葉から、事情をうすうす察したようです。
おもん、宴の続きをと皆で踊ろうと・・市之丞も踊り出し、続いて皆が踊り出した。
市之丞踊りながら、碩翁の様子を伺っている。(③の画像)
おもんが碩翁を無理やり踊りの輪にいれた。
市之丞”にやり”と・・この急場は一応治まったのです。
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「美男の顔役」・⑦
おもんを迎えての宴が開かれています。
つかれている様子を見て
市之丞「ご母堂様には、慣れぬ旅路でお疲れとお見受けいたします」
おもん、肩を揉もうとする市之丞に、もったいないと。
市之丞「何を仰せられます、主人の母上は家来一堂にとっても、失礼ながら母上。ご遠慮には及びません」
おもん「あんたはん、なかなかお上手でんな」
市之丞「はぁ、幼少の頃、よく母の肩を」(①の画像)
おもんの、お袋さんはまだ元気でいるのか、という問いに市之丞「・・・・・・」
おもん「あっ、いはらいませんのけ」ここで市之丞の表情が・・・(➁の画像)
「これは悪いことを聞きましたなぁ、堪忍しておくんなはれよ」
🐦(肩を揉みながら市之丞が瞼の母を思い出している心理描写が描かれていきます。)
肩を揉んでいる市之丞の気持ちがおもんにも伝わっているような・・。
お礼にとおもんが直次郎と国の踊りを踊っている様子を、
愛おしげに見つめている市之丞。(③の画像)
✐(バックには直次郎が唄う子守唄が流れています。)
📷 肩もみのシーン
おもん役の浪花千栄子さん大感激・・人気最高の橋蔵さまに揉んでもらうので「有難いことです」と喜んでいたそうです。
橋蔵さまは「なんのなんの、そんなに喜んでもらえるのだったら余計に揉みがいがあります」と
器用な手つきで大サービスを。橋蔵さまの肩の揉み方上手だったようです。
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「美男の顔役」・⑥
稽古は続きます。琴江もお兼さんから聞いて手伝いたいとやってきました。
市之丞「えっ、あいつ、しょうがねえな」
琴江が入って女4人の市之丞の争奪戦です。
あっちへ向けられこっちへ向けられ(①の画像)、
そこへお兼さんが猪突猛進という言葉がありますが、女どもを掃い飛ばし、
市之丞の膝に乗り抱きつきます。
市之丞「うぅっ、これじゃ稽古にならねえよ、こらぁ」(➁の画像)
そこへ栄次郎がやって来て見たものは、又もやお兼さんが市之丞に抱きついている光景でした。
琴江が栄次郎を部屋から連れ出した後、勘美津とおそのが抱きついているお兼さんを引き離そうとするが、
お兼 「あたしだって、少しくらい役得がなくちゃ・・うぅ~ん」
と言って、また市之丞に抱きついてゆきます。
🎩橋蔵さま曰く、
“徒党”にあったようだ。おまけにお兼婆さんに扮する清川虹子さんまでが、自慢のウェイトにものをいわせて、ばく進してくるのだから、と。
ご母堂様門前に到着との知らせに、玄関に皆が揃ってお出迎え。
琴江から委細を聞いたと栄次郎が、
栄次郎「しかしながら、琴江とその方の間は、当分居残って監視する」
市之丞「いやな先生」(③の画像)
ご母堂様おなりの声が聞こえました。
🐦(栄次郎が市之丞を監視する「いやな先生」とのところから、ご母堂様おなりのところまでの橋蔵さまの目の動き、左から右へ、右から左へと・・)
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「美男の顔役」・⑤
さあ、直次郎のお袋さんを喜ばせる一世一代の大芝居を皆が協力して打つのです。丑松は行列をしたて直次郎の母おもんを迎えに出向いています。
貸衣装を揃え、おもんを迎えるための稽古です。
🐦(ここからの台詞と言い方が楽しい。「もっと丁寧に言わなきゃだめよ」という言い方なんて橋蔵さま、どんなイメージを浮かべて、あの言い方がでてきたのかしら。)
大広間では市之丞が、腰元になる勘美津、おその、お峰とご母堂様への挨拶の稽古をしていますが、市之丞、手こずって大変な様子。
🐦(市之丞は御家人くずれですから流石、こんなに凛々しい御武家様がいたら・・・ね)
3人の腰元は頭を下げている。
市之丞「ご母堂様には、長の道中つつがなく終えさせられ、本日めでたくお屋敷へ。芯、金子市之丞」
「・・・???・・・」 市之丞うしろの3人の腰元の方を見て
市之丞「おいおい、おい」
3人頭をあげて市之丞を”どうした”というように・・それを見て
市之丞「何も分かっちゃいねえんだなあ。(①の画像)すぐ後を、おめえが続けるんじゃねえかよ」
おそのとお峰が勘美津を急かす。
勘美津「わかってるわよー」
勘美津「腰元 松鶴」(相当色っぽく言う)
おその「小桜」(ちょっと色っぽく言う)
お峰 「腰元 桐ヶ枝」(つっけんどんな口調で)
市之丞「なんだそりゃ、だめだなあ、もっと丁寧に言わなきゃだめよ!」
🐦(この言い方何度聞いても可笑しくて笑っちゃうんです。橋蔵さまお上手なんですもの。真似したくなりますよ。本当に飽きれたように強い言い方なのですけれど・・・橋蔵さまの言い方は強くてもトゲがないです、可愛い。)
市之丞3人を睨めつけます。腰元たち「いいわよ」「まかしといて」と、
市之丞「いいな、よし(➁の画像)、じゃ、あとを続けるぞ、いいな」
市之丞「祝着至極に」
腰元達「存知奉りまする」
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「美男の顔役」・・④
宗俊の家の台所囲炉裏のところでいっぱいやりながら、宗俊、市之丞、直次郎がいます。
直次郎に宗俊の「馬鹿野郎、お目付衆となりゃ少なくとも三百石だぜ」という言葉がとびます。
直次郎は、お目付衆になったと手紙に書いてしまった。明日の朝お袋が江戸に出てくると手紙に書いてきた、と話す。
市之丞「そうだな、やることといったら、俺たちが芝居をして、お袋さんを騙して帰す・・・ぐれぇのところかな」
宗俊 「騙してけえす?」
市之丞「他に仕様がねぇから、直の野郎をお目付衆にしたてるんだ。お袋さんの江戸滞在もそう長くはあるめぇ。その間だけ直次郎が殿様でよ、俺たちがその家来ってな芝居を打つんだ」
宗俊 「そんな馬鹿なことが出来るかい、いい年をして」
市之丞「まぁ聞け、おらなぁ坊主、こんなド不良のためにしてやるんじゃねえんだ。はるばる大阪から訪ねて来なさるお袋さんの夢を壊したくねえんだよ」
直次郎「さすが兄貴だ、話せるなぁ」
市之丞「馬鹿野郎・・直・・てめえはいいお袋を持ちやがって(①の画像)、幸せな野郎だ」
市之丞寂しそうな表情を浮かべながら身を横たえた。
📎ここでアレンジされた江戸子守唄がバックに流れていきます。
🐦(なにか、市之丞の幼い頃の思いを表すかのように・・・)
宗俊 「市、おめえ本当にやるか」(➁の画像)
横たわっている市之丞小さく「うん」。
じっと見ていた宗俊 思い出したように
宗俊 「そうか・・そうだったなぁ・・よーし、俺もこの芝居に乗った」
市之丞、宗俊の言葉に起き上がってうれしそうに、「坊主」
宗俊、市の気持ちは分かったよ、というように笑みで返します。
市之丞うれしそうに何とも言えない表情をします。(③の画像)
市之丞「どっかに立派な屋敷はねえかな」
丑松の情報から、中野碩翁り今戸の下屋敷が空き家になっているので、無断借用することにします。
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「美男の顔役」・・③
琴江、市之丞から離れ毅然として、
琴江 「私の気持ちに偽りはございません。私も北辰一刀流千葉周作の娘」
市之丞「そ、それがいけねえんだ。うん、あなた一人のことで済むならとにかく、これがちょいとこじれでもした日にゃ、周作大先生がお出でのうえに、千葉の小天狗と言われる兄上の栄次郎殿が、もう、こ~んな目をして」(①の画像)
そんな話をしていたら、千葉栄次郎が琴江を探してやってきたようです。
こ~んな顔をして(画像左上のはめこみ画像)栄次郎が河内山の家に。
🐦(市之丞が「こ~んな目をして」と言いましたが、本当にそうですね。)
栄次郎「頼もう」
市之丞「ほーれ、おいでなすった、・・」
慌てる市之丞と琴江。
栄次郎は悪の世界に生きる市之丞のやくざぶりが気に入りません。そのため琴江を連れ戻そうとやってきたのです。
止める直次郎を振り切って市之丞がいる部屋の障子を開け栄次郎が見たのは・・・。
栄次郎「あっっ・・・」抱き合っている姿を見て、目を閉じてしまいました。
市之丞「よぅー、若先生、はっはっはっっ、」 (➁の画像)
栄次郎ゆっくり目を開けてみると、宗俊の家で働いているお兼婆さんを抱いた市之丞のラブ・シーンでした。(③の画像)
栄次郎びっくりというかあきれ顔です。市之丞、お兼さんの積極さに閉口気味です。
🐦(市之丞さん、うまく切り抜けましたが、お兼さんは市之丞さんに抱かれて幸せそうです。
参りましたね、役得ですね。)
次回からいよいよ大芝居に入っていきますね。
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「美男の顔役」・・・②
舞台は変わって河内山宗俊の家になります。
さあ、勘美津の猛攻撃が始まります。
勘美津「女たらし、おたんちん」
市之丞「うるせえなぁ、俺が嘘つきかよ。おい、今になって謝るか、俺は一度だっておめえと一緒になろうなんて口はきかなかったはずだぜ」
飛びかかってくる勘美津に着物を上から押しかぶせると、
市之丞「落ち着くんだ・・。それに、おめえ、初めなんつった」
📎 このあとの台詞まわし、抑揚、振り、表情が可笑しくて可笑しくて、流石、橋蔵さま
市之丞「私だって水商売の女だし、金子市之丞様の奥方になろうなんて言いやしない。他に何人女がいたっていい、飽きがきたら捨ててもかまいやしない。
楽しい夢を10日でも20日でも見さいすりゃ私の気持ちがおさまんのよ~、なんて抜かしやがったくせに」
勘美津「その気持ちがおさまんなくなったのよ、だから結婚して~」
勘美津から言い寄られ市之丞の冷たい言葉がまた波乱を呼んだ。
市之丞「それじゃ、こっちがおさまらねえ」
いい加減によしてくれ、としつこくすがる勘美津を払いのけたから大変・・障子と一緒に倒れた勘美津が
勘美津「ちきしょう、薄情もの」と言うと、あるものを手当たり次第に投げつけ始めます。土瓶、茶碗、煙草盆、着物が飛んでくる飛んでくる。「嘘つき」
投げつけるものに当たらないよう、部屋の中を逃げ回る市之丞。
市之丞「だって、おめえ」「暴力はいけません」 (①の画像)
とうとう床柱にしがみついてしまいました(➁の画像)、勘美津は泣き出します。
直次郎「大変ですよ、お客ですよ、お客」
勘美津「また女でしょ」
直次郎「その通り、お玉が池の千葉周作の娘と言ってね」
📎(これは大変、鉢合わせ・・どうする・・金子市之丞。またまた女難です。)
📌 この時のセット風景
花園さん「こういう役はとっても楽しい」と大張り切り。
橋蔵さま「ひろみちゃんお手やわらかに頼みますよ」
床柱にもたれ悠然と構えている橋蔵さですが、風を切って飛んでくる灰吹き等を身軽にかわしながらも、心配そうに花園さんをけん制していたようです。
沢島監督は自分に被害がないので、花園さんにハッパをかけたそうです。
「せいぜい派手にやってください。騙された女の気持ちをぶつけるつもりで」「当たってもいいからもっと勢いよく 投げていいよ」
橋蔵さまは高く低く飛んでくるものを上手くよけ、花園さんはテストテストでふうふう。
監督の「はいOK、なかなか迫真的で結構でした」・・・お二人とも顔を見合わせてホッと一息。
市之丞が女難にあっている頃、河内山宗俊のところに福山藩用人竹内金次郎というものが、名の通った花瓶を探している、骨董の目利きが東西一と聞き、所蔵の品を分けてもらいたいとやって来ていた。
庭の片隅に転がっていた尿瓶を”夜の雨”と称して金五十両で売りつけていた。
さて、千葉周作の娘琴江が来た市之丞の部屋の様子は、どうなっているのでしょう。
市之丞、勘美津の時とはうって変わって神妙な面持ちです。
琴江 「市之丞様、私の気持ちを打ち明けた日から、父の道場へ姿を見せぬようになられました。そんなにこりの琴江がお嫌いですか?」
市之丞「いやぁ・・別に・・嫌いなどとは」
琴江 「それでは、あの、私を」
市之丞「いや、それは・・ しかし・・」
すり寄ってくる琴江に追い詰められて、逃げ場がなくなりました。
琴江 「そうですか、分かりました。市之丞様にもう決まった人がいるなら、父はもとより許しません。私は家を出ます。そばに置いてください」
市之丞「いや・・その・・」
琴江は市之丞の腕にもたれに寄り添って、
琴江 「いえ、私に飽きが来たら追い出してもかまいません。ただ、あなたのお傍で10日でも20日でも・・」
♧(どこかで聞いた台詞ですね。)
市之丞「初めはみなさん、誰でもそうおっしゃる」 (③の画像)
もう、その台詞は聞き飽きた、という表情をする市之丞です。
<次に続く>
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「美男の顔役」・・・①
3月「大江戸評判記 美男の顔役」の放送も終了しました。
この作品大好きなので十分にゆっくりと書かせていただきたいと思っています。
橋蔵さまの良さが詰まった作品なので、見ていない方には知っていただきたくて。
旗本くずれのやくざ浪人金子市之丞の哀愁、ひょうきん、真面目、等の場面がふんだんにあり、橋蔵さまの魅力が存分に描かれています。
一度に書くと画像が上手く反映されない時がありますので、時間の合間をぬって少しずつ投稿していきます。
今回は、台詞で攻めてみましたが、多くて読みずらいかしら。
私、台詞を読み取りながら、言葉と台詞まわしの勉強をしてしまいました。
河内山宗俊に関しては講談「天保六花撰」や歌舞伎天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)で有名なので、皆様ご存知だと思います。そこから脚色した、片岡直次郎の母が出世をした息子に会うため国もとから出てくるというので、河内山宗俊達が一芝居をうつ、という筋も映画化ドラマ化が数回なされていましたので、「あぁっ、あの筋書」とお分かりの方もいらっしゃると思います。
「美男の顔役」はその話を御家人崩れの悪名高い剣客、金子市之丞をメインで描いた作品です。
橋蔵さま演ずる金子市之丞、悪党で美男、女性に大もて。橋蔵さまのいろいろな表情が盛りだくさん、楽しく可笑しい中にも心を打ち、市之丞の母への思慕を織り込んでの涙が浮かんでくる人情ものです。
橋蔵さまの金子市之丞の母を想う演技に愛しさを感じてしまいます。
この作品は橋蔵さまの声の抑揚の使い方、台詞まわしのうまさがよくわかります。表情も良いです。武士としての台詞に品位があり、うまいなぁ。引き込まれます。
作品をご覧の方は、台詞から、橋蔵さまの表情や声の抑揚はこうだったと思いながら読んでみてください。
まだ、ご覧になっていない方は、台詞から、橋蔵さまの表情やこんな声で抑揚で、と想像していただければうれしいです。
立回りも橋蔵さま軽い感じで動いてゆきますが、ダイナミックで歯切れの良い格好いいチャンバラで決まっています。
監督は沢島忠さん、橋蔵さまで明朗活劇作品は「若君千両傘」以来になりますかしら。では、橋蔵さま金子市之丞「美男の顔役」に入っていきましょう。
片岡直次郎は水茶屋で、飛脚から母親が江戸へ出てくるという手紙を受け取り、河内山宗俊に相談しなければと慌てています。暗闇の丑松は身投げをした百姓彦六を助けるために飛び込んだが、金槌のため反対に助けられ意見をされています。同じ時、金子市之丞は・・・
川の桟橋に繋がれている屋形船のなかで、男(中野碩翁の用心村山源之進)が嫌がる小唄の師匠勘美津に言い寄っています。
そこへ、屋形船の障子が開き黒頭巾の金子市之丞が入ってきました。(バックに軽妙な音楽が流れこの後を・・するような)
市之丞「お楽しみのところ、とんだ邪魔入り、恐縮旋盤」 (①の画像)
源之進「なに奴じゃ」
市之丞「この女の亭主でござる。如何に拙者のような浪人とは申せ、女房を手籠めにされて、そのまま打ち捨ておくにはまいらん」
源之進「・・・」
市之丞ここで、にやっと笑い、砕けて、
市之丞「というのも、誠にもって野暮なはなし。(➁の画像)下世話にも、間男七両二分という言葉がござるそうだが、拙者もあいにく手元不如意の折から、 金五十両にて目をつむってもよい」
ここで「美人局(つつもたせ)」という言葉が出てきます。
時代劇を見ている皆様はご存知、徳川時代には不義密通はご法度で、密通の者は男女ともに死罪になりました。とはいうもののこの法には裏があり、実際には金でカタをつけることも多かったようです。間男のほうから命乞いがあったときには、相手の男に大判1枚の首代を支払えば、どうやら命は助かったよう
です。
文化年間の書物『金曽木(かなそぎ)』に、「江戸には姦夫の償を金七両二分といふ。大阪にて五両と云もおかし」とあります。これが「間男七両二分」という言葉の由縁らしいです
川柳「据えられて七両二分の膳を食い」という句があります。据え膳に応じたら、夫婦共謀での示談金を巻き上げるいわゆる「美人局」だった。この様に命がけの不倫も幕府にわからなければ金になると、金儲けの材料に利用する者が続出し、天保期には幕府の取り締まりが厳しくなったようです。
源之進「う~ん、おのれ夫婦共謀の美人局だな。その脅しに乗る拙者と思うか」
市之丞に抜き打ちで刀を振りかざした村山であったがねじ伏せられて、懐から財布を取り上げられてしまいます。
「おっ」財布の重さを手に乗せて重さをはかり顔をしかめて
市之丞「身分の地位のと、ごていそうな口を聞きやがったわりには、しけてやがるぜ」
財布を懐に入れて
市之丞「やっ、ご無礼つかまつった」 (③の画像)
バカ丁寧な挨拶を残して、屋形船を出て行きます。 (悪いことをしても、最後の挨拶は忘れない金子市之丞でした。)
🍀この時の橋蔵さま
「悪人といったって根は純情なんですよ。愛される悪人、というのが、金子市の狙いなんですよ」、と。
この場面カット後、「どうも、後味が悪くていけませんやね」と。
花園ひろみさんも「ほんとね」と美人局のお二人が言っていたそうです
🐧(こんなように素敵で粋な浪人に惚れていたら、どうなろうと美人局の片棒かついでしまいますね。)
勘美津は金子市にぞっこん惚れているから片棒をかついでいるのに、金子市之丞が言い寄ってくる女の一人としてしか見ていないのに腹を立ててしまいます。
市之丞はお金を手に入れれば、女には用なし、勘美津には目もくれず帰っていきます。勘美津の気持ちは、これでは納まりません。金子市を追って練塀小路まで追いかけていきます。
この後、色男金子市之丞に女難が降りかかってきます。
<次に続く>
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📍 手元にある資料の中に、雑誌の橋蔵さまの撮影日記の一部分に、「まぼろし天狗」のことがありましたのでちょっと抜粋してちょっと書きます。
📍橋蔵さまの一日一日から撮影の様子と橋蔵さまの行動をなんとなく想像していただければうれしいです。
1962年7月「橋蔵のやくざ判官」封切り、1962年8月「まぼろし天狗」封切りでした。「やくざ判官」の撮影の終盤に「まぼろし天狗」の準備が進行していたようです。
6/11 「やくざ判官」のお白洲のシーン。厚い衣装の重ね着、裃袴に威儀を正しているこの暑さ、辛さ。一段高い調べの座から見下ろして気持ちがいいだろうねとみんなからいわれちゃったけど、お白洲でのんびり笑っている長屋の住人と交替したい心境でした。
6/11 午後からぎっしりのスケジュール、23時までかかる。家に帰りホッ
と一息ついたら13日にかかっていました。
6/13 何に当たったのか、どうも食あたりらしく、お腹をかかえて七転八
倒、とうとう仕事を休ませてもらう。一日中絶食、夜薬を飲んで就寝。
6/14 薬と絶食の効あり。今朝はすこぶる快調。絶食のせいか体重が減ったような軽々しさを感じる以外は以上なし。一日休んだので、今日は大いにはりきり深夜一時にアップする。OKのとたんにちょっとガックリ。早々に帰宅。
6/15 お休みです。昼過ぎから散歩がてらデパートを廻ったり、骨董屋さんを覗いたりする。夜月光で東京へ。
6/16 本社で、東映歌舞伎の打合せや次回作品のことを相談しました。
6/17 一日東京住まい。夕方から銀座に出て夏シャツなどを見て歩きまし
た。夜月光で京都へ。
6/18 9時からイレズミ、お昼開始でオープンの大立ち廻りです。カラッと晴れたのはいいが、まるで真夏 のよう に凄い暑さです。このセットで50人からの捕手を相手にオープンを狭しと駆けまわるんですから大変な重労働、 脚力には相当自信がある方なんだけど、テストテストでフラフラになっちゃった。一部を明日に廻して、次回作のズラ合わせと衣装合わせをして帰る。
お風呂から出てきたら足がガクガク、オツカレさまでした。
6/19 9時開始でオープンの立ち廻り、またもや右に左に、牛若丸のように大活躍(ちょっとバテ気味でした が ネ) やっとお昼過ぎに一段落。15時から、お白洲の取り直し。
もう少しお賑やかに、ということで 立ち廻りが追加されたんです。
6/21 1時から自宅で、中川組「まぼろし天狗」の本読み、中川監督と打ち合わせをしました。そのあと雑誌のお仕事で写真を撮る、夕方から松竹座で映画をみて、食事をして帰りました。
6/22 お昼から衣装合わせをする。
6/23 自宅で本読みと衣装合わせをする。いよいよ明日からクランク・インです。
6/24 9時開始で「まぼろし天狗」の初日です。シーンは、ボクの周馬が刺客団に襲われて逃げるところ、初日から追っかけられて大汗をかいちゃいました。夕方、スタッフの人達と夕食をご一緒する。
6/25 11時開始、今日は喬之助の方、お美代の2階で、北原しげみ君の女将お美代とやりとりします。終わってから台本の直しについて打合せ。
6/26 9時開始、細い崩れ落ちそうな橋の上で、不気味な按摩との凄絶な立ち廻りを撮る。すれ違いざま、仕込杖から白刃をひらめかして斬りつける按摩を一刀の下に切り倒します。(2枚の画像のところ)
短い時間ですが、新しい殺陣らしくスピーディーでスリル満点の立ち廻りでした。17時から、マキノ組「やくざ判官」のお白洲の撮り直しをやる。
6/27 10時半開始で定時に終わり、早めに帰宅、せりふの勉強をして就寝。
6/28 9時開始、盛り場の裏セット。マコちゃん(桜町弘子さん)のお艶を相手にホドの良いところをみせます。というのは、ボクの二役のうち周馬にホレているお艶を、周馬に化けた喬之助(ややこしいです)が騙すくだりです。演技とはいえ女性を騙すということは心苦しいかぎりでした。
6/29 9時開始、闇の道でやくざに襲われるところ、さっさと掘割に叩きこみ「そこでしばらく頭を冷やせ」グッときちゃうセリフでしょう。心身ともに快調です。
6/30 9時からお仕事、今日で6月もお終いです。
一月なんてアッという間に経っちゃいますね、梅雨ももうすぐあけることでしょう。じゃ皆さん来月までお元気に。
👆(下記URLをクリックすると画像にリンクします)
https://sugi-nami.blog.jp/archives/14779036.html
周馬が目障りと「闇の御前」は葬るように指示。
按摩を装った刺客が橋の上ですれ違った喬之助を襲う。
🐧この作品の第一の見せ場になっていると思います。この場面は何度も見たい箇所です。
この場面については、あとに書く橋蔵さまの撮影日記に出てきます。画像はそちらに載せました。
喬之助は周馬になりすまし、矢場のお艶に会いに行く。お役御免になった今「闇の御前」の仲間になると言い、「闇の御前」の屋敷に案内してもらうように。お艶は本物の周馬と思っている。
お艶 「八丁堀の旦那だったら、いくらでも役得があるのに」
喬之助「と、今から思ってみてももう遅い。ところでお艶、相談があるんだ」
お艶 「えっ」
喬之助「わざわざ危ない思いをして、お前を訪ねて来た意味がわかるか」 (①の画像)
お艶 「旦那・・・じゃ、あたしたちの仲間に」
喬之助「こうなったら、地獄でも何処でも落ちてやるさ」
お艶 「旦那、ほんとっ」
喬之助「嘘を言っても始まるまい」
お艶がそうと決まれば闇の御前の許しをもらわなければと
喬之助「闇の御前?」
🐧この着流し、橋蔵さまだから似合います。
お艶の悲鳴が聞こえたので、屋敷の扉を開けると そこに「闇の御前」が待っていた。
もっと近くへ来るようにと言われ、用心をしてすり寄って行った時、すり寄るときのかまえといい、肩の動きも左肩を打たれているのに左右同じだと、周馬出ないことを見破られ、地下牢に落とされてしまう。
地下牢に落とされたお艶がいた。
周馬がずっと好きだったお艶は、こころの中を告白し、ちょっとでいいから抱いてほしいとすり寄った。(➁の画像)そして肩に触れた時、肩に傷のないことがわかる。(③の画像)
🐧ラブシーン?といえるのはこの場面だけになります。
「旦那は・・・守屋の旦那じゃない」
🐧またまた、この着流し、橋蔵さまでなければ着られません、いいでしょう。
いっぽう周馬は喬之助の妹志乃から二人は兄弟ということを、また「闇の御前」の本拠地に乗り込んだことを聞かされ駆け付ける。
1961年ごろから、橋蔵さまの殺陣、立回りは、流麗なところに力強さが加わってきたので、素晴らしいです。見ていてスカッとします。
田沼一味が麻薬を籠で運ぶ所を清吉達が押え、喬之助と周馬は「闇の御前」と呼ばれる首領を暴き、晴れて兄弟揃ってこれからの門出・・・というところで終わりになります。
中川信夫監督は時代劇の怪談ものでは独特の映像で見せるテクニックがあった人のようです。この「まぼろし天狗」でも抑え気味ですが、無気味さ、荒れた屋敷のセットなどに生かされています。
橋蔵さまとの作品はこの一作品でした。時代劇が衰退していなければ、もっとおもしろい作品が見られたかも・・・。
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