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ソース壜汚れて立てる野分かな 爽波

投稿日: 2月 7日(土)16時26分8秒

第四句集「一筆」におさめられている句です。
汚れているのがビール瓶なら、瓶全体に埃がたかっているような姿を思い浮かべ、潰れてしまったお店や倉庫など、もしくは、路傍のゴミ捨て場などへと景が移って行きます。
そうすると、「野分」とはツキスギの句になってしまいます。

ソース壜の「汚れ」とは、触りたくもないような汚れではなく、注ぎ口のまわりがソースで汚れていると言う、生活感を感じさせるものです。
垂れたソースをそのままにしているのですから、高級なお店ではなく、夫婦で切り盛りしているような、小さな定食屋さんでしょう。
お昼時ともなると、近くの工場の工員さんたちで満員になるような、活気の溢れるお店です。
野分の真只中にあっても、お店の中だけは賑やかで、そのギャップが、ひとつの物語を立ち上げます。

この句の手柄は、一句の真ん中に置かれた「立てる」に尽きます。
「汚れ」と言う、本来はマイナスのイメージを持つ言葉が、そのあとの「立てる」によって、プラスのイメージへと変換され、店内の活気を表現しているのです。
そして、窓の外の「野分」に対しても「立てる」が底流し、「野分かな」としながらも「野分立つ」と言うイメージを導き出し、より一層の強風を表現しているのです。

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>倭瑠さん、風待月さん、猫髭さん

投稿日: 2月 7日(土)16時24分18秒

倭瑠さん、句中の季語から、その季節だけを読み取るか、それとも倭瑠さんのように、巡って来た季節を読み取るかによって、その鑑賞も違って来ます。
俳句は、今、自分が立っている季節の一瞬を切り取るものですが、その一瞬は、巡り行く季節の中に存在するからこそ、色褪せないのです。

風待月さん、書き込みをありがとうございます。
風待月さんのおっしゃるように、多くの俳人は、キチンと勉強したのではなく、何となく俳句っぽいからと言う理由で、「し」や「き」などを使っています。
もちろん、スタート地点はそれで良いのですが、いつまでもそこで足踏みしているのではなく、少しづつでも前へ進んで行くべきですね。
そう言った勉強ができるのも、自由に意見が述べ合えるインターネットの利点だと思います。

猫髭さんのおっしゃるように、「~てをりぬ」と言う言葉の使い方は、芭蕉や蕪村などの俳諧や、その他の古典などでは目にしません。
ですから、現在では他の文芸でも普通に使われていますが、その発生は俳句なのかも知れません。
もしそうであれば、俳句が短詩型だからこそ生み出された独特の文法であり、俳言(はいごん/はいげん)のひとつと考えることができます。
「~てをりぬ」を使った句は数え切れないほどありますが、その中には、単なる調子合わせであったり、明確な意図もなく使用しているものもたくさんあります。
しかし、この表現でなければ成り立たない句があることも事実です。
あたしが例にひいた句は、いくらでも別の表現が可能なのに、それぞれに何らかの意図があって「~てをりぬ」と言う表現を選択した句ですので、参考になればと思います。

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砂日傘さつきの犬がまた通る 爽波

投稿日: 2月 7日(土)14時03分15秒

「明るい日差しの中のゆるゆるした時間がいいなあ。」と思ったのと同時に「本当にこの句はいいの?」と疑問も感じてしまいました。俳句を作り始めて9ヶ月。俳人にも文法にもとんと疎い初心者です。今までずっと、この講義を大教室の一番後ろで聴講していたのですが、風待月さんの書き込みで思わず大笑いしてしまいました。「爽波の俳句は面白いのかも」と思いました。

長い引用になりますが、朝比古さんの『初見のとき「こんな句なら作れる」と勘違いさせてくれ、二度目に読んだとき「なかなか面白いな」と俳句への興味を深めさせてくれ、三度目に読んだとき「こりゃ凄い」と、私を俳句の深遠なる世界に誘ってくれた、私にとってとても感慨深い俳句なのです。』と、

きっこさんの『爽波の俳句の素晴らしさのひとつとして、できる限り簡単な言葉を選び、簡潔でいて、それなのに類想が少ないと言う点があげられます。語彙に逃げる俳人が多い昨今、簡単な言葉だけでストレートに勝負して、それでいて類想が少ないと言うのは、本物であることのひとつの指針でもあります。あたしが理想とするのは、極論で言えば、「俳句を知らない人や子供が読んでも伝わる句」です。』

を読んでいつか私にもじわじわと爽波の良さがわかるようになればいいなと楽しみになりました。いろいろ勉強になりました。ありがとうございました。

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美しくない句と神様の句と

投稿日: 2月 7日(土)13時46分24秒

  大空をたゞ見てをりぬ檻の鷲  高浜虚子

  えごの花遠くへ流れ来てをりぬ  山口青邨

  比良の雪春はけぶりてきてをりぬ  森澄雄

  とけるまで霰のかたちしてをりぬ  辻 桃子

  蛙鳴く中やふはふはしてをりぬ  矢島渚男

  帰り花枝に遠慮をしてをりぬ  後藤比奈夫

  避暑に来て貧乏ゆすりしてをりぬ 爽波

  籾殻の山より縄の出てをりぬ   爽波

どうしてかくもこれらの句は美しくないのだろう。舌頭にも躓く。
それは「てをりぬ」という言葉が美しくないためだ。みにくい日本語の典型のひとつだろう。
わたくしは権威には一切おもねらないから、いかなる著名人が使おうが美しくないものは美しくないと発言する。みんなまとめて大馬鹿野郎である。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿七連発(笑)。この中では虚子が古株だから、彼が諸悪の根源か。だらだらだらけて説明するような言葉を寸鉄の俳句に持ち込むな、大たわけ。
風邪でのびてるのでひまだから、万葉集、古今集、新古今集、梁塵秘抄、閑吟集、和漢朗詠集、百人一首、塚本邦雄全集、毛吹草、川柳末摘花、謡曲百番、芭蕉俳句集、蕪村俳句集、加藤郁乎俳句集成などをひもとくも「てをりぬ」などというけったいでなんやしょもない日本語は見当たらず。
日本語の乱れにしとど枕を濡らしておりぬ猫髭でありぬ。

きっこさん、そうですか、爽波は有名じゃないんですか。俳壇には疎いので知りませんでした。
わたくしは立風書房の「現代俳句全集」第四巻巻頭で爽波を読んでいただけですが、1977年当時、句集を一冊しか出していないのに破格の扱いだったし、三島由紀夫が歌人の春日井健と並んで激賞していたので、わたくしの世代では一目置かれている作家でした。水上瀧太郎や吉田満や藤枝静雄と同じく社会人としても著名であり、文学馬鹿でないところも凄いなあと思うておりました。

  掛稲のすぐそこにある湯呑かな  爽波

自作ノートで読み捨てて読み捨てて最後の最後に来た句としてあげられている句です。俳句の神様が来た句とはこういう句をいうめり。

ひとみさん、猫の句ありがとう。カミサンと大笑い。

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子を抱きて虹に立つ人また妊めり 爽波

投稿日: 2月 7日(土)10時19分47秒

きっこさん、皆様、おはようございます。鑑賞のお部屋は初めてですが、勉強させてください。

hudekazu様。「ぬ」と「き」、ことに「き」については私もいろいろ疑問を持っていたので参考になりました。「き」や「し」がきちんと過去の助動詞としてではなく、単なる調子合わせや字数合わせに使われているような気がしてしょうがありませんでした。それでなくても俳句は寸鉄の詩。過去の助動詞の多用はどうかなあ、と思っていたのでした。それが「何となく「過去」とは違う意味合いで現在用いられてあるのと似たような事情があるのでは、という事を思います。」というお説で何となく納得。言葉もその使い方も時代と一緒に動いているのを感じます。でもできることならその言葉本来の持っている意味、それに即した使い方を大切に守っていきたいと思っています。
すみません、ここで論じるべきことではなかったかもしれません。

さて、掲出句。最初見たとき「なんだ、これは?」と思いました。2年間隔の同じ月に3人ぽろぽろ産んだ私のことかしら、とも思いました。年子・3原則「無知、無計画、好き者」も頭をかすめました。(まじめなコメントが続いている中、ごめんなさい)
そう思わせる原因のひとつに用言の多用があると思います。ネットで探っても図書館へ行ってもなかなか資料に行き当たらず、数少ない中からの鑑賞なのでとんちんかんかもしれませんが、どの句も比較的動詞が多いように思いました。それがわかりやすい印象を与えるのでしょうね。詩だったら田中冬二さんのように。

この句も「また妊んだ人」が誰か、でずいぶん解釈が異なってきます。当然「また妊ませた人」もいるわけで。中7の明るさを考えると「奥様」と考えるのが清く、正しく、つまらない解釈なのでしょう。どこかに爽波のことを「何とか大臣を務めた人で、人の顔色をうかがう必要がない・・・うんぬん」と書いてありました。そういうコメントを読んだり他の句を読んだりしていくと、もしかして虹に立つ人が「別宅様」でもこの人なら「またできちゃったあ」と手放しで喜ぶのかもしれないなあ、と思いました。ちょっと私小説風な句で楽しみました。

初めてこの作者と向き合ってみて、きっこさんがなぜ爽波を取り上げたか分かるような気がしました。きっこさんの句に対する姿勢や「しりとり俳句」で学ぶべきものいろんなことを考えました。ありがとうございました。

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招き猫水中の藻に冬がきて 爽波

投稿日: 2月 7日(土)02時44分39秒

水中の藻は動くことなく、その場で、ゆらゆらと揺れています。春には春の。夏には夏の。秋には秋の流れを、ただただ受けています。たまにはゴミが流れてきたり、もしかして魚に、ちぎられているかもしれません。それでも、ゆらゆら揺れているのです。そんな藻にも厳しい冬が来ます。でも水中の藻は、それも、いえ。それが自分の生き方だと、ゆらゆらと招き猫のように全てを招き受けているのです。

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「ぬ」と「き」

投稿日: 2月 6日(金)23時58分6秒

そうですね。リズムの点から言えば、「避暑に来て 貧乏ゆすり してをりぬ」だから「貧乏ゆすり(を)」と考えた方がよいかもしれませんね。「ぬ」については、私は「完了・強調」の意(小学館の古語辞典の説明にもありますが)として習ってきたので、そのように書かせてもらったのですが、ちょっと調べてみたら、研究者の中には「存続」的な意味合いを「ぬ」に持たせている人もいるようです。これは知りませんでした。旺文社の古語辞典の編集者は、そのような立場に立つ人であるのかもしれません。ただ、そのような解釈は、まだ傍流的な考えのようですが。これから先は、勝手な考えなのですが、我々が俳句で使う古語、古文はたとえば平安時代の人たちが使っていた純正の「古文」とは様々な面で異なったもの、という趣旨の意見を何かで読んだことがありますが、たとえば、今回の「ぬ」についても、本来の意味合いとは異なった用い方をしているのではないか、という気がします。それは、ちょうど過去の意味の「き」、句のなかでは「し」という形で使われる事が多いようですが、何となく「過去」とは違う意味合いで現在用いられてあるのと似たような事情があるのでは、という事を思います。学問的な背景なしに直感的な感想を書き付けているので、とんでもない勘違いをしているのかもしれませんが。もちろん言葉は、時代とともに変化し、変化することで時代の中に息づいていけると言うことがあるので、その変質は当然ということかもしれませんが。 

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>hidekazuさん

投稿日: 2月 6日(金)22時29分59秒

hidekazuさん、書き込みをありがとうございます。

>助動詞「ぬ」には、存続の意味はないと思いますが。

とのことですが、あたしの使っている旺文社の古語辞典には、次のように解説されています。

『 ぬ(助動ナ変型) 動作または作用が完結または存続する意を表す。』

また、小学館の古語辞典には、次のように解説されています。

『ぬ(助動ナ変型) ①動作・作用・状態の実現・発生を確かに完了したと認める意。②動作・作用・状態の実現・発生を確かだと確認し、強調する意。』

ですから、あたしは「貧乏ゆすりしてをりぬ」は、現在進行形として解釈し、また、この「ぬ」は、切れ字としての意味も兼ねていると解釈しています。

あたしの解釈を恣意的と言われましたが、あたしは文法的なことに関しては、できる限り辞書や文献などを調べてから書き込むようにしています。
その時の思いつきだけで、根拠の無いことを書き込んだりはしていませんので、誤解なさらないでください。

猫髭さんもhidekazuさんも、「ぬ」には存続の意味はないと言う前提で読んでいるので違和感を感じているのだと思いますが、辞書にも「存続を意する」と書いてありますし、俳句だけでなく、短歌や他の文章媒体でも、「~してをりぬ」と言う表現は、多くの著名作家が使っています。
ようするに、「ぬ」には「完了」と「存続」の二つの意があるのですから、どのように用いられているかによって、読み分けるべきなのではないでしょうか。

また、「貧乏ゆすり」は名詞だと思いますので、「貧乏ゆすりし」ではなく、「貧乏ゆすりをして」の「を」を省略した形だと思います。

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訂正

投稿日: 2月 6日(金)22時13分4秒

解釈の部分で、「今はもうそれもやめてしまっている」と書き込んでしまいましたが、「それももうやめてしまった」と書くべきでした。完了と言いつつも、気持ちのどこかで「継続」的なニュアンスを感じているのだろうか、とちょっと考えてしまいました。
失礼しました。

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貧乏ゆすりしてをりぬ

投稿日: 2月 6日(金)22時08分56秒

「貧乏ゆすりしてをりぬ」について、この場合の「をり」は補助動詞の「をり」に助詞の「て」が付いた形で、猫髭さんの仰っているように「貧乏ゆすりす」というサ変動詞に継続の意味を与えているようです。ですから、「貧乏ゆすりしてをり」という動作の継続状態に完了の「ぬ」がくっつくのは、何となく違和感がありますが、「さきほどまで貧乏ゆすりをしていたのが、今はそれももうやめてしまっている」という状態を表現しているのかもしれません。避暑地での無りょう(漢字変換ができません)感の表現でしょうか。なお、助動詞「ぬ」には、存続の意味はないと思いますが。俳句は、文法で作るものではないと思いますが、やや恣意的な解釈は避けるべきでは?

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