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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

眠れない夜について語ること  荒木章太郎

真夜中に目を覚ますと
決まって最終電車の音が風に吹かれて打ち寄せてくるのだ
頭の中の遥か遠くの片隅でラッパの音が鳴っているのだ
かの軍隊行進曲だ
あの駅前のパチンコ屋から鳴り響く威勢の良い高揚感

死の恐怖を無意識の井戸に沈める
貧しい方へと
若い方へと
弱い方へと
もうへとへとになってしまった

原始的な欲望は雪だるま式の戦車となる
一夜漬けの投資家達は
魅力的な課金制度で
疲れを真っ赤な火の玉に解釈して
雪を溶かして高感度な欲望へといざなう

肉体は猥褻な雑踏を避け朝の公園へと逃れたが
街中の老廃物がアバターとなって集まり
同じ方向を向いてラジオ体操をしているではないか
ならば駅前に行くしかないか

駅前はカンカンとうるさい匂いを放ち
区役所庁舎ビル建設工事が始まっていた
(今何時だと思っているのか)
コンクリートで固められた超自我が
東口と西口の間で佇む古井戸に圧力をかけていた

カンカンと遮断機の目が日の丸の旗
"右・右・左・右・右・右・左・右
全体止まれ ・前へならえ・やすめ
そして考えるな! "

(支配者も陰謀論者も特定の個人ではない)

語れない夢の中では
いつも最終電車に間に合わない
乗れなくもよい
感じて泣いて
吐き出して
考えて良い

どうか戦争をしない
子供達に育ててください
お願いです車掌さん
見上げると彼には頭がなかった
(思考すら音声案内なのか)
夢すらも支配して伏線を回収し
世界中の皆様に承認されたいと思っている
現実には戦争が起こっているというのに
自己愛だけが脳天気に翼擦って歯軋りして歌をうたう

1・2・3・4・1・2・3・4・1・2・3・4
(シアワセハ・アルイテコナイ・ダカラアルイテユクノダネ)
昭和歌謡がサンプリングされループする
汗かきべそかき歩こうよ
前を向いて歩こうよ

体を起こしカタカタと背中まるめて検索を駆使する
鬱蒼とした無力感に感染せぬよう最新の注意を払う

考えて・考えろ・考えろ・考えろ・考えろ・考えろ
もう臍の緒はとうの昔
祖先が大気圏を飛び出した時に断ち切っているのだ
絆という鎖の重さに頼るな
最初から無重力なのだから
空っぽな自己の軽さを恐れるな

考えるだけではだめだ行動しろ
決してたどり着けないと悟りながら
現実に触れる旅に出るのだ
他者と対話するのだ
決して一つにはまとまらないと悟りながら
統合を目指すのだ
どうせ最後は自我は溶けて
黒い闇へと混ざるのだから
なにも始発電車に乗る必要はないが

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「ぼくはこんなに手を振ります」


いいのです
いいのです
こんな私でいいのです
夜に独りで座っているのです
黙狂かもしれないのです
明日はべらべら
しゃべるのでしょうか
いいえ
明日もやはり黙狂なのです
言葉を教えられてないのです
生まれてから
ずっと
教えられれてないのです
黙狂を通すのです
秋の
舞い散る枯れ葉のように
悲しいのです
だけど
泣かないのです
泣けないのです
もう若くないのです
死に絶えるのです
黙狂なのです
みなさん
さようなら
よくしてくださいましたね
ぼくはあんなに手をふります
ありがとう
こんにちは
言葉を
かけてくださって
うれしかったです
さようなら
さようなら
ぼくはこんなに手を振ります

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紗野様 評のお礼です 喜太郎

読んで頂き、ありがとうございます。
そしてアドバイスまで頂き、誠にありがとうございます。
アドバイスを活かして、今後も創作していきたいと思います。

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眼差し 喜太郎

時折見せる あなたの寂しげな眼差し
何を見てるの?
視線の先には何が見えてるの?
一緒に笑っても
一緒に楽しんでも
重ねた唇 そっと目を開けたら
あなたは目を閉じたまま
その暗闇の中何が見える?
私だけだよね?
私だけだよね?
あなたの過去は変えられない
あなたの未来は私と共にある
それでも今はどこにいるの?
心の隅に何かを隠したまま
あなたは私を愛おしんでくれる
全てが欲しいのに
全てをあげたいのに
それは無理だと分かっている
それでも時折見せる
あなたの寂しげな眼差し
私と重なるの?私と比べるの?
聞きたいけれど 怖くて聞けない
私の過去もあなたに上書きして欲しい
あなたの過去も私で包み込みたい
愛してるの あなたを
だから私を見つめてて

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夜明けに立つ  理蝶

太陽のアウラが
水平線を揺らし始めるまで
あと数分

冷気は硬度を上げ
体の微細な隙間に詰まり
関節を軋ませる

俺達はダウンのポケットに手を突っ込んで
交互に白い息を吐いている

言葉もなくじっと夜明けを待つ
新しい炎が水平線を越え
空を底から燃やしてゆくのを
俺達は見に来たのだ

孤独な海鳥は
大きな団旗が振られるように
高く弧を描いて飛んでいる

海面が心なしかざわめいている
小さな頭が出ては
俺達を覗いて消えてゆき
水面の下でひそひそと噂する

風は止み音が消える
深く息を吸う

時計を見る
予報の時間だ

水平線の極点から
光の切先が飛んでくる
思わず目を細める

大きな力が新しい炎を押し上げて
強い光が一斉に放射される
海は煌めいてそれに応える
青い絨毯の上に
光の礫が無数に散らばっている

空と海の境から
赤く赤く色づき始める
細かな血管が走るように
龍が火を吹くように
藍の空が赤く染められてゆく

火球はとうとう浮かび上がり
俺達とまっすぐ向かっていた
眠れる世界を叩き起こし
万象を動かす強い力がそこにはあった
俺達はその力を一心に浴びていた

萎れていた内側の何かが
再び熱を帯び始めていた
止まっていた風が動き出し
二人の頬を撫でていった

生きてゆける
何故か そう思った

そこに言葉はなかった
互いの瞳を見て
その思いは確かになった
瞳の中には新しい炎が
いつまでも燃えていた

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三浦志郎様 『花粉よ』の評の御礼 ベル

三浦様、『花粉よ』の評をありがとうございました。今回の作品は、毎年この時期に訪れる春のワクワク感と花粉という、どうにもこうにも逃れられない、もはや季節限定の友だちのような存在を書きました。また、次の三浦様の期間に投稿します。よろしくお願いします。

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しらむ  鯖詰缶太郎

なにも しらない と
あさが かいだんから
おりてくる

きのうの よいも
しょうすい も
しりません と
うまれる まえのような
かおを ぶらさげて

きのうを ひきずりながら
まだ おれは
なにかを うたがっているのか

おれの なかに
うつる あさだけが
しらじらしく うごめく

それいじょう
  としをとらないでくれ
それいじょう
  かなしくなる
ひつようは ないだろうに

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紗野様 評への御礼  鯖詰缶太郎

おはようございます。
作品を読んでいただきましてありがとうございます。
ご指摘どおり、この作品は速水御舟画伯の「炎舞」からインスパイアされた作品です。
あの妖しく、危うい、美しさの中から
稚拙ながら物語を掴めないだろうかと、腐心しました。
「八月の青い蝶」という作品は初めて聞きました。
勉強になります。

炎を青くしたのは、その方が物語上、幻想的な要素が強まるかなというくらいのもので、それ以上に意味を含ました感じではないですね。

50年に一度、という設定はこのスパンがこれよりも短い場合、話の便宜上、微妙に都合がよくはないので、五十年に一度、かなといったくらいのものです。

この作品には、「物語」であるという虚心なものしかないようなものです。

深読みしていただいて、だいぶ恐縮です。
大変、丁寧に読んでいただきまして本当にありがとうございました。
また機会があればよろしくお願いします。

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季節は巡っていない     akko

枝から春の芽がぴしぴしと音をたて
メジロは樹に残ったみかんを食べつくし
水仙は降りかかった雪をはらい
みな冬をやり終え、春に向かっている

だが庭のケヤキの枝に一枚だけ残る葉は
裸木の小枝にとどまっている薄茶色の葉は
我が家での最期の入浴となった日の
ガウン姿の心細げなあなた

暗く重い冬をくぐり
雨にも強風にも散り落ちもせず
枝にしがみついて
いまなお頑なに春を拒んでいる

無理はない、無理もない
四月のあの日から
我が家の季節は巡っていないのだから

生きているということ
今生きているということ

あした、アネモネの苗を植えよう

編集・削除(編集済: 2024年03月05日 21:03)

世間と自分  埼玉のさっちゃん

冷たい北風が頬をさす
颯爽と歩きたいが
つい背中を丸めてしまう
他人の乾いた足音が道に響く
急いでいる人を見かけると
ゆっくり行こうよと言いたくなる
たまに子供の声を聞くと
自然と笑みがこぼれる
つくづく平和だと感じる
未来も穏やかであって欲しい
自分の眉間にしわがよっていると
心の充電をしたい衝動に駆られる
特別なことをしなくていい
何も考えずに
近所の河原を散歩して花を眺めたり
お気に入りのカフェで
コーヒーを飲みながら読書するのもいい
自分を大切にする方法はいくらでもある
先ずは友人に連絡してみよう

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