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また1人LINEで
ブロックしてしまった
彼女とはこの春に
学校で出会った
勉強の情報交換のため
LINEを交換
学校の修了式後には
軽い打ち上げ
その後はさっぱり
連絡はなく
それが一昨日急に
連絡が来た
突然ですが住所教えてと
私はなんで?と聞く
カードを送りたいと
27歳ゆうかちゃんは言う
十中八九私に何か
善意を装い
近づいてくるのは
詐欺関連
私のお人好しが過ぎて
なんでも言うことを
聞いてくれると
思うらしい
ゆうかちゃんに
私がこの世を
嫌いにならないカードなら
送っていいよとお返事
少し間があって
ゆうかちゃんから
送る時の名前なんて
書きますかと質問がきた
ふざけるな
私の名前も知らないのに
カードを送りたい?
なんて酷い
という訳で
また1人お友達らしき人を
なくしました
時が
一秒一秒刻みながら
空から降りて来る
果てしない階段が
宙(そら)の彼方から
降りては刻みやって来る
スキタイ文明の
彫刻のように精密に
空を傷つけながら
一段一段と降りて来る
まるでダリの絵画のよう
非現実的
今見ているものは
夢ではないのか
見ているのは僕だけなのか
やがてガラ*が空に描かれて
彼女は時と一緒に下ってくる
彼をエスコートして
優美に階段を下りる
ガラはいかにも満足げ
どこからか
ゴールドベルぐ変奏曲の
アリアが聴こえてくる
いささかゆったりとしたタッチで
聴こえるのは僕だけだろうか
やがて二人は地上に降り立ち
今度は地を刻んで歩き続ける
時はガラに十字架を授け
前へ前へと僕の方に
歩み寄って来る
彼女が纏っているのか
ミス・ディオールの
パルファムの香りに
辺りは包まれる
不気味なほどに静かで
滑らかな足取りで
時とガラは
僕の身体をすり抜けた
「あなた、永遠を見たわね」
*ガラ:ガラ・エリュアール・ダリは、詩人ポール・エリュアールの元妻であり、のち画家サルバドール・ダリの妻でガラ・ダリ・デ・プブル侯爵夫人。ダリの絵画のミューズとして彼の絵画に登場する。
途中でいいんです
完成品を見ることもなく
去っていく誰も彼も
途中しか知らない
途中から見て
途中で終わり
続きはわからない
続きは誰かが見てる
でもその人も途中で終わり
結末は誰も見れない
見ることがない
なんて素敵!
さよならだけがあるのです
ひとつだけ言えることは
ハッピーエンドはないってこと
最後は終わる
当たり前だと言わないで
終わって、そして終わるんです
続きがないからこその幸せ
だからもしこのまま幸せでいたいなら
途中でやめるのです
途中で十分です
しかもあなただけの途中
なんて最高!
透明とは
0が発明された夜の
澄んだ外気の色
透明とは
窓際の席で空を見る
ニヒルな彼の見た景色
透明とは
今君の中だけに有る
形を持つ前のその気持ち
透明とは 透明とは
人だから初めて見える色
濁りを 遮られることを
受け入れた悲しい生き物に
訪れたささやかなプレゼント
一つを挟んで
向こうが綺麗に見えることを
ただそれだけを
美しさと捉える生き物
そんなに愛おしい生き物なのに
なのにどうして
世界は濁って遮られている
今この瞬間もそれは増しているような気がする
それは少しパセティックな気もする
そんな逡巡すらも僕の瞳を濁らせる
だから
小川のせせらぎを
0時になっても消えないヒールを
日々に浮かぶ君の中の気持ちを
人は今日も美しいと言うのだろう
そして僕は今日も
君の中の気持ちに
気づかないままなのだろう
透明な君の気持ちに
壁ができたのは
右側ですか 左側ですか
前ですか 後ろですか
壁が見えませんか
壁に触れられませんか
こんなに高くて分厚い壁なのに
ぐるりと囲われてるに気づかないのですか?
囲われているのは
私だけですか
私だけなんですね
壁に囲われているのに冷たい風が吹き付けます
隙間があるんですか?
私は誰に話しかけていますか
あなたはここにはいませんよね
私は私に話しかけているのでしょうか
ここにいないあなたは
どうしてこうなったか知っていますか?
壁を造ったのは誰ですか
あなたですか 私ですか
風ですか 雨ですか
空ですか
カコーン カンカン カコーン
樹々のざわめき
鳥達の囀りと風の囁き
山奥に響く木こりのうた
町の雑踏 うたは聞こえない
そんな中 一人の青年が振り返る
町向こうの山に目をやり
導かれるように歩き出す
山の裾野に辿り着くと
カコーン カンカン カコーン
………目を閉じて森の奏でるうたを聴く
やがて手に持つ鞄を離して
山奥へと進む
カコーン カンカン ………
木こりはその手を止めて
山を登ってくる青年を見つめる
向かい合う青年と年老いた木こり
木こりは手に持つ斧を青年に渡し指を指す
そこには一軒の小屋がある
老人は小屋とは反対方向へと歩き出し
霞のように消え去る
青年は腕まくりをして斧を大木へと振り下ろす
カコーン カンカンカン
カコーン カコーン カンカン
樹々が新しいリズムに合わせるようにざわめき鳥達も迎え入れる様に囀る
風は静かに呟いた
カコーン カンカンカン
カコーン カコーン カンカン………
評を頂き、誠に有難う御座います。
ご感想とアドバイス、とても参考になりました。
これからもアドバイスを頭に置いて創作していきたいと思います。
ありがとうございました。
地獄に堕ちたことで永遠の命を与へられたが、
巌を押して山頂までのすんでの所で
元の木阿弥と化して山裾まで巌は転げ落ち、
再びシシュポスは山頂目指して巌を押して行く
虚しい労役を繰り返すのであるが、
果たしてそこに虚しさは存在するのであらうか。
永劫の労役を与へられしシシュポスは
初めは虚しさを覚えたかもしれぬが、
それは初めだけで後はRunner's highの如く
高揚に満ち繰り返しの労役が
快感になってゐたと想像できる。
翻って私はといふと膝を病み
30㎏の米袋を米がなくなる度に
家の中へと運び入れるのであるが、
歳と共に膝が悪くなって行く私は、
最早30㎏の米袋さへ持ち上げるのは難儀し、
シシュポスの如く30㎏の米袋が入った段ボール箱を
ずっずっと押して運ぶのである。
冬真っ盛りとはいへ汗をびっしょりとかきながら
ずっずっと運ぶのが
しかし、私には快感なのである。
膝は悲鳴を上げるのであるが、
それでも米袋をまだ動かせるといふ快感で
私は嬉しいのである。
嬉嬉として押す米袋が入った段ボール箱は
それはちょっとの力ではびくともせぬが
渾身の力で押してずっずっと動き出し、
その後は慣性で少し軽くなり、
ずっずっずうと動くのであるが、
それが続くのは精精2、3メートルの出来事である。
さうして休んでは息を整へて
ずっずっと再び30㎏の米袋が入った段ボール箱を
押し始め、
また、2、3メートルのところで休んでは再び押すのである。
その労役に嬉嬉としてゐる私は
次の難題、家の上がり框の上へ持ち上げるのに難儀する。
それが難しければ難しいほど
私は高揚して嬉嬉とする。
いつもそこで段ボール箱から米袋をなんとか出して
米袋を鼠に食べられないやうに
上がり框の上へと持ち上げるのである。
この上がり框の上へ上げる上げぬは
鼠が食ふか食はぬかで大きな差が出る急所なのである。
私は膝がぎくぎくと悲鳴を上げるのも構はず
米袋の上部に綺麗に編み込まれた持ち手を持って
ずりずりと持ち上げる。
やうやっと持ち上げればそれで私の労役は一応終はるが、
膝はまた一段酷くなったと笑ふのである。
そのとき思ふのはいつもシシュポスの労役のことで、
これが、米袋が福島から届く度に繰り返される労役の全てなのだ。
私の田舎は福島ではないが、
福島応援も兼ねて福島第一原発事故以降は
福島産の米を毎回買ってゐる。
福島の米の美味しいこと。
それでも他県に比べれば少しばかり値段が安い福島産の米は、
今もなお、消費者に敬遠されてゐるのだらう。
こんな美味い米を食べぬなんて勿体ないではないか。
シシュポスを思ひ浮かべながら、
食べる福島の米のなんと美味しいことか。
シシュポスは地獄にゐながら天国にゐる心地だった筈で、
地獄とは思へば逆説的天国の別称に違ひない。
咳が出たので
僕は病院へ向かった
「今流行りのインフルエンザ?」
そう思いながら向かった
病院へ着くと
沢山の人が椅子に座っており
呼び出しを待っていた
皆虚ろな顔だ
受付を済ませて
僕も椅子に座った
テレビが点いていたが
していたのは子供が見るアニメだった
しばらくすると
「診察室へどうぞ」と
呼び出しがあった
僕は中へ入った
院長と体調面の会話をしたり
食事や睡眠についても話した
熱は以外と無く
倦怠感も無かった
会話が終わり
咳が出る原因が分かった
「A型インフルエンザですね」
やっぱりかと僕は思った
院外処方で薬を貰い
急いで家に帰った
飲んですぐ治れば良いのになぁと
少しばかり願った
しかし今日はゆっくりしよう
何もしないでいようと決め
僕は布団を出して寝ることにした
苦い薬の味が口に残っている
俺はうつわ
なのに穴が空いている
俺はうつわ
少しひびが入っている
君の言葉も通り過ぎる
俺の内側を滑って
留めようと体を曲げたりするけど
俺はうつわ 穴の空いたうつわ
微かな痺れを残して通り過ぎる
素敵な時も通り過ぎる
俺の内側を滑って
時計は読めるしずっと覚えているけど
俺はうつわ ひびの入ったうつわ
2度と帰らず通り過ぎる
全部全部通り過ぎる
俺はうつわ うつろなうつわ
通り過ぎたものたちが
どこへ行ってしまったか分からない
なくなってしまったかも分からない
けど 俺はうつわ 熱く秘めるうつわ
通り過ぎたものたちの記憶を
その壁に熱く秘めるうつわ
この熱だけは奪えない
何にも奪わせない
そしてまた熱くなるうつわ
俺はうつわ
なのに穴が空いている
俺はうつわ
少しひびが入っている
いつか割れてしまううつわ
熱いままに散るうつわ