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さあ、真夜中という海に
航海に出かけようじゃないか
ベッドは大海原に浮かぶ
風に吹かれる一艘の船だ
船に身を横たえて
大航海に出ようじゃないか
僕は一人じゃない
乗組員たちも一緒だ
今夜は波も荒れている
帆がけたたましくなびいている
僕は船の上で左右に寝返りを打つ
辺りは真っ暗な夜の海だ
それでも先へ先へ進むんだ
風に吹かれて ふうらりふらり
波に揺られて ふうわりふわり
右に寝返り ふうらりふらり
左に寝返り ふうわりふわり
真夜中という広大な海に
航海に出て幾時間経ったろう
心配事があるそんな夜は
すべて忘れて無心になって
大航海に出るような気持ちで
ベッドに横たわろうじゃないか
身をあずけようよ
ああ、ゆりかもめが
天井を舞っているよ
陸地はもうすぐ
井嶋様、詩の評をありがとうございました。
いつだったか井嶋様に普段の景色を描くのが僕の強みだと言っていただいたことから、実際の体験からそのような詩を書こうと思い、書いたものでした。最後てこずって訂正しましたが、直したかいがありました。またよろしくお願いいたします。
11/21〜11/23までにご投稿分の評と感想です。
ご投稿された詩は、一生懸命書かれた詩ですので私も一生懸命読ませていただいておりますが、上手に意味を読み取れなかったり疑問を書いたり頓珍漢な感想になったりする場合もございます。申し訳ございませんがそのように感じた場合には深く心に留めず、そんな読み方もあるのだとスルーしていただけると助かります。どうぞ宜しくお願いいたします。
*****
「少女人形」喜太郎さん
喜太郎さんこんばんは。
子どもの頃、人形派とぬいぐるみ派がいたのを思い出しました。私はもっぱらぬいぐるみ派だったのですが、確かに人形も持ってました。人形は人間に似せて作られているので、子どもながらに生きているように感じてしまって怖かった記憶があります。姿形が人間に似ているものは魂が宿りやすいと聞いたことがありまして、そう思うとこの詩もまんざら想像だけの世界でもなく、妙にリアリティを持って迫ってくるものがありました。愛情を持って接していると、本当に喋っていることが聞こえてくるのかもしれないと、この二人きりの世界では互いがまるで初恋の相手であるかのように、うっとりと恍惚感に包まれる時間が流れているのかもしれないと、この詩を読んで思いました。一連ずつ、交互に互いの気持ちのパートが書かれていたので、惑うことなく読み込めたところ、良かったです。ただ、最終連なんですが
ガラスケースの中
君は笑う
私は笑う
ここなんですが、「君」と「私」は人形のことを指してらっしゃいますか?「私」ではなく「僕」の間違いなんでしょうか?でも「僕」だとしたら「僕」もガラスケースの中に入っていることになるので人間ではなく人形だったというオチになってしまうので、詩の流れからいうとやっぱり「僕」ではないですよね?そうなりますと、「君」と「私」は共に人形のことだと思いますので、この3行はくっつけないほうが良いように思います。
ガラスケースの中/君は笑う→これは僕のパート
私は笑う→これは人形のパート
この3行の中にふたつのパートが入っているので、少し違和感を抱きますので、「君は笑う」で終わってもいいかもしれません。
あるいは、「私は笑う」を「私たちは笑う」に変更してから、この一行を独立させてはいかがでしょうか?
これは私の提案ですが、喜太郎さん流に、宜しかったらご一考ください。佳作一歩前といたします。(余談ですが、人形は誰とも目が合わないように作られているそうです。)
*****
「君の言葉は蜂蜜」司 龍之介さん
司 龍之介さんこんばんは。
「ありがとう」という言葉は、実はとっても偉大ですよね。3連目がとっても良かったですね。「俺の心を〜洗われたのか」この2行が出来事の衝撃を語っていました。ありがとうの一言で世界が逆転したかのような、核心に触れたかのような、急に恋心が芽生えて、めろめろ感にくらくらしているような。それなのに詩にはとてもスピード感があって、最後は「君」に対してお花の形容のオンパレード。そんな「君」の口から出る言葉は蜂蜜だという。ということは詩の中の「俺」はさながら花に吸い寄せられる虫ででもあるかのよう。一気に加速していく気持ちが、実によく描かれていました。ただ、1連目に蜂蜜が出てくるのに、お花が出てくるのが最終連だけ、というのが少し惜しいようにも思いました。合間合間にお花が出てきた方が、花のように美しい君をもっと表現出来たかもしれませんね。正直で気持ちの良い詩でした。佳作一歩前といたします。
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「武士は食はねど高楊枝」積 緋露雪さん
積 緋露雪さんこんばんは。
今まで何作か作品を読ませていただいてますが、内容は違えど、自身の内面へのアプローチ方法として、まず先に丁寧な分析による例題のようなものから始まり、破綻なく自身へと辿り着く、その経緯がとても理論的で読み応えがあって面白く、個性的で律儀で礼儀正しいと感じます。そこには積 緋露雪さんの人間性も垣間見れるような気がいたします。今回の詩も同様に、上記のようなものをふんだんに感じます。このような詩は積 緋露雪さんの中ですでに完成されていると言っても良いと思います。私は今回の詩は、特に後半に注目いたしました。「と、そんな妄想をしながら」以降の部分ですね。どちらかというとこの詩は前半より後半のほうが大切だと感じるんです。伝えたいことだと思うんです。と言いますか、伝えてほしいと思うんです。が、バランスとしては後半部分が少なめです。前半あっての後半なのだと分かっていても、どちらかと言うと後半にスポットを当てて書いたものをよんでみたいと、今回は強く思いました。きちんとご自身の考え方も貫かれていて、ブレることのない素晴らしい詩を書かれれる積 緋露雪さんです。もう一度言いますが、このような書き方の詩は積 緋露雪さんの中でもう完成されていると思います。佳作とさせていただきます。
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「秋雨が映すもの」エイジさん
エイジさんこんばんは。
早朝5時に、どしゃぶりの秋雨に濡れながら出かけた先は、郵便ポスト。という事実が意外で、やられた感がありました笑。「混沌」という言葉が出てきます。この行動自体が「混沌」なのだろうと感じました。雨の描写が非常に細かくリアルで、そうそうこういうふうに濡れるんだよね、と、木の枝が傘にぶつかって余計な雨粒を浴びるんだよね、と、逐一納得共感し、雨に濡れた時の不快感までよみがえってきて、非常に良かったと思います。夜明け前に、悲鳴をあげる腰を抱え、一体どんな手紙だったのだろうと聞きたくなりますが、そこはあえて秘密でいきましょうか。それだけ大切なものなのだと。とても良かったです。佳作といたします。
*****
「祈り」紫陽花さん
紫陽花さんこんばんは。
この詩はとっても良い詩なんです。薔薇の葉っぱについた芋虫。葉っぱを食い尽くし沢山の小さな穴を空ける芋虫。薔薇にとっては害虫になってしまう芋虫。芋虫はお食事中ですが、薔薇が弱ってしまうので「私は私の都合で」(ここ、良いですね)葉っぱごと切り落とす作業をする。紫の花を咲かせるために。一方で。母の心にも沢山穴が空いていることに気づいている。しかし薔薇に対するようにはさみで切り落とすことが出来ない。だから母の手を撫でる。祈りながら、撫でる。この詩は、3連から出来ていますが、基本は1連目だと思うのです。内容は繋がっていますが、書き方としては、1連目とそれ以外がくっきりと分かれています。そこで提案です。あくまでも1連目を基本として、2連目と3連目を組み込んでしまう、ということです。今はまだ難しいと思いますが、この詩はとっても良い詩なのです。紫陽花さんの書き方で、ぜひ試行錯誤して、あくまで1連目を基本として、お母さまの心の穴を1連目に組み込んでいけたら、この詩は唸るほどの良いものになると思います。いかがでしょうか。宜しかったらご一考ください。佳作半歩前といたします。
*****
「胸元にバーコードをつけた少女」荒木章太郎さん
荒木章太郎さんこんばんは。
胸元にバーコードをつけているということは、商品ということでしょうかね。つまり少女の人形ということでしょうか?今回はたまたま喜太郎さんの「少女人形」という投稿作品がありまして、お人形の詩が2作となりました。ですが荒木章太郎さんのこちらの詩は、喜太郎さんの詩とは少し受ける感じが違いました。何となく近未来的な感じを受けました。AIの世界といいますか、さわれる世界というよりもデータ化された世界と言いますか、そんな感じを受けました。プログラムした人が居て、パソコンの中で誕生して育てられていく、そういう世界のように感じました。これからもっともっとそういう世界がリアルになっていくのだろうと、こちらの詩を読んで考えました。そうですよね、姿形を与えられた存在は、どんな場所であれ意思を持つかも知れませんよね。しかもこの少女はどことなく健気で、少し寂しい印象を受けました。技術が発達するということは、こういう寂しさも誕生するのかも知れないと、ふと思いました。佳作一歩前といたします。
*****
以上、6作品のご投稿でした。
どうもありがとうございました。
もう12月に入りました。
今年もあと1ヶ月もありません。
やり残したこと、やり遂げたこと、皆さんそれぞれあるかと思いますが
たまには自分をほめてみたいと思います。
まだわかいかいしゃいんたち
はじけちゃいたいおとしごろ
おそろいのスーツにみをつつみ
いっしょのでんしゃにのっています
ガタンゴトン
つりかわにつかまって
かぜのレールにゆられています
ガタンゴトン
えきについたらドアがひらいて
これからおしごとのかいしゃいんたちは
らいげつのボーナスにわくわくしながら
パンッとでんしゃをおりるのです
僕の生活の中から、ノイズが消えていく。
見たくないものは、無理に見ない。
生活に必要なものだけ、あればいい。
ここには、僕しかいない。
外には、人がいるよ。
でも、ここには、僕しかいない。
こんなことって、生まれて初めてなんだ。
-嫌な感じ、する?-
うんう、慣れない感じ。
一人部屋の中で、もう一人の僕? みんな? 誰? が、僕に語りかけ、それに僕が返答を重ねる。
あの時、みんなどう思ってたのかなぁって、今、あの人、どう思ってんのかなぁって、全部、もう一人の僕? あの時の、みんな? 今、あの人? が、僕に語りかけて、教えてくれる。
でも、その内容は、きっと現実のみんなと一緒で、次の日になると変わっていくんだ。
噴き出る汗を拭いながら
被告用に設けられた席を立ち上がって
法廷を見廻した
真夏の横浜地裁
そこは暗くて重い空気が支配していた
黒い法服の判事が三人登壇
ざわついていた法廷が
その瞬間静まった
裁判長 右陪席 左陪席と順に着座
裁判長は女性判事だ
午前十時 開廷
さっそく口頭弁論が始まった
原告代理人の若い弁護士が
気力充溢
こぶしを振り上げ
準備書面(弁論を準備する書面)を
朗々と読み上げた
一時間が経過
口頭弁論も佳境を迎え
準備書面の読み手も三人目に
引き継がれた
悪辣な被告たちだと
心に刻みたいのであろう
原告代理人筆頭格の弁護士が
書面を床に置き
被告側を睨め回し
鬼の視線を浴びせて来た
殺気に近いものを感じ
思わず視線を外らして 身を竦めた
彼は
法曹界では名うての社会派弁護士
“人を救う”という使命と矜持をもって
裁判に臨んでいた
表情からもそれが強く窺えた
この裁判に命を賭していると聞く
私は
社命で法廷に赴いた
会社を守るというモチベーションは
勿論あるが
原告を嫌っていたわけではない
社会正義の旗を高く掲げた
この弁護士にも
共感できるところがあった
自分だって
人の世の喜びから見離された
被害者に寄り添って
救いの風を送りたい
会社にも
同じ病で倒れた者が数多いたのだ
一方 会社は共同不法行為などという
不名誉な濡れ衣を着せられていた
不当な理由での訴訟提起は
断固排除しなければならない
なぜなら
企業はステークホールダーからの〈信用〉で
成り立っているからだ
放置すればその〈信用〉を失ってしまう
被害者を救いたいという気持ち
会社を守らねばならないという立場
その間に挟まって私は呻吟した
**
春先に訴状が届いてから今日までの間
率先して法務という茨の道に分け入り
血まみれになりながらも東奔西走した
まったく寝耳に水の訴訟だった
会社が公害型集団訴訟の対象とされたのだ
訴因は共同不法行為*
客観的関連共同性*が重要な争点だ
被告は 国とメーカー四十四社
顧問弁護士や 相被告たちと
慎重に検討を加えて行った
法学者で不法行為論の碩学
産業医で疫学の泰斗から意見を聞いた
そして
共同不法行為の解説書を貪り読んだ
一冊二冊ではない
神保町の書肆を歩き廻って本を入手した
国会図書館にもお世話になった
しかしながら法律と医学
いずれも高度な専門性があって
付け焼刃の素人に刃が立たなかった
訴状に対する答弁書を
弁護士たちと書きあげて行く中で
上げ底の知識
己の力量不足を露呈してしまった
不甲斐ない心に
青い慚愧の炎(ほむら)が灯った
**
審理も終盤
原告の主張が心に滲み入って
思わず天井を見上げた
もう一人の自分が叫ぶ
頑張れ 一眞
気合いを入れて心を奮い立たせろ
お前の肩に
会社の命運がかかっている
お前は役員
会社の経営者なんだ
会社が他の悪ものと共謀結託して
不法行為を行なった
遵法の姿勢が欠如しているという
理不尽な原告の主張
現実に健康を損ね
ひたすら痛みに耐え
死の影に怯える多数の被害者がいる
悲惨な原告の現実
二つの事実の狭間で
私は又割き状態になった
法廷・この暗きもの
わが心をどこへ連れて行くのか…
その日の審理を終え
横浜地裁の正門を出ると
かまびすしく啼く蝉の声がした
柳の木の根本で
カミキリムシがギーと啼いた
無色の時間を彩った虫の音(ね)に
なぜかホッとした
救われた気がした
驚くことに
心の中の暗きものが霧消して行った
幼き日の自然一体の感覚が蘇り
故郷の蒼い空に思いが飛んだ
立ち止まり
ふと見上げた太陽がやけに眩しかった
迂闊にも私は涙ぐんだ
*共同不法行為論には謀議などの主観的
なものの他客観的関連共同性というもっ
と緩やかな共同性を不法行為に見做そう
という考え方がある
僕がおもちゃのピストルを
水洗トイレに落とした時に
血のつながらないおばあちゃんが
お前はやさしい子なのだから
そんなものを持ってはいけないよ
と言われた。本当は汚いからダメだんたんだね
そんなもの流してしまったら
トイレが壊れてしまうんだよ
おもちゃのピストルは
レゴブロックに持ち替えられて
エゴブロックに固められた
支配者欲求はディスプレイの中の
オペレーションに組み込まれた
血のつながっていたおじいちゃんは
戦争を指揮した政治家でした
固唾を飲んでいた
なけなしの平和の屋根の下
対岸で流れている
モノホン戦争の川を聞きながら
苦々しい黒い夢を飲み干し
今日も労働に出かけた
ちなみに父はこがねを集める商人でした
母ははがねを集める愛人でした
見知らぬ異国で暮らしています
いや 驚いた!
君が貝塚少佐の息子さんだったとはねえ
結果として僕の父と君の親父さんは同じ任務だったわけだ
しかも司令と副長 いいコンビだったろうなあ
三津浜と三崎の違いだけで ほぼ同郷ですからね 気が合ったのでしょう
単に偶然というよりも 不思議な宿縁かもしれませんね
最初はあたりさわりのない話でしたが、
彼は突然真顔になり、声をひそめて驚くべきことを話し始めたのです。
君の親父さんは輸送船での戦死じゃないよ
エッ 一体どういうことですか!? 何で知ってるんですか?
三津浜の飛行基地跡の地下に通路があるのを聞いた事あるかい?
あの野菜畑の下さ
ええ 噂ではね
あれは本当だよ 実際にあるんだ
エッ それはびっくりですね 確かめたんですか?
確かめるも何も―
そこに僕の父と君の親父さんが今も共に眠っているんだ
白骨遺体でね 僕は供養に何度も地下に入ってるよ
私は絶句しました。いったい何のことを言っているのかわかりませんでした。
彼が話すうちに、だんだん容易ならぬ事がわかってきたのです。
今度の日曜日 空いてるかい? 地下通路に連れていってあげるよ
それで全てがわかるさ
*
三津浜海岸北側要塞跡の洞窟から入って迷路のようなところを抜けると、
地下通路がありました。それは本当だったのです!そこには胴体だけのゼロ戦があって、
その操縦席に一体と、すぐそばに一体、白骨遺体がありました!
何が起こっているのかわからず、私はただ恐怖で叫びながら震えていました。
浜野さんは全く冷静に話し始めたのです。
いいか しっかり聴いてくれ
操縦席のが僕の父 地面のが君の親父さんだ
僕の父がこの基地開設の総指揮官だったのは話したよな?
君の親父さんは僕の父とここで共に自決したんだ
敗戦に絶望してね それが事実なんだ
僕の家には 父は空戦で戦死したと連絡が来た
横須賀司令部は両方の家族に嘘を言ったのさ
僕の推測では おおぴっらに言えることじゃないし
そもそもここの基地開設は知られたくなかったらしい
無かった事にしたかったらしい
GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の心証を悪くするのを恐れたんだろう
現に当初は 横須賀司令部の参謀に
「地下の出来事 横須賀は一切関知しない 全て任せる 好きにせよ
ただし この事を外部に漏らしたら お前の人生 後悔することになるぞ」と脅されたんだ
尾行されたこともしばしばだ 恐くて誰にも言えなかった
今となっては問題ないだろうけれど
今も誰にも話していない “当事者”の君以外にはね
私は半信半疑でした。突然そんな事を言われても―。
確かに父の経歴からいって、その遺体が父である可能性はありますし、
事情も理解できましたが、だからといって父の顔は写真でしか見たことがないし、
だいいち、こんな骸骨ではわかるも何もありません。浜野さんは本物だと強調してましたが―。
そして彼はちょっと別のことも話し始めたのです。
それで これは少し別の話になるんだがね
ここ 元飛行基地予定地一帯は全てウチ(浜野家)の所有地で
親父は海軍の要請で土地を売却した
その代金に加えて基地建設の為の軍用資金を預かっていたらしい
それは それは 腰が抜けるほどの大金らしいんだ
親父が金をもらったのは確実だ 探せば必ずどこかにあるさ
どうだい?二~三ヵ月に一回でいい
ここに来て親の供養がてら大金を探してみないか?
手伝ってくれて金が見つかれば二人で山分けだ
金にはもう一生困らないかもしれん
しかし 今日見たことは絶対秘密に な
言っておくが バレたら 君からというのがすぐわかってしまうぞ
そうなったら タダじゃおかない それは覚悟しておいてくれ
父の件もそうですが、金の話にはもっと興味がありました。正直、遊ぶ金が欲しかったし、
借金もあったので。二~三ヵ月に一回くらいならいいと思ってその話に乗ったのです。
だから私がここに関わったのは浜野さんよりずっと後です。あとは彼が話した通りです。
私はまあ、もともと漁師なので、なんというか、ガサツなところがあるのですが、浜野さんは人当たりも良く優しかった。
一種の人格者ですよ。頭もキレるし理論派だ。(この人について行けば間違いないだろう)とも思ったほどです。
しかし裏ではこういった顔も持っていたのです。とにかく二人とも発覚することを極度に恐れていた。特に浜野さんは
若い頃、横須賀司令部に脅されたのがトラウマになって心に沁み込んでいるようだった。日が経つにつれ告白する機会を失い、
ますます秘密になっていった。そんな悪循環が苦しくなった。秘密など案外そんなものかもしれません。
不謹慎ですが、逆に、今までよくバレなかった、というホンネもあります。ええ、金のほうはいくら探しても出て来なかった。
もうやめようと話していたところです。私は彼に誘われて手伝っただけだ。私たちは殺人や金を盗んだわけじゃない。
ただ遺体をそのままにし金を探していただけです。それも身内の遺体と浜野さん個人の金です。それだけはわかってください。
わかりました。よくぞ話してくれた。だいぶ事態が見えてきたね。明日の実況見分には立ち会ってもらう。
まあ、金の件はともかく遺体収容後のDNA鑑定で、その遺体があなたの実父であるかどうかはっきりわかるよ.
**********
つづく。(前回11/19、次回12/15)
「大きな心の人になりたい」に感想をありがとうございました。
やっと水無川さんに読んでいただくことができました。
掲示板で名前を見知っていただけていたとのこと、とても嬉しかったです。
丁寧に描けて、「たぶん」をうまく使えていて、良かったです。
最後の1行については、無くすることは一度も考えませんでしたが、
無くして読んでみたら自然と広がりの出る感じがしました。
アドバイスありがとうございました。
1作出来上がるのに時間がかかってしまいますが、次はタイトルも「読みたい」と
思ってもらえるよう考えて出せるよう、やってみます。
ありがとうございました。
いつだって 少しだけ
あと少しだけ頑張ろう
と囁く何かにそそのかされ
全く力の入らない
老女を車椅子から
ベッドに移乗した
老女の脇に腕を通す
私の肩に腕を乗せてもらう
ベッドに移動しましょう
声掛けて
老女は少し硬い顔
私は努めて笑顔で
持ち上げる 移動する
老女のお尻が
ベッド近くに来た時
私の腰が限界を迎えた
腰から太もも裏まで
糸を張ったような
嫌な痛みが来た
それでも何とかベッドに
老女を座らせた
ベッドに座れた老女は
微かに微笑んでいる
移乗は成功した
私も微かに微笑み返す
ただ私の腰が若干壊れた
帰り道しょんぼりしながら
行きつけの整体に行く
これはぎっくり腰って言います
そうですか
今日から私の腰は
ぎっくり腰という名前付き
しばらく通ってくださいね
微笑む整体屋さんを後にした
仕方ない
明日から私はしばらく
ぎっくり腰で戦おう