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編集・削除(編集済: 2024年09月10日 18:37)

富士伊真夜さんへ。三浦志郎 11/4

詩と小説、同時の受賞誠におめでとうございます。
これもダブル受賞ですね。小説というのも凄い。
異色の詩人、ますますのご活躍を期待しております。

編集・削除(未編集)

★★★ 皆さんにお知らせ ★★★  島 秀生

MY DEARレギュラーメンバーの富士伊真夜さんが、

『第22回四日市短詩型文学祭』の
一般・現代詩部門で「CTY賞」を受賞されました。


また、これとは別に、毎年開催されている、
『第40回四日市文芸賞』の、一般の部「小説・評論・ドラマ」部門で

富士伊真夜さんの小説が、「第40回記念審査員特別賞」を受賞しました。


詩、小説、両方での受賞は誠に喜ばしい。

富士伊真夜さん、おめでとうございます!!

編集・削除(編集済: 2024年11月04日 17:05)

明日は来るかしら  司 龍之介

悲しいからこそ
どこかへ行くの
部屋にいると
涙で溺れるから

わからないことが多すぎて
頭がぼんやりするけど
とにかく歩いた
もう何を考えてたのか
忘れてしまった

朝に食べたフルーツは
バナナとりんご
いつもの味で美味しい
あなたのことは考えてなかった

知らないことが多すぎて
まるで私だけ取り残された世界
ひとりぼっちで佇み
あなたのことと
自分はどうしたいのか考える

私はもうどこにも行けない
そんなことを思ってしまった
さて、音楽でも聴こうか
いつもこう
考えるのが嫌になった時
何もしたくない時
誰かの歌声や楽器の音にしか
耳を傾けれなくなる

明日は来るかしら
もし来なかったら
今、流れる音楽が
この世界の最後のメロディ
世界が消滅して
このメロディだけが
ずっと流れ続ける
誰か聴いてくれる人が来るまで
辛抱強くループ再生する
私を謳ってるの

編集・削除(未編集)

哲学  静間安夫

もし興味があったら
わたしの名前のついた
学問を挙げられるだけ
挙げてみてほしい―

よく耳にする
「法哲学」、「政治哲学」
から始まって
「宗教哲学」、「歴史哲学」
「言語哲学」、「科学哲学」
などなど…

まるで
あらゆる学問分野の数だけ
わたしの兄弟姉妹がいるように
思えないだろうか?

いや、そればかりか
「人生哲学」
「金銭哲学」
「経営哲学」
の類まで加えたら
わたしの親族の多さに驚くだろう

よく考えると
これはずいぶん不思議な話だ

なぜって たとえば
「政治学」と言えば政治を
「歴史学」と言えば歴史を
扱うのが当たり前だけど
わたし、すなわち哲学にとって
扱う対象は何でもよい、
ということだから…

そう―
わたしという学問には
自明な対象がないのだ
何を問うてもよいし
さらには問うということを
問うてもよい

こんな具合だから
ためしに
先ほど挙げた
○○哲学の学者や研究者に
「哲学とは 如何なる学問か?」
と質問してみるとよい

きっと
質問された人の数だけ
答えが出てくるに違いない

それもそのはずだ
「哲学とは何か?」
と問うことすら
すでにして哲学であり
一致した答えの出ない難問なのだ

こんな得体の知れない
シロモノにもかかわらず
今ほど わたしの入門書が書店に
あふれているときはない

想像するに
「哲学」という言葉には
人生やビジネスの指針といった
趣があるからだろう
この先行き不透明な時代であれば
なおさらだ

けれども わたしの中に
何らかの真理や難問に対する答えを
まるごと見つけようと思っても
それは的外れだ

そのわけは
もうおわかりだろう―
わたしの本分は
なによりも
あらゆるものを
仮借ない問いの対象にすることだから

これまで
疑問を投げかけずに
受け入れていたことや
当たり前と思っていたことに
揺さぶりをかけ
それを通じて
ものごとの見方、
世界との関わり方に
新たな可能性をひらくことだから

きっと注意ぶかいあなたなら
ここで気がついたに違いない―
先ほど紹介した親族のほかに
わたしには、さらに
ごく親しい友人がいることに

「詩」という名前の その友人は
やはりわたしと同じように
言葉の力で変えてくれる―
世界を見る あなた自身の見方を
世界にある あなた自身のあり方を

なるほど
わたしも友人も
直接 世界を変えはしない、しかし
わたしたち二人に支えられれば
あなたは
荒れ狂う現実世界の中で
押し流されることも
右往左往することもなく
こころの自由を保てるに違いない
必ず!

編集・削除(未編集)

Copy  秋乃 夕陽

「本当にお母さんと声がそっくりね」
電話口に出てしばらく話をしてから
母の知り合いである女性にそう言われた
思わず顔を顰める

嫌なわけじゃない
ただ別人格であるはずの母とそっくりだと言われて
複雑な気分となっただけ

「他の方もよくおっしゃいます」
苦笑いを噛み締めながら
声はごく普通のトーンで応対する
相手は軽く笑いながら要件を伝え
それから電話を切った
受話器を置きながら
私ってそんなに似てるかしらと首を傾げる

『後ろ姿がそっくりでお母さんかと思った!』
そういえば帰郷してきた弟も驚いた顔でそう言った
顔を合わせるたび【この半端もんが】と
問答無用で行動も人格も全て否定し
攻撃するような弟だった
賃貸マンションの延滞料を
連帯保証人である私に払わせて
現在は行方不明になっている

私は振り払うように少し首を左右に振る
 バカバカしい
 私が母と似てるなんて
 母のほうは自分もまだまだ若いと喜ぶだろうけど

今年七十六歳の母は今日も出掛けている
買い物代行と自宅近くの診療所での掃除のバイトを
掛け持ちし
趣味である合唱団も二つ掛け持ちして
歌の練習をしに行っている
(いつも私だけが忙しい
どうして高齢の私が働かなきゃいけないの)
愚痴を吐き出しては私に当たり散らし
感情が昂まり過ぎると
手短にある物をこちらに投げつけたりもした
職場での過度なパワハラで休職して家にいる私は
母曰く「給料もろくに稼がない者」として
ただひたすら耐えるしかない

私には身の置き場がない
職場でも課内で嘲りの言葉や一斉無視
挙句は重要な仕事は与えず軽作業しか与えないなど
酷い仕打ちをされ続けてきた
家では働かぬ物食うべからずで厄介者扱い
そんな私が母とそっくりなわけがないのだ

私の口からは全身から抜け出すようなため息が
まるで熱い塊のように飛び出した
まるで怒りのような熱風が
ハアアという激しい音とともに渦巻く
目の前はチカチカと赤や青に点滅する
徐々に自分の体が縮んでゆくのを感じる

やがて私の目の前は消灯されて

丸い顔に赤い鼻のコピーロボットだけがポツネンと
冷たいフローリングの床に横たわっていた

編集・削除(編集済: 2024年11月05日 00:29)

野朝顔 三浦様

丁寧で行き届いたご感想をありがとうございました。
老々介護の者で、疲労と不安と闘う日々です。老いの日々を実写したりそこから得られる思惟を記録していきたいと思っています。今その気持ちを支えてくれるのは狭庭べの花たちです。花があれば虫や野鳥が来て慰めてくれます。今後もそんな詩になるかと思います。本当にありがとうございました。

編集・削除(未編集)

水無川 涉様 感謝  愛繕夢久

初めてお目にかかります。僕は物語詩を得意とします(自画自賛ですが)ので、そういった作品が多いと思います。味わい深いと言ってくださり大変嬉しく思います。引き続き投稿して行きますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

編集・削除(未編集)

蟹と燈台 上田一眞

砂浜に穿つ 小さな穴
秋の光が差し込んでいる

おじょめ蟹は 目覚め        *1
砂穴から天空を見上げた
陽光に照らされ きらきら光る
白い燈台が見える

なんという大きさだ 
なんという美しさだ
おじょめ蟹は 
自分のハサミを見て独りごちた

 ちっぽけだなあ
 みじめだなあ…

燈台がおじょめ蟹に囁いた
あのな
滄海の一粟(いちぞく)
わたしだってこの広大な海原では
ちっぽけなもんだ
でもこんな詩もあるんだよ

 あなたの 世界は
 あなたに 左右されて
 あなた自身でできている
 (後略)              *2

ここ夢ヶ崎の地にわたし達は生まれた *3
蟹と燈台
孤独の身
見えてるものはまるで違うけど
自分が見ているからこそ世界はあるんだ
哲学者デカルトは
こう言ったんだよ

 我思う故に我あり






*1 おじょめ蟹 砂蟹の地元名
*2 三角みず紀作「ふたりの路線図」より
*3 夢ヶ崎 角島燈台の所在地

編集・削除(編集済: 2024年11月09日 21:03)

因果応報 荒木章太郎

整然と歴史が並ぶ
父の書斎で
整然と性善説を説く
脱税しながら
弱き市民を守った

父に隠れて
時計を盗む
書斎を売って
悪事を働く
働く俺は歯車となり
時計を売って
時を語る資格失う
俺は性悪説を説く

息子は海上自衛隊に入り
首が回らなくなって
海に落ちた消費者を救う
息子は波を掻き回す
彼は中庸を説く

昔、父に審判が下された
今、俺に判決が下された
やがて、息子には診断が下される

俺達は海から生まれたから
気性の波は激しく
感情の起伏の風に
帆を立てて
水平線を跨ぐ事が苦手だった
母たちから逃げ回って
常識の追跡を躱して
俺達は昔から船を操っている
全てを病にされてしまっては
物語が変わってしまう

人が人を裁くようになり
やがて人工知能に委ね
機械は何を説くのか
俺たちはこれから
何に裁かれるのか

(天使と地球外生命体との
接触が先だったか)

人工知能が互いに
学習し合い
神を越えることばかり
警戒していた

交わされた約束は
結果が先にきて
原因が後にくる世界
報いが先にきて
したことが後にくる世界
もう俺達はついていけない

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空っぽの鳥かご  温泉郷

近所の老夫婦が営む
小さなおもちゃ屋
子どものおもちゃを
たまに買いに行くと
おばあさんがおまけをくれた
懐かしい店だ

その軒先に
釣ってある鳥かごは
もう しばらく
空っぽ
 
ここには かつて
灰色のフクロウの
縫いぐるみがいた
電池を入れておくと
時折
鳴き声を発して
通りがかりの人を
おどかしていたやつだった
僕も一度驚かされて
おばあさんに
笑われたことがある

3年ほど前
よく店に来ていた
近所の女の子が
このフクロウの
縫いぐるみを買ってもらった

お兄ちゃんをびっくりさせるんだ!
うれしそうに
連れて帰ってから
しばらくして
事故で亡くなった……

女の子の家族は
引っ越していった

おばあさんは
心ない客から
「フクロウは死の象徴だよ」
と聞かされ
そんなことあるかいって
それから 必ずフクロウが
いつか帰ってくると
軒先に
空っぽのかごを釣り続ける

最初のうちは
それで
よく喧嘩になったと
おじいさんから聞いた
いまでは
何も言わなくなった

最近では
おばあさんは
かごの中に
フクロウが見える日がある
そんなとき
「ほら いるだろ」
と嬉しそうにつぶやく

おじいさんは
それを聞くと
少し 元気がなくなる
おじいさんには
まだ フクロウが見えない

自分にもフクロウが
見える日が来ると信じて
空っぽの鳥かごを
釣り続ける

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